- 「できもの」を放置してきたら大きくなってきた
- 「できもの」が赤くなって痛みが出るようになった
- 背中にコブがあって放っておいたら、におう液体が出てきた
こういった方は粉瘤(ふんりゅう、別名アテローム)かもしれません。
粉瘤を自分で何とか治そうという方がいますが、通常自力で治すのは困難です。さらに粉瘤を悪化させた「炎症性粉瘤」の場合、早急な治療をしないとますます悪化し、痛みを伴う治療をしないといけない場合もあるのです。
今回はそんなアテローム(粉瘤)の原因や今後の治療や手術に至るまで詳しく解説していきます。
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粉瘤(アテローム)とは
アテローム(粉瘤)とは皮膚の下の袋ができ、中に皮膚の角質や皮脂がたまる腫瘍の総称です。ドーム状に盛り上がった半球状の腫瘤で、中央に黒点が見えることもあります。「腫瘍」というと癌をイメージしやすいですが、アテロームは他に転移しない「良性腫瘍」になります。
炎症もない粉瘤の状態なら痛みもかゆみもありません。しかし、粉瘤に細菌が侵入すると、化膿してきて腫れや痛みを伴うようになります。これは「炎症性粉瘤(炎症性アテローム)」と呼ばれ、すみやかで適切な治療が必要です。
粉瘤(アテローム)の原因は?
粉瘤(アテローム)が発生する原因は不明な点も多いですが、毛の生え際が詰まることが原因の1つではないかと考えられています。また、ケガや繰り返す炎症で皮膚が化膿しやすくなっていたり、ニキビやケロイドの部分にもできる例もみられますね。これらも、繰り返す炎症で老廃物がたまりやすい環境になっているといえるでしょう。
老廃物が蓄積され、袋状にもりあがったものが「粉瘤」、さらに細菌が粉瘤の中に侵入して増殖し、感染した膿のかたまりになったものが「炎症性粉瘤(炎症性アテローム)」となります。
402例の粉瘤手術例の検討では、男性の発生率は女性の約2倍で、中年の方に多いとされています。また粉瘤の約60%が顔面、くび、背中に発生しており、皮脂の分泌にも関与しているのではないかとも考えられています。
また足のうらに発生することもあり、若年者(20歳±10.2歳)に多いのが特徴です。
(参照:日本臨床外科学会「粉瘤症例の検討」)
粉瘤(アテローム)の検査は?
ほとんどの場合、視診だけで診断することできます。粉瘤自体、非常に視覚的に特徴がある疾患だからです。粉瘤(アテローム)かどうかを見るべきポイントとしては、例えば以下の部分があげられるでしょう。
- 粉瘤の表面は非常に滑らかで境界もはっきりしている
- 粉瘤の真ん中に毛穴のつまりのような凹みがある
- 炎症性粉瘤の場合は、痛みを伴う赤い「できもの」の状態になる
ただし、場所によっては、他の疾患と鑑別が必要になるケースもしばしばあります、その際には「超音波検査」をして迅速に診断をつけるようにしています。
またアテロームが巨大な場合や手術まで想定している場合も、周囲との関係を見るために超音波検査を行うこともありますね。
超音波検査については超音波検査でわかること【費用・原理・メリットやデメリット】も参照してください。
粉瘤の治し方や手術は?
粉瘤の治し方は状態が「炎症性粉瘤かどうか」によって異なります。まずは、一番よく来院される「炎症性粉瘤の場合」の治療方法から見ていきましょう。
① 炎症性粉瘤(炎症性アテローム)の場合
強い炎症を伴う「炎症性粉瘤(炎症性アテローム)」は、膿を包んでいる袋が周りと固くくっついているため、袋ごと切除することができません。そのため、まずは菌を袋からなくす治療から始めていきます。
袋の中の菌をなくす治療としては、
- 保存的治療: 抗生剤を内服や塗り薬で少しずつ小さくしていく方法
- 切開排膿: (局所麻酔しながら)小さく切開し、膿を外に出す方法
の2種類があります。切開すると多少痛みを伴いますが、強い炎症の場合「保存的治療」で治らないことが予想されるので「切開排膿」をオススメすることがあります。アテローム自体が小さい場合や、切開でのダメージが大きいと予想される場合は「保存的治療」を選択することが多いです。
どちらを選ぶかは予想される経過などをお話させていただきながら、患者さんの希望に合わせて対応するようにしております。納得されるような治療を選択していきたいと思っていますので、遠慮なくご相談ください。
② 通常のアテローム(粉瘤)の場合
炎症が軽度である場合や、炎症がないアテローム(粉瘤)の場合は切除することができます。炎症していたアテローム(粉瘤)も1か月くらいすると周囲の癒着(くっつき)も取れてくるため、切除に適した時期になってきます。
切除方法としては「通常の切開で袋ごと取り出す方法」と「表面の皮膚と共に袋状の構造物の一部をくりぬく方法(くりぬき法)」があります。
通常の切開で袋ごと取り出す方法は、傷が目立たないようにシワに沿って縫合しますが、くりぬき法の場合はキズの部分は縫いません。そのため完全に傷がふさがるには2~3週間かかりますが、最終的にはキズ跡はニキビ跡程度になります。
当院でも時間枠を設けて(平日14時30分~15時)アテローム(粉瘤)切除を行っておりますので、ご相談いただけますと幸いです。(顔面のデリケートな場所などは連携している形成外科に紹介する場合があります)
(参照:日本皮膚科学会 くりぬき法について)
アテローム(粉瘤)切除の費用は?
粉瘤の場所や大きさによって異なります。保険診療で3割負担の場合は以下の通りです。露出部とは「頭・顔・首・肘から下・膝から下」の部分のことを原則指します。
露出部 2cm未満 | 約5000円 | 露出部以外 3cm未満 | 約3800円 |
露出部 2cm以上 | 約11000円 | 露出部以外 3cm以上 | 約9700円 |
- 診療報酬の改定で変更になることがあります。
- 事前に超音波検査を実施する場合は、超音波検査料(1000円程度)が別途かかります。
- 他、初診料・再診料・処方せん料・薬材料などが発生します。
アテローム(粉瘤)切除の合併症は?
アテローム(粉瘤)切除手術による起こりうる可能性の合併症は以下の通りです。
- 出血・内出血: 手術当日や翌日に出血が強くなる場合があります。血種になった場合は、除去手術いたします。
- アレルギー反応: 局所麻酔薬によるアレルギー反応が出ることがあります。
- 感染: まれですが、傷の痛みが続く、傷の腫れがひかないなどの症状があることがあります。内服の抗生剤や小切開をして治療することがあります。
- ケロイド・肥厚性瘢痕: 傷跡が赤く盛り上がることがあります。軟膏や内服での治療を適宜行います。
- 再発:非常にまれですが、似た場所から再発することがあります。
上記のような症状が出現した場合は、どうぞ遠慮なくご相談ください。適切に対応させていただきます。
アテローム(粉瘤)についてのまとめ
いかがでしたか?アテローム(粉瘤)の原因から治療方法・具体的な費用まで幅広く解説しました。まとめると
- アテロームは顔や首・背中などにできやすい皮膚の角質や皮脂がたまる疾患で、正確な原因は不明だが、皮脂の分泌不全や外傷・慢性的な炎症がきっかけでおきる
- 炎症した場合は、切開したり抗生剤治療が中心になるが、ほとんどの場合は切除をして袋を取り除かなければ炎症が再発する可能性がある
- 切除費用は3割負担で約5000円~10000円前後で行うことができるが、場所や大きさによって異なり合併症のリスクもあるため、前もってよく手術について理解する必要がある
といえます。また、アテロームの治療の実際について不安な点がありましたら、どうぞ気軽にご相談ください。治療方針について納得するまで、丁寧に説明させていただきます。
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【この記事を書いた人】
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。
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