こんにちは、ひまわり医院です。突然ですが、周りや自分にコロナが降りかかった時、
- 家族がコロナに感染したが自分もいつコロナが発症するか心配
- 自分がコロナにかかったが、どれくらいまで人に移す可能性があるのか知りたい
など、重症度や症状に加えて「新型コロナの潜伏期間」についても不安になる方も多いでしょう。
実際、当初は新型コロナは最長14日くらいまで潜伏期間があるといわれていましたが、その後新型コロナはアルファ株、ベータ株、デルタ株、オミクロン株とどんどん変異していきウイルスの性質も変わっています。
最新の論文では、コロナの潜伏期間はどれくらいと推定されているのでしょうか。
今回はコロナの潜伏期間の平均値や今までの潜伏期間の移り変わりについて解説していきます。
最後に動画でも解説していますので、参考にしてください。
目次
コロナの潜伏期間とは?

コロナに限らず潜伏期間とは「病原体に感染してから最初に症状が出てくるするまでの期間」のことを指します。
当初新型コロナの非常にやっかいな特徴として「潜伏期間が長いこと」があげられました。ウイルスがいるのに症状が出ない期間が長ければ長いほど、その期間多くの人にウイルスを散布してしまうからです。
また、新型コロナは通常のウイルスよりも感染力が高いのが特徴の1つ。接触感染や飛沫感染のみならず、後述する「エアロゾル感染(飛沫核感染)」を通して容易に周囲の方を感染される力を持っています。
そのため、これまで世界中で多くの緊急事態宣言が出されたのにも関わらず。新型コロナ完全に封じ込めることはもはやできませんでした。しかしその努力のかいがあってか、その間に治療薬やワクチンの開発や医療体制の整備が進み、さらにウイルスの性質も大きく変わりました。
そして、当初考えられていた「コロナの潜伏期間」もウイルスの変異とともに変わってきているのです。
最新のコロナの潜伏期間は平均何日?

では、現在新型コロナの潜伏期間はどれくらいと考えられているのでしょうか。
2023年4月に発表された20,413人を対象としたフランスの報告によると、変異株よって潜伏期間は大きく変わっていることがわかりました。具体的なコロナの平均潜伏期間は以下の通りですね。
- アルファ株:平均4.96 日 (95%信頼区間: 4.90–5.02日)
- ベータ株・ガンマ株:平均5.18 日 (4.93–5.43日)
- デルタ株:平均4.43 日 (4.36–4.49日)
- オミクロン株:平均3.61 日 (3.55–3.68日)
最新株はオミクロン株由来になるので、オミクロン株を参考にしながら行動することになりますね。つまり、上記の分布を見てもらうとわかるとおり、「感染してから2~4日後に症状として出やすい」ということになります。
これらの報告はノルウェーやアメリカ、中国の報告と大体は一致するところですね。

一方、日本の国立感染症研究所の発表によると「オミクロン株症例の潜伏期間の中央値は2.9日(95%信頼区間:2.6-3.2)であった。99%が曝露から6~7日以内に発症していた。」としており、他の報告よりはやや短い印象ですね。

日本の「新型コロナウイルス診療の手引き第10.0版」では、新型コロナの潜伏期間や感染経路について以下のように記載されています。
- 潜伏期間:2~7日(中央値:2~3日)
- 感染経路:感染者から1~2m以内の距離で、病原体を含んだ飛沫・エアロゾルを吸入することが主要な感染経路。換気が悪い屋内では、感染者から遠い場所でも感染。ウイルスを含む飛沫や環境表面に触れた手指で粘膜を触ることでも感染
- 感染性のある期間:発症前から発症後5~10日
このため、日本では5類扱いになってからの新型コロナの隔離期間は「発症日を0日として、発症から5日間」とされていますが、それ以降でも十分感染性があることに注意が必要です。
(現在流行しているEG.5株の方がオミクロン全体よりも増殖スピードが速い分、多少潜伏期間が短い可能性があります。EG.5株の特徴【エリス】新型コロナ「EG.5株」「EG.5.1株」の特徴について解説【症状・重症化・オミクロン】を参照してください)
さらにグラフを見てもらうとわかる通り、海外の報告でも11日目以降はほぼ発症していません。そのため、コロナにかかった方と濃厚接触をされていても、最終接触から10日たてば海外の報告でも99%発症しないだろうということがわかります。
(参照:SARS-CoV-2の変異株B.1.1.529系統(オミクロン株)の潜伏期間の推定:暫定報告)
(参照:新型コロナウイルス感染症 診療の手引き 第10.0版)
人によってもコロナの潜伏期間は異なる

実は、潜伏期間である「ウイルスが増殖して症状がでてくるまでの期間」はウイルスだけでなく、人によっても変わってきます。
潜伏期間について調べた分析をウイルスだけでなく人の性質も加えてさらに解析したところ、以下のことがわかりました。
- 60歳以上の高齢者は、30歳未満の方と比べて潜伏期間が平均0.4日長くなる
- 20本以上煙草を吸っている方は非喫煙者よりも潜伏期間は平均0.4日長くなる
- 女性は男性よりも潜伏期間が平均0.1日長くなる
- 接触時にコロナに罹った方が咳などの症状があると平均0.1日短縮される
- 接触時にマスクをお互いしていると潜伏期間が平均0.1~0.2日長くなる
なぜ人によって潜伏期間が変わってくるかは厳密にはわかっていませんし、潜伏期間の長短と重症度の関係などは不明です。例えば
- もともとの免疫力がどこまで低下しているか
- 感染した時に、ウイルスに対してどこまで反応しやすいか(若年者の方がウイルスに対して過敏に反応しやすいでしょう)
- 暴露したときのウイルス量がどこまで多いか(無症状での感染やマスク着用ではウイルス量は少なくなります)
などにも潜伏期間は大きく関わってきますね。
ちなみに、ワクチンの接種状況や過去に新型コロナに罹ったかどうか、屋内か屋外か、糖尿病や高血圧などの基礎疾患と潜伏期間とは有意な関係が本論文では見られていません。
このように、人や暴露状況などによっても潜伏期間が多少前後します。例えば60歳の喫煙者の女性の方は若い非喫煙者の男性よりもおよそ1日潜伏期間が長くなるわけです。
「最終接触2~4日くらいたってるから大丈夫だろう」と思わずに、人によっては多少潜伏期間を長めに考えた方がよいことに注意してください。
コロナの潜伏期間についてのまとめ

いかがでしたか?今回はコロナの潜伏期間に絞ってお話していきました。まとめると
- 潜伏期間とは「病原体に感染してから最初に症状が出てくるするまでの期間」のこと
- コロナも変異を繰り返すたびに徐々に短くなっている
- 現在主流のオミクロン株では平均3.6日が潜伏期間であり、XBB株・EG.5株もそれに準拠する
- 潜伏期間は5~6日の間に大きく低下することが自宅待機期間の根拠になっている(5日以降に発症しないわけでないことに注意)
- だいたい感染してから10日以内に99%は発症する
- 人によってコロナの潜伏期間は異なる:特に高齢者や女性、喫煙者などは長くなるので注意
- また暴露したウイルス量が少ない場合は潜伏期間が長くなる
といえます。コロナ感染が再び増加しています。周りに広げないために、潜伏期間を意識して、効率的に感染対策をしてくださいね。
【この記事を書いた人】
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。
家族がコロナに感染しました。
職場の上司にそのことを伝えるべきでしょうか?
山田利一様
質問ありがとうございます。状況によると思いますが、法律的には必ず家族のコロナ感染を伝える必要はありません。
あとは、職場がどこまでコロナ感染、クラスター感染に敏感に対応しなければならない職場であるかにもよると思います。
とても分かりやすい解説を ありがとうございます
タバコを吸ったことがないので 一点疑問に思ったのですが
喫煙者の 20本以上煙草を吸っている方 とは
1日 1週間 1ヶ月 1年 など 平均はどのスパンでの話なのでしょうか?
素人の初歩的な質問で お手数おかけいたします 時間の空いた時にでも
更新いただけたら助かります
岡部真一郎 様
コメントいただきありがとうございます。Lancetの論文上では、明確な期間はありませんでした。
おそらく患者さんへのアンケートで「タバコは1日どれくらい吸っているか。またニコチン代替え薬は使用しているか。」といった内容で質問しているからだと思われます。
なので「現在タバコを何本吸っているか」で考えるとよいと思います。
暴露したウイルスの量により潜伏期間が異なる、とありますが、暴露したウイルスの量で重症度は変わりますか?
よつば様
コメントありがとうございます。この件について、2022年の複数の論文を検証したものによると
・ ウイルス量と重症度との間に明確な関係はわからなかった。
・ しかし、高齢でかつウイルス量が多い症例は重症度と関連もあり、完全に関連がないともいえない
とされています。
というわけで、ある程度は暴露したウイルス量と重症度に対して関連する可能性は否定できません。
ただし、もともと基礎疾患があったり高齢であったりなど、他の因子の方が重症度に関係しやすいと思われます。
(参照:The relationship between COVID-19 viral load and disease severity: A systematic review)
9月22日にコロナ陽性が判明したのですが、医師より何株なのか等の説明がなされなかったので、オミクロンなのかエリスなのか解りません。症状としてはMAX39.1℃の高熱、咳、激しい咳による胸まわりの筋肉痛、といったところでしょうか。