こんにちは、一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介です。突然ですが、
- 突然足の親指の付け根が痛くなってきた
- 暴飲暴食をした翌朝、足の関節が痛くなった
- 前から尿酸が高いのを放置していたら、関節痛がでてきた
という方はいらっしゃいませんか?もしかしたらそれは「痛風発作」かもしれません。今回は、痛風の原因から治し方・食事について、幅広く説明していきます。
尿酸値については尿酸値を下げるには?尿酸値の原因や基準・食べ物についても参照してください。
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痛風とは?
痛風とは関節に尿酸の結晶がたまり、関節に激しい炎症がでる疾患のこと。「風が吹いただけで痛みがでるくらい痛い」とのことで「痛風」と名付けられました。
痛風の患者は、高尿酸血症の患者さんの増加とともに男性を中心に増加しており、2013年の調査から100万人を超えています。初発年齢は30歳代が最も多く、40歳代・50歳代と続きます。特に30歳以上の男性では有病率は1%とされています。「100人に1人」は痛風になることになり、決して珍しい病気ではないことがわかるでしょう。
痛風は、通常1つの関節だけに痛みが生じます。生じやすい場所としては
- 親指の付け根
- 足の甲
- 足首や手首
- アキレス腱の付近
- ひざやひじ
- 指の関節
に起こりますが、最も典型的なのが「足の親指の付け根」ですね。全体が腫れて赤くなり、足もつけない方もいます。普段から外からの刺激も受けやすく、血流も悪くなりやすい場所にできます。中には「痛風結節」といって、耳やひじなどに「こぶ」のようなものができる方もいます。
痛風の原因は?
痛風の原因となる尿酸の大本は「プリン体」です。プリン体は運動や臓器が働くのに必要なエネルギー源であり、常に体内で作られています。
プリン体は主に肝臓で代謝されて尿酸になります。しかし、さまざまな理由で尿酸が血液中に多い状態が続くと、関節にも尿酸がたまるようになります。すると、関節の中で尿酸が結晶化し、これを白血球が処理する際に炎症を起こすため「痛風」になります。
つまり「痛風になりやすい方=普段の血液中の尿酸値が高い方」といえます。高尿酸血症は尿酸値が7.0 mg/dl以上の方と定義されていますが、尿酸値が高ければ高いほど痛風も起こりやすくなります。こうした現状をうけて
- 尿酸値が7.0 mg/dl以上で痛風発作を起こしたことのある方
- 尿酸値が8.0 mg/dl以上で他に脂質異常や尿路結石などの合併症のある方
- 尿酸値が9.0 mg/dl以上の方(無症状を含む)
は、食事指導や必要に応じて尿酸値を下げるとための薬物治療が必要になってくることでしょう。
詳しくは尿酸値を下げるには?尿酸値の原因や基準・食べ物についてでも記載していますので、参考にしてください。
痛風の具体的な症状は?
では、どんな症状が「痛風」なのでしょうか。痛風の具体的な症状を見てみましょう。
① 突然の急な激しい関節痛に襲われる
痛風発作は突然発生し、前日まで何も症状がなくても急に痛みだすことが多いです。その痛みは「風にあがるだけでも痛い」の名の通り非常に強く、歩けなかったり、仕事も手につかないほどのこともあります。だいたい初発時にはビっこを引いて
あと、痛風発作にはジワッとするような、ジュクジュクするような、なんとも言い難い予兆を感じることがあります。そのため再発された方は、「これ、痛風の前触れかな」と予知できることも多いですね。
② 単一の関節炎が出てくることが多い
そのうち、激痛が走った場所の関節がはれて、熱をもってきます。通常痛風による関節炎は1か所であることが多く、「なりやすい場所」も決まっています。よく痛風発作は
- 足の親指の付け根(最も多い)
- 足首
- 足の甲
- ひざ
- 手首
- ひじ
に出てくることが多いですね。一般的によく外力がかかる場所・刺激が加わりやすい場所に出てくることが多いです。また、痛風結節といって、痛風による炎症をくりかえした結果「しこり」としてできもののようになることがあります。
こちらも「肘関節」「手足の指先の関節」「アキレス腱」や「耳」などの外力がかかりやすい場所にできやすいです。
③ 治療によっては意外と治りが悪く、再発しやすい
あまりに激痛なので、ほとんどの方は医療機関に受診します。しかし、中には医療機関に受診せず「痛み止めでなんとかしよう」と市販の痛み止めでやり過ごそうと考える方もいるでしょう。
自己判断は禁物です。そもそも痛風は「ちょっと痛み止めを飲めば治る」といったものではありません。そして自己判断は治療を難渋させやすく、鑑別すべき疾患もあります。
適切な治療を行えば、ピークは1日くらいであり、1週間~2週間くらいで痛みは治まってくるでしょう。
また痛風は生活習慣が重なってできたものなので、生活習慣を変えなかったり、尿酸を下げる治療薬を使わないと繰り返しやすいのも痛風の症状の特徴の1つです。
(参照:日本整形外科学会「痛風」)
痛風の治療は?
基本的に痛風の治療は「痛風発作に対する治療」と「高尿酸血症の改善による治療」の2つのステップを通じて行われます。
① 痛風発作に対する治療
まずは目の前の炎症を抑える治療をします。この際、痛風発作は非常に強く、長引かせないためにも「いかにはやく痛みをコントロールするか」が大切です。特に有効とされるのが、
- NSAIDs: インドメタシンやジクロフェナクなど。市販の鎮痛薬でも有名ですね。
- ステロイドの内服薬: 抗炎症ホルモンを直接内服することで、腫れを抑えます。
- コルヒチン: 白血球が関節内の尿酸に作用するのを抑え、痛風発作の症状を抑えます。
です。どれが最も優れているというものはありません。そのため、患者さんの状態や基礎疾患、重症度などに応じて使い分けたり、組み合わせて治療します。
この時期は、赤紫色に変色し腫れも強く、動くのもままならない方もしばしば。
- なるべく運動をしないこと(特に激しい運動はお控えください)
- 局所を冷やすこと(冷やしすぎて凍傷には注意が必要)
- しっかり痛み止めを使うこと(初発の方は、診断も含めてクリニックへの受診をお願いします)
が特に大切です。
なお、痛風の初回発作の時には、尿酸値を下げる薬は原則つかいません。発作がある時期に使うと、血液中にたまっている尿酸を外に追い出そうとする反応が加速し、関節内の尿酸の血症が関節にかえって沈着しやすくなります。そして、発作が長引いてしまうことが多いためです。(今まで継続的に薬を内服されていた方は、発作時も内服していただいてかまいません。)
(参照: 高尿酸血症・痛風の治療ガイドラインより )
② 高尿酸血症に対する治療
痛風発作の治療をしつつ、尿酸値を確認し、高尿酸血症に対する治療を行うことで今後の痛風発作を予防します。大きく以下の2種類に分かれます。
- 尿酸産生抑制薬(アロプリノール・フェブキソスタット・トピロキソスタット):尿酸を体に作る経路を抑えることで、血液中の尿酸値を下げます
- 尿酸排泄促進薬(ベンズブロマロン・プロベネシドなど): 尿から尿酸を排泄しやすくすることで血液中の尿酸値を下げます
繰り返しますが、これらの薬は痛風発作を抑える薬ではありません。毎日服用して体内の尿酸を減らし、痛風発作を予防する薬です。また、何回も痛風発作を繰り返してしまう方は、痛風発作を下げる薬である「コルヒチン」を長期間投与することで、痛風発作を抑える方法もあります。
尿酸値を改善する薬をしばらく内服することで痛風発作は予防されます。その間に生活習慣を治していただくことで、お薬をなくすことができます。
詳しくは 尿酸値を下げるには?尿酸値の原因や基準・食べ物についても参照してください。
痛風への適切な食事は?
① プリン体が多い食事を控える
プリン体は主に体内で産生されますが、20~30%は食事から摂取されます。特に
- レバー類(鶏レバー・牛レバー・カツオなど):100g当たり300mg以上
- 赤身の魚(太刀魚・カツオ・マイワシ・干物など):100g当たり200~300㎎
- 白子(イサキ・ふぐ・たら):100g当たり300mg以上
- 健康食品(DNA・RNA・ビール酵母・クロレラなど):100g当たり300mg以上
- 肉類(豚・牛・羊)・ブロッコリースプラウト:100g当たり100㎎~200㎎
- エビ類:大正えび・オキアミ
には気をつけてください。特に動物の内臓にはプリン体がとても多く含まれています。(参照:食品プリン体含有量)逆に
- DASH食: 果物・野菜・低脂肪の乳製品を中心にし、コレステロールを減らす食事
- 地中海食: オリーブオイルやフルーツ野菜類を中心として、赤肉などを少なくした食事
に代表される、野菜中心の食事内容が望ましいでしょう。キノコや海藻類もよいですね。
② お酒はできるだけ飲まない
ビールはプリン体も多く、みなさんも意識されていますよね。実際には、アルコール自体が尿酸値を上昇させるため、禁酒するのがベストです。実際、アルコールの摂取と痛風の発症との関連を検討した約43000人の研究では、アルコールの摂取量が多い方は痛風の発症頻度が1.98倍(1.52~2.58倍)になります。(詳細はこちら)
「お酒を飲まないとストレス発散できない」という方は他でストレス発散法を見つけたり、せめて休刊日を設ける・1回に飲むお酒の量を減らすようにしましょう。
③ 水分をたっぷりとる
前述の通り、プリン体は肝臓で代謝された後、尿酸として尿から排泄されます。ということは、水分をたっぷりとることで、尿酸を尿から排泄しやすくなるということです。そこで大切なのが、ジュースや加工飲料で水分を補わないこと。血糖値があがり、動脈硬化がすすむだけでなく、かえって血液中の尿酸値もあがりやすくなります。
水分を取るなら、お茶やお水など加工されていない・糖類を含まないものにしましょう。
④ コーヒーも痛風の抑制には効果的
コーヒーは痛風の発症抑制には効果的です。2016年に行われた約135302人の方を池沼とした臨床試験では、コーヒーの摂取量が多い方は、少ない方に比べて痛風の発症率が0.43倍(0.31~0.59倍)になったと報告されています。(詳細はこちら)
コーヒーの健康効果は痛風に限らず広く認められているところですが
- カフェインの過剰摂取によるカフェイン中毒症状や食道炎の増加
- 夕方の摂取により不眠症状を引き起こしやすくなる
という点には注意が必要です。コーヒーのおすすめの飲み方や、コーヒーと尿酸・痛風との関係については、痛風・尿酸値とコーヒーの「意外な」関係について【砂糖はOK?何杯まで?】に記載していますので、あわせて参考にしてみてくださいね。
⑤ 乳製品の摂取も痛風予防に効果的な可能性
牛乳をはじめとした乳製品は尿酸値の低下を促す効果も認められるので、痛風や尿酸値を気にされている方は積極的にとって行きたい食事の1つですね。しかし前述の通り、糖質は尿酸値を上げるので、乳製品を取り入れる際には糖質も気にするようにしながら、積極的に取り入れてみましょう。
乳製品の摂取と痛風の関係について調べた複数の論文をまとめた論文によると、乳製品を積極的に摂取した方は、そうでない方に比べて75%痛風を予防できたとする報告があります。(有意差なし)
詳しくは、尿酸値・痛風予防にオススメな牛乳・乳製品の効果について【いつ飲む?豆乳は?】を参考にしてみてください。
痛風発作についてのまとめ
痛風発作について幅広く解説していきました。まとめると
- 痛風は尿酸が関節にたまることによる急性の炎症であり、痛みが強く通常1つの関節に出るのが特徴
- 痛風は「風にあたるだけで痛い」という通り、かなりの激痛であり、しばしば前触れを感じることがある
- 痛風の治療は「痛風発作に対する治療」と「尿酸値に対する治療」の2本立て
- 痛風も尿酸値も薬の継続だけでなく、生活習慣の改善がとても大切
といえます。痛風発作を繰り返している方や、「これって痛風?」と感じている方、尿酸値が普段から高い方などは、ぜひ当院にも気軽にご相談くださいね。
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【この記事を書いた人】
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。
突発的な痛みに不安を感じておりましたが恐らく痛風やったんですね これからの指針に参考になります。
コメントいただきありがとうございます。例えば、典型的な足の親指のつけ根以外の場所の場合、なかなか診断するのが難しい疾患の1つでもあります。参考にしていただければ幸いです。
3,4日前から左足親指の付け根あたりで強い痛みを感じています。親指への小さな衝撃でも非常に痛いです。極力安静にし、アイシングしています。
普段の食生活が悪く、偏った栄養バランスになっていると思います。
アキレス腱断裂が3回、高血圧性左心不全での入院、20代ですがもう身体はボロボロです。
それは大変ですね。アキレス腱も3回断裂されたということは、かなり強い衝撃を与えやすいのでしょうか。
痛風も非常に辛い疾患ですから、早めに医療機関に受診してくださいね。
足底腱膜炎になっていました。PSAも8をこえていましたが前立腺がんは知っていましたが、整形外科で痛風と診断され己の無知にあきれました。
これからどうしたらいいものか、でも、86歳ですし慢性心房細動と脊柱管狭窄症の症状もとれず冥途への土産と心得ていますが。
佐藤様
心中お察しいたします。痛風かどうかはしばしば診断に難しいケースもありますし、整形外科なのか内科なのかも苦慮されることもありますよね。
確かに心房細動も脊柱管狭窄症も、高齢になると「つきあっていく病気」になるかと思います。
ただ、足底腱膜炎含めて、ある程度症状は緩和できると思いますので、整形外科の先生にもぜひ再度相談してみてください。
痛風とは長い付き合いで初発作から17年になります。初めの頃は1年ほど間隔が空いていましたが、最近は1ヶ月間隔・同時・連続が当たり前になってきました。そこで近所の個人病院に行ってみたのですが、発作箇所(まだ治っていない)に電気治療を施術しようとしてきました。マッサージすると悪化するって聞いた覚えがあったので、咄嗟に『今日は時間がないので!』と断りましたが、実際のところどうなのか判断がつかず困ってます。
発作中に血行が良くなったら悪化しますよね?アドバイスを頂けたら幸いです。
状況をきちんと見ていないので、正確にお答えしている自信はありませんが、
本当に痛風の急性期発作で腫れが強い状況で、強い刺激を与える治療を行うと
逆に痛風箇所が悪化する可能性が強いです。
もしかすると、痛風以外の慢性疼痛として考えていらっしゃったのかもしれません。
なるほど。その辺りも踏まえて、もう一度話してみることにします。
お忙しい中、丁寧に対応していただきありがとうございます!
突然右手の中指の付け根と、右足の親指の付け根が動かすと痛くて。検索してこちらを拝見して自分も痛風なのではと思いました。食生活はあまり食べていないのでひどくはないと思うんですが、水を全然飲んでなくて運動もしてなかったなと反省してます。
ある朝急に膝の内側の特定箇所が痛くなり、それから二日後には歩くのも困難になったので医者(内科)にかかり痛風だと診断されました。尿酸値は高くありませんし暴飲暴食もしません。ビールは飲みません。何ら治療もないままにそれまで飲んでいた市販薬(ノーエチ)を暫く続けて飲んで、今はもうやめていますが、辞め時がよくわからない。痛みが治まったという理由で辞めてよいものか?
今回の痛風は初めてではなく、10年程度前に右足首が腫れて痛風だと診断されたこともあります。処方薬はなく市販薬で痛みがおさまっていますがこのままで問題はないのでしょうか?何等かアドバイスを頂ければ幸いです。
コメントありがとうございます。
診察していないので、なんとも言いづらいですが、
尿酸値が低くても痛風がおこる方は(確率は低いが)いますし、偽痛風の方もいるでしょう。
いずれにせよ、関節穿刺して尿酸結晶があるか確かめたりする必要はあるかもしれません。
痛みについては、市販薬で収まっているレベルでしたら、それで問題ありません。
痛みが出たときに、整形外科でも確認してみてください。