粉瘤を放置するとどうなる?粉瘤(アテローム)の原因や手術について【画像あり】

  • 「できもの」を放置してきたら大きくなってきた
  • 「できもの」が赤くなって痛みが出るようになった
  • 背中にコブがあって放っておいたら、におう液体が出てきた

こういった方は粉瘤(ふんりゅう、別名アテローム)かもしれません。

粉瘤を自分で何とか治そうという方がいますが、通常自力で治すのは困難です。さらに粉瘤を悪化させた「炎症性粉瘤」の場合、早急な治療をしないとますます悪化し、痛みを伴う治療をしないといけない場合もあるのです。

今回はそんなアテローム(粉瘤)の原因や今後の治療や手術に至るまで詳しく解説していきます。

粉瘤(アテローム)とは

炎症性粉瘤:日本皮膚科学会HPより転載

アテローム(粉瘤)とは皮膚の下の袋ができ、中に皮膚の角質や皮脂がたまる腫瘍の総称です。ドーム状に盛り上がった半球状の腫瘤で、中央に黒点が見えることもあります。「腫瘍」というと癌をイメージしやすいですが、アテロームは他に転移しない「良性腫瘍」になります。

炎症もない粉瘤の状態なら痛みもかゆみもありません。しかし、粉瘤に細菌が侵入すると、化膿してきて腫れや痛みを伴うようになります。これは「炎症性粉瘤(炎症性アテローム)」と呼ばれ、すみやかに適切な治療が必要です。

粉瘤(アテローム)の原因は?

(粉瘤の病理画像)

粉瘤(アテローム)の原因は完全には解明されていませんが、以下のようなサイクルを通して、形成されると考えられています。

  • 毛穴の閉塞:毛の生え際などで毛穴が詰まると、皮脂や角質が外へ排出されずに内部に溜まります。これが、老廃物の蓄積と袋状の嚢腫(粉瘤)の形成につながります。
  • 外傷や反復する炎症:ケガや慢性的な炎症状態(例えば、ニキビやケロイドの部分)では、皮膚が化膿しやすくなります。こうした部位では、細胞の破壊や老廃物の排出がうまく行われず、結果として粉瘤が発生しやすくなります。
  • 炎症性粉瘤の形成:基本的な粉瘤は老廃物が溜まった嚢腫ですが、その内部に細菌が侵入・増殖すると、細菌による感染が引き金となって膿がたまります。こうした状態を「炎症性粉瘤(炎症性アテローム)」と呼び、通常の粉瘤よりも痛みや発赤などの炎症症状が顕著になります。

さらに、402例の粉瘤手術例を検討した研究によると、以下のような特徴が明らかになっています :

  • 性差:男性の発生率は女性の約2倍と報告されており、特に中年層に多く見られます。
  • 部位の分布:粉瘤の約60%が顔、首、背中に発生しており、これらの部位は皮脂腺が活発なため、皮脂の分泌が粉瘤の形成に関与している可能性が示唆されています。
  • 年齢差:一方で、足の裏などの部位に発生する粉瘤は、若年者(平均年齢20歳前後)に多いという特徴があります。これは部位ごとに発生メカニズムや関与する因子が異なることを示唆しているかもしれません。

このように、粉瘤の形成には、毛穴の閉塞や外傷・慢性的な炎症といった局所環境の変化が深く関与しており、細菌感染による二次的な炎症が加わると、より症状が重くなることがわかります

(参照:日本臨床外科学会「粉瘤症例の検討」

粉瘤を放置するとどうなる?

では、粉瘤を放置してしまったらどうなるのでしょうか?通常、以下の経過をとると考えられます。

① 粉瘤自体が大きくなり違和感を感じやすい

単純に粉瘤自体が大きくなるケースです。背中などは5センチ以上になることも全く珍しくありません。さすがに、5センチ余りの塊が背中にあったら違和感を感じやすくなりますよね。

その結果、周囲の皮膚に圧迫がかかり、服との摩擦や日常の動作に支障をきたすだけでなく、見た目にも大きなストレスとなります。

② 粉瘤に炎症が伴い痛みがでてくる

大きくなると当然こすれてキズもできやすく、炎症も生じやすくなります。大きくなると当然こすれてキズもできやすく、炎症も生じやすくなります。

すると、皮膚が赤く腫れ、激しい痛みを伴う炎症性粉瘤に進行します。非常に激痛で「夜も寝られなかった」という人もいますね。診察したら「よくここまで我慢したな」と思うケースもあります。

➂ 自然に破裂しながら繰り返す

また、自然に破裂するケースもあるでしょう。その場合、破裂部位からはクサイ臭いを伴う膿が流れ、びっくりすることもあります。しかし、その後大体は治癒過程も正常ではないケースが多く、治ったとしても傷アトが大きくなったり、慢性的に炎症を繰り返したりします。

いずれにせよ、どのようなケースをたどったとしても放置してから来院されると治療に難渋するケースが非常に多いです。ぜひ放置せずに皮膚科や形成外科などに受診していただきたいと思います。

粉瘤(アテローム)の検査は?

では、粉瘤の検査にはなにをするのでしょう。

ほとんどの場合、粉瘤は視診だけで診断することできます。粉瘤自体、非常に視覚的に特徴がある疾患だからです。粉瘤(アテローム)かどうかを見るべきポイントとしては、例えば以下の部分があげられますね。

  • 粉瘤の表面は非常に滑らかで境界もはっきりしている
  • 粉瘤の真ん中に毛穴のつまりのような凹みがある
  • 炎症性粉瘤の場合は、痛みを伴う赤い「できもの」の状態になる

ただし、場所によっては、他の疾患と鑑別が必要になるケースもしばしばあります、その際には「超音波検査」をして迅速に診断をつけるようにしています。

またアテロームが巨大な場合や手術まで想定している場合も、周囲との関係を見るために超音波検査を行うこともありますね。

超音波検査については超音波検査でわかること【費用・原理・メリットやデメリット】も参照してください。

粉瘤の治し方や手術は?

粉瘤の治し方は状態が「炎症性粉瘤かどうか」によって異なります。まずは、一番よく来院される「炎症性粉瘤の場合」の治療方法から見ていきましょう。

① 炎症性粉瘤(炎症性アテローム)の場合

強い炎症を伴う「炎症性粉瘤(炎症性アテローム)」は、膿を包んでいる袋が周りと固くくっついているため、袋ごと切除することができません。そのため、まずは菌を袋からなくす治療から始めていきます。

袋の中の菌をなくす治療としては、

  • 保存的治療: 抗生剤を内服や塗り薬で少しずつ小さくしていく方法
  • 切開排膿: (局所麻酔しながら)小さく切開し、膿を外に出す方法

の2種類があります。切開すると多少痛みを伴いますが、強い炎症の場合「保存的治療」で治らないことが予想されるので「切開排膿」をオススメすることがあります。アテローム自体が小さい場合や、切開でのダメージが大きいと予想される場合は「保存的治療」を選択することが多いです。

どちらを選ぶかは予想される経過などをお話させていただきながら、患者さんの希望に合わせて対応するようにしております。納得されるような治療を選択していきたいと思っていますので、遠慮なくご相談ください。

② 通常のアテローム(粉瘤)の場合

炎症が軽度である場合や、炎症がないアテローム(粉瘤)の場合は切除することができます。炎症していたアテローム(粉瘤)も1か月くらいすると周囲の癒着(くっつき)も取れてくるため、切除に適した時期になってきます。

切除方法としては「通常の切開で袋ごと取り出す方法」と「表面の皮膚と共に袋状の構造物の一部をくりぬく方法(くりぬき法)」があります。

通常の切開で袋ごと取り出す方法は、傷が目立たないようにシワに沿って縫合しますが、くりぬき法の場合はキズの部分は縫いません。そのため完全に傷がふさがるには2~3週間かかりますが、最終的にはキズ跡はニキビ跡程度になります。

当院でも時間枠を設けて(平日14時30分~15時)アテローム(粉瘤)切除を行っておりますので、ご相談いただけますと幸いです(顔面のデリケートな場所などは連携している形成外科に紹介する場合があります)

(参照:日本皮膚科学会 くりぬき法について

アテローム(粉瘤)切除の費用は?

粉瘤の場所や大きさによって異なります。保険診療で3割負担の場合は以下の通りです。露出部とは「頭・顔・首・肘から下・膝から下」の部分のことを原則指します。

露出部 2cm未満約5000円露出部以外 3cm未満約3800円
露出部 2cm以上約11000円露出部以外 3cm以上約9700円
  • 診療報酬の改定で変更になることがあります。
  • 事前に超音波検査を実施する場合は、超音波検査料(1000円程度)が別途かかります。
  • 他、初診料・再診料・処方せん料・薬材料などが発生します。

アテローム(粉瘤)切除の合併症は?

アテローム(粉瘤)切除手術による起こりうる可能性の合併症は以下の通りです。

  • 出血・内出血: 手術当日や翌日に出血が強くなる場合があります。血種になった場合は、除去手術いたします。
  • アレルギー反応: 局所麻酔薬によるアレルギー反応が出ることがあります。
  • 感染: まれですが、傷の痛みが続く、傷の腫れがひかないなどの症状があることがあります。内服の抗生剤や小切開をして治療することがあります。
  • ケロイド・肥厚性瘢痕: 傷跡が赤く盛り上がることがあります。軟膏や内服での治療を適宜行います。
  • 再発:非常にまれですが、似た場所から再発することがあります。

実際に上記のような合併症になることは少ないですね。上記のような症状が出現した場合は、どうぞ遠慮なくご相談ください。適切に対応させていただきます。

アテローム(粉瘤)についてのまとめ

いかがでしたか?アテローム(粉瘤)の原因から治療方法・具体的な費用まで幅広く解説しました。まとめると

  • アテロームは顔や首・背中などにできやすい皮膚の角質や皮脂がたまる疾患で、正確な原因は不明だが、皮脂の分泌不全や外傷・慢性的な炎症がきっかけでおきる
  • 炎症した場合は、切開したり抗生剤治療が中心になるが、ほとんどの場合は切除をして袋を取り除かなければ炎症が再発する可能性がある
  • 切除費用は3割負担で約5000円~10000円前後で行うことができるが、場所や大きさによって異なり合併症のリスクもあるため、前もってよく手術について理解する必要がある

といえます。また、アテロームの治療の実際について不安な点がありましたら、どうぞ気軽にご相談ください。治療方針について納得するまで、丁寧に説明させていただきます。

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【この記事を書いた人】 
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。

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