亜鉛の男性機能への効果について【髪・テストステロン】

さまざまな効果を期待できるのが「亜鉛」。亜鉛が不足すると味覚障害がおこったり、脱毛にかかわったり、下痢になったりなどさまざまな障害が起こります。

その中でも亜鉛の効果がよく期待されているのが「亜鉛の男性に対する効果」ですよね。男性機能が高まったり、脱毛を気にされている方が亜鉛を摂取したりします。

実際、亜鉛に男性機能を高めたり脱毛をよくする効果はあるのでしょうか。あるとしたらどのくらいの期間で改善するのでしょうか。今回はこれまで研究されている様々な論文から亜鉛の男性機能に対する効果について検証していきます。

亜鉛については、

も参考にしていみてください。

亜鉛の男性機能に対する効果は?

では、亜鉛で男性機能は改善するのでしょうか?結論からいうと「一部分改善する可能性がある」といえます。例えば、亜鉛摂取により次の効果が期待できるでしょう。

① 亜鉛はテストステロンの上昇が期待できる

2023年に発表された亜鉛とテストステロンの関係を複数の論文から検証した論文とすると、「亜鉛とテストステロンには正の相関関係がある」と報告されています。

テストステロンとは「男らしい体」にする男性ホルモンの1種。体つきも男らしくするので、筋肉量が増加したり、体脂肪をへらしたりする効果があります。

体つきだけではありません。精神的な「男らしさ」にも関わったり性機能・性活力にも作用するホルモンです。同研究では、8つの臨床研究と30の動物実験から

  • 亜鉛が不足するとテストステロンの量が低下すること
  • 亜鉛を補給することでテストステロンの量が増加すること

が示されているので、亜鉛は間接的にテストステロンの量を調節しているといえます。

(参照:Correlation between serum zinc and testosterone: A systematic review

② 亜鉛により精子の量や質を改善させる

ヒトの生殖系において、亜鉛は精子形成の上で重要な役割を果たしていることがわかっています。亜鉛を補給すると精子の細胞膜が安定したり細胞呼吸であるミトコンドリアの機能を改善させますね。そのため、男性機能を高めたい時に亜鉛を補給するのは理論的には正しいといえます。

実際、それを裏付ける研究もあります。2,600 人の不妊男性と 867 人の正常対照者の精液中の亜鉛と男性不妊症を検証した研究によると

  • 不妊男性の精液中の亜鉛濃度が正常の方よりも有意に低かった
  • 亜鉛の補給は、精液量、精子の運動性、および正常な精子形態の割合を有意に増加させた

としています。同研究では、亜鉛のサプリメントを1日66mg~220mg摂取され、慎重に亜鉛濃度をモニタリングされていました。

しかし、ここで2つ注意点があります。

1つ目は亜鉛の過剰投与も精子の質を低下させることがあるということです。ラットの実験によると、生理的範囲内に調節された亜鉛投与ではプラスの効果であったのにも関わらす、亜鉛が過剰投与されたグループでは逆に男性機能に悪影響を及ぼしたとされています。

2つ目は亜鉛だけで男性不妊症が解消されるわけではないということです。実際、男性1,773 人に対して6カ月間亜鉛と葉酸(葉酸5mgおよび亜鉛30mg)のサプリメントを投与したランダム化比較試験では、出産数や精液の質のパラメータは変わらなかったとしています。したがって、長期のモニタリングや普段の生活、他の男性不妊症の解明などが重要ということですね。

したがって、亜鉛をとるなら適切なモニタリングが重要ですし、亜鉛だけで男性機能の問題のすべてが解消されるわけではないことに注意しましょう。

(参照:Zinc levels in seminal plasma and their correlation with male infertility: A systematic review and meta-analysis
(参照:Effects of zinc on male sex hormones and semen quality in rats
(参照:Effect of Folic Acid and Zinc Supplementation in Men on Semen Quality and Live Birth Among Couples Undergoing Infertility Treatment

亜鉛で男性の脱毛は改善する?

では、男性でお悩みの脱毛に対して、亜鉛は関与しているのでしょうか?結論からいうと、「亜鉛は男性型脱毛(AGA)に対しても関与する」といえます。

男性型脱毛を5%ミノキシジルで治療した患者さんに対して、血清のミネラルと髪の生え具合を調べた研究によると、さまざまなミネラルのうち、亜鉛だけが治療の反応性と相関していることがわかりました。

簡単にいうと、亜鉛値が高い人は5%ミノキシジルで髪が伸びやすくなり、亜鉛値が低い人は治療の反応が乏しく伸びにくいということですね。

そもそもヒトの毛包の毛乳頭細胞の増殖や細胞周期の調節が亜鉛によって調節されていることが言われています。そのため、脱毛に大きく関わる「毛周期」に亜鉛は非常に重要な役割を果たしているというわけです。実際、AGAの方は正常な方よりも血液中の亜鉛の値が低くなっています。

したがって、男性型脱毛でお悩みの方は、一度亜鉛も測定してもらうとよいですね。(必ずしもすべてのクリニックで治療を始める前に測定するわけではありません)

AGAの治療については、【皮膚科医が解説】AGA(男性型脱毛症)でおすすめの治療法と具体的な効果についても参照してください。

(参照:Plasma Zinc Levels in Males with Androgenetic Alopecia as Possible Predictors of the Subsequent Conservative Therapy’s Effectiveness

男性機能が気になる方は、亜鉛も意識してみよう

というわけで、亜鉛は男性機能や脱毛にも非常に密接にかかわっています。しかし大切なのは、

  • 亜鉛過剰症に気を付けること
  • 亜鉛を適切にモニタリングしながら管理すること

の2つです。自分でサプリメントで内服していると、やたら亜鉛だけ高くて肝臓を傷めていたり、脱毛の原因にまったく他の治療法が必要だったりすることもあります。

なかなか相談しにくい内容ではありますが、ぜひ亜鉛不足が心配なら当院に相談してみてください。

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