亜鉛不足による「10の症状」について【皮膚症状・舌炎など】

通常の食事をしていると、不足しがちなミネラルの1つである「亜鉛」。では亜鉛不足の症状にはどんなものがあるのでしょうか。亜鉛不足の症状についてみていきましょう。

亜鉛不足に関する総論は、亜鉛の効果と亜鉛不足について【症状・摂取量・食べ物・治療】を参照してください。

亜鉛不足による「10の症状」は?

2018年の亜鉛欠乏症診療ガイドラインで提唱されている、「亜鉛欠乏症の10の症状」

2018年の亜鉛欠乏症診療ガイドラインでは、亜鉛欠乏症状として以下の10の症状が言われています。

  • 皮膚炎・脱毛・爪の変形
  • 貧血
  • 味覚障害(舌炎)
  • 発育障害
  • 性機能不全
  • 食欲低下
  • 下痢
  • 骨粗しょう症
  • キズの治りが遅い
  • 感染しやすくなる(易感染性)

実は、他にも亜鉛不足により血糖値が悪化するという報告や、ドーパミンの合成に関わり、うつ傾向や記憶力低下につながるという報告もあります。

亜鉛不足による各症状の詳細は?

① 皮膚炎・脱毛・爪の変形

亜鉛は実は、皮膚のたんぱく質の合成に関わっています。そのため、亜鉛が不足すると、皮膚のターンオーバー(皮膚が新しい細胞に生まれ変わること)がうまくいかず、皮膚炎が発症します。特に、目や口の周り、耳、手足の指先に生じやすいのが特徴です。

亜鉛は、髪の毛のケラチンというたんぱく質の合成にも関与していますし、亜鉛不足は毛の細胞をつくる「毛包」に影響を及ぼします。そのため、脱毛は、特に機械的な刺激をうける部分に強く表れるのが特徴です。

亜鉛不足による皮膚症状として、爪の変形も注目されており、「つめがかけやすくもろい」「Beau’s lineとよばれる横溝のような線が現れることがある」「爪の周囲が炎症しやすい」のが特徴です。

② 貧血

酸素を運ぶ赤血球を作るのにも実は亜鉛は必須。亜鉛不足になると、正常に赤血球を作れなくなり、貧血になります。鉄分が不足している方も多く、その場合は赤血球自体も小さくなります。

特に、激しい運動をしたり透析などをすると、簡単に赤血球が壊れることから、スポーツ競技をする方や透析されている方に多いとされています。

③ 味覚障害(舌炎)

舌の上皮細胞も亜鉛が豊富。亜鉛が作れなくなると、舌が平坦な感じになり、舌が味覚を感じる機能が弱くなってしまいます。しかも下のターンオーバーは10日と短く、次々と新陳代謝が行われているのも理由の1つですね。味覚障害をきたすと

  • 味を感じにくい
  • 人より薄味に感じやすい
  • 何も食べてなくても、口の中が渋く、苦い

などの症状が出てきます。

④ 発育障害

子供で亜鉛が不足すると、身長が伸びなくなり、低身長になります。これは亜鉛欠乏になると成長を促すホルモンである「成長ホルモン」や「テストステロン」の分泌が悪くなるためです。

亜鉛不足になると、ALPという酵素が低下するのが特徴の1つですが、ALPは骨の成長に関わります。そのため、自分の子供が低身長だと感じたら、一度亜鉛を測定するとよいかもしれませんね。

⑤ 性機能不全

亜鉛が欠乏すると男性機能にかかわる「テストステロン」の分泌が低下するといわれています。また、精液中の亜鉛の濃度が足らないほど、男性による不妊症をきたしやすいとの報告もあります。(詳細はこちら)

⑥ 食欲低下

亜鉛が不足すると、

  • 消化管粘膜が萎縮する
  • 消化液の分泌が悪くなる
  • 消化管運動が低下する

などを通じて、食欲低下が起こります。食欲低下によりさらに亜鉛不足が加速されてしまうので、長引く食欲低下をきたすような方は当院でも測定するようにしています。

⑦ 下痢

もともと遺伝子の要因で亜鉛が吸収できない「先天性腸性肢端皮膚炎」の3徴候が「皮膚炎」「脱毛」「下痢」であるように、著しく亜鉛が不足すると下痢になります。

これは亜鉛不足により腸が十分吸収できなくなるためですが、実際には下痢を発症するレベルの亜鉛不足ですと、他の症状も伴っていることが多いです。

⑧ 骨粗しょう症

発育障害でも述べましたが、亜鉛不足が起こると、ALPという酵素が低下するのが特徴の1つ。これは、骨を形成するマーカーの1つでもあり、骨の生成に関わります。

さらに亜鉛は、TGF-βやIGF-1などの骨の代謝に関わる因子に深く関わり、亜鉛不足になると、骨の吸収を促進させ、骨粗しょう症が進んでしまいます。(骨粗しょう症については、骨粗しょう症(骨粗鬆症)の原因や症状・治療から予防まで解説も併せて参照してください)

⑨ キズの治りが遅くなる

亜鉛はコラーゲンの形成に欠かせないほか、DNA修復にも欠かせない栄養素です。また、亜鉛不足になると、炎症が長引いたり、キズを修復するのに必要な「線維芽細胞」の機能が低下することがわかっています。

亜鉛を経口でとるだけでなく亜鉛をケガした部分に塗ることで創傷治癒をうながすという報告もあります。(詳細はこちら)

⑩ 感染しやすくなる

亜鉛は、免疫細胞であるマクロファージや好中球の機能を向上させ、細胞性免疫の中心を担うナチュラルキラー細胞を活性化させることがわかっています。そのため亜鉛欠乏になると、免疫機能が低下し、感染しやすくなるといわれています。

特に亜鉛不足になると子供の下痢を引き起こす感染症をきたしやすいという報告や、「高齢者の長期入院患者が亜鉛不足になると、感染症になりやすい」といった報告がありますので、該当される方は、1度血液検査で亜鉛を測定してみてもよいでしょうね。(詳細はこちら

亜鉛不足の症状に関するまとめ

いかがでしたか?亜鉛不足の症状についてまとめると

  • 亜鉛不足になると皮膚炎・脱毛・爪の変形・貧血・発達障害・性機能不全・食欲不振・下痢・骨粗しょう症・ケガや感染しやすい体になるなど、多彩な症状を示す。他にも、精神症状や記憶力・血糖値などの症状にも関連あり。
  • その背景には、亜鉛が数多くのホルモンやたんぱく質の合成に関わっていること

がいえます。「亜鉛不足かな?」と思ったら、食事を意識してみたり、サプリメントで補うのも1つの手ですね。医療機関の採血で亜鉛不足がわかれば処方することもできます。

いずれにせよ、特にサプリメントで摂取される際には亜鉛過剰症に気をつけ、適切に医療機関でモニタリングするようにしましょう。もちろん亜鉛不足に関しても、当院で個別にうけつけておりますので、気軽に相談してくださいね。

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【この記事を書いた人】 
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください

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