前立腺肥大症の症状や治療、食事について【男性の頻尿に多い】

こんにちは、一之江駅前ひまわり医院です。突然ですが男性の方で

  • トイレに行ってもおしっこが出る量が少なく勢いもない
  • おしっこをした後にも関わらず尿が残っている感じがする
  • トイレは近いが「年のせいだろう」とあきらめてしまっている

という方はいませんか?もしかしたら、それは「前立腺肥大症」という排尿障害の1つかもしれません。

前立腺肥大症は男性特有の尿トラブルの1つですが、加齢のせいだろうと放置していると「前立腺がん」などの命に関わる病気につながることもあります。しっかり診断・治療してもらうことが大切な疾患です。

そこで、ここでは前立腺肥大症の主な症状や原因・治療について解説していきます。

前立腺肥大症とは?

前立腺肥大症とは、膀胱と尿道の間にある「前立腺」が肥大して尿道を圧迫し、尿が出にくくなる疾患です。

前立腺は男性だけにある臓器で、膀胱から尿道に続く部分に取り囲んでいます。もともと前立腺は、前立腺液を分泌し、精子の保護や精子の運動機能を助ける役割があります。

前立腺は性機能に大きく関わるので、加齢による男性ホルモンの変化などで段々大きくなります。

しかし、前立腺自体がちょうど膀胱の出口付近にあるので、前立腺が大きくなると尿道を圧迫します。そして出口が狭くなった膀胱は少しずつしか尿を出すことができず、「残尿感」や「トイレに行きたい気持ち」が強くなってしまいます。これが前立腺肥大の正体です。

前立腺肥大症は、実は多くの男性が悩む疾患です。40~79歳の日本人男性を15年間追跡調査した結果によると、前立腺肥大の発生率は1年間で1000人中、15.4人と言われています。実際、症状のある前立腺肥大がある人の割合は、40歳代で2%、60歳代で6%、70歳代で12%とも言われていますね。

だからこそ男性の「おしっこが出にくい」「トイレが近い」というのは気のせいではなく、病気と認識して正しく治療することが大切なのです。

(参照:Incidence and risk of treatment for benign prostatic hyperplasia in Japanese men: A 15-year longitudinal community-based study
(参照:男性下部尿路症状・前立腺肥大症 診療ガイドライン

前立腺肥大症の症状は?

前立腺肥大症は膀胱の出口である前立腺が大きくなることで「おしっこを出しにくくする」疾患です。大きく「排尿症状(おしっこを出すときに出る症状)」「畜尿症状(おしっこをためることによる症状)」「排尿後症状(おしっこを出した後に出る症状)」の3つに分かれます。

① 排尿症状

前立腺肥大症状では、膀胱の出口にある前立腺が大きくなることで、余計な力が加えないと十分おしっこを出すことができません。そのため、

  • おしっこの出が悪い
  • おしっこが色々な方向に散ってしまう
  • トイレに行っても、すぐにおしっこが出ない
  • おしっこが一度に出ずに、途中で止まってしまう
  • おしっこを出すために、力を入れないといけない

などの症状が出てきます。

② 畜尿症状

前立腺が膀胱に余計な圧力が加わると、膀胱の神経自体にも影響が出てきます。実際、前立腺肥大症の70%の方が膀胱による神経の異常である「過活動膀胱」を併発していると考えられています。そのため、神経の異常により尿を貯めづらくなっている方も多いのです。具体的には以下の症状が出てくることがあります。

  • 夜中に何度もトイレに起きる
  • トイレに行きたくなる回数が増えている
  • 急におしっこがしたくなって、我慢できない
  • ちょっとした刺激でおしっこが漏れることがある
  • 急いでトイレに行く途中で間に合わないことがある

目安としては「1日に8回以上」「夜間に3回以上」トイレにいく場合には、過活動膀胱の可能性が高くなりますね。

③ 排尿後症状

前立腺肥大症の場合、前立腺が出口をふさいでいるため、尿を出し切らずに膀胱の中に残ってしまっていることがあります。これが「排尿後症状」です。具体的には以下の症状が見られます。

  • 残尿感:おしっこをした後に「どうもすっきりしない」「尿が残っている気がする」という症状が出てきます。
  • 排尿後尿滴下:尿が終わったと思って下着をつけると尿がもれて下着がもれる

このように前立腺肥大の症状は多彩です。「気のせい」と思わず、尿トラブルが続くなら医療機関に相談した方がよいですね。

(参照:男性下部尿路症状・前立腺肥大症 診療ガイドライン

前立腺肥大症の治療は?

前立腺肥大症による治療を大きく分けると「薬物療法」「手術療法」にわかれます。

① 薬物療法

(1) α1受容体遮断薬

前立腺肥大症が疑われる方に最初に使われるといってよい治療薬です。前立腺を収縮させる「ノルアドレナリン」という物質をブロックする薬で、前立腺の過剰な収縮を抑えます。

具体的な薬剤としては「タムスロシン」「ナフトピジル」「シロジドン」などがあります。非常に多くの臨床試験で有効性は確認されている薬で、前立腺肥大症ガイドラインでもGradeA(非常に強く推奨する)に分類されています。

主な副作用はめまいやふらふら感です。これはノルアドレナリンが血圧をあげる作用があり、それをブロックすることで血圧を下げるために起こります。その他、かゆみ・発疹・じんま疹・胃不快感などが報告されています。

(2) 男性ホルモンを抑える薬

前立腺肥大症は男性ホルモンが大きく関わっているため、男性ホルモンの働きを抑えることで発症が抑制されるのも納得でしょう。

主な薬剤として、効果が最も確認されているのは「デュタステリド」です。国内での臨床試験(第III相)では、デュタステリドを投与すると、投与24週後から有意な前立腺体積の減少・投与36週から質問票での改善も見られています。(減少率22%)

さらに、前述のタムスロシンと併用することでさらに効果を発揮します。

しかし、副作用として男性機能が低下する恐れがあるほか、前立腺がんのマーカーであるPSAが半減しますので、PSAを測定する際には注意が必要になります。

(3) 漢方薬や植物由来の薬

そのほかにも植物由来の成分により前立腺の炎症を改善するとされる「エピプロスタット®」「セルニルトン®」や頻尿の改善効果を期待できる漢方薬「八味地黄丸」「牛車腎気丸」などがあります。

しかし、これらの治療は根拠が乏しく、前立腺肥大症ガイドラインではGradeC1(根拠が明確でないが、行ってもよい)に分類されています。副作用が少ないことも特徴なので「マイルドに治療してみたい」という方にはよいでしょう。

② 手術療法

前立腺肥大症は薬物療法だけでも大幅に改善することが見込まれますが、薬物治療を行っても、症状の十分な改善が得られない場合や、血尿や尿路感染などを繰り返す場合は手術療法も選択肢になりますね。

前立腺肥大症に対する手術の種類としては、次のようなものがあります。

  • 経尿道的前立腺切除術(TUR-P): 一般的な手術方法で、尿道から内視鏡を入れて、電気メスで前立腺を少しずつ削って取り除きます。木をかんなで削るようなイメージです。
  • ホルミウムレーザー前立腺核出術(HoLEP): 内視鏡を使ってレーザーで前立腺を剥がし、塊として膀胱の中で細かく砕いてから取り除きます。出血が少なく、大きく肥大した前立腺にも効果的です。
  • レーザー前立腺蒸散術: レーザーを使って前立腺を蒸発させつつ取り除きます。出血がとても少ないので、大きな前立腺でも安全に行え、回復も早いのが特徴です。
  • 開腹手術:とても大きく肥大した前立腺の場合は、お腹を開いて取り除く手術もありますが、これはもっと大掛かりな手術になります。

これらを希望された場合には、当院では適切な専門施設にご紹介させていただきます。

前立腺肥大に推奨される食事は?

① 野菜を積極的に食べる

特に成分では「βカロテンやルテイン・ビタミンCが豊富な果物や野菜をとった方は、前立腺肥大になりにくい」という臨床データがあります。(詳細はこちら

それぞれの成分が多い食べ物としては次の通りです。

  • βカロテン:にんじん・かぼちゃ・ほうれん草・スイカ・みかんなど
  • ルテイン:ほうれん草・アボカド・乾燥プルーン・小松菜など
  • ビタミンC:キャベツ・ブロッコリー・いちご・キウイなど

ほか「タマネギやニンニクを多く食べた方は前立腺肥大になりにくい」とする臨床データもあります。しかし当然ですが食事の基本は「バランス」です。単一の成分にとらわれず、色々な種類の野菜を食べるようにしましょう。

② 穀類や肉類は控える

前立腺肥大症の手術治療を受けた1369人とコントロール群1451人を対象とした比較試験では、穀物やパン・卵や肉類の摂取量が前立腺肥大症の方で多かったと結論しています。

さらに同研究では、スープ・豆類・野菜や柑橘系の果物の摂取が多いと、逆に前立腺肥大になりにくいとしていますね。

この研究はイタリアの研究であり、日本と食生活は異なりますが、参考にするとよいでしょう。(詳細はこちら

③ 不飽和脂肪酸をとるようにする

不飽和脂肪酸とは、脂肪の構成要素のうち、植物や魚に多く含まれる脂肪酸のこと。体内で合成できないため、食べ物で補う必要があります。

よく悪玉コレステロールで知られる「LDLコレステロール」を下げる働きとして知られていますが、前立腺肥大症の発症抑制にも不飽和脂肪酸が効果的であるというデータがあります。(詳細はこちら

④ 水分管理はしっかりとする

特に夜間頻尿に困っているなら、水分管理はとても大切です。アルコールや刺激の強い食べ物は利尿作用があり、頻尿を誘発させます。寝る前の水分の摂りすぎにも要注意です。

他、カフェインが入っている飲み物を夕方からとると、利尿作用だけでなく不眠から夜間頻尿にもつながっていきます。

⑤ 適度な運動や冷え対策も効果的

冷えると膀胱の収縮が起きるので、頻尿につながりやすくなります。適度な運動を心がけ、便秘しないようにすることで過活動膀胱が改善されるというデータもありますね。

前立腺肥大の方は過活動膀胱も併発することが多いので、 過活動膀胱について【症状・検査・治療薬】 も参考にしてください。

(参照:Fruit and vegetable consumption, intake of micronutrients, and benign prostatic hyperplasia in US men
(参照:Food groups and risk of benign prostatic hyperplasia

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【この記事を書いた人】 
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。

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