新型コロナ感染症と味覚障害について【治療法・割合・原因】

新型コロナが5類感染症になり、治療薬も通常の保険診療で行われるようになりました。一見正常化しているように見えますが、注意しなければならないのは「後遺症」です。

よく言われる後遺症として、体を起き上がることのできないほどのだるさや倦怠感・咳・体の痛み・頭痛・睡眠障害や脱毛などがありますが、それとともによく言われるのが「味覚障害」「嗅覚障害」。当院でも

  • コロナ感染後、味が全く感じない
  • コロナにかかってからしょっぱさや苦さは残るが、甘味を感じない

などさまざまな味覚障害を訴えられます。実際、食べ物を味わうことは代わることのできない人間の根源的な喜びの1つであり、それを長期間奪われるのは非常に辛いことですよね。

ではコロナの味覚障害についてどこまでわかっているのでしょうか。今回は、コロナの味覚障害について

  • 味覚障害の割合
  • 味覚障害の原因
  • 味覚障害への治療法

を含めて、わかりやすく解説していきます。

コロナによる味覚障害の特徴は?

コロナ後の味覚障害とは、文字通り、コロナ後に味覚が変化したり、一部味覚がなくなったりする疾患のことです。中国から2023年に報告された論文によると、オミクロン株以降のコロナ後に味覚障害をきたした方のち、40%以上が以下のような症状を訴えています。

  • 食欲が減退した
  • 口の中が気持ち悪い
  • 口の中に苦みを感じる(半数以上)
  • 何を食べてもマズい味がする
  • 匂いや風味を感じることができない

また、3.5%の方は「においも味も全くわからない」と報告していますね。よく味覚障害と嗅覚障害はセットで考えられることが多いですが、味覚障害と嗅覚障害がセットで起こっているのは30~40%であり、必ずしも一緒ではないという論文が多いです。

コロナの味覚障害は基礎疾患がある方が起こるわけではありません。中国の同報告によると、コロナ後に味覚障害をきたした方は、年齢や基礎疾患にかかわらず等しく起こっていました。ただし、男性にやや起こりやすい傾向があることがわかっています。

また、別の研究によると逆に併存疾患がなく若い人の方が味覚障害になりやすいともされていますね。

むしろ「味覚障害のなりやすさ」に大切なのが随伴症状です。味覚障害をきたした方では、上気道症状(鼻水や咳、のどの痛み)や口腔乾燥症、口臭などの割合がそうでない方よりも高かったとしています。特に上気道症状が3つ以上ある方では味覚障害や嗅覚障害になる可能性が高くなっていますね

したがって、コロナにかかった時に多彩な症状があった方は味覚障害にも注意が必要でしょう。

(参照:Prevalence of taste and smell dysfunction in mild and asymptomatic COVID-19 patients during Omicron prevalent period in Shanghai, China: a cross-sectional survey study
(参照:Treatments of COVID-19-Associated Taste and Saliva Secretory Disorders
(参照:Persisting Smell and Taste Disorders in Patients Who Recovered from SARS-CoV-2 Virus Infection—Data from the Polish PoLoCOV-CVD Study
(参照:新型コロナウイルス 診療の手引き 罹患後症状のマネジメント 第3.0版)

コロナによる味覚障害の割合は?

どのくらいの割合でコロナ後の味覚障害が発生するのか。これは、発生株や年、調査した国でかなり大きくバラつきがあります。

2020年初期のパンデミックの時には、欧州の報告で88%味覚障害があるとされました。その後複数の論文の検証により、味覚障害の割合が44%と報告されます。日本の2021年の研究でも40%の発生率ですね。

その後、オミクロン株になった後、味覚障害の割合は減少したものの、中国の報告でのコロナ後の味覚障害は41%に対して、フランスでの報告は9~17%となっています。

当院で2024年5月での直近100例で検索したところ、初期症状として味覚障害を訴えた方はわずか4%でした。ほとんどが発症2日前後で来院されていることから、味覚障害は発症2日より後の3日~7日くらいに発生しやすいのではと予想されますね。

いずれにせよ、オミクロン株になってから味覚障害は起こりにくくなったとは言え、コロナは比較的味覚障害を来しやすいウイルスであることは否めないでしょう。

さらに、味覚障害は長い間残る可能性があります。多くは10日~14日くらいで改善されるとされていますが、長期間の例では数年単位です。

例えば、フランスでの調査では、味覚障害を厳密に調べると最短で2か月、最長で24か月残り、症状の平均持続期間は10.8カ月にも上るといわれています。厚生労働省の調査でもコロナ発症6か月後に味覚障害を認める例は6%であり、発症12か月後でも4%残存していると報告されています。

したがって、コロナで味覚障害が発生した場合、長期間治るのに時間がかかる可能性を念頭に置く必要がありますね。

(参照:新型コロナウイルス 診療の手引き 罹患後症状のマネジメント 第3.0版)
(参照:Prevalence of taste and smell dysfunction in mild and asymptomatic COVID-19 patients during Omicron prevalent period in Shanghai, China: a cross-sectional survey study
(参照:COVID-19-Related Long-Term Taste Impairment: Symptom Length, Related Taste, Smell Disturbances, and Sample Characteristics

コロナによる味覚障害の原因は?

コロナによる味覚障害の原因はまだ完全には解明されていませんが、下記の可能性が示唆されています。

  • コロナウイルスにより、味覚受容体細胞と味蕾が直接炎症を来すため
  • コロナウイルスにより唾液の成分が変化するため
  • コロナウイルスが味の神経に関わる「顔面神経」や「迷走神経」「舌咽神経」の末梢神経にダメージを与えるため。
  • コロナウイルスが中枢神経に侵入し、感覚自体を変えるため
  • 嗅覚障害に伴う風味障害のため

コロナウイルスは「アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)」という受容体を通して体内に侵入することがわかっていますが、実はこのACE2は、肺、心臓、腎臓、肝臓、消化管、脳、神経系などのさまざまな組織や器官に分布しています。だから、コロナは全身症状を来しやすいウイルスなのですね。

ヒトの味蕾や味蕾に埋め込まれた乳頭でも豊富に発現しており、実際にコロナ患者からは味蕾の乳頭部でも多くウイルスが検出されることがわかっています。

ウイルスに侵入されると、ウイルスを外に追い出そうとして様々な炎症を誘発する物質が放出されます。うまく排除機能が働けばよいのですが、中には炎症反応により、味覚に関わる細胞にダメージが加わることがあります。これが、最も言われているコロナによる味覚障害の一番の原因です。

「後遺症」と言われるほど長期間に及ぶ場合には、味覚に関わる神経損傷が関わっているとされています。神経は一度ダメージが加わるとなかなか修復するのが難しいのは想像に難くないでしょう。

他には、嗅覚障害が伴っている場合などは、嗅粘膜に存在する嗅裂部のむくみがあり、そこが閉塞するため「風味が感じられにくくなっている」とする説もあります。

(参照:Treatments of COVID-19-Associated Taste and Saliva Secretory Disorders
(参照:新型コロナウイルス 診療の手引き 罹患後症状のマネジメント 第3.0版)

コロナによる味覚障害の治療法は?

残念ながら、まだコロナによる味覚障害はわかっていない部分が多く、治療法としては模索段階です。現在は、コロナによる味覚障害に対して、以下の治療法が模索されています。

  • 亜鉛
  • ステロイドの外用や内服
  • 漢方薬や生薬
  • テトラサイクリン系による抗生剤加療

順に見ていきましょう。

① 亜鉛

亜鉛は、味蕾や味刺激を伝達する神経レベルでの生理機能だけでなく、味細胞の再生と維持にも重要な役割を果たしています。

特にコロナ患者は低亜鉛血症を示しやすいことが言われています。そして、全身から亜鉛が少なくなると、末端の細胞の亜鉛を犠牲にして体内で再分配されるので、コロナ感染者は唾液中の亜鉛濃度が著しく低く、味覚障害からの回復とともに亜鉛も回復する報告もありますね。

実際、コロナ後の味覚障害に対して、1日1回100mgの亜鉛を4~6か月補給したところ、味蕾細胞が育ち味覚障害が改善したというデータもあります。

ただし、亜鉛は過剰症になるとさまざまな問題を生じることがあるので、自己流で補充しない方が望ましいでしょう。詳しくは

も併せて参照してください。当院ではきちんとモニタリングした上で、適切な人に亜鉛投与を行っています。

② ステロイドの外用や内服による治療

ステロイドは「抗炎症ホルモン」とも言われるホルモン。前述の通り、味覚障害は味蕾細胞や神経細胞の炎症に伴うものと言われているので、ステロイド治療は理にかなった治療でしょう。

実際、ステロイドを塗布したり内服したりすることの研究が進められています。

ただし、ステロイドによる治療は局所の免疫を抑える他、全身投与では糖尿病、高血圧、骨密度の低下、胃潰瘍など、さまざまな副作用がありうるので、慎重にモニタリングされるべき治療法になります。

③ 漢方薬や生薬

一方、安全性の高い治療としては漢方薬や生薬による治療があげられます。

もっとも嗅覚障害などに使われる漢方薬は「当帰芍薬散」です。もともとは「体力虚弱で、冷え症で貧血の傾向があり疲労しやすく、ときに下腹部痛、頭重、めまい、肩こり、耳鳴り、動悸などを訴える方」に使われる漢方薬ですが、

実際の生薬は、当帰(トウキ)、川きゅう(センキュウ)、芍薬(シャクヤク)など、「全体の血の巡りをよくしつつ、水分の調節させる作用」が中心になっているので、味覚障害にも使われるようになっています。実際、日本耳鼻科学会の嗅覚障害ガイドラインでも「当帰芍薬散を感冒後嗅覚障害に投与したところステロイド点鼻を使用した従来の治療法と比較して改善率が高かった」としていますね。

他の漢方薬としては、加味帰脾湯や人参養栄湯が使われたりします。

また、クルクミンやアーユルヴェーダ療法で使われるダサモールカドゥトラヤム・カシャヤ、ビタミンD補充療法など様々な生薬による治療法が模索されています。

いずれも安全性は高いですが、「生薬や漢方薬だから絶対に副作用はない」は間違いです。長期間服用されるなら、肝臓や腎臓などの定期的な血液検査は必要ですので注意しましょう。

④ テトラサイクリン系による抗生剤治療

テトラサイクリ系抗生剤はコロナによる炎症を抑えたり、神経障害から保護する作用があるのではと言われており、現在模索されています。

実際、2021年に行われた小規模研究によると、テトラサイクリン系抗生剤により味覚障害をはじめとしたコロナによる症状が消失したとしていますね。

しかし、テトラサイクリンはそもそもコロナには適応外であることや、正常な腸内細菌なども殺してしまい腸内環境も乱しやすかったりするので、使用には十分注意が必要です。

実は今回紹介しきれませんでしたが、他にも星状神経ブロックや光療法、パキロビッドによる抗ウイルス療法など様々な治療法が模索されています。

当院でもコロナによる味覚障害や後遺症に関する相談を受け付けておりますし、適宜他施設にも紹介しています。もちろん後遺症になった場合はなかなか治りにくいことも多い疾患ではありますが、どうぞ気軽にご相談ください。真摯に受け止めて対応していきます。

【この記事を書いた人】 
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。

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