- 咳はないのに、喉が痛くて赤い
- 鏡でみると扁桃腺に白いものがついている
- 首のリンパ節が腫れてのどの痛みが強い
などといった場合は、溶連菌感染症かもしれません。一之江駅前ひまわり医院では、のどの痛みに関しての診療はもちろんのこと、溶連菌の検査も随時行っております。
溶連菌感染症とは?

溶連菌感染症とは、「溶連菌(溶血性連鎖球菌)が主にのどに感染して、発熱やのどの痛みなどが出る一連の感染症状」のことです。
溶連菌感染症の主な症状は、発熱(38℃以上)・のどの痛み・リンパ節の腫れ・倦怠感です。
2日~5日の潜伏期間を経て突然の発熱とだるさ・咽頭痛がでて、時々吐き気も伴います。鏡でよく見ると、
- イチゴ舌: イチゴのように舌に赤いブツブツが出ること
- 扁桃腺部分の白苔:扁桃腺に白くブツブツが付着
- 喉の赤い点状の出血
がみられることもあり、これらの所見がある場合、溶連菌感染症の確率が上がってきます。
溶連菌感染症は、のどだけの症状が主でくしゃみや鼻水・咳なども出にくいのが特徴です。後から、体や手足に発疹(しょう紅熱)が出ることもあり、重症化するとツバを飲み込むのもつらいくらい腫れることもしばしばです。
溶連菌感染症は学童期の小児(3歳~14歳)に最も多く見られますが、20歳以上にも見られるため注意が必要です。
溶連菌感染症の原因は?

溶連菌感染症の原因は、「溶連菌」によるもの。溶連菌の正式名称は「溶血性レンサ球菌」といいます。「レンサ(連鎖)」という名前の通り、鎖がつながるようにして出来ているのが特徴です。
主にのどに感染し、咽頭炎や扁桃炎(へんとうえん)の原因になりますが、実は他にも
- とびひ・丹毒(たんどく)・蜂窩織炎などの皮膚感染症
- 中耳炎
- 肺炎
- 化膿性関節炎
- 髄膜炎
の原因にもなります。溶連菌の中でもA群・B群・C群・G群など、さまざまな種類があります。その中で一番頻度が多いのはA群溶連菌感染症なので、一般的にはA群溶連菌感染症のことを「溶連菌感染症」と呼びます。
溶連菌の流行時期や感染しやすい方は?

流行時期は咽頭炎の場合、通常は11月~4月と6月~8月になります。年々その発生件数は診断技術の向上などもあり上昇していましたが、コロナの流行で自粛が進んだ影響で、2020年の夏から発生例は激減しました。今後はどのように変動するか注目ですね。
溶連菌の主な感染経路は
- 唾液などが口に入ることで生じる「飛沫感染」
- 感染者と物を共有することで生じる「接触感染」
です。そのため、溶連菌感染症の方が近くにいる場合は、
- 手洗いやうがいを徹底する
- マスクを着用し、咳・くしゃみなどによる飛沫感染を予防する
ことで、感染拡大を予防することができます。飛沫感染ということからわかる通り、人と接触しやすい方や学童期のお子さんが最も感染しやすくなります。
溶連菌感染症の合併症は?
溶連菌合併症の怖いところは合併症です。一般的な感染症と異なり、肺炎や髄膜炎・敗血症などの重症化やリウマチ熱・急性糸球体腎炎・結節性紅斑・中耳炎・血管性紫斑病などの様々な合併症がでることがあります。
特に溶連菌特有であり、注意が必要な合併症である「リウマチ熱」「急性糸球体腎炎」「結節性紅斑」について紹介します。

① リウマチ熱
リウマチ熱は溶連菌感染症で治療を行わなかった場合に出てくる全身の合併症の1つ。関節痛やけいれんのような意志を介さない運動発作・胸痛や動悸・発疹などが組み合わさって発症します。
特に心臓などに炎症が起こっていると、後遺症が残る可能性もあり、後遺症が残らないように「いかに早く溶連菌感染症を治療するか」が重要になります。
② 急性糸球体腎炎
急性糸球体腎炎とは、溶連菌感染症が治ってから発症する腎炎(糸球体の炎症)のことです。
多くの場合、10日~14日くらいたってから発症します。顔面・まぶた・足のむくみ・血尿・高血圧などが主な症状になります。発症後、時間の経過とともに自然に改善していきますが、時に尿所見異常が持続し腎機能障害が残ることもあり、注意が必要な疾患です。(参照:日本腎臓学会HP)
そのため、当ひまわり医院では腎機能障害が残っていないかフォローアップするようにしています。
③ 結節性紅斑
結節性紅斑とは、主に「すね」にでる痛みを伴う赤色の皮疹のこと。多くは特発性といって原因不明なこともありますが、続発性のなかで最も多いのは溶連菌感染症によるものになります。(他、サルコイドーシス・ベーチェット病など)
数週間の経過で色素沈着としこりを残して治癒しますが、長い時間がかかることと慢性型に移行することがあるので、注意が必要な疾患になります。
これらのように様々な合併症が伴う可能性があるのが「溶連菌感染症」であり、速やかな治療が重要だといえるでしょう。
溶連菌感染症の診断は?

溶連菌感染症の診断は、臨床所見と迅速検査を組み合わせて行われます。検査としては以下の3種類が一般的です。
- 迅速検査
- 培養検査
- 血液抗体検査(ASO・ASK)
もっとも用いられる方法は「迅速検査」です。迅速検査では5分くらいで判定することができ、陽性例の場合90%は2分以内に検出することができます。喉の奥の部分から検体を採取して行われ、新型コロナやインフルエンザの迅速検査など、他の検査と同時に行うことも可能です。
他には、血液の抗体の上昇があるか確認する方法や、喉の細菌を培養、目で確認する方法などがありますが、時間がかかり外来診療ではあまり用いられません。(ただし、培養検査は抗生剤が効くかどうかを確認する目的で使うことがあります)
溶連菌感染症の診断が確定したら、今後の合併症のリスクなども含めて詳しく説明するようにしています。
溶連菌感染症の治療は?

溶連菌感染症の治療の主役は抗生剤治療です。
ペニシリン系の抗生剤(サワシリン®・オーグメンチン®)の他、セフェム系の抗生剤(メイアクト®・フロモックス®)・マクロライド系(クラリス®など)が使用されることもあります。
なるべく早く抗生剤を飲むと、溶連菌が除菌され解熱されますので、すみやかな医療機関への受診が大切です。
さらに、のどの痛みや発熱などの対して、炎症を抑える薬や解熱薬・トローチなどが通常用いられます。
ここで大切なのは、しょう紅熱やリウマチ・糸球体腎炎などの合併症をなくすためにも、確実に溶連菌を除菌しきるということ。そのため、医療機関で出された抗生剤は必ず飲み切るようにしましょう。
溶連菌感染症はいつまで仕事や学校を休む必要がある?

溶連菌感染症は適切な抗生剤で加療した場合、速やかに感染力は失せていきます。そのため、解熱後24時間たてば登校や職場にいってよいとされています。(参照:日本学校保健会会報)
しかし、1日ではなかなか症状は回復しないもの。休めるなら最低2日~3日は安静にするのが望ましいですね。溶連菌感染症での咽頭炎を早く治すには
- 十分安静にし、睡眠時間を確保すること
- なるべくのどを使わず、炎症を誘発させないこと
- 十分加湿し、トローチや飴などを使って炎症を和らげること
などはとても大切です。あとは仕事との兼ね合いもありますので、ぜひ自分の体調も考えながらお休みになってください。詳しくは、のどが痛い時の原因やケアについて解説も参照してください。
また、溶連菌感染症は人に移ります。そのため、タオルやコップなどは別々のものを使い、他の人にうつさないようにしましょう。手洗いやうがい・マスクの着用も感染拡大予防にはとても有効です。日頃から「うつらない・うつさない」姿勢が大切ですね。
溶連菌感染症の関するまとめ

いかがでしたか?溶連菌感染症についてわかりやすく解説していきました。まとめると
- 溶連菌感染症は、溶連菌という細菌感染症であり、喉の炎症が主体で生じる
- 子供もかかるが、大人もかかることもあり、注意を要する
- 通常、11月~4月・6月~8月が中心だが、新型コロナが流行して以来、低めで推移
- 全身性の合併症を防ぐためにも、早めに医療機関を受診し、適切な抗生剤治療が大切。
- 抗生剤は症状のぶり返しや合併症を防ぐためにも、最後まで飲み切りましょう。
- 職場や学校は、抗生剤服用し解熱後24時間たてば復帰可能です。
となります。のどのケアに関しては、のどの痛みはコロナ?のどが痛い時の原因やケアについて解説も参照していただきながら、無理せず医療機関に受診してくださいね。もちろん当ひまわり医院にも気軽にご相談ください。
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【この記事を書いた人】
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。
更新履歴
- 2022年5月26日: 定期的な見直しにより大幅改訂。見やすくサイトを変更。
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