餅での死亡者数はどれくらい?後悔しないための対策法もお伝えします

みなさん、お正月にお餅、食べましたか?

お正月にお餅を食べるのは日本の素晴らしい伝統ですが、私もお餅、大好きなのですが、その一方で喉に詰まらせてしまう事故が毎年後を絶ちません。

しかし医学的な視点で見ると、お餅による窒息(ちっそく)事故は予防可能な不慮の事故とされており、正しい知識を持つことで大切な命を守ることができるのです。

では、(特にお年寄りですが)お餅を食べる時にはどういうことに気を付ければよいのでしょうか。

今回は、お餅の危険性と後悔しないための具体的な対策について、最新の研究データをもとに詳しくお話ししていきます。

餅で死亡する確率は?

そもそもお餅で死亡する人はどれくらいいるのでしょうか?

2021年に発表された論文によると、お餅を含む食べ物を喉に詰まらせて亡くなる方は、日本全体で年間約4,000人にものぼります 。これは、交通事故で亡くなる方の数に匹敵するか、年によっては上回るほど身近なリスクということですね。原因となる食べ物についての記載がありませんが、多くが1月か12月に集中するので、お餅がかなり多くの原因を占めていると思われます。

また、東京消防庁のデータ(令和2年〜6年)によれば、お餅などを喉に詰まらせて救急搬送された方は5年間で338人いるとされており、令和6年は63人いました。このデータは東京だけのものなので、全国に広げれば、人口比でいうとその10倍はいると考えられます。

さらに、消防庁や論文のデータから、以下の傾向があることがわかっています。

  • 1月と12月に集中:全体の半数以上の事故が食品による窒息死が2ヶ月間に発生しています 。特に元旦(1月1日)は、お餅を食べる機会が増えるためか、事故が最も多くなる傾向がありますね。消防庁の月別の救急搬送人員も1月が突出しています。
  • 半分以上は自宅で発生:事故が起きた場所でみると、56.9%が自宅、18.1%が居住施設、2.9%がレストラン、9.8%が学校や病院などとなっています。
  • 重症化しやすい:搬送された方の約7割が中等症以上(入院が必要な状態)と診断されており、その中には生命に危険が及ぶ重篤なケースも少なくありません。
  • 自宅の窒素は年齢によって上昇する:自宅での食品による窒息の割合は年齢とともに増加し、75歳未満、75~84歳、85歳以上ではそれぞれ8.4%、15.7%、26.3%でした。

お餅による事故は、発見が遅れるとわずか数分で命に関わるため、決して「自分は大丈夫」と過信してはいけない数字といえるでしょう。

(参照:Epidemiology of Food Choking Deaths in Japan: Time Trends and Regional Variations
(参照:東京消防庁「餅などによる窒息事故に注意!」

餅で死亡する原因は?

なぜお餅は、他の食べ物よりも「窒息の王様」と恐れられるほど危険なのでしょうか。

それには、お餅特有の「粘弾性」(粘り気と弾力の両方を持つ性質)と、温度による変化が関係しています 。

  1. 体温で冷えると硬くなる: お餅は50〜60度くらいでは柔らかいのですが、口の中(約36度)に入って温度が下がると、急激に粘り気と硬さが増すという特性があります。
  2. 粘膜に強力に張り付く:お餅は非常に付着性が高く、咽頭(のどの奥)の壁にぴったりと張り付いてしまいます。一度張り付くと、人間が異物を吐き出そうとする「咳」の力だけでは剥がすのが難しくなります。
  3. 気道に「蓋」をしてしまう:大きな塊のまま飲み込もうとすると、お餅が喉の入り口を塞ぐ「蓋」のような状態になり、空気が完全に通らなくなってしまいます。

お餅の1個あたりの大きさがかなり大きく、なかなかちぎれなくてそのまま食べてしまう方も多いと思います。それを十分口の中で咀嚼せずに飲み込んでしまうと・・・冷えて固まって窒息する原因となってしまうのです。

餅で死亡するリスクが高い人は?

お餅による事故は、年齢や体の状態によってリスクが劇的に変わります。特に注意が必要なのは次のような方々です。

  • 75歳以上の高齢者:救急搬送される方の約9割が65歳以上の高齢者ですが、特に75歳以上で事故が急増します。加齢によって、食べ物を飲み込む「嚥下反射」(えんげはんしゃ)が鈍くなったり、異物を吐き出す筋肉が弱まったりすることが原因です。
  • 歯が少ない・義歯を使っている方 :お餅を安全に食べるには、唾液と混ぜて「ペースト状」になるまで噛む必要があります。しかし、自分の歯が少なかったり義歯が合っていなかったりすると、十分に噛み砕けないまま大きな塊で飲み込んでしまいがちです。
  • 男性 :2023年のイタリアの論文によると、食品の窒息による男性の死亡数は女性の約2.6倍にものぼります。これは男性の方が一口の量が多く、早食いの傾向があるためではないかと考えられています。
  • 持病や認知症がある方: パーキンソン病などの神経の病気や、認知症によって「一口の適量」を判断しにくくなっている場合も、リスクが非常に高まります。

これらに該当する方は、「お餅を詰まらせてしまう」ことを前提とした対策が必要です。

(参照:Risk factors and prevention of choking

餅で死亡するのを予防するためには?

お正月早々、お餅で悲しい事故になったら、せっかくのお正月が台無しですよね。今日から実践できる「お餅から身を守る5箇条」を覚えておきましょう。

  1. とにかく小さく切る:お餅は「一口大」よりもさらに小さく、1〜2cm角程度に切るのが最も効果的な予防策です 。
  2. 食べる前に喉を潤す:いきなりお餅を口にするのではなく、まずはお茶や汁物を飲んで、喉の通りを滑らかにしておきましょう 。
  3. ゆっくり、しっかり噛む :「お餅はリスクがある食べ物だ」と意識し、形がなくなるまで何度も噛んでから飲み込むようにしてください 。
  4. 周囲が見守る:高齢者やお子さんがお餅を食べる際は、家族が必ず同席し、食べる様子を見守ってください 。
  5. 応急手当を知っておく:万が一詰まってしまったら、すぐに大声で助けを呼び、119番通報を依頼しましょう 。意識がある場合は、左右の肩甲骨の間を強く叩く「背部叩打法」(はいぶこうだほう)や「腹部突き上げ法」を行い、異物を取り除く試みを行ってください 。背部叩打法の具体的な処置の方法は次の通りです。(イラストは腹部突き上げ法)
    1. 相手の横後ろに立ち、片手で相手の胸か下顎をしっかりと支えます 。
    2. 相手を前かがみの姿勢にさせます 。これは、叩いた衝撃で異物がさらに奥へ落ち込むのを防ぐためです。
    3. もう片方の手のひらの付け根(掌底)を使って、左右の肩甲骨の間を力強く、叩き上げるように何度も連続して叩きます
    4. 異物が取れるか、相手の意識がなくなるまで、この動作を迅速に繰り返してください。

なお、よく聞く「掃除機で吸い出す」という方法は、口の中を傷つけたり、準備に時間がかかって手遅れになったりするリスクがあるため、第一選択としては推奨されていません。まずは背中を叩くなどの標準的な救命処置を優先しましょう。

お餅は日本の大切な文化です。少しの注意と準備で、安全に美味しく楽しみたいですね。

【この記事を書いた人】 
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。

あわせてこちらもオススメです

関連記事

  1. オゼンピックの効果や副作用・使い方などについて解説【ダイエッ…

  2. 大人のヒトメタニューモウイルスについて【症状・検査・うつる期…

  3. 【医師が教える】卵は1日に何個まで食べていい?医学的根拠から…

  4. 睡眠負債を返済してスッキリ目覚めよう!チェック方法と解消法に…

  5. ノロウイルスの潜伏期間や症状、薬や検査について【消毒方法知っ…

  6. 脂肪肝の原因と薬物治療による改善方法について解説

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

CAPTCHA


ピックアップ記事

新着記事 おすすめ記事
PAGE TOP