世界で流行しており、日本でも感染拡大が懸念されている「はしか(麻しん)」。
空気感染で感染力が強く有効な治療薬もないことから「麻しんに対して免疫がきちんとついているか」が非常に重要になってきます。
しかし、麻しんワクチンを子供のころに打っていなかった方や流行期から外れている方は、もしかすると十分な免疫がないかもしれません。
そこで、麻しんに対して十分な免疫があるかどうかをチェックすることができるのが「抗体検査」です。
今回は、麻しんの抗体検査の具体的な方法や費用・基準値について解説していきます。
麻しんや麻しんワクチンについては
もあわせて参照してください。
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はしか(麻しん)の抗体検査とは?
はしか(麻しん)の抗体検査とは「過去に麻しんウイルスに感染していたかを調べる検査」です。
麻しんウイルスに感染したり麻しんワクチンを接種すると、麻しんに対して適切に免疫が反応するために「抗体」とよばれるタンパク質が作られるようになります。感染初期に作られるのが「IgM(アイジーエム)抗体」、感染後期に多量に作られるのが「IgG(アイジージー)抗体」です。
麻しんの抗体検査では、この「IgG抗体」の量を調べることで、麻しんに対して十分免疫力があるかどうかがわかります。
はしか(麻しん)は当時は非常に流行していて、自然にかかってしまうことも多い感染症でした。
そのため、はしかの予防接種が1966年から任意接種として開始され、1978年10月から定期接種となりました。当時、定期接種の対象年齢は「生後12カ月から72カ月未満」でとなっています。
その後、対象年齢が年を追うごとに拡大していきます。
1995年には対象年齢は「生後12か月から90か月未満」までに拡大し、2006年にはMRワクチン(麻しん風しんワクチン)が登場して「1回目:12カ月から24カ月未満、2回目:小学校入学前の5歳~7歳未満」に拡大しました。
このように世代によって麻しんワクチン接種の状況が異なってくるのですね。そのため、2008年から2012年までの間は中学1年生と高校3年生を対象にして2回目MRワクチン接種の機会が設けられるなどの対策が講じられています。
しかし、個人個人で見ていくと「日本国民全員が100%十分抗体がある」とはいえない状況です。2022年に行われた麻しんに対する抗体検査(PA法)の状況を見たグラフによると、
- 16倍以上の必要最低限に麻しんに対して抗体がある人の割合:95.6%
- 128倍以上の発症を抑えるのに抗体を持っている人の割合:85.7%
となっています。裏を返すと、残り4.4%、つまり25人に1人くらいは必要最低限の抗体をもっていないことがわかりますね。特にグラフからは10代の方と70歳以降の方の抗体が落ちかけているのが目立ちます。
麻しんには現在有効な治療薬があるわけではありません。そのため、はしかが流行する前に、特に抗体検査で抗体価が少ない方を対象にワクチン接種をすすめる動きが出てきています。
(参照:Risk Assessment for Measles – Japan, March 2024)
はしか(麻しん)の抗体検査の基準値は?
はしかの抗体検査にも「EIA(酵素免疫測定法)IgG検査」や「HI(赤血球凝集抑制法)」など、さまざまな種類があって、検査方法によって基準値が異なります。はしかの抗体検査方法と基準値については次の通りです。
- EIA-IgG法
- 陰性:2.0未満
- 十分な抗体がない:2.0~15.9
- 十分な抗体がある:16以上
- PA法
- 陰性:16倍未満
- 十分な抗体がない:16倍、32倍、64倍、(128倍)
- 十分な抗体がある:128倍、256倍以上
- HI法
- 陰性:8倍未満
- 十分な抗体がない:8倍、16倍、32倍、64倍
- 十分な抗体がある:128倍
- NT法
- 陰性:4倍未満
- 十分な抗体がない:4倍
- 十分な抗体がある:8倍以上
当院では、感度がもっともすぐれていることから、主に「EIA-IgG法」を採用しています。
はしか(麻しん)の抗体検査の費用は?
はしか(麻しん)の抗体検査の費用は次の通りです。
はしか(麻しん)の抗体検査費用(税込) | 3,500円 |
日数は5~7日くらいかかります。結果は来院して説明の上でお渡ししております。水痘や風疹の抗体検査なども一緒に受けることも可能ですので、一緒に受けたい場合はおっしゃってください。
【この記事を書いた人】
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。
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