こんにちは。一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介です。
2022年1月よりオミクロン株が新型コロナの中心になって以来、「子供でも新型コロナにかかってしまう」ことが問題になっています。
- 自分の子供がコロナにかかってしまい心配
- 子供のコロナの後遺症にはどんなものがあるか心配
- 子供の新型コロナワクチン接種をしたほうがよいか悩んでる
という方のために、子供の新型コロナ感染症の特徴について、オミクロン株を中心にお話していきます。
子供のマスク着用については【新型コロナ】感染対策でのマスクの効果とデメリットについて解説を参考にしてください。
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子供も新型コロナに感染しやすくなっている
今まで「新型コロナには、子供がかかりにくい」というのが通説でした。事実、新型コロナウイルスが発生していた当初は子供の感染は見られていませんが、月日を追うごとに子供の感染割合が増加していることがわかります。
さらに大阪での「全児童に対する陽性者の割合」では、小学生のすでに20.1%、つまり「5人に1人」がコロナ感染をきたしている、と報告しています。もはや新型コロナは子供が感染しても全く珍しい疾患ではありません。こうした背景として
- 新型コロナウイルスの変異により感染力が上昇していること
- 新型コロナワクチン接種を受けておらず感染に対する免疫がないこと
- 教育現場や児童関連施設が第6波のクラスターの中心にシフトしてきていること(詳細はこちら)
があげられます。特に学校教育施設や児童福祉施設でのクラスターは、障害者高齢施設(3235例)に次ぐ2番目(2567例)と3番目(2467例)を占めていますので、集団生活に伴うイベントが多いことも一因でしょう。
しかし、こうした学校を始めたとした教育・福祉施設は、教育や集団生活の大切さを知る大事な機会でもありますので、対応に苦慮されるところですしストップできない側面があると思います。(感染対策に気を配られている教育や児童施設の方々には、本当に頭の下がる思いです。感謝の念をこの場を借りてお伝えします。)
子供の新型コロナ感染症の症状は?
子供の新型コロナ感染症の症状の特徴として、「年齢によって症状の出方が一部異なる」ことがあげられます。日本小児科学会の資料によると
4歳以下の場合
- 発熱(81.3%)
- 鼻水(41.0%)
- 乾いた咳(35.6%)
- 湿った咳(25.6%)
が中心なのに対して、
5歳から12歳の場合
- 発熱(78.6%)
- のどの痛み(33.1%)
- 乾いた咳(30.6%)
- 頭痛(25.5%)
が症状の中心になっています。5歳から12歳のほうが、大人の症状に少し近い印象ですね。したがって、特に低年齢の場合「自分の症状と違うから新型コロナ感染症ではなさそう」と考えず、体調が悪かったら早めに医療機関の受診が必要ということになります。
しかし、子供は大人よりも高率に発熱をきたしやすいので、異変に気づきやすいのも特徴の1つ。むしろ子供から大人に感染をきたす例が増えています。発熱していたら放置せずに、早めに小児科で検査を受けることをオススメします。
子供の新型コロナの重症化は?
では、子供は重症化するのでしょうか。答えは「他の年齢層よりは、重症化しない」ものの「オミクロン株で重症化しなくなったとはいえない」と言えます。
海外での子供を対象とした臨床研究では、オミクロン株感染により入院された方は0.96%でした。
一方日本では、大阪での重症化率は約16万人中19歳以下の重症者数は12人(0.01%)であり、多くの子供が重症化肺炎にならずにすんでいます。ただし、デルタ株と比較すると、もともと新型コロナで19歳以下では重症化しにくく、「オミクロン株だから重症化しにくくなったわけではない」といえます。
小児学会の資料でも同様の傾向がみられており、デルタ株と比較して入院率は低い(28.6% vs. 53.4%)であるものの、ICU入院率(0.4% vs. 0.6%)や酸素使用率はデルタ株と同等でした。
しかし、ほとんどの方が軽症で過ごされるのは事実なので、後遺症のことを除けば「子供が新型コロナにかかっても慌てることはない」といえますね。
ただし、子供に対する治療薬の有効性を示した臨床研究がないので、2022年4月時点では新型コロナウイルスの増殖を抑える薬は使えないことに注意が必要です。したがって、治療には対症療法薬が中心となります。
こうしたことから厚生労働省では「子どもが元来健康で、現時点で全身状態として元気であるならば必ずしも一律に検査を受けなくて良い」と明記されています。(6月1日の厚生労働省の見解による)
子供の新型コロナの後遺症は?
では、ほどんどが軽症である子供には、新型コロナ後遺症はあるのでしょうか。
答えは「ある」です。実際、様々な論文を集めて検証した論文では、18歳までの25.2%の方が新型コロナウイルス感染の後遺症を来たしているといわれています。
主な症状としては、
- 気分の変容:怒りや悲しみなどの感情が変化する
- 疲労感・睡眠障害
- 頭痛
- 食欲不振
- 認知機能の低下:集中力の低下など
- 呼吸器症状
- 多汗症
などがあげられます。こうしてみると、成人とは後遺症の症状の出方がかなり変わっていますね。これらはやはりデルタ株などが主流の時期の論文ですし、今の日本の現状と異なる可能性がありますので、割合をそのまま鵜呑みすることはできません。しかし、「ある程度の確率で後遺症は残る可能性がある」とはいえるでしょう。
またオミクロン株になって、後遺症の質は変わるのでしょうか。今後の動向にも注目していきたいところですね。「コロナでもしかしたら、自分の子供の体調が変わったかも」と感じる方は、ご相談ください。
また、大人も含めた後遺症の詳細については新型コロナ感染症の後遺症について【割合・咳・脱毛・倦怠感】も参照していただくとよいでしょう。
子供の新型コロナワクチンの有効性は?
上記のことから「子供の重症化は非常にまれ」という一方「新型コロナによる後遺症の問題」の部分もあり、今後の対応に苦慮されるところです。
こうした背景から、子供(5歳から11歳)を対象としたワクチンが開発されました。2022年4月時点では、ファイザー製ワクチンのみであり、大人とは違う内容物・投与量で投与されます。
オミクロン株に対しても有効性はアメリカCDCでも報告されており、下記の通りとなっています。
- 5歳~11歳:発症予防効果51%・重症化予防効果74%(2回接種後14~67日間)
- 12歳~15歳:発症予防効果45%・重症化予防効果92%(2回接種後14~149日間)
このことから、12歳以上と比較しても、5~11歳までのワクチン接種の効果はそれなりに保てているといえるでしょう。ただし「努力義務」はないので、必ず打たなければならないというわけではありません。
厚生労働省でも「子供へのワクチンは、基礎疾患のある子どもへの重症化予防効果は強く期待できる一方で、これ単独で流行が阻止出来るだけの感染予防効果はないため、有害事象への心配を拭いきれない当事者に努力義務を課して接種させるだけの説得力はない」と記載されています。(6月1日の厚生労働省の見解による)
こうしたことから、他の副反応やそのほかの報告に関して、子供の新型コロナワクチンについて【効果・副反応】を参照していただきながら、各ご家庭で納得されて接種を決めていただけたら幸いです。
子供の新型コロナウイルス感染症における厚生労働省の見解は?(6月1日時点)
では、こうした子供の新型コロナウイルス感染症の現状に対して、厚生労働省はどのように考えているのでしょうか。6月1日の感染症アドバイザリーボード資料では、以下のように報告されています。
① 小児の日常生活でのマスクについて
厚生労働省では、「呼吸器感染症予防としてのマスク着用の有用性は明らかであるが、(中略)そのメリットとマスク着用のデメリットはきちんとその場と、バランスをとって考えるべきである。」その際のデメリットとして
- 自分でマスクの着脱ができない場合や2歳未満の場合は、呼吸が苦しくなり顔色が悪くなっても周囲は気づきにくい
- マスクしたまま吐くと、誤嚥や窒息する可能性がある
- 炎天下の戸外活動や運動でマスクを着用していると、熱中症のリスクを著しく増大させる
- マスク着用で表情の読み取りが学習できなくなるる(Front Psychol 2021; 12: 669432)。
などをあげています。そこで、
- 2歳未満: 「マスクの着用は奨めない」
- 2歳以上: 「保育所等では、個々の発達の状況や体調等を踏まえる必要があることから、他者との身体的距離にかかわらず、マスク着用を一律には求めない。なお、施設内に感染者が生じている場合などにおいて、施設管理者等の判断により、可能な範囲で、マスクの着用を求めることは考えられる」
と記載されています。マスクについての具体的な効果や大人も含めた考え方などについては、【新型コロナ】感染対策でのマスクの効果とデメリットについて解説を参照してください。
② 学校教育・休園・休校・学校行事をどう考えるか
厚生労働省では「運動会や卒業式のような学校行事、修学旅行、課外活動などは単なるセレモニーやレクレーションではなく、子どもたちの健やかな成長・発育にとって極めて重要な教育活動である。成長の過程で失われた時間や経験は後から取り返すことは出来ず、子どもたちの一生に関わる負の遺産となるので、感染対策を工夫した上で、できるだけ実施する方向で考えてもらいたい。」と明記しています。
まとめると、感染対策をしながら、学校行事は優先すべきということですね。さらに、心の問題がクローズアップされており、様々な不定愁訴で苦しんでいる子供たちも増えており、サポート体制必要と考えています。
ほか、軽症例やワクチンについても記載があり、該当項目で追記しています。
子供の新型コロナ感染症についてのまとめ
いかがでしたか?子供を中心にした新型コロナ感染症の特徴について解説しました。非常に簡単にまとめると
- 新型コロナの変異による感染力の増加やワクチン接種率の問題で感染者が増えている
- 新型コロナによる症状は大人と違って、年齢によってかなり異なる
- 重症化は、他の年齢と比較すると低いが「オミクロンだから低い」というわけではない
- 新型コロナによる後遺症は、子供であっても一定数残る可能性がある
- 小児用の新型コロナワクチンは、大人用と内容は異なるが、感染予防効果・重症化予防は期待できる(副反応のリスクはあり)
といえます。子供にとっては、健康も当然大切である一方、教育や成長もとても大切です。私も医師ですが、小さな子供(幼稚園~小学校)の3人の親でもありますので、みなさんが新型コロナにどう対応したらよいか悩まれる気持ちはよくわかります。
今回の記事がどのように新型コロナと向き合えばよいのか、その一助になりましたら幸いです。またご不安な点がありましたら、相談にも乗りますので是非気軽に気持ちをお伝えください。
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【この記事を書いた人】
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。
更新履歴
- 2022年5月26日:5月25日の感染症アドバイザリー資料より小児の陽性者数についてアップデート
- 2022年6月1日:6月1日の感染症アドバイザリーボード資料をもとにアップデート
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