尿酸値や痛風のリスクを下げる食べ物・飲み物について【ランキング・コンビニ】

痛風の痛み、それは「風が吹くだけで痛い」と表現されるほど壮絶なものです。 あるいは、健康診断の結果表を見て「尿酸値(UA)」の項目にある『H(High)』の文字に、ドキッとした経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

「ビールを控えなきゃ……」 「美味しいものはもう食べられないのか……」

そんなふうに肩を落としているあなたに、朗報です! 実は、近年の科学的な研究によって、尿酸値対策の常識は「劇的」に変わりました。

かつては「プリン体を徹底的に避ける(引き算の栄養学)」が主流でしたが、現在は「尿酸値を下げる食材を積極的に摂る(足し算の栄養学)」ことの重要性が、世界トップレベルの研究で次々と証明されているんですね。

今回は、最新の医学論文や科学的エビデンスに基づき「尿酸値や痛風のリスクを下げる食べ物や飲み物」をランキング形式でお伝えするとともに、今日からできる「コンビニ活用術」について、分かりやすく解説していきます。

【はじめに】尿酸値や痛風のリスクを下げるために知っておきたいこと

尿酸値を下げる食べ物をランキング形式でお伝えする前に、お伝えしたいことがあります。

それは、多くの人が誤解しているのですが、食事から摂取するプリン体が尿酸値に与える影響は、全体のわずか20〜30%程度に過ぎないということです。では、残りの70〜80%はどう決まるのでしょうか?

それは、「体内で作られる量」と「体から排泄される量」のバランスです。

近年の研究で、尿酸値を高くしてしまう真犯人(黒幕)の一つが「インスリン抵抗性」であることがわかってきました。簡単に言うと、肥満や糖質の摂りすぎでインスリンというホルモンの効きが悪くなると、腎臓が「尿酸を体の外に出すな!」という指令を出してしまうんですね。

つまり、いくらビールやレバーを我慢しても、甘いものを食べてインスリンがドバドバ出ていたり、代謝が悪かったりすれば、尿酸値は下がらないのです。

今回ご紹介するランキングは、単にプリン体が少ないだけでなく、この「インスリン」や「尿酸の排泄機能」に働きかけ、体の内側から尿酸値を下げてくれる食品たちなのです。

それでは、エビデンスレベル(科学的根拠の強さ)が高い順に見ていきましょう。

尿酸値や痛風のリスクを下げる食べ物 第1位:低脂肪乳製品(牛乳・ヨーグルト)

堂々の第1位は、意外かもしれませんが「低脂肪乳製品」です。

えっ、牛乳やヨーグルト?」と思われる人もいるかもしれませんね。

2018年に中国で発表された、複数の論文をまとめた論文によると、乳製品を最も多く摂取していたグループは、最も少なかったグループに比べて、痛風の発症リスクが44%も低かったとしています。約半減です。これは無視できない数字ですよね。

また、日系ブラジル人1330人を対象とした尿酸値と乳製品の関係についての論文では、乳製品を摂取量に応じて3グループに分けて、高尿酸血症(女性が6mg/dl以上、男性7mg/dl以上)の有無を解析しています。

その結果によると「最も乳製品を摂取しているグループは摂取していないグループよりも34%高尿酸血症になりにくい」ということがわかっています。(95%信頼区間:53%-6%低下)

しかも、高尿酸血症の薬を服用していない方だけを抽出しても、その結果は変わらなかったということです。

では、なぜ低脂肪乳製品が尿酸値を下げるのか。以下の成分が考えられています。

  • カゼイン(タンパク質): 牛乳のタンパク質が分解される過程で、尿酸の排出を助ける働きをします。
  • オロト酸(Orotic Acid): 牛乳に含まれるオロト酸は、腎臓で「尿酸を血管に戻そうとする働き(再吸収)」をブロックし、「尿酸を尿として外に出せ!」と促します。
  • 抗炎症作用: 万が一、尿酸の結晶ができても、それが激しい痛みを引き起こさないように炎症を抑える成分(グリコマクロペプチドなど)が含まれています。

このように、牛乳やヨーグルトに含まれる成分が尿酸の排出や痛風発作を抑えるのに「ちょうどよい」成分になっているんですね。

ここで1つ重要な注意点があります。それは「選ぶ乳製品は『低脂肪』である」ということです。

脂肪分(飽和脂肪酸)の多い乳製品は、先ほどお話しした「インスリン抵抗性」を悪化させ、せっかくの尿酸排出効果を打ち消してしまう可能性があります。 必ず「低脂肪乳」「無脂肪乳」「脂肪0ヨーグルト」を選んでください。これが鉄則です。

詳しくは尿酸値を下げる飲み物とは?牛乳と痛風・尿酸値の関係について解説も参照してください。

(参照:Hyperuricemia and associated factors: a cross-sectional study of Japanese-Brazilians. Cad Saude Publica. 2011 Feb;27(2):369-78.)
(参照:Dietary factors and risk of gout and hyperuricemia: a meta-analysis and systematic review

尿酸値や痛風のリスクを下げる食べ物 第2位:コーヒー

第2位は、多くの人が愛飲している「コーヒー」ですね。 「コーヒーを飲むと水分が奪われて良くないのでは?」というのは古い認識かもしれません。

2016年に発表された複数の論文をもとにした解析によると、コーヒーの消費量が多いと、逆に痛風の発生率が43%に減少することがわかりました(95%信頼区間:31%から59%)

また、17万人の日本人および3000人の痛風をもつ男性を対象した防衛医大の報告でも「尿酸値レベルの調整した後でもコーヒー消費量の増加による痛風リスクが50%減少する」ことが示されています。(95%信頼区間:31%-81%)

ちなみに、コーヒーは痛風のリスクを下げますが、尿酸値そのものを下げる効果ははっきりしていません。(しかし、痛風のリスクを下げる効果が非常に強いことと、大規模臨床試験が行われている点で第2位としています)

なぜコーヒーが痛風に良いのか。実は、カフェインそのものよりも、コーヒーに含まれるポリフェノール(クロロゲン酸など)が重要な働きをしています。

コーヒーのポリフェノールには、血糖値のコントロールを助け、インスリンの働きを良くする効果があります。その結果、腎臓での尿酸排泄がスムーズになるとされているのです。

最近の研究では、カフェインレスコーヒーでも同様の保護効果があることがいわれているので、カフェインが苦手な方はカフェインレスコーヒーにした方がよいですね。

もちろん、砂糖たっぷりの缶コーヒーはNGです。砂糖(特に果糖)は尿酸値を急激に上げてしまいます。 飲むなら「ブラック」か、第1位の「低脂肪乳」を入れたカフェオレにするとよいでしょう。

詳しくは痛風・尿酸値とコーヒーの「意外な」関係について【砂糖はOK?何杯まで?】も参照してください。

(参照:Coffee Consumption Reduces Gout Risk Independently of Serum Uric Acid Levels: Mendelian Randomization Analyses Across Ancestry Populations
(参照:Is coffee consumption associated with a lower risk of hyperuricaemia or gout? A systematic review and meta-analysis

尿酸値や痛風のリスクを下げる食べ物 第3位:サクランボ(特にタルトチェリー)

第3位は、フルーツ界からのランクイン、「サクランボ」です。 特にアメリカでは「痛風にはチェリー」と言われるほど有名な民間療法でしたが、これが科学的にも正しいことが証明されました。

633人の痛風患者さんを対象とした研究によると、サクランボ(1日10〜12粒相当)を食べると、痛風発作を再発させるリスクが35%低下したとされています。

さらに、尿酸値を下げる薬(アロプリノール)を服用している人がサクランボを食べると、リスク低減効果は75%に達したとされていますね。薬との相乗効果で75%減というのはなかなか驚異的な数字ではないでしょうか。

なぜ、サクランボが尿酸や痛風に効果的なのは、サクランボの鮮やかな赤色を作り出している「アントシアニン」のおかげ。

アントシアニンには強力な抗炎症作用があります。その仕組みは、ロキソニンなどの痛み止め(NSAIDs)と似ており、尿酸結晶による炎症を鎮めてくれるんです。また、タルトチェリージュースを飲んだ後、数時間で血清尿酸値が低下し、尿中への排泄が増えたという実験結果もありますね。

アントシアニンは他にも、ブルーベリー、ぶどう、カシス、プルーン、やなす、紫キャベツ、紫玉ねぎ、赤しそ、黒豆などにも含まれています。痛風予防に普段の食事から取り入れてみるのもよいでしょう。

(参照:Cherry Consumption and the Risk of Recurrent Gout Attacks

尿酸値や痛風のリスクを下げる食べ物 第4位:ビタミンC

第4位は、身近な栄養素「ビタミンC」です。 美容に良いイメージが強いですが、実は腎臓にも良い働きをしてくれますね。

13の臨床試験(合計556人)をまとめた解析によると、ビタミンCサプリメント(1日500mg程度)を摂取することで、血清尿酸値が平均で0.35 mg/dL低下することが確認されました。

「たった0.35?」と思うかもしれませんが、尿酸値の0.1を下げるのは実は結構大変なこと。それをサプリメントだけで達成できるのは意義深いことです。

さらに、46,994名を対象とした20年間におよぶ追跡調査では、ビタミンCを多く接種すればするほど、痛風予防の効果は高く、500~999mg/日で17%の低下、1,000~1,499mg/日で34%の低下、1,500mg/日以上で45%の低下とも言われていますね。

ビタミンCは、腎臓のトランスポーター(運び屋)に対して、「尿酸の再吸収をやめさせ、外に出す」ように働きかける作用(競合阻害)があると考えられています。

一般的に1日500mg〜1000mg程度の摂取が推奨されます。ただし、過剰摂取(数グラム単位)は結石のリスクになることもあるので、適量を守りましょう。

(参照:Vitamin C Intake and the Risk of Gout in Men – A Prospective Study
(参照:Effect of oral vitamin C supplementation on serum uric acid: a meta-analysis of randomized controlled trials

【要注意】尿酸値を高める可能性のある食材は?

尿酸や痛風にとって良いものを知ると同時に、絶対に避けるべきものも再確認しておきましょう。

  1. アルコール(最強の敵) アルコール自体が尿酸値を上げますが、ビールはプリン体も多く、最も尿酸値を上げやすいお酒です。ただし「ビール以外なら大丈夫」というわけではないことに注意しましょう。お酒全般、要注意です。(ワインもリスク上昇しやすいことがいわれています)
  2. 果糖(フルクトース): ここが盲点です清涼飲料水や甘いジュースに含まれる「果糖ブドウ糖液糖」。これは体内で代謝される際に、ATP(エネルギー)を枯渇させ、尿酸を大量生産させます。「お酒は飲まないけどコーラは飲む」という人は要注意です。
  3. 高プリン体食: やはり伝統的な高プリン体食品は、直接的に尿酸値を上げます。頻繁に食べるのは避けましょう。レバーや豚ロース、魚の卵、干物などには要注意ですね。

これらの食事をとっている場合は、「アクセルとブレーキを両方踏んでいる状況」になるので、上記の「尿酸値を下げる食品」をとっていても尿酸値が下がるかどうかはわかりません

せっかく尿酸値を生活習慣で改善したいと思っているのなら、リスクがある食品をとらないよう注意しましょう。

尿酸値を下げる食品をコンビニで選ぶとすると?

「理屈はわかったけど、毎日何をどう食べればいいの?」 そんな忙しいあなたのために、日本のコンビニ(セブンイレブン、ローソン、ファミリーマート)で買える商品を使った、具体的な実践プランをご提案します。

① ギリシャヨーグルトや機能性ヨーグルト

一番のオススメな商品はヨーグルト系ですね。特に、ギリシャヨーグルトは脂肪ゼロで高タンパク。非常に濃厚なので、デザート代わりになります。 甘いケーキやプリンを食べるなら、絶対にこちらを選んでください。インスリンの急上昇を抑え、尿酸ケアに繋がります。

また、機能性ヨーグルトもオススメ。例えば、「PA-3乳酸菌」は「プリン体を食べる乳酸菌」です。 腸の中で食事由来のプリン体を直接取り込み、分解・消費してくれるとされていますね。

低脂肪ヨーグルト自体もオススメですが、こうした機能性ヨーグルトやギリシャヨーグルトにするとさらに効果的でしょう。

② 無糖のブラックコーヒー

第2位のコーヒーは、コンビニなら挽きたてが安く手に入りますよね。今は、コンビニごとに専用のマシンがあって、低価格で提供してくれています。

砂糖入りはNGですが、ミルク入り(カフェラテ)ならOKです。朝の1杯にいかかですか?

③ ミルクプロテイン

第1位の「低脂肪乳」の効果を最大限に得られるのがこれですね。 高タンパクで低脂肪。

さらにビタミンも含まれていますね。尿酸値を下げつつ、筋肉の材料にもなる、まさに一石二鳥のドリンクです。間食やランチのお供にもよいのではないでしょうか。

④ ノンアルコールビール

「やっぱりビール味が恋しい…」という方にはノンアルコールビールがよいですね。一部の商品には「アンセリン」という尿酸値を下げる成分が入っていたりします。

最近は、味もかなりビールに近いものになっているので、「アルコールがやめられなくて痛風を繰り返してしまう」という人にはオススメです(もちろんノンアルコールビールとはいえ、飲みすぎには注意が必要です)

【まとめ】「我慢」から「戦略的な食事」へ

長くなりましたが、最後に要点をまとめます。

これからの尿酸値対策は、「あれもダメ、これもダメ」と引き算ばかりしてストレスを溜める必要はありません。 科学的に正しい「足し算の戦略」を取り入れましょう。

  • 毎日1杯の「低脂肪乳」や「ヨーグルト」をプラス。(これでリスク44%減の可能性!)
  • コーヒーをブラックで楽しむ習慣をつける。(インスリンケア!)
  • 小腹が空いたら「サクランボ」や「ビタミンCサプリ」。
  • コンビニでは「PA-3」や「高タンパク低脂肪」を選ぶ。

これらは、尿酸値だけでなく、ダイエットや生活習慣病予防にもつながる健康的な習慣です。 まずは今日のお昼ごはん、あるいは帰りのコンビニから、あなたの体を変える「尿酸値・痛風にとってよい食事」を始めてみましょう!

【この記事を書いた人】 
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。

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