花粉症で咳がでるのはなぜ?アトピー咳嗽の症状や治療、咳喘息の違いについて解説

花粉症の季節になりましたね。花粉症と言えば「目のかゆみ」「鼻水」や「皮膚のかゆみ」が中心だと思いますが、実はもう1つでやすい症状があります。

それは「咳」です。

例えば、こんな経験をされたことはありますか?

  • 喉のかゆみと咳がとまらない
  • 季節の変わり目に喉がイガイガする
  • 喘息と診断されて吸入しているがいまいち治りが悪い

これはいずれも「アトピー咳嗽」と呼ばれる咳の症状の特徴です。いわゆる「のどのじん麻疹」とような状態なのですが、実は花粉症による咳とも関連しやすい疾患なのです。(喘息も花粉症と関連しやすいので、判断が難しいこともありますね!)

今回は、そんなあまり診断されにくい「アトピー咳嗽」の症状や治療、咳喘息の違いについて解説していきます。

大人になってからも発症する「気管支喘息・咳喘息」については大人の喘息・咳喘息について解説【原因・チェックリスト・吸入薬】を参照してください。

花粉症で咳がでやすい、アトピー咳嗽とは?

アトピー咳嗽とは「アトピー素因と関連した喉のイガイガと長引く咳が特徴の疾患」のこと。1989年に日本から提唱されました。

アトピー咳嗽はもともと喘息以外のアレルギー疾患を持っていたり、「血清IgE」や「末梢好酸球」などI型アレルギーに関わる因子が増加している方によく出てきます。

そしてアレルゲンが気道の中枢に付着すると、普通の方よりも過敏に気道が反応します。その反応が「のどのイガイガ」やアレルゲンを外に追い出すための「咳」につながっていくというわけです。

ちょうど皮膚でよくある「じんましん」と同じような作用機序ですね。(じんましんについては蕁麻疹(じんましん)はストレスから?蕁麻疹の原因や薬・治し方について解説を参照してください

花粉症は一言でいうと「花粉を追い出すために体が過剰に反応して出現する一連の症状」のこと。目なら涙が、鼻なら鼻水が出ます。なので、アトピー咳嗽もアレルゲンの量に比例するので、花粉症の方に発症しやすいのです。

具体的には、以下の全ての診断基準を満たす方が正式に「アトピー咳嗽」と診断されます。

  1. 喘鳴や呼吸困難を伴わない乾性咳嗽が3週間以上持続する。
  2. 気管支拡張薬が無効である。
  3. 「アトピー素因を示唆する所見」または「誘発喀痰中好酸球増加」の1つを認める
  4. ヒスタミンH1受容体拮抗薬または/およびステロイド薬にて咳嗽発作が消失

(参照:日本呼吸器学会 咳嗽・喀痰の診療ガイドライン2019)

アトピー咳嗽の症状は?

アトピー性咳嗽の症状の特徴は

  • 長引く咳になる(3週間以上)
  • のどのイガイガ感を伴う
  • 痰がへばりついた感じがする
  • 就寝時や深夜、早朝、起床時の順に多い

などです。アトピー性素因をもっている中年の女性に多く、アトピー性皮膚炎や花粉症(アレルギー性鼻炎)などもしばしば合併します。

アトピー咳嗽のきっかけは時間帯だけではありません。

  • 上気道感染(かぜ)
  • 気温や湿度・気圧の変化
  • 会話や電話
  • 受動喫煙
  • 花粉などのアレルゲンの存在
  • 運動や発汗
  • ストレス

などもアトピー咳嗽のきっかけになります。また、アトピー咳嗽は気管支拡張薬も無効なので「いつも吸入薬もらっているけど、あまり効果がない」と感じた場合、アトピー咳嗽を疑いやすくなります。

アトピー咳嗽と咳喘息の違いは?

ここまで読んで「アトピー咳嗽と咳喘息って、あまり変わらないように見える」と感じた方もいるでしょう。確かに、両者は非常に似ている疾患ですが、

  • 咳喘息に有効な「気管支拡張剤」がアトピー咳嗽には効かない
  • アトピー咳嗽は喘息には移行しない

という点で大きく違います。

咳喘息はアレルギーや炎症などで気道が過敏になってしまい、気道が少しでも伸び縮みすると咳が出やすくなっている(咳嗽反応の亢進)ことがいわれています。なので、伸び縮みさせない治療が中心であり、咳喘息には「気管支拡張剤」が有効です。

一方、アトピー咳嗽は発症機序が咳喘息や気管支喘息と異なるので、気管支拡張剤が無効です。かわりに後述するようにアトピー咳嗽では「アレルギー反応を抑える治療」が中心となってきます。

ちなみに、気管支喘息では気管支が狭窄し「息苦しさ」が主体となってきます。気管支喘息との鑑別には「呼吸機能検査(スパイロメトリー)」が有効ですので、初診時から必ずとるようにしています。

アトピー咳嗽の治療は?

アトピー咳嗽の治療は「じんましん」と同様「抗ヒスタミン薬」という治療薬が主体になります。

抗ヒスタミン薬では、ヒスタミンというアレルギー症状を誘発する物質をブロックすることで、気道の過敏性を抑え、アレルゲンが付着しても症状が出ないようにしてくれます。

慢性咳嗽を論文をまとめた論文によると、抗ヒスタミン薬によるアトピー咳嗽への有効性は「36.6%咳頻度を抑え、アレルギー性鼻炎を合併した方は44%咳頻度を抑える」としていますね。

効果が不十分な場合は、吸入のステロイドを使用したり、経口のステロイド薬を治療に用いることもあります。

いずれにせよ、長引く咳の診断を行いながら治療を進めております。(場合によっては連携施設にご紹介いたします)

(参照:Efficacy of non-sedating H1-receptor antihistamines in adults and adolescents with chronic cough: A systematic review. World Allergy Organization Journal. August 2021)

アトピー咳嗽のまとめ

いかがでしたか?アトピー咳嗽について症状から治療までわかりやすく解説していきました。まとめると

  • アトピー咳嗽とは「のどの『じんましん』」のこと。のどのアレルギー反応が亢進して、のどのイガイガ感や長引く咳につながっていく
  • アトピー咳嗽は、さまざまなきっかけで発現し、長引い点で咳喘息と似ているが、気管支拡張薬が無効である点で異なる
  • アトピー咳嗽は花粉症やほかのアレルギー疾患とも合併しやすい
  • アトピー咳嗽はアレルギー反応が主体なので、アレルギーを抑える抗ヒスタミン薬が治療の主体である

といえます。もちろん花粉症と喘息・咳喘息が合併していることもあり、慎重な診断が求められるところでしょう。

当院でも咳や呼吸器症状の診断、治療を行っておりますので、お気軽にご相談ください。

【この記事を書いた人】 
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。

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