【シングリックス】帯状疱疹ワクチンの種類や効果・費用・副反応について解説

こんにちは、一之江駅前ひまわり医院の伊藤大介です。

  • 帯状疱疹の後遺症で苦しんでいる方を見た
  • 自分は絶対に帯状疱疹にかかりたくない

という方はいませんか?帯状疱疹でお悩みの方は帯状疱疹ワクチンがオススメです。今回は、帯状疱疹ワクチンの種類や副反応・費用などについて解説していきます。

帯状疱疹については帯状疱疹はうつる?帯状疱疹の原因や前兆・治療についてを参照してください。

帯状疱疹ワクチンとは?

(帯状疱疹の症例)

帯状疱疹ワクチンとは、文字通り「帯状疱疹の発症予防・重症化予防をするために、帯状疱疹ウイルスの毒性をなくし投与するワクチン」のことです。

帯状疱疹は80歳のうち1/3の方が発症するとされる、帯状疱疹ウイルスによる皮膚疾患のこと。帯状疱疹は治療が難渋すると「帯状疱疹後神経痛」を発症する可能性があり、治療に半年~1年以上かかることもあります。また、帯状疱疹は日本で毎年60万人がかかる、決して珍しい疾患ではありません。

そこで、発症や重症化を予防するために開発されたのが「帯状疱疹ワクチン」です。帯状疱疹ワクチンを発症前に接種しておくことで、帯状疱疹にかかりにくくするほか、仮に帯状疱疹にかかったとしても重症化を予防できるほか、「帯状疱疹後神経痛」になりにくくする効果もあります。

現時点では帯状疱疹になりやすい50歳以上から接種することが可能ですが、シングリックスは免疫不全の方などにも適応拡大が検討されています。

(参照:Gnann et al. Clinical practice. Herpes zoster. N Eng J Med. 2002;347(5):340-6.)

帯状疱疹ワクチンは「シングリックス」と「弱毒生水痘ワクチン」の2種類

(さまざまな論文からまとめた帯状疱疹ワクチンの特徴(著者作成))

実際には、2016年に認可された「弱毒生水痘ワクチン」と2020年に認可された「シングリックス®」の2種類があります。

弱毒生水痘ワクチンとは弱毒化されたウイルスが含まれている生ワクチンで、小児に使用する水痘ワクチンと同じもの。一方、シングリックス®はウイルス表面タンパクの一部を抗原とした不活化ワクチンで、生ワクチンではありません。

それでは2種類の帯状疱疹ワクチン「シングリックス®」と「弱毒生水痘ワクチン」について見ていきましょう。

① シングリックス®の特徴は?

GSK製の帯状疱疹ワクチン「シングリックス®」の特徴を簡潔にまとめると以下の通りです。

  • シングリックス®の帯状疱疹発症予防効果は非常に高い:発症予防効果が50歳以上で97%、70歳以上で91%と言われています。
  • 帯状疱疹後神経痛の予防効果も非常に高い:70歳以上での神経痛予防効果は85.5%と言われています。
  • シングリックス®は帯状疱疹を長期に予防する:50歳以上の成人の試験では、少なくとも10年間は80%を超える有効性が確認されています。
  • シングリックス®は値段が高い:シングリックス®は1回20000円~25000円で接種されていることが多く、2か月あけて2回接種が必要。そのため、十分な免疫を作るのに4万円~5万円の費用がかかります。(当院では1回22000円です)
  • 副反応の発現率は高め:後述しますが、シングリックス®は弱毒生水痘ワクチンよりも注射部位の腫れや赤み、発熱や頭痛などの頻度が多くなっています。

現在シングリックス®は50歳の方しか投与できませんが、アメリカでは免疫が弱くなっている19歳以上の方も接種することができるため、GSK社では18歳以上の成人への摂取対象者拡大の承認申請がだされています。(まだ50歳以上しか接種できません)

(参照:2022年10月のGSK社による長期予防効果に関する発表
(参照:N Engl J Med. 372(22), 2087-2096, 2015, Clinical Infectious Diseases, Volume 74, Issue 8, 15 April 2022
(参照:What Everyone Should Know about the Shingles Vaccine (Shingrix)

② 弱毒生水痘ワクチンの特徴は?

ビケン製の帯状疱疹ワクチン「弱毒生水痘ワクチン」の特徴を簡潔にまとめると次の通りです。

  • 弱毒生水痘ワクチンの発症予防効果は中程度:帯状疱疹の発症予防効果は50~59歳で69.8%、60歳以上の方で51.3%と言われています。
  • 帯状疱疹後神経痛の予防効果も中程度:60歳以上での臨床試験で、帯状疱疹後神経痛予防効果は66.5%と報告されています。
  • 弱毒生水痘ワクチンは長期予防効果にとぼしい:2018年の論文によるとワクチン接種後に1年目では67.5%の予防効果になりますが、2年目には47.2%、その後徐々に低下し、8年目には発症予防効果は31.8%にまで低下しています。
  • 副反応はシングリックスよりは少ない
  • 弱毒生水痘ワクチンは値段が安い:弱毒生水痘ワクチンは1回接種で済み、当院では8,000円です。シングリックス®が40,000円であることを考えると非常にお手頃ですね。

以上のことから、簡単にいうと

  • 長期間の予防効果を重要視したいという場合はシングリックス
  • 費用や副作用の面を懸念されるなら弱毒生水痘ワクチン

ということになりますね。

(参照:弱毒水痘生ワクチンの効果N Engl J Med 2005; 352:2271-2284, Schmader KE, Levin MJ, et al : Clin Infect Dis 54:922-928,2012
(参照:シングリックス®の効果N Engl J Med. 372(22), 2087-2096, 2015, Clinical Infectious Diseases, Volume 74, Issue 8, 15 April 2022

帯状疱疹ワクチンの費用は?

特に帯状疱疹ワクチンの費用を気にする方が多いので、もう一度確認しておきましょう。

帯状疱疹ワクチンの費用は原価の関係上どのクリニックも大体同じで「弱毒水痘生ワクチンの方が1回接種で済み、多くの場合合計すると、シングリックスの1/5以下の費用ですみます。例えば当院での価格は以下の通りです。

帯状疱疹ワクチンの種類帯状疱疹ワクチンの費用(税込)
弱毒水痘生ワクチン8,000円(1回接種)
シングリックス®44,000円
(1回22,000円:2回接種が必要 )

また一部帯状疱疹ワクチンの助成が受けられる地区・自治体があります。例えば「名古屋市」「文京区」「刈谷市」「千葉県いすみ市」「埼玉県鴻巣市」「富山県上市町」などです。(順不同)企業でも帯状疱疹について助成されているところがありますね。(例:東京電力HP

特にシングリックス®の場合は高額になるので、お住まいの自治体や会社に確認してみるとよいでしょう。

帯状疱疹ワクチンの副反応は?

帯状疱疹ワクチンの副反応も弱毒水痘生ワクチンとシングリックスで異なりますが、一般的に「シングリックス®の方が副反応がでる可能性が高い」といえます。具体的には以下の通りです。

① 弱毒水痘生ワクチンの副反応

1-5%未満1%未満頻度不明
注射部位赤みや腫れ硬結等の注射部位反応
過敏症発熱・発疹蕁麻疹、紅斑、そう痒
皮膚発疹水疱性発疹丘疹、帯状疱疹
その他発熱小脳運動失調(きわめて稀)

特に水痘ワクチンで注意すべき副反応としては接種後1-3週間後の発熱や、2-3%に全身性の水痘様発疹がみられることがあるという点ですね。副反応がでた方は、早めに接種された医療機関に受診をお願いいたします。

(参照:弱毒水痘ワクチンの添付文書

② シングリックス®の副反応

10%以上1~10%未満1%未満
注射部位疼痛・発み・腫れかゆみ・熱感注射部位反応・発疹など
消化器吐き気・下痢・腹痛
精神神経系頭痛めまい・不眠症・眠気
筋・骨格系筋肉痛感染通・背部痛
首の痛みなど
感染症インフルエンザ
鼻咽頭炎・ヘルペスなど
その他疲労・発熱倦怠感・痛み無力症・食欲不振など
(参照:シングリックス®の添付文書

シングリックス®の臨床試験を行った論文によると、 シングリックス®接種後7日間に起こった主な副反応としては注射部位の痛み78%、赤み38%、腫れ26%という結果になっています。全身性の副反応では筋肉痛40%、疲労39%、頭痛33%、悪寒24%、発熱18%、胃腸症状13%です。これは体の中で強い免疫をつくろうとするためといわれており、3-7日以内に多くの副反応は弱くなっていきます。7日を超えて副反応が強い場合、ぜひ医師に相談してください。

(参考文献)

  • Lal H. et al.: N Engl J Med. 372(22), 2087-2096, 2015
  • Cunningham AL. et al.: N Engl J Med. 375(11), 1019-1032, 2016

帯状疱疹ワクチンの禁忌(打ってはいけない方)は?

例えば次のような方は帯状疱疹ワクチンの禁忌(打ってはいけない方)にあたります。

弱毒水痘生ワクチンの場合の禁忌は以下の通りです。

  • 化学療法やステロイドなど免疫を抑える治療をしている
  • 免疫力が落ちている方(HIV感染)
  • 妊娠していることが明らかな
  • 水痘ワクチンによる強いアレルギー症状(アナフィラキシーなど)を起こしたことがある方
  • カナマイシン、エリスロマイシンの抗生剤にアレルギー反応を起こした方(ワクチンにこれらの抗生剤の成分が入っています)
  • 明らかな発熱や急性疾患にかかっている方
  • 上記の他、予防接種を行うことが不適当な状態の方

なおワクチン接種後2か月間は妊娠を避けてください。また、シングリックス®の禁忌は次のようになります。

  • 明らかな発熱(通常37.5℃以上)がある方
  • 重篤な急性疾患にかかっていることが明らかな方
  • 本剤の成分によってアナフィラキシーを呈したことがあることが明らかな方
  • 上記に掲げる者のほか、予防接種を行うことが不適当な状態にある方

帯状疱疹ワクチンの接種をうける前に確認しておくとよいでしょう。ちなみに、以下の方は「慎重に」投与する必要がある方になります。(絶対に接種してはいけないというわけではありません。(弱毒水痘生ワクチン・シングリックス®ともに)

  • 心臓血管系疾患、腎臓疾患、肝臓疾患、血液疾患等の基礎疾患がある方
  • 予防接種で接種後2日以内に発熱のみられた者及び全身性発疹等のアレルギーを疑う症状を呈したことがある方
  • 本剤の成分に対して、アレルギーを呈するおそれのある方
  • 過去に痙攣したことがある方
  • 過去に免疫不全の診断がなされている者及び近親者に先天性免疫不全症の者がいる方
  • 血小板減少症や凝固障害を有する者、抗凝固療法を施行している方

帯状疱疹ワクチンの接種スケジュールは?

シングリックスの投与回数。標準は2か月開けて行う。2か月を超えた場合でも6か月以内に2回目の接種を行う

帯状疱疹ワクチンは、弱毒水痘生ワクチンでは1回接種、シングリックス®では2か月開けて2回接種となります。接種間隔が2か月を超えた場合であっても、6か月までに2回目の接種をしていただけましたら問題ありません。他のワクチンとの接種間隔に関しては、以下の通りです。

① 弱毒生水痘ワクチンの場合

  • 不活化ワクチン(インフルエンザワクチン・肺炎球菌ワクチンなど):接種間隔の制限はありません
  • 新型コロナワクチン: 新型コロナワクチンとそれ以外のワクチンは、同時に接種できません。 新型コロナワクチンとその他のワクチンは、お互い片方のワクチンを受けてから2週間後に接種できます。(厚生労働省HP
  • 他の生ワクチン(BCG、MR[麻疹・風疹ワクチンなど]):27日あけて接種をお願いいたします。(参照:厚生労働省 ワクチンの接種間隔について

② 「シングリックス®」の場合

  • 不活化ワクチン(インフルエンザワクチン・肺炎球菌ワクチンなど): 接種間隔に制限はありません。
  • 新型コロナワクチン: 新型コロナワクチンとそれ以外のワクチンは、同時に接種できません。 新型コロナワクチンとその他のワクチンは、お互い片方のワクチンを受けてから2週間後に接種できます。(厚生労働省HP
  • 生ワクチン(BCG、MR[麻疹・風疹ワクチンなど]): 接種間隔に制限はありません。

帯状疱疹ワクチンについてのまとめ

いかがでしたか?帯状疱疹ワクチンの種類や効果・副反応・接種スケジュールに至るまで幅広く解説していきました。どちらかお悩みの方は、以下を参考にしていただくとよいでしょう。

  • 高い予防効果を期待する場合➡ シングリックス®
  • 長い間予防効果を持続させたい場合➡ シングリックス®
  • 副反応を抑えたい場合➡ 弱毒生水痘ワクチン
  • 接種回数を1回で抑えたい場合➡ 弱毒生水痘ワクチン
  • 妊娠中や免疫を抑える治療などされている方➡ シングリックス®
  • 値段を抑えて予防したい場合➡ 弱毒生水痘ワクチン

まだどちらが良いかお悩みの方はぜひ当院にもご相談いただけますと幸いです。

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【この記事を書いた人】 
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。

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