- お湯が誤ってかかってしまった
- ヘアアイロンが当たってしまった
- 湯たんぽで低温やけどになってしまった
ちょっとしたことから起こってしまう「やけど」。やけどは急な出来事ですから慌てますよね。中には「大したことはない」と放置してしまう方もいます。
しかし実はやけど(火傷)はあまり放置してよい疾患ではありません。初期対応が非常に重要な疾患なのです。では、いざやけどした時はどのように対処したらよいのでしょう。
今回はやけどに対する応急処置や病院での対処法や薬、水ぶくれへの対処法に至るまで幅広く解説していきます。
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やけど(熱傷)とは
やけど(熱傷)とは「皮膚にさまざまな熱源(液体や金属など)が接触したことでおこる障害」のこと。やけどの原因物質や、やけどした部位や範囲、やけどの深さによって大きく治療方針が変わるのが特徴です。
また特殊な熱傷として、電流や薬品(酸やアルカリなど)による化学熱傷があります。
「やけど=皮膚」という印象があると思いますが、例えば熱い煙を吸った時に「気道がやけどする(気道熱傷)」もあります。(気道熱傷の場合はすぐに大きい病院に連絡してください)「とても熱いものを食べてしまって水ぶくれになった」という場合も、食道や口腔内の「やけど」ですね。
このように「やけど」といっても非常に多くの種類があることがわかります。そのため、ここでは一般的に一番多い「皮膚のやけど」についてお話していきます。
やけど(熱傷)の水ぶくれは「II度熱傷」
やけどの深さは「皮膚のどれくらい深い場所まで熱で障害されたか」で決まります。大きく分けて「I度熱傷」~「IV度熱傷」に分けられます。
① I度熱傷
I度熱傷は、皮膚の一番表面である「表皮」まで熱障害が起こった場合です。赤身だけで、痛みや熱感はそれほど強くなく、数日から1週間程度で収まるのが特徴です。よく「日焼け」で経験しますね。
炎症を抑える塗り薬で、多くの場合アトも残さず治ります。
② II度熱傷
II度熱傷は皮膚表面の「表皮」だけでなく「真皮」にまで熱障害がおこった場合です。「浅い場合」と「深い場合」に分かれます。どちらも水ぶくれができます。
色は、浅い場合は赤色ですが、深くなるにつれて徐々に白みを帯びてきます。痛みは浅い方が強く、深くなるにつれて痛みが減少してきます。
治療期間は2週間~4週間ほどです。深さが深くなるほどやけどアトが残りやすくなります。
③ III度熱傷
III度熱傷は「表皮」「真皮」を超えて「皮下組織」以深まで炎症が及んだ場合です。神経も血管もやけどでやられているため、見た目は白色に見え、痛みの感覚もありません。
場合によって移植手術も必要になることもあり、1か月以上の治療期間は必要です。やけどアトもほとんどの場合残ってしまいます。
このようにやけどは、深さによって治療期間や状態が大きく変わることがわかります。
やけどへの正しい応急処置は?水ぶくれの対処は?
このように、やけどは深さによっても治療期間が大きく変わりますが、実は最初の初期対応もやけどの深さに大きく関わります。ではどのように対応すればよいのでしょうか、具体的に見ていきましょう。
※ 基本的には「病院にいくまでのつなぎの『やけどの応急処置』」とお考えください。
① 流水でひやす
まずは流水で冷やすことが大切です。日本皮膚科学会では「衣服の上からの15分~30分の冷却」を推奨しています。
また「指先や脚のやけどのような場合は1時間くらい冷却する」としていますが、日本創傷外科学会では「水道水で5分~30分を目安」としているので、冷却時間に議論の余地がありますね。(実際には創部の状態によると個人的には思います)
いずれにせよ「流水で冷やす」のがポイント。水道水でよいので、創部を優しく流水で冷やしましょう。過度に冷えた氷嚢などは凍傷になり刺激になります。また小児や高齢者で広範囲に流水で冷やすと、低体温になる可能性があるので、注意しましょう。
② やけどした部分をよく観察する
特に子供がやけどした場合は、よく観察しましょう。初期の冷却はとても大切です。衣服の外側のやけどばかりに目がついて、衣服の下のやけどに気が付かないことも珍しくありません。
やけどの範囲を確認して、適切に冷やすようにしましょう。
② 水ぶくれは破かない
II度熱傷以上になると水ぶくれになりますが、水ぶくれはなるべく破かないほうがよいでしょう。どうしても水疱が破れそうな場所に関しては、きちんと消毒・滅菌してからきれいに破いた方がよいです。
クリニックに受診していただいたら、それぞれの創部の状態に合わせて適切に対処いたします。
③ 指輪など、身に着けているものは早めにとる
やけどは時間が経つと腫れは強くなってきます。とくに指先のやけどの場合、指輪が外れなくなるケースも。やけどになった箇所は早めに装具をはずすようにしましょう。
④ 早めにクリニック・病院に受診する
非常に大切なので繰り返しますが、安易に自己判断せずに早めに病院に受診しましょう。
- 痛みもなかったから、家にある軟膏で様子をみても治らない
- ストーブによるやけどなんて軽いと思っていたから、意識していなかった
- 最初は赤く大したことないと思っていたら、だんだん変な色に変わってきた
など、最初に受診しなかったために、長期間治療が必要になるケースを私自身も多く経験しています。特に「低温やけど」の場合は放置しがちになるので、非常に危険です。気軽に放置せずに「皮膚科」「外科」「形成外科」「救急科」などで診てもらうようにしましょう
(参照:日本皮膚科学会「やけどの応急手当はどうしたらよいですか?」)
(参照:日本創傷外科学会「やけど(熱傷)」)
やけどの病院での薬や治療は?
では、病院やクリニックではやけどに対してどのような治療がされるのでしょうか。クリニックレベルでのやけどの傷に対する薬や治療は以下の通りです。
(注:II度熱傷以降の面積が広い場合や特殊な熱傷(化学熱傷・気道熱傷・電撃傷)などは全身管理が必要になるので、熱傷の専門施設に紹介します)
① I度熱傷(表皮まで)の場合
炎症を抑える薬を使用しながら皮膚の環境を整えてあげるような治療をします。すると本来自分の持っている表皮の再生が促されるので、傷アトも残さず治ります。
② 浅いII度熱傷(真皮浅層まで)の場合
水ぶくれが生じるくらいまでになると、表皮の皮膚のバリアが完全に崩れているので「いかに炎症を抑えながら、細菌感染を防ぐか」がポイントです。
創洗浄や抗生剤の外用など、感染対策も必要です。また時間がたってから「深いII度熱傷」「III度熱傷」に移行する場合もあるので、その点も慎重に観察していきます。
③ 深いII度熱傷(真皮深層まで)・III度熱傷の場合
深いII度熱傷の場合は、再生するのに必要な細胞自体がなくなるので、塗り薬や創傷被覆材の治療だけでは後遺症を残す可能性が非常に高くなります。
また熱で死んだ組織をそのままにしておくと、正常な細胞が再生するのに時間がかかり、細菌の感染源の恐れがあります。そのため、死んだ組織をそのままにせずなるべく取り除いていきます。(場合により、局所麻酔薬を使用します)
「広範囲の深いやけど」や「四肢の関節部位など機能が重症な場所のやけど」の場合は、専門的な手術や皮膚移植手術が必要になることもあり、その場合はすみやかに専門施設に紹介させていただきます。
(参照:日本創傷外科学会「やけど」・日本形成外科学会「やけどどは、その分類」)
(参照:熱傷のガイドライン)
やけど(熱傷)についてのまとめ
いかがでしたか?やけどの応急処置から病院での治療方法まで幅広く解説していきました。まとめると
- やけどはI度~III度までの深さがあり、深いほど治るのに時間がかかる。そして応急処置は深さにも大きく関わるのでとても大切。
- 応急処置で最も大切なのは「流水で十分ひやす」こと。あとは感染させないように皮膚を保護すること。そして病院で適切な薬をもらいましょう。
- 病院の処置も深さによって大きく変わります。医師の指示に従ってください。
といえます。当院でもやけどの処置は非常に多く行っており、乳幼児からも対応は可能です。ぜひ気軽にご相談くださいね。
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【この記事を書いた人】
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。
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