【こむら返り】足がつる原因と治し方・予防について解説【漢方薬も】

みなさんは、足が急につったことありませんか?夜、急にふくらはぎがひきつれるように痛くなると、とても辛いですよね。しかもこうした「足のつり」を何回も繰り返してしまう方もいらっしゃいます。

では、足がつるのは何か原因があるのでしょうか?別名「こむら返り」と呼ばれる、足のつりについて、原因や治し方・予防方法や漢方治療に至るまで幅広く解説していきます。

足のつり(こむら返り)とは?

足のつり(こむら返り)は主に夜におこる足のけいれん発作のこと。海外では「Leg cramps」「Noctunal leg cramps」という名称で知られていますね。

足のつり(こむら返り)の特徴としては以下のものがあげられます。

  1. 通常は痛みを伴う
  2. 運動中や夜に発生することが多い
  3. 足のつりは数秒~数分しか続かない
  4. 自分の意思とは関係なくおこり通常は痛みを伴う
  5. 約80%は足のふくらはぎがつるが、太ももからつま先まで起こりうる(次点は足の裏)

実はこうした「足のつり」(こむら返り)は、非常にありふれた疾患です。年齢が上がるごとに発生頻度が高くなり、50歳までに誰もが一度は経験し、50歳以上の最大33%もの方が「足のつり」で困っているという報告もあります(詳細はこちら

また、そのうち20%の方でこむら返りが日中の休息時間にも発生するという報告もあり、「たかがこむら返り」と侮れません。(詳細はこちら)睡眠中や普段も日常生活でも、大きく生活の質を落とす可能性がある疾患、それが「こむら返り」なのです。

では、どうして「足のつり」(こむら返り)が起こるのでしょうか?その原因についてみていきましょう。

(ちなみに、こむら返りの「こむら」はふくらはぎをさしますので、こむら返りは「足のつり」の1部分を指しますね。しかし、メカニズムは一緒なのでここでは同一に扱います。)

(参照:National Library of Medicind. Muscle Cramps

足のつり(こむら返り)の原因は?

足のつり(こむら返り)の原因を一言でいうと、「足や手などの筋肉が伸縮バランスを崩して異常な収縮を起こした結果、元に戻らなくなったため」と考えられています。

実は、この「足のつり」の原因ははっきりわかっていません。しかし、下記のような基礎疾患の関連が指摘されています。(より可能性が高いものと考えられる順にあげています)

  • 高齢:高齢だと筋肉量が減少し、残りの筋肉に過度のストレスがかかりやすくなる。
  • 妊娠
  • 脱水:スポーツ中の疲労やマラソン中のアスリートによく見られますね
  • 糖尿病:特に2型糖尿病の方で発症しやすいとされています。末梢神経の過興奮を伴う神経障害や腎臓障害・末梢の血流不全が原因とされています。
  • 電解質異常:マグネシウムやカルシウム・カリウムが少なすぎると足のけいれんを起こす可能性があります。
  • 慢性腎不全(透析されている方など)
  • 末梢の血管疾患(静脈・動脈):静脈瘤や動脈硬化など
  • 末梢の神経障害: 腰椎椎間板ヘルニア・神経狭窄症などで神経が圧迫されているとけいれんのような痛みが生じる
  • 甲状腺機能異常
  • 慢性肝不全:肝硬変の方の88%が筋けいれんを経験し、通常よりも多く経験されます。
  • うつ病
  • 夜間無呼吸症候群
  • 心不全
  • 線維筋痛症
  • 筋萎縮性側索硬化症(ALS): ALSの方の95%は筋肉のけいれんがあると報告されています。
  • 薬物性コレステロールを下げる薬(スタチン系薬剤)利尿薬脈拍をゆっくりさせる薬(β遮断薬)どの特定の種類の薬も原因になることも。

そこに加えて、急に体を動かしたり、栄養不足や水分不足・筋疲労・寒暖差・冷えなどが加わり起こりやすくなります。

(参照:National Library of Medicind. Muscle Cramps
(参照:Mayo clinic「Muscle cramps」
(参照:NHS「Leg cramps」
(参照:有痛性筋けいれんの治療。ドクターサロン2020年

こむら返り(足のつり)が高齢者や妊娠中に起こりやすいのはなぜ?

こむら返りの発症に機序はわかっていないことも少なくありませんが、基本的に

  • ホルモンのバランスが崩れた時
  • 体液のバランスが崩れた時
  • 神経根や動脈血管が圧迫された時
  • 筋肉を支配する運動神経の興奮が増してしまう時

に発症するされています。

例えば妊娠中は女性ホルモンを中心にバランスが崩れやすく、胎児を守るために全体的に体液量は増えます。そこから母体の静脈還流不全や胎児の成長による場体のホルモンや栄養バランスの崩れからこむら返りが生じるのではないかといわれてています。実際、妊娠中の女性の約30~40%が夜の足のつりを経験するとされています。

高齢者はもともと筋肉量が少なく、循環不全も起こりやすい環境が整っています。実際、60歳以上の方の33%は少なくとも2か月に1回、足のつりを経験しているという報告もあります。

しかし、健康な若い方でもこむら返りを起こす可能性は十分あります。例えば筋肉を使いすぎて筋疲労を起こすと、筋肉内の体液のバランスが乱れやすく運動神経も興奮しやすくなることから、こむら返りが発症しやすくなりますね。また、普段使わない筋肉をつかった時や、寒い時期になるとこむら返りを発症される方もいます。

それぞれの原因にあわせた対策・治療が必要です。

(参照:Cleveland Clinic. Leg Cramps)
(参照:National Library of Medicind. Muscle Cramps

こむら返り(足のつり)の治し方は?

2015年にBMJ ClinEvidで掲載されたシステマティックレビューでは、主な下記の治療法について言及されていますが、いずれも有効性を示す証拠(エビデンス)は低いものになります。

  • 筋肉を和らげる薬(筋弛緩薬):筋弛緩薬は、骨格筋の緊張をやわらげ血管を拡張して筋肉の血流を増やすことで、肩こりや頭痛・手足のつっぱりやこわばりなどの症状を改善する薬です。副反応としては眠気や脱力感があげられます。代表的な薬としてはミオナールやテルネリンなど。
  • マグネシウム: マグネシウムは、300種類以上の酵素を活性化する働きがあり、筋肉の収縮や神経情報の伝達、体温・血圧の調整にも役立つミネラルです。こむら返りに対するマグネシウムの評価特に妊婦の方に対して検討されていますが、有効性が高いと実証されてはいません(詳細はこちら
  • キニーネアンデス山脈に自生する植物「キナノキ」に含まれるアルカノイドの1種です。抗マラリア薬としても知られています。イギリス「NHS」でに紹介されていますが、「運動しても効果がないときに医師と相談の上」としています。
  • ストレッチ体操マッサージ(後述します)
  • ビタミンE:ビタミンEは強い抗酸化作用を持つ脂溶性のビタミンです。体内の脂質の酸化を防ぎます。 また、血圧の低下やLDLコレステロールの減少のほか、動脈硬化や血栓の予防・循環をよくする効果があるので、こむら返りとしての治療薬として模索されています。
  • カルシウム拮抗薬
  • カルシウム塩
  • マルチビタミン

しかし、いずれの薬もこむら返りとして有効であるというエビデンスが乏しい状態であり、日本では漢方薬を使われることがしばしばです。漢方薬にせよ西洋薬にせよ自分にあった薬をみつけることが大切ですね。

(参照:Leg cramps. BMJ Clin Evid. 2015; 2015: 1113.)

こむら返りに効果的な漢方薬は?

では、どのような漢方薬が「こむら返り」の治療薬として使われるのでしょうか。

① 芍薬甘草湯

「芍薬甘草湯®」はこむら返りの治療薬として最も使われる漢方薬です。

筋肉の神経はCa(カルシウム)イオンをはじめとした電解質によって調節され、Caイオンが過剰に細胞内に流入すると「筋けいれん」として発症します。「芍薬」に含まれるペオニフロリンという成分がCaイオンの細胞内流入を抑制することで、神経の興奮を抑えます。さらに、「甘草」に含まれるグリチルリチン酸は最終的にK(カリウム)イオンの流出を促進し、筋肉の炎症も抑えます。この2つの生薬の作用から、神経筋シナプスのアセチルコリン受容体に作用し筋肉のけいれんを抑えます

「芍薬甘草湯がこむら返りに効果を発揮するまでの時間は平均で6分であった」という報告もあり、個人差もありますが30分以内には十分効果を発揮します。さらに持続時間は4~6時間ほど続きます。

ただし、入っている「甘草」の量が他の漢方薬よりも多いため、長期連用を避ける必要があります。長期に内服されていると「偽アルドステロン症」といって、長期内服に伴う「手足のこわばり、高血圧、むくみ、頭痛」が生じることがあるのです。また、偽アルドステロン症の症状にも「こむら返り」があるので、連用しすぎるとこむら返りがかえって起こりやすくなる可能性もあります。

そのため、足を使いすぎたときなどのポイントに合わせた内服を行ったほうがよいですね

(参照:木村正康, 芍薬甘草湯による骨格筋の弛緩作用, 漢方医学, 2011 ; 35 (2) : 154-155.)

② 芍薬甘草湯以外

では、こむら返りの漢方薬は芍薬甘草湯以外にはないのでしょうか。芍薬甘草湯以外にも、様々な漢方薬が模索されています。

  • 四物湯(しもつとう):体力が低下して腹力がなく冷え症で、皮膚がカサカサと乾燥して色つやが悪い人に向く薬。ただし、主に高齢の女性を中心に用いるとこむら返りが改善されたという報告があります(参照:日東医誌 Kampo Med Vo.66No.3 244-249,2015)
  • 柴苓湯(さいれいとう):柴苓湯はもともと夏バテや下痢などに用いられる薬で、体の免疫反応を調整し炎症をやわらげる働きをします。また、水分循環を改善し、無駄な水分を取り除くという作用があります。体力が中くらいで、口が渇き尿量が少ない方が対象です。こむら返りでは、肝硬変の方を中心に使用された報告があります。(日東医誌 1993:43: 539-544)
  • 疎経活血湯(そけいかっけつとう):疎経活血湯は、冷えている部分を温めたり、部分によって過剰な水分とり除いたりすることで、「関節痛」における痛み・しびれを改善する漢方薬です。体力中等度で、痛みがあり、ときにしびれがあるものに使われます。4例の報告ですが、こむら返りでも芍薬甘草湯が無効であった方で有効であった報告があります(日東医誌 2011:62: 660-663)

他にもさまざまな漢方薬が模索されております。当院でも本人の「証」に合わせた形で処方しながら、また西洋薬も組み合わせて処方しております。

こむら返り(足のつり)の予防法は?

足のつりの予防として考えられているミネラル

まだ治療法や予防法は模索中ですが、下記は発症機序や論文から有効性が期待できると考えられています。

① 脱水の改善

寝る時にこむら返りが起こりやすい原因として脱水が考えられています。水分バランスはこむら返りに大きく影響すると考えられているので、普段から水分をよく飲むことが大切です。特に運動後は十分気を付けたほうがよいでしょう。

② ミネラル分の補給

こむら返りで検討されている治療薬からもわかる通り、マグネシウムやカルシウム・カリウムといったミネラルの補給はこむら返りの予防に有効かもしれません。それぞれのミネラルの多い食べ物を上げましたので、参考にしてください

  • マグネシウムの多い食べ物: あおさ・わかめ・しらす干し・豆腐・切干大根・五穀米
  • カルシウムの多い食べ物: 小松菜・チンゲンサイ・牛乳・ヨーグルト・チーズ・豆腐
  • カリウムの多い食べ物:切干大根・ドライトマト・小松菜・バナナ・干しマンゴー・干し柿

カルシウムの多い食べ物については骨粗しょう症(骨粗鬆症)とカルシウムの多い食べ物についても参考にしていただくとよいでしょう。

③ ストレッチをし、十分に体を休める

こむら返りの治療法で、さまざまなストレッチが考案されていますが、以下のようなストレッチが有効とされています。いずれもハムストリングやふくらはぎといった、脚の後ろ側の筋肉を伸ばす運動です。

Stretching before sleep reduces the frequency and severity of nocturnal leg cramps in older adults: a randomised trialより転載)

例えば、ふくらはぎを定期的に伸ばす運動に関しては、以下の通りです。

  1. 壁に向かって立ち、手が壁に触れるまで腕を伸ばします。
  2. まっすぐにたち、足が床に平らになっていることを確認します。
  3. ふくらはぎの筋肉が伸びるのを感じるまで、手を壁に押し付けながら前傾します。2〜3秒間保持します。
  4. 再びまっすぐ立ちます。
  5. 1日3回くらいを目安に行い、けいれんの数が減ったら、1日に1~2回に減らしていく。

予防や足がつった時の対処法として活用してみるとよいですね。

④ 寝る前の姿勢や寝具に気をつける

イギリスの保険局「NHS」では、夜間の寝る姿勢についても言及しています。例えば、

  • 仰向けで寝る場合には、立っている時と同様に、つま先が上に向いているのを確認する
  • 横向き寝の時は背骨と床がまっすぐになり、首や肩にかかる負担を抑える

などです。また、ブランケットや毛布はゆったりとかけるようにするとよいですね。

他にも日常の動作やストレス・睡眠状態・生活リズムが「こむら返り(足のつり)」に大きく関わってきます。それぞれの生活スタイルを聞かせていただきながら、アドバイスを行っておりますので、ぜひ相談ください。

(参照:National Health Service. Leg cramps)

あわせてこちらもオススメです

【この記事を書いた人】 
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。

関連記事

  1. 新型コロナウイルス感染症 抗体検査キットについて解説【費用・…

  2. 亜鉛のとりすぎによる症状や副作用は?亜鉛過剰症について解説【…

  3. コロナで使われる薬について【一覧・種類・自己負担】

  4. 亜鉛不足による「爪の5つの症状」について【白い斑点・横線など…

  5. 大人のリンゴ病(伝染性紅斑)の特徴について解説【妊娠中の方も…

  6. 新型コロナの感染者はどう過ごす?家族への対応や隔離期間(待機…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

CAPTCHA


ピックアップ記事

新着記事 おすすめ記事
PAGE TOP