納豆の効果とオススメの時間帯について【朝?夜?】

日本人の健康食として有名なのが「納豆」。独特の粘り気が非常に特徴的ですよね。日本人の中でも好みがわかれるところでしょう。

よく「納豆は健康にいい」と言われますが、納豆は具体的にどんな健康に対して効果があるのでしょうか?

今回は、さまざな論文から検証されている納豆の効果について紹介するとともに、朝にとるべきか夜にとるべきかなど、納豆をとるべき時間帯についても解説していきます。

納豆の効果は?

納豆は納豆菌によって発酵させた日本の伝統的な大豆製品です。大豆自体も非常に栄養価が高い食べ物ですが、発酵させることで「発酵させることによる菌での作用」と「大豆自体の栄養素をより引き出す効果」が生まれます。

① 納豆は栄養面で非常に優れている

納豆でまず注目されるべきはその豊富な栄養成分です。良質なタンパク質や脂質やミネラルとともにビタミンE、ビタミンKといった血管や骨の形成に欠かせない栄養が凝縮されています。具体的な成分は次の通りです。(納豆1パック(40グラム)あたり)

  • エネルギー:74 kcal
  • タンパク質:6.6グラム
  • 脂質:4.0グラム
  • 糖質:1.0グラム
  • 食物繊維:3.8グラム(※1日摂取量の目安が女性18グラム、男性21グラム以上)
  • ビタミンE:4.0ミリグラム(※1日摂取量の目安が6.0~7.0ミリグラム)
  • ビタミンK:350マイクログラム(※1日摂取量の目安が150マイクログラム)
  • ビタミンB2:0.12ミリグラム(※1日摂取量の目安が1.5~1.6ミリグラム)

このように、糖質はほとんどないのに、タンパク質、良質な脂質が中心になっているのは非常によい点ですね。また、食物繊維は納豆1パックで1日の6分の1程度まかなえますし、強い抗酸化作用をもちアンチエイジングの成分として期待されているビタミンEは2パック食べれば1日分を補えてしまいます。

また、なかなか取りづらい骨や血管の健康をたもつ「ビタミンK」はなんと納豆1パックで1日摂取量の2倍の量を補給できてしまいます。あまりに量が多く効果が強いので、一部の血液サラサラの薬(ワーファリン)を飲んでいる方は「納豆を食べてはいけません」と言われてしまうほどです。

納豆のように、ローカロリーでありながらタンパク質や脂質、食物繊維、ビタミンが補給できる食品は単体ではなかなかありません。栄養成分からして、納豆は非常に優れた食品といえます。

(参照:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年

② 納豆の腸に対する効果

また納豆には腸内細菌にエサになるポリグルタミン酸をはじめ、さまざまな種類の納豆菌も含まれており、「腸活」としても注目されています。実際、腸への効果を期待して普段の食事に取り入れている方もいらっしゃいますね。

実際、納豆菌によって腸内細菌叢がかわることが論文でも言われています。2022年に行われた佐賀県でのランダム化試験ですが、枯草菌をふくむ納豆加工食品の摂取により男性ではビフィズス菌とプラウティアが、女性でもビフィズス菌が相対的に上がることがわかっています。

ビフィズス菌は代表的な善玉菌の1つで、腸内での有害な菌の繁殖を抑えて腸の働きを良くする効果があるので、納豆も腸内細菌叢を良い方向に導く力があることがわかりますね。

納豆に限らず「プロバイオティクス」といって腸内の良い菌を増やし悪い菌を減らす試みは、便秘や抗生剤による下痢症状などを緩和する効果があることがわかっています。

なので、「腸活」のために普段から納豆をとることは少なくともプラスに働きやすいと考えられます。(ただし、納豆でおなかが張りやすい方は無理をしないでください。)

(参照:Fluctuations in Intestinal Microbiota Following Ingestion of Natto Powder Containing Bacillus subtilis var. natto SONOMONO Spores: Considerations Using a Large-Scale Intestinal Microflora Database
(参照:Nutritional Health Perspective of Natto: A Critical Review

③ 納豆の血管に対する効果

あと納豆で注目されるべき効果が血管に対する効果です。

1987年に納豆から初めて「ナットウキナーゼ」という成分が分離されたのですが、犬の血栓モデルにより、ナットウキナーゼには強い「血栓溶解効果」があることがわかりました。

数多くの食品で「血液サラサラにする」と紹介する商品はありますが、納豆は血管の内皮細胞を刺激して「t-PA」と呼ばれる成分を活性化させ、血液にできた塊をサラサラにしていきます。

したがって、普段から血栓が気になる方は摂取するとよいかもしれませんね。(ただし前述の通り、一部の薬とは相互作用があるので、血栓に関わる薬を飲んでいる方は納豆の摂取に注意が必要です)

また、納豆の粘性物質には血圧の上昇を抑えることができる「アンジオテンシン返還酵素(ACE)阻害剤」が含まれることがわかっています。これは降圧薬でも使われている成分ですね。

実際、北米の多施設共同研究によると、収縮期血圧130以上、拡張期血圧90以上の方79人に対して、1日2000FUのナットウキナーゼを摂取したところ、

  • 平均収縮期血圧:144±1.5 mmHg から 140±2.1 mmHg へ低下
  • 平均拡張期血圧:86mmHgが81±2.5mmHgに低下

と、ナットウキナーゼにより収縮期血圧、拡張期血圧ともに4~5mmHg低下することがわかっています。(一般的に納豆1パック(50グラム)あたりナットウキナーゼは1500FU含まれています)

このように、文字通り血液をサラサラにしながらも血圧もかなり強力に下げる力があることがわかりますね。

(参照:Consumption of nattokinase is associated with reduced blood pressure and von Willebrand factor, a cardiovascular risk marker: results from a randomized, double-blind, placebo-controlled, multicenter North American clinical trial

④ 骨に対しても納豆は効果あり

前述の通り、納豆は骨の形成に重要なビタミンK2を豊富に含まれている数少ない食品。ビタミンK2はカルシウムを骨に取り込み、骨形成タンパク質を活性化することで、骨を強くする作用があります。

実際、複数の論文を検証した論文によると、閉経後の女性に対して少なくとも6か月間ビタミンKのサプリメントを摂取したところ、対照群として骨折しにくくなり(0.42倍)、脊椎骨折も0.44倍と低くなったことがいわれています。

骨といえばカルシウムやビタミンDが有名ですが、納豆をはじめとした「ビタミンK」も意識してとってほしいところです。

ちなみに、ビタミンKには血液凝固に関わるビタミンK1と骨の形成に関わるビタミンK2があるのですが、納豆にはどちらも含まれています。

そのため、血液凝固に関わる「ワーファリン」をのんでいる人はビタミンKと拮抗してしまうので、注意してください。

(参照:Effect of Vitamin K on Bone Mineral Density and Fracture Risk in Adults: Systematic Review and Meta-Analysis

⑤ 納豆で全体の死亡率も下がる

納豆には豊富な栄養素や腸管、血管、骨に至るまで多くの影響があることがうかがえますが、このような様々な効果からか、日本の大規模研究により納豆の摂取量が多いほど全体的な死亡リスクが低くなることがわかっています。

これは45歳~74歳までの92,915 人の参加者 (男性 42,750 人、女性 50,165 人)を対象に行われた14.8年間にもわたる追跡調査ですが、以下のことがわかっています。

  • 大豆製品そのものでは死亡リスクの低下は認めなかった
  • 発酵性大豆食品の摂取が多い人は男女とも全体的な死亡リスクが低かった(最大のグループと最小のグループを比べると10%程度の差)
  • 各大豆加工食品のうち、女性では納豆・味噌の摂取量が多い人は死亡リスクが低かった
  • 特に納豆を1日に50g以上摂取している人は摂取していない人よりも循環器病の死亡リスクが10%低かった。

もちろん、納豆を毎日耐えているということは普段健康を意識している方でしょうから、他の交絡因子もありえるわけですが、素直に受け取ると納豆の摂取は寿命にもかかわる食材の1つなのですね。

(参照:Association of soy and fermented soy product intake with total and cause specific mortality: prospective cohort study

納豆をとるべき時間帯は朝か夜か

では、納豆の効果を最大源に発揮するためにはいつ取った方がよいのでしょうか。大きくわけて「夜食べる」という意見と「朝食べる」という意見が多いようです。それぞれの利点について解説しましょう。

① 納豆を夜食べるとよい点

「血液サラサラの効果を最大限に享受したい」という方なら、納豆は夜に食べる方がオススメです。というのも、前述のナットウキナーゼは、t-PAを介して血液をサラサラにする効果があるのですが、それは投与してから大体4時間後くらいから発揮されて徐々にゆっくり減少するからです。

一方、時間生理学によると、急性心筋梗塞をはじめとした「血管が詰まりやすい時間帯」は早朝から午前中が多いのですね。そのため、朝食に納豆を取るとナットウキナーゼによる血管への効果としてはちょっとタイミングがずれていることになります。

血圧についても、夜間高血圧の方などは、納豆を夜に食べるとよいかもしれませんね。

② 納豆を朝食べるとよい点

一方、「納豆を朝に食べるとよいのではないか」という意見もあります。というのも、腸管が活発になるのがやはり朝です。その時にタンパク質が豊富であり、腸内細菌を整える効果がある納豆をとるのは理にかなっているからです。

また、「朝食にはごはんと納豆」というと習慣化しやすいということもありますね。

私個人の意見としては、いずれの時間帯でもよいので「きちんと習慣づける」ということの方が大切だと思います。そして、どんな生活習慣でも習慣づけるために大切なことは「無理をしない」ということです。

例えば、納豆自体に抵抗感がある方の場合、夜に判断力が低下した状況でわざわざ苦手な納豆を「健康のため」にとるというのは無理があるかもしれません。

個人個人で取り入れやすい時間帯で納豆をとってもらえればよいと思います。

【この記事を書いた人】 
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。

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