高血圧の薬について【一覧・種類・副作用】

日本で約4300万人ともいわれている高血圧。そのうち3100万人が「管理不良」とされています。実際、みなさんの中にも「高血圧」といわれながら、そのまま放置してしまっている方もいるのではないでしょうか。

理由は様々ですが、一番大きな原因は「高血圧の薬のことをあまり知らない」ことだと思います。

  • 高血圧の薬を始めたら、やめられなくなってしまうのではないか。
  • 高血圧の薬は血圧を下げるだけなのに、なぜこんなに種類が多いのかわからない。
  • 高血圧の薬を飲むと、逆に血圧が低くなりすぎたり、副作用が強くでるのではないか。

など、いろんな疑問があることでしょう。

高血圧の薬の開始基準や中止基準については、高血圧の薬はいつから始めていつやめる?開始基準と中止基準について解説で記載しました。今回は、高血圧の種類を一覧にして解説しながら、単なる降圧効果だけではない、高血圧の薬の効果や副作用、グレープフルーツをはじめとした飲み合わせの問題を含めて、わかりやすく解説していきます。

高血圧の薬とは?

高血圧の薬と一言で言われていますが、そもそもどのように血圧の薬が作用するのか、考えたことはありますか?

私たち人間の体は、体の隅々まで酸素と栄養と水分を運ぶために血管で張り巡らされており、血液が絶えず体の中をめぐっています。血圧は血管の中に血液を通してどれだけの圧力が加わっているかを指しています。私たちが測定している血圧は動脈の圧力(動脈圧)です。

さて、その血液を送り出す中心は、ご存じ、心臓です。心臓がドクンという音とともに、思いっきり心臓の筋肉を収縮させることで、血液を体に送り出しているわけです。つまり、心臓が過剰に強く働くと高血圧に働きます

しかし、心臓の圧力だけでは決まりません。動脈硬化などがなく柔らかい血管なら、心臓から来る圧力が高くても、高いクッション性で衝撃を和らげます。つまり血圧は低くなりやすくなります。

それが逆に土管のように硬い血管ならどうでしょう。心臓から来る圧力を血管で和らげることなく、末梢まで一気に同じ圧力で届いてしまいます。つまり、末梢の血管の状態が硬い状態だと高血圧に働きます。

血圧は心臓と血管だけで決まりません。実は自律神経や血圧を左右する色んなホルモンのバランスで調節されています。その中でも一番大きな血圧を調節するホルモンが「レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系」と呼ばれる経路です。このようにホルモンのバランスや自律神経が交感神経に傾くことで高血圧に働きます。

さらにそこに体重変化や精神状態、日内変動や季節変動、食事の影響などさまざまな要因がからんできますね。

すごく簡単に話しましたが、そう考えると「高血圧の薬」というのは、以下のいずれかに作用することがほとんどであるといえます。

  • 心臓の過剰な拍出を抑える薬。
  • 末梢の血管の抵抗力を抑えて緩める薬。
  • 血圧にかかわるホルモンを抑える薬。
  • 血圧にかかわる神経(交感神経)を抑える薬。

もし、みなさんが「高血圧の薬」を飲まれているのだとしたら、どの薬に当てはまるのか見てみるとよいですね。

高血圧の薬の一覧

さあ、では高血圧の薬の種類を一覧にしてみましょう。代表的な薬を列挙し、効果を一言でまとめると次の通りです。

  • カルシウム拮抗薬:細胞のカルシウムを制御する部分に作用することで、血管の平滑筋をゆるめて血圧を下げる薬。
  • ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬):強力に血管を収縮したり、体液を貯めたり、交感神経を活性化させることで血圧をあげる「アンジオテンシンII」の働きを抑えることで、血圧を下げる薬。似た作用機序の薬のグループとして「ACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害薬」がある。
  • 利尿薬:最も使われるのは「サイアザイド利尿薬」と呼ばれるタイプで、腎臓の塩分(ナトリウム)を再吸収する部分をおさえることで、塩分を体の外に出しやすくし、循環する血液量を抑えることで、血圧を低くする薬。他にもMR拮抗薬も利尿薬として血圧低下に作用する。
  • β(ベータ)遮断薬:心臓に主に分布する交感神経の働きを抑えることで、心拍数を抑えるとともに、心臓が過剰に収縮する力を抑え、血圧を低下させる。
  • α(アルファ)遮断薬:主に血管の平滑筋にある交感神経の働きを抑えることで、末梢の血管を拡張させて血圧を低下させる。
  • その他:中枢性交感神経抑制薬であるメチルドパ、クロニジン、妊娠初期から使用できるヒドララジンなど。

高血圧ガイドラインでは、そのうち「カルシウム拮抗薬」「ARB」「AEC阻害薬」「利尿薬」を中心に処方するように記載されており、また病態に応じて薬の適応が示唆されています。

例えば、狭心症の場合だとカルシウム拮抗薬やβ遮断薬を中心にした方がよいとされていますし、蛋白尿があるような慢性腎臓病の場合、ARB/ACE阻害薬を中心にした方がよいとされています。

このように、高血圧の薬は単に「血圧を下げる薬」ではありません。全体の臓器の状況を考えながら、血管の硬さや自律神経、腎臓の状態やホルモンのバランスを調節し保護する目的で投与されるものなのです。

それでは、次にそれぞれの薬剤について、みなさんが飲まれている薬の特徴も踏まえながら、さらに詳しく解説していきます。

高血圧の薬その1:カルシウム拮抗薬

① カルシウム拮抗薬の効果と種類

体の細胞の中に存在する「カルシウム」。実はカルシウムは、骨を作るだけではありません。体の様々な働きを助けていて、特に筋肉を収縮させたり、神経が信号を送る際に大切な役割を担っています。血管の壁も筋肉でできているので、カルシウムがそこに入り込むと血管が収縮して細くなります。そのため、カルシウムが強く作用すると、血圧が上がることがあります。

カルシウム拮抗薬は、名前の通り、カルシウムの働きを「抑える薬」です。血管の筋肉にカルシウムが入るのを防ぐことで、筋肉は収縮しにくくなり、血管がリラックスして広がります。また、心臓にも作用して、心臓が血液を送り出す力を抑えるため、心臓の負担も軽減されます。そのため、高血圧だけでなく「冠攣縮性狭心症」という心臓の疾患にもカルシウム拮抗薬は使われたりしますね。

カルシウム拮抗薬には例えば以下の薬があり、それぞれの薬の特徴は次の通りです。(カッコ内は商品名)

  • アムロジピン(ノルバスク、アムロジン):長時間作用型で、1日1回の服用が一般的。高血圧治療に多く使われています。
  • ニフェジピン(アダラート):速効性があり、血圧が急に上昇した際の緊急降圧にも使用。徐放型(ゆっくり効くタイプ)もあり、効果が長く続きます。
  • シルニジピン(アテレック):血圧を下げる効果があり、むくみなどの副作用が少ないとされています。
  • アゼルニジピン(カルブロック):血圧をゆっくりと下げ、持続的な効果を発揮。心拍数への影響が少なく、安定した降圧効果が期待されます。
  • ベニジピン( コニール):冠攣縮性狭心症にも使用され、T型カルシウムチャネルにも作用することで、幅広い症状に対応します。
  • ジルチアゼム(ヘルベッサー):心拍数を安定させる作用があり、狭心症や不整脈の治療にも使用されます。
  • ベラパミル(ワソラン):心拍数を強く抑える効果があり、特に脈が速くなるタイプの不整脈に適しています。

② カルシウム拮抗薬の副作用と注意点

このように血管の筋肉の収縮を抑え、心臓にもよい影響を与え、不整脈も改善する作用がありますが、副作用が発生することがあります。例えば、次の通りです。

  • 頭痛: 血管が急に拡張することによって、頭痛が起こることがあります。これは血管の変化に体が順応する過程で発生することが多いです​
  • ほてり: 顔面や体がほてる感じがすることがあります。これも血管拡張による症状です。
  • むくみ(下肢浮腫): 特に脚のむくみは、ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬の副作用としてよく見られます。動脈が拡張することで、毛細血管に流れる血液量が増加し、間質に体液が漏れ出しやすくなるためです​
  • 低血圧: 過度に血圧が下がると、めまいや立ちくらみを引き起こすことがあります。
  • 徐脈(脈が遅くなる): 非ジヒドロピリジン系の薬剤(例: ベラパミル、ジルチアゼム)は心拍数を抑える効果があり、過度に抑えられると脈が遅くなりすぎることがあります。
  • 歯肉増殖症: 一部のカルシウム拮抗薬は、歯茎が腫れる(歯肉増殖症)という副作用を引き起こすことがあります。

ただし、実際に経験することはそこまで多くなく、副作用は比較的すくないのが特徴といえます。また、アムロジピンやニフェジピンは妊娠中にも安全に使用できる薬として認可を受けたのも大きな特徴といえますね。

しかし「グレープフルーツと併用は避けるようにすべき」という点には注意が必要です。グレープフルーツは肝臓にあるカルシウム拮抗薬を代謝する酵素「CYP3A4」の働きを弱めるので、カルシウム拮抗薬が効きすぎてしまう可能性があるのです。

グレープフルーツだけでなく、「フラノクラリン類」という成分が入っているスウィーティー、だいだい、ぶんたん、夏みかん、はっさく、ざぼんなども併用に注意が必要になります。

(参照:国立成育医療センター「高血圧の治療に使われる2つの薬が”妊婦禁忌”解除へ ~妊娠中に高血圧を抱える女性が、安心して治療に臨める環境づくりに貢献~」

高血圧の薬その2:ARB・ACE阻害薬

① ARB・ACE阻害薬の効果と種類

血圧を調節するホルモンもさまざまなありますが、最も強力に血圧を調整したり、体の水分バランスを保ったりする働きがあるのが「レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)」という経路です。

特に、中心になるのが「アンジオテンシンII」。アンジオテンシンIIは、血管を収縮させ、血圧を上げる働きがあります。また、腎臓に作用して水分と塩分を体に溜め込むことで、さらに血圧を上昇させます。ARBもACE阻害薬もどちらもアンジオテンシンIIの働きを抑えることで、血圧を下げる効果を発揮します。

ARBはアンジオテンシンIIが作用する「受容体」をブロックします。つまり、アンジオテンシンIIがその受容体に結合できないようにすることで、血管が収縮するのを防ぎ、血圧が上がるのを抑えます。

一方、ACE阻害薬はACE阻害薬は、アンジオテンシンIIが作られるのを防ぐ薬です。アンジオテンシンIIは、「アンジオテンシンI」という物質が「アンジオテンシン変換酵素(ACE)」によって変換されて作られます。ACE阻害薬はこの変換酵素の働きを阻止することで、アンジオテンシンIIの生成を抑え、降圧効果を発揮します。

ARBやACE阻害薬は単に血圧を下げる目的だけで処方される薬ではありません。例えば腎臓を保護する目的で使うことがあります。アンジオテンシンIIは腎臓の血管に対しても強く作用し、腎臓の中の圧力を高め、腎臓に悪い影響を与えることで知られます。そのため、ARBやACE阻害薬を投与することで、腎臓の圧力を減らし腎臓を保護する作用があると考えられているのです。慢性腎臓病診療ガイドライン(高血圧編)でもARBやACE阻害薬は第一選択薬として挙げられていますね。

また、ARBやACE阻害薬は心臓に対しても保護的に作用するといわれています。例えば、8513人に対する5年間の追跡調査によると、心臓に参加時点で問題がなかった方でも、ACE阻害薬やARBは全死亡率または非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、心臓への入院のリスク低下と有意に関連していることが示されています。(18%低下、HR 0.82、95% 信頼区間:0.70~0.96、P  = 0.011)

そのため、腎臓や心臓への効果を考えてARBやACE阻害薬を投与するケースがありますね。

ARBとACE阻害薬の違いはARBの方がより直接的にアンジオテンシンIIの作用するので、副作用が少なりやすい(特にACE阻害薬は咳が多くなるという副作用があります)点と、ACE阻害薬よりも新しい薬である点ですね。

ARB・ACE阻害薬には例えば以下の薬があります。(カッコ内は商品名)

ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)の種類

  • アジルサルタン(アジルバ)
  • イルベサルタン(アバプロ、イルベタン)
  • オルメサルタン(オルメテック)
  • バルサルタン(ディオバン)
  • ロサルタン(ニューロタン)
  • カンデサルタン(ブロプレス)
  • テルミサルタン(ミカルディス)

それぞれの薬は、代謝する前のプロドラックだったり、降圧効果だったり、配合剤の種類だったりという面で異なります。例えば、2010年にARBの4つの製剤の降圧効果を比較した論文によると、カンデサルタン>イルベサルタン>バルサルタン>ロサルタンの順に降圧効果が高いといわれていますね。

ACE(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)の種類

  • イミダプリル(タナトリル)
  • エナラプリル(レニベース)
  • デラプリル(アデカット)
  • シラザプリル(インヒベース)
  • キナプリル(コナン)
  • テモカプリル(エースコール)
  • ペリンドプリル(コバシル)
  • リシノプリル(ゼストリル、ロンゲス)

ARBが発売されてから、咳がでやすくなるなどの副作用の点などから使われなくなってきていますが、ARBよりも安価であることや臨床実績が古くからあり蓄積されていることなどから、処方されるケースもあります。また、咳が出やすいということは誤嚥性肺炎を防ぎやすいという利点にも使われるので、副作用を逆手にとって使うケースもありますね。

(参照:Comparative ARB pharmacology

② ARB・ACE阻害薬の副作用と注意点

血圧を下げるだけでなく、心臓や腎臓にも保護的な作用を示す薬として名高いARB・ACE阻害薬ですが、いくつか注意点があります。例えば次の通りです。

  • 高カリウム血症: ARBは腎臓でのカリウムの排出を抑制するため、血中のカリウム濃度が高くなりすぎることがあります。これは特に腎機能が低下している患者や、カリウムを補う薬を併用している患者に多く見られます​。
  • 低血圧: 特に高齢者や、利尿薬を使用している場合、過度に血圧が下がりすぎることがあります。めまいやふらつきが起こることがあるため、注意が必要です。(これはどの血圧の薬にもいえますね)
  • 腎機能の低下: 腎臓に既に問題がある患者では、ARBによって腎機能がさらに悪化する可能性があります。定期的な血液検査で腎機能を確認することが推奨されます。

また、加えて、ACE阻害には次の副作用があります。

  • 空咳: ACE阻害薬の副作用として最もよく知られているのが「空咳」です。これはブラジキニンという物質の分解が抑えられ、咳が引き起こされるためです。約10-20%の方で出てきます。

ARBとACE阻害薬のいずれも、妊娠中の使用は禁忌です。胎児に悪影響を与える可能性があるため、妊娠中や妊娠の可能性がある場合は必ず医師に相談してください。

高血圧の薬 その3:利尿薬

① 利尿薬の効果と種類

利尿薬は、体内の余分な水分や塩分(ナトリウム)を尿として排出することで、血液の量を減らし、結果的に血圧を下げる薬です。水分や塩分が体内に多すぎると、血液の量が増加し、血圧が高くなりますが、利尿薬はこの血液量を下げることで血圧を下げる働きがあります。

実際には、利尿薬にも様々な種類があり、それぞれ作用する場所が異なります。

一番降圧薬として使われるのが「サイアザイド系利尿薬」です。サイアザイド系利尿薬は、腎臓の「遠位尿細管」という部分で作用します。この部分では、体に再吸収されるはずだった塩分や水分を外に排出するようにします。

体内の水分量を減らしてむくみ治療などに使われやすいのが「ループ利尿薬」。腎臓の「ヘンレのループ」という場所で作用します。この部分は塩分の再吸収が最も多い場所です。ループ利尿薬は、塩分の再吸収を強力に抑制するため、尿の量が大幅に増加しするので、一気に体内の水分量を減少させます。心不全の治療薬にも使われますね。

最後に最近使われやすいのが「カリウム保持性利尿薬」。他の利尿薬では、ナトリウムの他にカリウムも捨てられてしまうのが欠点でしたが、この利尿薬は腎臓の「集合管」という部分で作用し、塩分と水分の排出を促しながら、カリウムを体内に保つ効果があります。あとは高血圧にはあまり使われませんが、「バソプレシン受容体拮抗薬」というのもあります。

このように、利尿薬1つでも色んな薬があるのですね。具体的な薬の種類は以下の通りです。(高血圧に適応症がなくても、血圧に左右する可能性があるので、広めに掲載しています)

サイアザイド系利尿薬

  • ヒドロクロロチアジド(HCTZ):高血圧治療によく使用されます。多くの配合錠にも使用されていますね。
  • トリクロルメチアジド(フルイトラン):塩分と水分の排出を促し、血圧を下げる効果があります。
  • インダパミド(ナトリックス):長時間作用型の利尿薬で、血圧を安定して下げる作用があります。

ループ利尿薬

  • フロセミド(ラシックス):強力な利尿作用を持ち、特に心不全やむくみの治療に使われます。
  • トラセミド(ルプラック):作用が持続し、心不全や腎不全に伴う浮腫の治療に有効です。
  • アゾセミド(ダイアート):腎臓に作用して塩分と水分の排出を増やし、体内の過剰な水分を取り除きます。

カリウム保持性利尿薬

  • スピロノラクトン(アルダクトンA):ナトリウム排出を促進し、カリウムを保持することで電解質バランスを保ちながら血圧を下げます。
  • エプレレノン(セララ):カリウム保持性利尿薬の一種で、特に心不全や高血圧の治療に使われ、副作用が少ないのが特徴です。原発性アルドステロン症の治療にも使われます。
  • エサキセレノン(ミネブロ):新しいタイプのカリウム保持性利尿薬で、高血圧の治療に使用されます。

バソプレシン受容体拮抗薬

  • トルバプタン(サムスカ):水分だけを排出し、電解質を保ちながら利尿作用を発揮する薬で、主に心不全や多嚢胞腎などの治療に使われます。

② 利尿薬の副作用と注意点

このように、体液が過剰であるむくみ治療や心不全の治療にも使われる薬ですが、体液の量自体を変化させる利尿薬は取り扱いも十分気を付ける必要があります。例えば副作用としては次の通りです。

  • 低カリウム血症:サイアザイド系やループ利尿薬によってカリウムが過剰に排出され、筋肉のけいれんや不整脈を引き起こすことがあります。
  • 低ナトリウム血症:過剰なナトリウム排出により、頭痛やめまい、意識障害を引き起こすことがあります。
  • 脱水症状:尿量が増加することで体内の水分が不足し、口渇やめまいを引き起こす​ことがあります。
  • 高尿酸血症:尿酸の排泄が抑制され、痛風のリスクが増加する可能性があります。
  • めまい・ふらつき:利尿薬による血圧低下で、立ちくらみやめまいが起こることがあります。

簡単にいうと、電解質や体液のバランスがくるってしまうことがあるというわけですね。だからこそ、定期的な採血などで体液量や電解質のバランスなどを定期的にモニタリングする必要があります。

高血圧の薬その4:自律神経に作用する薬

① 自律神経に作用する薬の効果と種類

自律神経は、体の活動やリラックスを制御する「交感神経」と「副交感神経」があります。交感神経は「緊張モード」で、心拍数を上げ、血管を収縮させることで血圧を上げます。一方、副交感神経は「リラックスモード」で、心拍数を下げ、血圧を下げる作用があります。つまり、自律神経の交感神経を抑えることで血圧を下げようというのが「自律神経に作用する降圧薬」になります。

具体的には、心臓に分布されている交感神経の受容体「β受容体」に作用するβ遮断薬と血管の「α受容体」に作用して、交感神経による血管の収縮を抑える「α遮断薬」があります。また、脳の中枢で交感神経の活動を抑制する薬もありますね。β遮断薬は心臓に作用するので、心拍数が減る作用もあります。

これらは、心不全の病態があったときや、今までの降圧薬で効果が十分になかった時に使われますね。例えば、次のような薬が使われます。

  • アテノロール(テノーミン):交感神経の「β受容体」をブロックし、心臓の拍動を抑えて血圧を下げます。心拍数の抑制が特に期待される薬です。
  • メトプロロール(セロケン、ロプレソール):β遮断薬の一種で、交感神経の活動を抑えることで心臓の負担を軽減し、血圧を低下させます。狭心症や不整脈の治療にも使用されます。
  • ビソプロロール(メインテート):選択的なβ1受容体遮断薬で、心臓に主に作用し、心拍数を抑えて血圧を下げます。心不全や狭心症にも使用される、安全性の高い薬です。
  • プラゾシン(ミニプレス):血管の「α受容体」をブロックし、血管を拡張して血圧を下げますが、よく前立腺肥大症の治療薬に使われることが多いですね。
  • ドキサゾシン(カルデナリン):α遮断薬で、交感神経の影響を抑制し、血管を広げることで血圧を下げます。夜間の高血圧の治療にも用いられます。(起立性低血圧の可能性があるので、少量から使用されます)
  • クロニジン(カタプレス):脳の中枢で交感神経の活動を抑制し、心拍数と血圧を低下させます。特に、重症の高血圧や慢性的な高血圧の管理に用いられます。
  • メチルドパ(アルドメット):中枢神経に作用し、交感神経の興奮を抑制して血圧を低下させる薬です。妊娠中の高血圧にも安全に使用されるのが特徴です。

② 自律神経に作用する薬の副作用と注意点

自律神経自体を整え、心臓の負荷を取り除いたりすることができるので、心不全の治療にも使われる薬ですが、その分、いろいろな注意点があります。例えば、以下の通りです。

  • 低血圧・めまい:薬の効果が強すぎる場合、血圧が急激に下がり、めまいや立ちくらみを引き起こすことがあります​。特に起立性低血圧がある方はα遮断薬は使わない方がよいでしょう。
  • 徐脈:心拍数が過度に低下し、疲労感や息切れを感じることがあります。特にβ遮断薬を使用している場合に注意が必要です
  • 気道収縮:一部のβ遮断薬は気道を狭め、呼吸困難を引き起こすことがあるため、喘息やCOPDの患者には注意が必要です。一部の薬は併用禁忌となっています。

また、他の薬と相互作用をきたしやすい薬が多いので、利尿剤・ARB/ACE阻害薬・カルシウム拮抗薬でどうしても下がらない時や、動悸や心不全などの症状があるときに使用されることが多いですね。

高血圧の薬にはさまざまな配合剤があります

このように多くの薬が「高血圧の薬」として使用されているわけですが、通常2剤以上併用することもしばしば。そのため、2剤以上の成分を配合したものがあり、錠剤数を少なくして飲みやすいように工夫されています。例えば、次のような薬です。(その分薬価も少し下がります)

① ARB+カルシウム拮抗薬

  • エックスフォージ(バルサルタン + アムロジピン)
  • レザルタス(オルメサルタン + アゼルニジピン)
  • ユニシア(カンデサルタン + アムロジピン)
  • ミカムロ(テルミサルタン + アムロジピン)
  • アイミクス(イルベサルタン + アムロジピン)
  • ザクラス(アジルサルタン + アムロジピン)
  • アテディオ(バルサルタン + シルニジピン)

これらの薬はARBで腎臓のアンジオテンシンIIに作用して血圧を下げる効果とカルシウム拮抗薬での末梢血管を緩める作用が働くので、その分強力に血圧を低下させる力があります。どちらも比較的副作用がつくなく、使われやすい薬の1つです。

② ARB+利尿薬

  • プレミネント(ロサルタン + ヒドロクロロチアジド)
  • コディオ(バルサルタン + ヒドロクロロチアジド)
  • エカード(カンデサルタン + ヒドロクロロチアジド)
  • イルトラ(イルベサルタン + トリクロルメチアジド)
  • ミコンビ(テルミサルタン + ヒドロクロロチアジド)
  • アバプロ(イルベサルタン + ヒドロクロロチアジド)

ARBにはカリウムを上げる副作用があるので、カリウムを下げやすい利尿薬は理にかなった処方とも言えます。ただし、利尿薬による脱水には注意が必要です。特に塩分感受性が強い高血圧の方は非常に効果を発揮しやすい薬といえるでしょう。

③ ARB+利尿薬+カルシウム拮抗薬

  • ミカトリオ(テルミサルタン + アムロジピン + ヒドロクロロチアジド)

なんとARBと利尿薬とカルシウム拮抗薬がすべて配合された薬もあります。どうしても単剤、2剤併用でコントロールできないときに使用されますね。1剤で色んな作用をしめすので便利な分、細かい調節がしにくいのが欠点です。

あとは、エンレストといって、ARBであるバルサルタンとサクビトリルという血管を拡張させナトリウム排泄を促す治療薬も高血圧の治療薬として使用されます。慢性心不全の治療としても使われる薬で、心臓の保護効果が注目されている薬です。

このように、配合剤まで含めると非常に多くの種類があることがわかりますね。

高血圧の薬についてのまとめ

高血圧の薬について概説していきました。高血圧の薬は単に「血圧を下げるだけの薬ではない」ことがお判りいただけたでしょう。私も、高血圧に対して同じような処方ではなく「この人にはどんな高血圧の薬が一番あっているか」を考えながら処方するようにしています。(もちろん「処方しない」という選択もすることもあります)

高血圧の薬というと、製薬会社の癒着の話や患者を食い物にしているなどネガティブなイメージを持たれやすい薬ですが、うまく使いこなせれば将来のあなたの健康寿命に大きく関わる薬であることは間違いありません。

ぜひかかりつけの医師と相談いただきながら、高血圧とも上手に付き合っていただきたいと思います。

【この記事を書いた人】 
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。

あわせてこちらもオススメです

関連記事

  1. 3種類の肺炎球菌ワクチンの効果について(ニューモバックス・バ…

  2. 【医師が解説】やる気が出ない時の内科的な病気について

  3. アトピーと花粉症の関係は?花粉でアトピーが悪化する理由や対処…

  4. 鉄分不足による貧血「鉄欠乏性貧血」の原因や食事・治療について…

  5. 【医師が解説】腸内フローラ検査(腸内細菌叢検査)の方法や費用…

  6. 骨粗しょう症(骨粗鬆症)の原因や症状・治療から予防まで解説 …

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

CAPTCHA


ピックアップ記事

新着記事 おすすめ記事
PAGE TOP