肌の老化を防ぐには?活性酸素や抗酸化作用のある栄養素について

日本では2007年に高齢者の割合が21%を超えて超高齢社会となり、2022年には29.1%に達しました。

しかし、みなさん健康的でいつまでも若々しくいたいもの。実際、ますます健康や美容・アンチエイジングに対する関心が高まってきています。

人間の老化は20代から始まるとされていますが、老化とはいったいどういう現象なのでしょうか?また老化に対してどのような対策をとればよいのでしょうか?まずは「肌の老化」をターゲットに、紫外線や活性酸素との関係、また抗酸化作用のある成分について見ていきましょう。

肌の老化への基礎知識「皮膚の構造」について

肌の老化について知るには、皮膚そのものについて知らないといけません。なぜなら、老化の原因によって肌のどの状態がダメージを受けるかが変わってくるからです。簡単に説明しますので、少しお付き合いください。

皮膚は人体の中で最大の臓器であり、外界からの刺激に対して常に対応する必要があります。そのため皮膚には、物理的な保護や知覚、体温調節、免疫、排泄など様々な機能が備わっています。

皮膚の構造を簡単にいうと、外側から表皮、真皮、皮下脂肪の3層構造に分けられます。

表皮は「外からへのバリア機能」。ラップのような薄い膜ですが、外からの刺激を防ぎ、中へのダメージを防ぎます。表皮を整えることで「荒れにくい肌」を作ることができますね。


真皮は「肌を下支えする力持ち」。肌の弾力性を作ります。コラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸、プロテオグリカンなど皮膚の構造を維持するための物質が存在しており、「繊維芽細胞」という肌の大本を作る細胞によってつくられます。

コラーゲンをはじめとする各物質の特徴は以下の通りです。

コラーゲン
(膠原繊維)

タンパク質の一種。細胞同士を結合させる働きで肌や骨、筋肉などを作ります。Ⅰ型~Ⅴ型までの5種類があります。

エラスチン
(弾性繊維)

コラーゲン同士を結び付ける働きを持つ繊維状のタンパク質で、皮膚の真皮や血管、靭帯などに存在します。コラーゲンが体内で作り出せるのに対し、エラスチンは出生前から赤ちゃんの時期までに生成され、あとは年齢とともに壊れていくのみで基本的には再生しないと言われています。

ヒアルロン酸


水分を蓄える働きを持った糖質の一種。肌や関節部分の細胞間でクッションのような役割を果たします。

プロテオグリカン


真皮中に含まれる糖たんぱく質の一つ。コアタンパク質にコンドロイチン硫酸、ケラタン硫酸等のグリコサミノグリカンと呼ばれる糖鎖が共有結合した糖たんぱく質で、保水力と弾力性が特徴です。

皮下脂肪は「皮下脂肪にはエネルギーを蓄える働きや、クッションのように体を保護する働き」があります。体の輪郭や肌の栄養状態も皮下脂肪により変わりますね。また皮下脂肪は場所によっても厚さが異なっています。

肌の老化の8割は「紫外線」と「活性酸素」

肌の老化は、肌の保湿力が失われることによる「乾燥」、メラニン色素が沈着することによる「シミ」、真皮の構造が乱れることによる「シワ」の3つからくることが多いです。

さらに、肌の老化の原因の約8割は紫外線とも言われています。紫外線(ultraviolet, UV)には波長の長いものからUVA、UVB、UVCの3つがありますが、UVCはオゾン層によって吸収されるため、地上まで届くのはUVAとUVBの2種類です。

UVAはオゾン層を通り抜けやすく、UVBの20倍の量が地球に降り注いでいると言われています。雲や窓ガラスを通り抜けやすいため、曇りの日や家の中であっても対策が必要です。また皮膚の深い層にまで到達し、長い時間をかけて皮膚老化に関与することが知られています。そのため、UVAは真皮の乱れからくる「シワ」に大きく関わることが言われていますね。

UVBはUVAよりも波長が短い分、肌を障害するエネルギーが強いのが特徴。特に表皮のUVBによるダメージは大きく、シミを作る最も大きい原因として知られています。

またUVBでの障害は、表皮だけではとどまりません。「サイトカイン」という信号を通して真皮にも影響を与えて、肌の大本をつくる「繊維芽細胞」を刺激し、コラーゲンや弾性繊維を切断する酵素の働きを高めてコラーゲンや弾性繊維を切断します。そのため、UVBは「シミ」「シワ」すべてに大きく関わります。

このように、紫外線は肌の老化に大きく関わるので、「肌の老化を防ぐにはまず紫外線対策から」といえますね。

また紫外線を浴びることで皮膚の中では活性酸素が生じます。活性酸素は遺伝子、細胞膜の脂質や細胞内外の蛋白質、糖を酸化して機能を奪うことで、乾燥やシミ、シワなどの皮膚の老化の原因となります。

活性酸素を除去する働きは年齢とともに低下するため、活性酸素から身を守ることは老化を防ぐうえで非常に大切です。活性酸素は肌の老化に関わるので、もう少し詳しく説明しましょう。

(参照:Ultraviolet Radiation, Aging and the Skin: Prevention of Damage by Topical cAMP Manipulation. Molecules. 2014 May; 19(5): 6202–6219.

肌の老化に関わる活性酸素とは?

活性酸素とは通常の酸素が変質したもので、酸素よりも強い酸化作用を持つ物質のこと。

活性酸素は、実は肌だけの話ではありません。体を酸化させることで色んな臓器や生体成分に影響を与えます。例えば次の通りです。

  • 活性酸素が肌を攻撃:過酸化脂質が蛋白質とともに酸化されて出来るリポフスチンは「老化色素」とも呼ばれ、シミの原因となります
  • 活性酸素が脂質を攻撃:脂質を攻撃すると過酸化脂質が生じ、動脈硬化や心筋梗塞などの原因になります。
  • 活性酸素がたんぱく質を攻撃:性酸素は蛋白質を攻撃することで酵素に影響を与え、DNAを攻撃することでDNAの変異が生じるとされています。活性酸素と関連が示唆されている疾病としては、生活習慣病やがん、パーキンソン病、アルツハイマー病、糖尿病、自己免疫性疾患など多岐に渡ります。

では、活性酸素はどうしてできるのでしょうか?

まず、活性酸素はミトコンドリアでのエネルギー代謝(細胞内での呼吸)の際にある一定の割合で生じることが知られています。つまり誰でも作られていますが、体の生体反応により除去されます。

そこに喫煙、大量の飲酒、過食、ストレス、激しい運動、紫外線、排気ガス、加工食品などによって体内で活性酸素が体に過剰につくられるようになり、生体内で処理できずに体に様々な影響を与えるのです。

実際は「活性酸素」といっても様々な物質があります。代表的な活性酸素の種類としては「スーパーオキシド」「過酸化水素」「ヒドロキシラジカル」「一重項酸素」の4つです。それぞれ役目は異なりますが、難しくなるのでまたの機会にお話しします。

(参照:Oxygen Toxicity and Reactive Oxygen Species: The Devil Is in the Details. Pediatric Research volume 66, pages121–127 (2009))

活性酸素を除去する「抗酸化作用」をもつ物質は?

肌の老化に関わる「紫外線」と「活性酸素」についてお話していきました。紫外線での老化防止策は別記事で紹介するとして、ここでは、活性酸素を除去する「抗酸化作用をもつ成分」を紹介していきます。

そもそも抗酸化作用とは、活性酸素の発生やその働きを抑制したり、活性酸素そのものを取り除いたりする働きのこと。活性酸素を発生しやすい食べ物や生活習慣があるように、抗酸化作用をもつ物質や成分が多く存在しています。

生体はこれらの抗酸化物質を体内で合成したり、食物から取り込んだりすることによって活性酸素による酸化傷害から身を守っているのです。例えば次のようなものがあります。

① ポリフェノール

ポリフェノールとは多くの植物に存在する色素や苦み、渋味の成分となる化合物の総称で、5,000種類以上もあると言われています。ポリフェノールは色素成分であるフラボノイド系と、色素以外の成分であるフェノール酸系に分かれます。どちらにしても抗酸化作用があり、また殺菌作用、アレルギー抑制、血行促進、肝機能強化など様々な働きがあります。水に溶けやすく吸収されやすいですが、持続時間は2-3時間と短めです。こまめに摂取するように心がけましょう。

  • アントシアニン:ブルーベリーやブドウなどに含まれる赤~青色の色素成分。目に良いとされる。
  • イソフラボン:大豆に含まれる無色~淡黄色の色素成分。エストロゲンに似た働きをもつと言われ、更年期障害や骨粗鬆症の予防にいいとされる。
  • カテキン:緑茶、紅茶、烏龍茶など。血圧上昇抑制、殺菌、抗アレルギー作用など。
  • タンニン:赤ワイン、発酵茶など。
  • カカオポリフェノール:チョコレートやココアの原料であるカカオ豆に含まれる。血圧低下、動脈硬化予防など。
  • クルクミン:ターメリック(うこん)やマスタードに含まれる黄色い色素成分。肝機能を強化する。
  • ルチン:柑橘類やソバに含まれる淡黄色の成分。毛細血管強化作用。
  • フェルラ酸:米ぬかに含まれる。メラニンを抑制することでシミを予防する。

この中でも「プラス一品」と考えるとブルーベリーや大豆、お茶やチョコレートなどですね!ただし、チョコレートはいくつか注意点があるので、チョコレートの健康効果は?チョコレートと血圧やダイエット・ストレスとの関係についてもぜひ参考にしてみてください。

② カロテノイド

カロテノイドとは動植物に広く存在する黄色または赤色の色素で、600種類以上存在するといわれます。大きくアルコールに溶けるカロテン類とアルコールに溶けないキサントフィル類に分けられ、強い抗酸化作用を持っています。カロテノイドは脂溶性なので、摂取する際には良質な油を加えると吸収率が高まります。代表的なカロテノイドは次の通りです。

  • β-カロテン:緑黄色野菜(ニンジン、カボチャ、ほうれん草など)に多く含まれる。動物や人の体内でビタミンAに変わるため、プロビタミンA(ビタミンA前駆物質)と呼ばれる。
  • リコピン:トマト、スイカなど。
  • ルテイン:マリーゴールド、卵黄など。
  • β-クリプトキサンチン:みかんやオレンジ、柿など。
  • カプサンチン:とうがらし、パプリカなど。
  • アスタキサンチン:鮭やいくらに含まれている赤い色素。
  • フコキサンチン:ワカメ、ヒジキ、モズクなどに含まれる赤褐色の色素。脂肪の燃焼を促進します。

③ ビタミンACE

ビタミンの中で抗酸化作用を有することで有名なのは、水溶性ビタミンであるビタミンCと、脂溶性ビタミンであるビタミンA、ビタミンEの3つです。これらはまとめてビタミンACE(エース)とも呼ばれます。ビタミンCはビタミンEが活性酸素をスムーズに取り除くことが出来るように助ける働きもあり、これらをまとめて摂取することで相乗効果が期待できます。ビタミンACEを多く含む食べ物を挙げます。

  • ビタミンA:ほうれん草、モロヘイヤ、カボチャ、ニンジンなど。
  • ビタミンC:野菜や柑橘類など。
  • ビタミンE:アボカド、ナッツ類、うなぎ、オリーブオイルなど。

カロテノイドも含めて、やはりオススメなのは緑黄色野菜ですね!ただしビタミンEはなかなか野菜だけではとりづらい栄養素なので、くるみなどのナッツ類や不飽和脂肪酸のオリーブオイルなどをうまく活用して食事に取り入れるようにしましょう。

④ コエンザイムQ10

コエンザイムQ10はビタミン様化合物で、かつてはビタミンQとも呼ばれていました。ビタミンEに匹敵する抗酸化作用を有し、またその他にも免疫機能の強化、心臓病の予防などの働きもあります。コエンザイムQ10は、うっ血性心不全症状に対する治療薬「ユビデカレノン」としても使用されてきた成分です。体内でも合成されますが、20代をピークに加齢とともに合成量は低下していきます。コエンザイムQ10は脂溶性で、水にはほとんど溶けません。


コエンザイムQ10を多く含む食品としては青魚、肉類、大豆、くるみなどがあります。しかし体内で十分な効果を得るためには非現実的な量の摂取が必要となるため、サプリメントでの摂取が有効かもしれません。

⑤ グルタチオン、アセチルシステイン

グルタチオンは、グルタミン酸、システイン、グリシンという3つのアミノ酸が連なったペプチドです。働きとしては抗酸化作用の他、肝臓での解毒を助ける働きや、免疫にも関わっています。最近ではアンチエイジングや美白効果が注目され、白玉点滴の成分としても使われていますね。
グルタチオンは体内でも合成されますが、20歳台をピークに徐々に減少していきます。食品では豚レバー、牡蠣、アボカド、トマト、小麦粉、お米等に広く存在しています。

アセチルシステインはN-アセチルシステインやN-アセチル-L-システイン(NAC)とも呼ばれ、グルタチオンの前駆体です。去痰薬として慢性閉塞性肺疾患など多量粘液分泌の治療や、アセトアミノフェンの過剰摂取の解毒に使用されます。

(参照:厚生労働省 eJIM「抗酸化物質」)
(参照:Antioxidants – Randomized Controlled Trials(抗酸化物質 – ランダム化比較試験)(英語サイト) (PubMed®))

肌の老化と活性化酸素・抗酸化物質に関するまとめ

いかがでしたか?ここでは肌の老化と活性酸素・抗酸化物質に関してまとめてみました。まとめると

  • 肌の老化は主に、保湿力が減少することによる「乾燥」、表皮のメラニン色素が沈着する「シミ」、真皮の弾力性が失われる「シワ」の3つから現れる
  • それぞれ紫外線と活性酸素が関与しており、両者をケアをすることが肌の老化防止につながる。
  • 活性酸素は、自然とある程度作られるが、加工食品や睡眠不足、不規則な生活などをきっかけに許容量を超えて肌の老化につながる
  • 抗酸化物質をとることで、ある程度抑える可能性が期待できる。代表的な物質は、ポリフェノール・カロテノイド・ビタミンACE・グルタチオン・コエンザイムQ10およびアセチルシステインである

といえます。サプリメントでとるかどうかについては、厚生労働省でも「信頼できるところからサプリメントを入手し、医療スタッフに相談しましょう」と記載されています。中には他の薬との飲み合わせが悪いサプリメントもあるので、サプリメントで補う場合にはかかりつけ医に相談するようにしましょう。

【この記事を書いた人】
この記事は、当院院長の伊藤大介と土浦協同病院消化器内科の渡辺研太朗先生と共同で作成しました。当院院長のプロフィールはこちらを参照してください。

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