こんにちは。一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介です。突然ですが、
- 最近、痛みをともなう赤いブツブツが片側に出てきた
- 急に頭がガンガンするようになり、いつもの頭痛と違う
- うでにブツブツはでていないけど、ピリピリと違和感がある
という方はいませんか?もしかしたらそれは帯状疱疹かもしれません。帯状疱疹は放置すると急速に進行し、後遺症も残しやすく、早期治療が非常に大切。
今回は、帯状疱疹の原因から前兆や症状、人にうつさないポイントから帯状疱疹の治療まで、幅広く解説していきます。
帯状疱疹ワクチンについては帯状疱疹ワクチン(弱毒生水痘ワクチン・シングリックス®)についてで解説していますので、あわせてご参照ください。
帯状疱疹とは?

帯状疱疹とは、その名の通り「帯状に広がる水ぶくれの皮疹(疱疹)」のことです。この疾患は
- 身体の左右どちらか一方にあらわれること
- ピリピリと刺すような痛みをともなうこと(あまり痛みを感じない方もいます)
- 続いて赤い斑点(はんてん)と小さな水ぶくれが帯状にあらわれること
と症状の出方が非常に特徴的であることから「帯状疱疹」と名付けられました。
帯状疱疹の原因は?

帯状疱疹の原因は「水痘・帯状疱疹ウイルス」と呼ばれるウイルス感染症によるもの。子供のころにかかった「水ぼうそう」と同じウイルスなのです。
実は「水痘・帯状疱疹ウイルス」は「水ぼうそう」が治った後も、背骨に近い神経に症状を出さない状態で潜むのが特徴のウイルスです。日本人では15歳以上の方の9割以上が、この「水痘・帯状疱疹ウイルス」の抗体を持っており、ウイルスが体内に入ったことがあると考えられています。
普段はウイルスは大人しくしているのですが、加齢やストレス・疲れなどによって免疫力が低下するとウイルスが再活性化され、帯状疱疹として発症します。50代ごろから発症率は高くなり80歳までに3人に1人がかかるといわれています。
また、近年「若年者でも帯状疱疹になる方が増えてきている」という報告もあり、誰もが「自分は関係ない」とはいえなくなってきています。
また、6.4%の方が繰り返し帯状疱疹にかかるため、「一度帯状疱疹になったことがあるから大丈夫」というわけでもありませんので、かかった方も注意が必要な疾患です。
(参照:Herpes Zoster and Recurrent Herpes Zoster. Open Forum Infect Dis. 2017 Jan 28;4(1):ofx007. )
(参照:病原微生物検出情報 Vol. 39 No. 8 (2018. 8))
帯状疱疹の前兆や症状は?

帯状疱疹は一般的に下記のような経過をとることが多いです。
① 痛みによる前兆
数日前から1週間前から「ピリピリしたような違和感」を感じることがあります。(中にはない方もいるので、『必ず』ではありません)頭や顔に帯状疱疹が発症した場合は、「目の痛み」や「片頭痛」として訴えられる方も多く、この時期での診断には難渋します。
帯状疱疹による痛みが疑われる場合は、1週間程度で特徴的な皮膚の所見が出てくることから、短期間でもう一度来院していただく場合があります。
② 発赤・水ぶくれ

ポツポツ赤みや水ぶくれがでてきますが、よくみると「水ぶくれがはっきりしている」のが帯状疱疹の特徴の1つ。ただし、ヘルペスでも似たような皮膚の所見になることが多く、1個した皮疹がない場合はヘルペスとして治療されていることもしばしばです。
③ 皮膚のただれ(びらん)

ひどくなると、典型的な「片側だけの帯状の皮疹」になってきます。(まれに全身性になる「汎発性帯状疱疹」になることがあります)こうなると、「ヒリヒリいたい」「夜も寝られないほど辛い」と訴える方も少なくありません。
後遺症も残りやすいので、上記になる前に治療したいところです。
④ かさぶた(痂皮化)

帯状疱疹の炎症が治まってくると、徐々に「痂皮化」といってかさぶたのような状態になります。ここまでになると、(他の皮疹の状態によりますが)他の方への感染力は弱くなります。
⑤ 帯状疱疹後神経痛

皮膚の一連の「ただれ」などは治まっているのにも関わらず、神経痛だけ残る方がいます。これを「帯状疱疹後神経痛」といいます。
帯状疱疹後神経痛は3週間~3か月続く方が7~25%・6か月位まで続く方が5~13%いるとされています。(詳細はこちら)
実際神経痛が6か月以上続く方は治療に難渋し、改善するまでに長期間かかるケースが多いです。治療内容については、【ビリビリする神経痛】神経障害性疼痛の原因や治療についてにまとめていますので、あわせて参考にしてください。
帯状疱疹は人にうつす?出勤停止は?

よく聞かれる質問として、「帯状疱疹はうつるのか」と質問されることがあります。
原則として「帯状疱疹は水ぼうそうよりも『うつる』可能性は低い」ですが、水ぶくれが出てきてから、皮膚がかさぶたになるまでは人に移す力があります。
実際、感受性のある家族内接触者への感染を検討した報告では、水痘患者からは 71.5% の頻度で感染が報告されたのに対し、帯状疱疹患者からは 15.5% の頻度となりました。つまり、適切に対処しないと、およそ6人に1人が帯状疱疹を他の人にうつしてしまうということになりますね。
では、どこから帯状疱疹は人に移すのでしょう?帯状疱疹ウイルスの主な感染経路は皮疹との接触感染です。つまり、水ぶくれがある個所を覆ってあげることで大幅に感染を防げるのです。
特に免疫が確立していない「乳幼児の方」や免疫力が低下している「高齢者の方」などは接触させないように気をつけましょう。特にお風呂に一緒に入らないようにした方がいいですね。
ちなみに、帯状疱疹は「水ぶくれのある場所を覆ってもらえれば出勤可能」です。つまり出勤停止期間などはなく、状態が良ければ次の日からでも会社や学校に行くことができます。
しかし、帯状疱疹は非常に痛みが強くでやすい疾患でなあり、満足に仕事できない方がいるのもしばしば。早い回復のためにもなるべく安静につとめましょう。
(参照:医療関係者のためのワクチンガイドライン 第3版~帯状疱疹ワクチン~)
帯状疱疹の治療は?
帯状疱疹の治療の基本は「抗ウイルス薬の全身投与」「急性期の疼痛コントロール」が中心です。
① 抗ウイルス薬の全身投与

抗ウイルス薬とは、水痘・帯状疱疹ウイルスが活性化して活発に増えている段階でウイルスのDNA(遺伝情報をもっているもの)の合成を妨げることで、ウイルスが増えるのを抑える働きをします。
帯状疱疹に効果のあるウイルス薬はヘルペス薬でもある「バラシクロビル」「ファモシクロビル」に加え「アメナリーフ®」などがあります。(バラシクロビル・ファモシクロビルはこちらで紹介しています)
バラシクロビル・ファモシクロビルの場合は基本1日3回投与・アメナリーフの場合は1日1回投与です。腎機能や年齢などによって量を増減する場合があります。
特にヘルペスもバラシクロビル・ファモシクロビルを使う場合がありますが、量が全く異なり帯状疱疹のほうが多く必要です。しかも前述の通り「ヘルペスと見分けがつきにくいケース」も見受けられます。
さらに、帯状疱疹後神経痛などの後遺症が残るかは、「いかに早く抗ウイルス薬の治療を開始するか」がとても大切。ご自身で放置されることなく、早めに帯状疱疹と診断できる「皮膚科」に相談するようにしましょう。
汎発性帯状疱疹など重症の方は入院して治療することもあります。その場合は、連携施設に紹介しながら治療を進めてまいります。
② 塗り薬による治療
帯状疱疹は「全身への抗ウイルス薬投与」が基本なので、塗り薬による治療は補助的です。
- 痛みや炎症を抑える塗り薬
- 水疱がやぶれ、皮膚の常在菌が侵入する「二次感染予防」の意味での塗り薬
などを処方します。
③ 痛みに対する治療
帯状疱疹は炎症が活発になっている時に「夜も寝られないくらい痛い」というのが特徴の1つ。このような皮膚の痛みに対して、鎮痛薬も併せて処方し、治療していきます。
場合によっては、通常の痛み止めだけでは効果がなく、特殊な飲み薬が必要になることも。(ガマンできないくらい辛い痛みの場合はぜひいつでも相談してください)
④ 「帯状疱疹後神経痛」に対する治療
帯状疱疹は「皮膚の炎症が治ったらおしまい」にはなりません。7~25%の方で、帯状疱疹後神経痛を発症します。その場合は、帯状疱疹後神経痛として、特殊な薬を使いながら治療していきます。
また、ペインクリニックなどで「神経ブロック」と呼ばれる治療をすることもあり、その場合は連携施設に紹介させていただきます。詳しくは下記を参照してください。
帯状疱疹の日常生活のポイントは?

帯状疱疹で気を付けなければならないポイントとしては一般的に以下の通りです。
① よく休む
帯状疱疹が発症するということは、ウイルスが再活性化しやすくなり、免疫力が低下している証拠でもあります。痛みも強いですし、安静を保ちよく休むようにしましょう。
② 冷やさない
神経痛の場合、冷やすとかえって痛くなることがあります。逆に「温めると気持ちよかった」などといわれることも多いです。(火傷に注意しながら)温めてあげるとよいでしょう。
③ 水ぶくれを触らせない・やぶかない
前述の通り、水ぶくれを触った場合『うつる』可能性もあります。また、水ぶくれの部分を破くと皮膚の常在菌が侵入して悪化することがありますので、水ぶくれを故意にやぶかないようにしましょう。
ジクジクした部分が激しい場合は、湯ぶねにつかるのも控えたほうがよいですね。(シャワーはOKです)
④ アルコールを控える
アルコールは血管を拡張させて、炎症をひどくしてしまうことがあります。 少なくとも帯状疱疹によって皮膚や神経が炎症を起こしている間は、お酒は控えたほうがよいでしょう。
⑤ なるべく早く医療機関にいく
上記のことから、「なるべく早く医療機関にいく」のが最も大切なのがよくわかるでしょう。
文字通り「帯状」になるまでに完成されたら後遺症は残りやすくなります。
- すこし片側だけピリピリして痛くなってきて違和感がある
- 水ぶくれが何個か出てきて、痛みが強い
上記のような段階で、なるべく早く医療機関にいくようにしましょう。早期発見・早期治療は後遺症の可能性をグッと少なくします。
帯状疱疹についてのまとめ
いかがでしたか?帯状疱疹について前兆から治療までご説明いたしました。
帯状疱疹は「いかに早く治療するか」がとても大切な疾患です。また治療にも特殊な治療が必要になります。「帯状疱疹かな」と思ったら、早めに病院に受診するようにしましょう。(帯状疱疹と診断できる皮膚科のほうが望ましいですね)
また、帯状疱疹には「帯状疱疹ワクチン」という帯状疱疹を予防するためのワクチンもあります。詳しくは、帯状疱疹ワクチン(弱毒生水痘ワクチン・シングリックス®)についてで解説しておりますので、併せて参照してみてください。
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