みなさん、こんにちは。突然ですが、ご家庭に「はちみつ」は常備されていますか?
- 「パンケーキにかけるくらいかな」
- 「喉に良いとは聞くけれど、実際どうなんだろう?」
そんなふうに思っている方も多いのではないでしょうか。
実は、はちみつは単なる「美味しい甘味料」ではありません。私たちの健康に多大なメリットをもたらす「スーパーフード」の1つになりつつあるんですね。
今回は、最新の医学研究レポートをもとに、はちみつの成分から、のどや風邪、胃腸、肌、そしてダイエットへの効果まで、その知られざる実力を徹底的に解説していきます。
絶対に知っておかなければならない「命に関わる注意点」もありますので、ぜひ最後までお読みください。
Table of Contents
はちみつの主な成分は?

そもそもはちみつの主な成分を知っていますか?
「ほとんど砂糖と同じでしょ?」と思われがちですが、実ははちみつの成分は驚くほど複雑です。現代の分析化学によると、はちみつには糖質だけでなく、約200種類以上もの微量成分が含まれていることが分かっています。
主な成分は以下の通りです
- 糖質:全体の約95%を占めますが、砂糖(ショ糖)とは違います。主な成分は「フルクトース(果糖)」と「グルコース(ブドウ糖)」です。
- 希少糖(レアシュガー):はちみつには、イソマルトゥロースやトレハロースといった「希少糖」と呼ばれる成分が含まれています。レアシュガーは血糖値の急上昇を抑えたり、腸内環境を整えたりする特別な働きを持っています。
- 酵素:抗菌作用のあるグルコースオキシダーゼや
- ポリフェノール:フラボノイドやフェノール酸など、抗酸化作用を持つ成分が豊富です 。
このように、はちみつは単なる糖分ではなく、植物とミツバチが作り出した「天然のサプリメント」とも言える複雑な成分の集合体なんですね。
はちみつの風邪や喉への効果は?

「喉が痛いときははちみつ」というおばあちゃんの知恵袋、みなさんも一度は耳にしたことがあるでしょう。実はこれ、医学的にも非常に高いレベルでその効果が認められています
特に、お子さんの「咳」に対する効果は目を見張るものがありますね。
実際に、世界保健機関(WHO)や米国小児科学会(AAP)のガイドラインでも、1歳以上の子供の咳に対する治療法として、はちみつが推奨されているくらいなんです。
では、どれくらい効果があるのでしょうか。
まず、2023年に発表された、小児の急性咳嗽に対するハチミツの効果を見た10件の論文をまとめたものによると、はちみつは無治療や一部の咳止め薬よりも咳の頻度を減少させることが言われています。
しかも風邪の最中の寝苦しさも緩和するともいわれていますね。
なぜこれほどはちみつは風邪症状に効くのでしょうか。3つのメカニズムが考えられています。
1つは、物理的なバリア効果。とろりとしたはちみつが喉の粘膜を覆うことで、物理的に保護し、刺激を和らげてくれるとされています。(デマルチエント効果といいます) 。
2つ目は、甘味による神経への作用。甘い味を感じると、脳内でオピオイドという鎮痛・鎮静作用のある物質が出る可能性があります。これが咳の中枢に働きかけ、咳を鎮めると考えられていますね。
3つ目は、のどの炎症を和らげる作用。はちみつの持つ局所的な活性酸素種の消去や炎症を引き起こす化学物質を抑えることで喉の炎症自体を鎮静化させるといわれています。
お薬に頼る前に、まずはスプーン一杯のはちみつを試してみるとよいでしょう。
他にのどのよい食べ物については喉の痛みにオススメの食べ物や飲み物について解説【コンビニでも入手可】も参照してください。
(参照:Honey for acute cough in children — a systematic review)
(参照:Honey for acute cough in children(Cochrane Library))
はちみつの胃腸に対する効果は?

「甘いものは胃に悪そう」というイメージがあるかもしれませんが、はちみつはむしろ逆。胃腸の強力な味方になってくれる可能性があります。
特に注目したいのが、胃がんの原因ともなる「ピロリ菌」への効果と、「腸内環境」の改善効果です。
① ピロリ菌に対する抗菌作用
実は、マヌカハニーなどの特定のはちみつは、ピロリ菌に対して強力な抗菌力を持っています。 研究室レベルの実験では、20%濃度のマヌカハニー溶液を使うと、胃潰瘍の患者さんから採取したピロリ菌の増殖を「完全に阻止した」というデータもあります 。
さらにすごいのは、単に菌を殺すだけではない点です。ピロリ菌が感染すると、胃の細胞で炎症のスイッチ(NF-KBという因子)が入ってしまい、これが慢性胃炎やがんにつながるのですが、はちみつはこのスイッチが入るのをブロックし、炎症を鎮めてくれる働きもあることが分かっています。 (ただし、人の体内で完全除菌できるかについてはまだ研究段階ですので、病院の治療の補助として考えるのが良さそうです )
② 腸内フローラを整えるプレバイオティクス
また、はちみつに含まれるオリゴ糖やグルコン酸は、腸内の善玉菌のエサになります。
実際に、はちみつを摂取すると、ビフィズス菌や乳酸菌といった良い菌の増殖が促進されることが確認されています。 その一方で、食中毒の原因になるようなサルモネラ菌や大腸菌などの悪玉菌に対しては、増殖を抑える働きを見せます。
つまり、はちみつは「良い菌を増やして、悪い菌を減らす」という、理想的な腸内環境の調整役(プレバイオティクス)として機能してくれるのです。
(参照:Susceptibility of Helicobacter pylori to the antibacterial activity of manuka honey.)
(参照:The Antibacterial Activity of Honey on Helicobacter Pylori)
(参照:The Potential of Honey as a Prebiotic Food to Re-engineer the Gut Microbiome Toward a Healthy State)
はちみつの肌への効果は?

はちみつって、「ハチミツ肌」とも言われる通り、肌にも良さそうですよね。実際、はちみつは「食べるスキンケア」として、以下の効果が言われています。
① コラーゲンの材料をダイレクトに届ける
肌のハリや弾力を支えているのはコラーゲンですが、その材料となるアミノ酸がはちみつには豊富に含まれていることをご存知でしょうか。
実は、はちみつに含まれるアミノ酸のうち、なんと50〜85%を「プロリン」という成分が占めています。このプロリンは、コラーゲンを作るために絶対に必要な主要成分です。
さらに、細胞レベルの研究では、0.5 mg/mLという濃度のハチミツを細胞に与えたところ、肌の工場である「線維芽細胞」が活性化し、I型コラーゲンの合成量が有意に増加したというデータも報告されています 。
つまり、はちみつを食べることは、コラーゲンの「材料」を補給すると同時に、それを作る「工場」をも稼働させることにつながるのです。
② 腸内環境を整えて「肌荒れ」の火種を消す
「腸が汚れると肌が荒れる」とよく言われますが、はちみつはここでも力を発揮します。
はちみつに含まれるオリゴ糖などは、お腹の中の善玉菌(ビフィズス菌や乳酸菌)のエサとなり、その増殖を助けることが分かっています 。 腸内環境が整うと、全身を巡る炎症物質が減り、結果として肌の赤みやトラブルが鎮静化します。
アトピー性皮膚炎に関する基礎研究でも興味深い結果が出ています。マヌカハニーは、アレルギー反応を引き起こす特定の物質(CCL26)の分泌を、量に応じて抑制する(用量依存的に抑える)ことが示されました 。これは、アレルギー体質の改善に役立つ可能性を示唆しています。
③ キズの治りが早くなる効果も
さらに驚くべきことに、はちみつを「食べる」だけで傷の治りが早まるという報告もあります。
実際、マウスを使った実験では、はちみつを経口摂取(食べる)させたグループは、そうでないグループに比べて、傷の治癒が早く、特に3日目の時点で傷の面積が有意に小さくなっていたことが確認されました 。 栄養が血流に乗って全身に届き、内側から修復をサポートするのです。
こう見ると、はちみつは肌にも色々いい影響があると思います。
(参照:Honey and Health: A Review of Recent Clinical Research)
(参照:Anti-Inflammatory and Wound Healing Properties of Different Honey Varieties from Romania and Correlations to Their Composition)
(参照:Honey is potentially effective in the treatment of atopic dermatitis: Clinical and mechanistic studies)
はちみつのダイエットへの効果は?

さらに嬉しいことに、ハチミツにはダイエットのお供にもよい効果があります。
2023年にトロント大学の研究チームが発表した、1105人を対象とした大規模臨床試験によると、はちみつを摂取することで、以下のような代謝マーカーの改善が見られました。(日本で使う単位に変換nしています)
- 空腹時血糖値が低下: 平均で 3.6 mg/dL 下がりました。
- 悪玉コレステロール(LDL)が低下: 平均で 6.2 mg/dL 下がりました。
- 中性脂肪が低下: 平均で 11.5 mg/dL 下がりました。
- 善玉コレステロール(HDL)が増加: 平均で 2.7 mg/dL 増えました。
甘いものを食べているのに、血糖値やコレステロールが下がるなんて不思議ですよね。
これは、はちみつ特有の「希少糖」や「フルクトース」が関係しており、肝臓での糖の処理を助けたり、インスリンの感受性を良くしたりするのではといわれています。
ただし、どんなはちみつでも良いわけではありません。この研究では、特に以下の条件のはちみつで効果が高いことが分かっています。
- 蜜源は「アカシア」などがおすすめ :アカシアはちみつはGI値(食後血糖値の上昇度合い)が低く、血糖値を上げにくい性質があります 。
- 「生はちみつ」を選ぶ :加熱処理されていない生のはちみつの方が、酵素や栄養素が生きており、効果が高かったとされています 。
私もダイエットで30キロ以上やせた経験を持っていますが、一番の誘惑の1つに「甘いものが食べたい!!」という抑えきれない衝動があります。そこで活躍するのが、はちみつではないでしょうか。
ただし、1つ注意点があって、臨床試験での摂取量は1日大さじ2杯程度(約40g)でした 。いくら体に良いからといって、食べ過ぎは禁物です。
普段使っているお砂糖を、良質な生はちみつに「置き換える」ということから、はじめてみてくださいね。(私自身は、はちみつの値段もそれなり高いので、朝ヨーグルトに大さじ1杯ずつとって一日の元気の素にしています)
(参照:Effect of honey on cardiometabolic risk factors: a systematic review and meta-analysis)
はちみつのデメリットや注意点

ここまで、はちみつの素晴らしい効果を見てきましたが、最後に絶対に守っていただきたい注意点があります。。
① 1歳未満の赤ちゃんには絶対に与えない
これは最も大切ですね。
1歳未満の乳児には、はちみつを絶対に与えてはいけません。
はちみつには、自然界に存在する「ボツリヌス菌」の芽胞(がほう)が含まれていることがあります。
大人の腸内環境なら問題ないのですが、腸が未熟な赤ちゃんの場合、お腹の中で菌が増殖し、「乳児ボツリヌス症」という病気を引き起こす可能性があります。
便秘や筋力の低下、最悪の場合は呼吸困難で亡くなってしまうこともある恐ろしい病気です。加熱しても菌の芽胞は死滅しません。
「体に良いから」という親心が、あだとなってしまわないよう、1歳になるまでは決して与えないでください。
②「マッドハニー(狂うはちみつ)」に注意
特定の植物(ツツジ科のシャクナゲなど)から採れたはちみつには、「グラヤノトキシン」という天然の毒素が含まれていることがあります。
これを食べると、めまいや嘔吐、そしてひどい場合には心臓の拍動が極端に遅くなる(徐脈)中毒症状を起こすことがあります。 通常のスーパーで売られているブレンドはちみつならまず心配ありませんが、海外旅行先や個人から「野生のはちみつ」などを購入する場合は注意が必要です 。
アレルギーの可能性 ごく稀ですが、はちみつに残っている花粉などが原因でアレルギーを起こすことがあります 。食べた直後に口の中がイガイガしたり腫れたりする場合は、アレルギーの可能性がありますので、無理に食べないようにしましょう。
まとめ
はちみつは、ただ甘いだけではなく、咳を鎮め、胃腸を整え、傷を癒やし、さらには代謝まで改善してくれる可能性を秘めた、まさに自然の恵みそのものです。
- 風邪のひきはじめや咳には、寝る前のスプーン1杯。
- 胃腸の調子を整えたいときは、ヨーグルトと一緒に。
- ダイエット中は、砂糖の代わりにアカシアの生はちみつを。
「1歳未満には与えない」という鉄則だけは、しっかりと守ってくださいね。そして、はちみつ、私も大好きなので、ぜひ健康のパートナーの1つとして取り入れてみてください。
【この記事を書いた人】
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。


















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