インフルエンザとコロナの症状の違いは?インフルエンザの隔離期間についても解説

冬になると流行してくる「インフルエンザ」。2020年と2021年は新型コロナの影響でインフルエンザウイルスは流行していませんでしたが、2022年からは夏には南半球の各国が、秋ごろからイギリスやアメリカでもインフルエンザウイルスが流行してきています。

そのため、日本でもインフルエンザウイルスが流行する可能性も十分考えないといけない状況です。今回はインフルエンザの特徴について、新型コロナとの違いや隔離期間・重症度などに含めて、幅広く解説していきます。

インフルエンザとは?

(インフルエンザウイルスの電子顕微鏡写真:JSM Mycotoxins 65(2), 81 – 99(2015)より転載)

インフルエンザは、インフルエンザウイルスを病原とする気道感染症のこと。一般的な風邪よりは重くなりやすい疾患であるため、分けて考えられています。英語名「Influenza」からわかる通り、流行や影響をあらわす「Influence」が語源です。

毎年、北半球では1月~2月ごろ、南半球では7~8月ごろにピークが起きます。日本でも毎年11月下旬から12月上旬ごろから始まり、翌年の1月~3月頃まで患者数が増加し、4月ごろから減少するのが一般的です。

ただし、年度によっても流行入りする時期は格差があります。流行入りが一番早くて9月、一番遅くて1月から流行した年もありました。

インフルエンザにもA型・B型・C型の2つの型がありますが、主に流行するのはA型とB型。突然変異をきたして大流行することもあり、1918年の「スペインかぜ」や1957年の「アジアかぜ」など特別に呼称されることもあります。(それぞれ39年間・11年間つづきました)

(参照:国立感染症研究所「インフルエンザとは」
(参照:厚生労働省「インフルエンザの発生状況」

インフルエンザの潜伏期間や主な症状は?

(Arch Intern Med. 2000;160(21):3243-3247.より転載)

インフルエンザは通常1~3日の潜伏期間の後に発症します。インフルエンザの主な症状は

  • 発熱(通常38度以上の高熱が主体です)
  • 頭痛
  • 全身倦怠感
  • 筋肉痛や頭痛

です。その後、咳や鼻水などの上気道症状が出現した後に1週間くらいの経過を経ておさまってきます。

特に、インフルエンザで多くなる症状としては、発熱と咳と鼻づまりです。インフルエンザワクチン未接種の平均年齢35歳を対象した調査では、インフルエンザ患者は咳(93% vs 80%)、発熱(68% vs 40%)、鼻づまり(91%vs81%)、特にインフルエンザが地域で流行している場合、発症後48時間以内に咳と発熱の両方があった方は、インフルエンザに感染している可能性が高い(正の予測値79%)としています。

この論文は2000年の論文なので新型コロナ流行前に執筆されたもの。しかし、これらの徴候があればインフルエンザも考えながら検査をすすめたほうがよいことになりますね。

(参照:Clinical Signs and Symptoms Predicting Influenza Infection. Arch Intern Med. 2000;160(21):3243-3247.

インフルエンザの子供の症状は?

(Clinical Infectious Diseases, Volume 43, Issue 5, 1 September 2006,Pages 564–568より一部転載:日本語に改訂)

では、インフルエンザの子供の症状の特徴は何でしょうか。多施設臨床試験で募集された5歳~12歳の子供468人の小児を解析した症状の特徴は

  • インフルエンザは発熱しやすい:通常のかぜの2.67倍で38.2度以上の熱が出る
  • インフルエンザは咳がでやすい:通常のかぜの5.19倍
  • インフルエンザはのどの痛みを訴えにくい:通常のかぜの0.41倍
  • インフルエンザは筋肉痛を訴えにくい:通常のかぜの0.61倍

といえます。ただし、こちらも2006年の論文であり、新型コロナ流行前の論文のため注意が必要ですね。ちなみに、2022年の新型コロナ・オミクロン株による5歳から12歳までの代表的な症状は

  • 発熱:81.3%
  • 喉の痛み:33.1%
  • :30.6%
  • 頭痛:25.5%
  • 鼻水 19.4%

となっていますので、喉の痛みがあるかどうかは子供の新型コロナとインフルエンザを分ける鑑別ポイントになるかもしれません。ただし、新型コロナでも33.1%しか喉の痛みが出ていないので確実ではありません。

いずれにせよインフルエンザも新型コロナも検査が必要ですし、いずれかを疑う状況でしたらぜひ医療機関に受診してください。

(参照:Symptomatic Predictors of Influenza Virus Positivity in Children during the Influenza Season. Clinical Infectious Diseases, Volume 43, Issue 5, 1 September 2006, Pages 564–568)

インフルエンザと新型コロナの症状の違いは?

今後、インフルエンザと新型コロナの同時流行が懸念されています。子供の場合は前述いたしましたが、どのように見分けていけばよいのでしょうか?両方を診察している身としては、個人的に以下のポイントがあげられると思います。(新型コロナは変異株の種類によって大きく異なりますが、下記で対象としている新型コロナはBA.5以降のものとなります)

① インフルエンザの潜伏期間の方が若干短め

インフルエンザの潜伏期間は平均2日(1~3日)とされていますが、新型コロナは茨城県の調査によると平均2.4日(2~4日)と若干新型コロナの方が長めに考えられています。

ただし、新型コロナの感染力の強さが強くなってきてから潜伏期間は短くなる傾向にあり、潜伏期間の違いからはなかなか鑑別することはできません。

② インフルエンザの方が「典型例」が多い

インフルエンザは、前述の通り「高い温度での発熱」「咳」「鼻づまりや筋肉痛」などを主訴とし、1週間くらいかけて徐々に回復していく疾患です。

一方、新型コロナは非常に多彩であり、ほとんど症状がない方もいる一方、喉の痛みが強くてご飯も食べられない方、呼吸が苦しくて息も難しい方など、訴える症状のバリエーションが非常に多いのが特徴。つまり、新型コロナの方が検査すべき対象とする方が広くなりやすいといえます。

ただし、新型コロナもインフルエンザのような「急な高熱と筋肉痛や咳」で発症される方もいますので、その場合は症状のみで鑑別するのは非常に困難です。

そのため、両者の鑑別が困難と判断した場合は、当院ではあらかじめ「インフルエンザと新型コロナを同時に判別する診断キット」を使って患者さんへの負担が少なくなるように配慮しています。

新型コロナ感染症のBA.5株、BQ.1株・BQ.1.1の症状の詳細については下記も参照してください。

③ 新型コロナの方が後遺症や罹患後症状であとまで続きやすい

インフルエンザにもインフルエンザ脳症などの合併症がありますが、後遺症の発現率は新型コロナの方がやはり多い印象にあります。

海外のデータからではオミクロン株による後遺症発現率は4.5%と約20人に1人は後遺症で悩まれています。実際、当院でもインフルエンザでは後遺症の相談をほとんど受けたことはありませんが、新型コロナになってから後遺症に関する相談を非常によく受けるようになりました。

オミクロン株での後遺症については新型コロナ「オミクロン株」 での後遺症の割合や症状・期間について【BA.5株】でまとめていますので、参考にしてください。

インフルエンザと新型コロナの予後の違いは?

(第111回感染症アドバイザリーボード資料によるインフルエンザと新型コロナの比較)

では、インフルエンザと新型コロナの予後の違いはどうなのでしょうか?

当初新型コロナは非常に高い致死率を誇っており、特に高齢者における重症率が問題になってきました。しかし、年数の経過とともに

  • オミクロン株による弱毒化
  • 重症化リスクの高い方への治療薬の開発
  • 外来や入院での治療ガイドラインの整備
  • 新型コロナワクチンの接種率の増加による重症化予防効果
  • 「既感染者数の増加」による抗体価の上昇

により、新型コロナの「脅威」は薄れてきています。実際、厚生労働省の発表によると、2022年7月~8月での致死率は60~70歳代でも0.18%、80歳以上1.69%と、統計の取り方は異なりながらも、インフルエンザと同等にまで落ちついてきていますね。

(これまでの感染症アドバイザリー資料に基づくインフルエンザと新型コロナの違い)

一方、(インフルエンザも風邪ではありませんが)「すべてがインフルエンザと同等」かというとそうではありません。前述の通り、新型コロナは罹患後症状として残りやすく、肺炎の発生率もインフルエンザよりも高い傾向にあります。

ゾコーバ®の誕生により「重症化リスクのない方も使える治療薬」も出てきましたが、治療薬が処方できる医療機関や処方できるタイミング・患者層も限られている状況です。

また、インフルエンザ以上に「後遺症・罹患後症状」の高いが大きいのも新型コロナの特徴ですので、インフルエンザと新型コロナは別個に考えたほうがよいでしょう。

今後の新型コロナの取り扱いにも注目されるところですが、徐々に「新型コロナの脅威が減ってきた」のは、単純に喜ばしいことですね。

インフルエンザの隔離期間は?

(インフルエンザ感染症の隔離期間:学校保健安全法施行規則に基づき著者作成)

インフルエンザ陽性になった場合の隔離期間は、原則「発症後5日間かつ解熱した後2日を経過するまで(幼児では3日)自宅待機」と学校保健安全法施行規則で定められており、勤務もそれに準じて出勤停止としている会社が多いと思います。

具体的には、インフルエンザ感染症での自宅待機期間は

  • 発症後1日目に解熱した場合:発症後6日目に登校可能
  • 発症後2日目に解熱した場合:発症後6日目に登校可能
  • 発症後3日目に解熱した場合:発症後6日目に登校可能
  • 発症後4日目に解熱した場合:発症後7日目に登校可能
  • 発症後5日目に解熱した場合:発症後8日目に登校可能

となります。新型コロナは2022年現在「発症日を0日として、7日間は自宅待機」であり、「無昭三で陽性の方は発症後7日後か5日目に陰性確認で解除」になっています。したがって、濃厚接触の規定を除けば、現在の新型コロナの自宅待機期間はかなりインフルエンザに近い形になっているといえるでしょう。

(参照:学校保健安全法施行規則第 19 条第 2 項)

インフルエンザについてのまとめ

いかがでしたか?インフルエンザ感染症の症状や新型コロナとの違いについて解説していきました。まとめると

  • インフルエンザはインフルエンザウイルスによる感染症で、通常の風邪よりも重い疾患
  • インフルエンザは潜伏期間1~3日で、高い発熱や咳などを中心とした症状。7日の経過でゆっくり軽快する
  • 新型コロナとは症状も多彩さなど異なる点もあるが、新型コロナもインフルエンザ様の症状を起こすこともあり、症状だけで見分けるのは困難
  • 新型コロナとインフルは多くの点で異なり、一概に比べることも難しい
  • インフルエンザの隔離期間は「発症後5日間かつ解熱した後2日を経過するまで(幼児では3日)自宅待機」である

といえます。よく「インフルエンザは軽い疾患」のように扱われがちですが、インフルエンザも死亡する可能性のある疾患の1つであり、新型コロナ含めて侮ることはできません。冬の感染対策をしっかりしていただきますよう、お願いします。

【この記事を書いた人】 
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。

更新履歴

  • 22022/12/25: 新型コロナとインフルの違いについて最新情報に基づき改訂

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