ニキビって本当に治しづらいですよね。10代の思春期ニキビから20歳を過ぎた大人ニキビまで、年齢を問わずニキビは肌トラブルの原因として非常に多い疾患の1つです。
しかし、ニキビは決して治らない疾患ではありません。適切なケアと正しい治療でほとんどのニキビは驚くほど改善されていくのです。
今回、ニキビ治療薬の選び方からニキビに効果的な食べ物まで、ニキビの正しい治療法を最新のガイドラインと最新の医学論文をもとに解説していきます。
Table of Contents
ニキビとは?

ニキビは、「皮脂腺の異常な活動によって引き起こされる皮膚の状態」のこと。もちろんニキビは俗名であり医学名称は「尋常性ざ瘡」といいます。
本来、皮脂腺は乾燥を防ぐために皮脂(油)を作り、皮膚のバリアを作る大切な役目があります。しかし、これらの腺が過剰に活動すると、皮脂が毛穴を詰まらせ、ニキビを形成していきます。
そして、次のような段階を経て、どんどん悪化していきます。
- 炎症の発生:細菌の増殖とそれに続く体の免疫反応が、赤みと腫れを伴う炎症を引き起こします。こうして
- 皮脂の過剰生成:ホルモンの変化(特に思春期や月経周期中)は皮脂腺の活動を刺激します
- 毛穴の詰まり:皮脂と死んだ皮膚細胞が混ざり合い、毛穴を詰まらせます。この状態が「白ニキビ」という状態です。
- 細菌の増殖:毛穴が詰まると、皮膚上の細菌が皮脂を栄養源として利用し、増殖します。
ニキビは思春期に多い印象をもたれがちですが、大人でも大人ニキビとして発生することがあります。ストレス・不適切なスキンケアやホルモンの変化(例えば妊娠や月経周期)など、さまざまな要因がニキビの発生を引き起こすのです。
そして、ニキビは最も代表的な皮膚トラブルの1つ。実際ニキビは日本人の90%以上の方が悩まれる疾患と言われています。年代別にみると
- 10代:男女ともに約80%
- 20代:男性の約50%、女性の約35%
- 30代:男性の約20%、女性の約25%
と言われていますね。ただし、実際に治療される方は全体の30%という報告もあります。
悩みながらも放置しがちなのが「ニキビ」。しかし、早めに正しく治療することでニキビ跡にもならずきちんと治っていきます。
ニキビの正しい治し方は?

日本皮膚科学会が策定した「尋常性痤瘡・酒皷治療ガイドライン 2023」では、ニキビ(尋常性痤瘡)の正しい治し方として、以下の点が重要であると示されています。
「ニキビをすぐにでも治したい」とお考えの方は、治療薬だけに頼るのではなく、日々の生活習慣全体を見直すことがポイントですね。
① 洗顔::スキンケアの基本であり、治療の第一歩
ニキビ治療において、適切な洗顔は基本中の基本です。洗顔によって、ニキビの原因の一つである過剰な皮脂や毛穴の汚れを効果的に取り除き、毛穴が詰まるのを防ぎます。
ただし、洗いすぎは禁物です。ガイドラインでは、1日2回の洗顔が推奨されています 。過度な洗顔は、肌に必要なうるおいまで奪ってしまい、結果として皮膚を乾燥させてしまいます。乾燥した肌は、それを補おうとして逆に皮脂を過剰に分泌させてしまう可能性があり、ニキビを悪化させることにもなりかねません。
② 適切なスキンケア製品:ニキビ肌に適したものを選びましょう
ニキビの改善と予防のためには、日々のスキンケア製品の選択も非常に大切です。特に、以下の点を満たした製品を選ぶことが推奨されています。
- 保湿性: 洗顔後の肌は乾燥しやすいため、しっかりと保湿することが重要です。保湿により肌のバリア機能が保たれ、外部刺激から肌を守ります 。ただし肌質にあった保湿剤が大切ですね。
- ノンコメドジェニックテスト済み: これは、製品がニキビの初期段階であるコメド(面皰)を誘発しにくいことをテストで確認済みであることを意味します。
- 低刺激性: 特に炎症しているニキビ肌はデリケートな状態にあるため、肌への刺激が少ない製品を選びましょう。
➂ 食生活:バランスの取れた食事が内側からのケアに
食事が皮膚の健康に影響を与えることは広く知られていますが、ニキビとの関連性についてはどうでしょうか。ガイドラインによると、特定の食べ物を一律に制限することは推奨されていません 。特定の食品が直接的にニキビを悪化させるという明確な科学的根拠は、現時点では限定的です。
しかし、個々の患者さんにとっては、特定の食べ物の摂取とニキビの悪化に関連が見られる場合もあります。そのため、ご自身の食生活とニキビの状態をよく観察し、もし関連が疑われる場合は医師に相談することが望ましいでしょう。基本的には、極端な偏食を避け、様々な栄養素をバランス良く摂取する健康的な食生活を心がけることが、皮膚を含む体全体の健康にとって重要です。
④ ストレス管理:心身の健康が美肌につながる
ストレスはホルモンバランスの乱れを引き起こし、皮脂の分泌を過剰にしたり、免疫機能を低下させたりすることで、ニキビに影響を与える可能性があります。
- 十分な睡眠時間をもつ
- リラックスできる時間を持っ
- 適度な運動を取り入れたりする
など、自分に合ったストレス管理法を見つけることは、肌の健康維持にもつながります。脂漏性皮膚炎とニキビは非常に深い関連性がありますが、やはり普段のストレス管理は皮脂の過剰な分泌につながり、ニキビの発生要因にもつながります。
ただし、この「尋常性痤瘡・酒皷治療ガイドライン 2023」の中では、ストレス管理がニキビ治療の主要な柱として「明らかによい」と示されているわけではありません。しかし、全身の健康を保つ一環として、ストレスを上手にコントロールすることは、間接的にニキビの状態にも良い影響を与えるのは間違いないでしょう。
⑤ 医学的治療:皮膚科医による専門的なケア
「日常生活や普段のスキンケアでもなかなかニキビが治らない」という人もいるでしょう。
それもそのはず。肌質の個人差は非常に大きく、一般的なスキンケアが合わない人、ある人が治った治療法が自分には当てはまらないのは、ある意味「普通」だからです。遺伝的にコレステロールが高い人が一生懸命コレステロールを下げる治療をしても、なかなかうまくいかないのと同じですね。
そういう方は医学的なニキビの治療がオススメです。後述しますが、保険診療で認められた治療法も多数あり、治療の選択肢は今はたくさんあります。
ぜひ一人で悩まずに皮膚科に相談してほしいですね。
では、数あるニキビの治療法の中から、基本的ニキビを治す洗顔の方法とニキビの治療薬について、順番に見ていきましょう。(食べ物については別稿でお話いたします)
ニキビの正しい洗顔は?

みなさんはニキビに対する正しい洗顔、知っていますか?今一度確認してみましょう。
- 手を洗う:洗顔を始める前に、手をきちんと洗いましょう。手についている汚れや細菌が顔に移らないようにするためです。
- 洗顔料を泡立てる:洗顔料を手に取り、水を加えてよく泡立てましょう。泡立てネットを使うと、より細かい泡が作れます。
- 顔を洗う:作った泡を使って顔を優しく洗いましょう。特にTゾーン(額と鼻)やUゾーン(頬とあご)は、皮脂が多く分泌されるため、しっかりと洗うことが大切ですね。
- すすぐ:洗い終わったら、ぬるま湯でしっかりとすすぎます。洗顔料が残らないよう、特に髪の生え際やフェイスラインには注意してください。
- タオルで拭く:洗顔後は、清潔なタオルで優しく水分を拭き取ります。こすらずに、ポンポンと叩くようにして水分を取りましょう。
- 保湿する:洗顔後はすぐに保湿を行います。乾燥は皮脂の過剰分泌を引き起こし、ニキビの原因になるため、保湿は必須です。
洗顔の回数は、最新のガイドラインでは基本的に「1日2回を推奨する」とされています。なぜなら
- 1日1回では悪化した症例がみられたこと
- 1日4回の洗顔を行った例では脱落例がみられたこと
からです。しかしあくまで一般論ですので、実際には個人個人の肌の状態によって洗顔方法もアドバイスを変えたりしています。
ちなみに、オイルクレンジングに関しては、現時点ではニキビを悪化させることはないとされており、スクラブの有無もどちらも問題ありません。
なによりも前述しましたが、ニキビは洗顔と保湿ケアはセットです。保湿ケアに関しては、ニキビを作らせない「ノンコメドジェニックテスト済み」という製品を使うとよいでしょう。
当院でもニキビケアの商品を紹介しております。
ニキビで強く推奨される治療薬は?
では、クリニックや病院で使われるニキビ治療薬はどのようなものがあるのでしょうか?非常に数が多く紹介しきれませんので、ガイドラインで「強く推奨されている」ものを取り上げていきます。
① ベピオゲルⓇ・ベピオローションⓇ・ベピオウォッシュ

ベピオⓇは「過酸化ベンゾイル」を有効成分とするニキビ治療薬。
ベピオは菌作用とピーリング作用の2つの作用で、ニキビの原因となるアクネ菌の増殖を抑制。角質をはがすことで、ニキビそのものも縮小していきます。
これまでベピオはゲル状しかありませんでしたが、2023年6月から、より刺激の少ないローションタイプが発売され、さらに2025年にベピオウォッシュゲルというすぐ洗い流す製剤も発売されます。このように、様々な剤型がありながらニキビ治療ができるのもベピオの強みですね。
日本で行われた3か月間の臨床試験では、ニキビの減少率は3か月で56.5%と言われており、通常のスキンケア(21.9%)と比較してもより高い効果が実証されています。
また、妊娠中の方にも使用できる安全性の高さもベピオⓇも特徴の1つですね。ただし、脱色作用があるため、髪の毛や布団につかないように注意が必要ですし、冷蔵庫保存が必要。さらに刺激性があるので、人によってかぶれることがあり、慎重に投与していきます。
(参照:過酸化ベンゾイルゲルの尋常性ざ瘡を対象とした第II/III相臨床試験)
② アダパレンゲル(ディフェリンゲルⓇ)

ディフェリンゲルⓇという名称で知られるアダパレンゲルは、2008年10月に認可された日本初の外用レチノイドの保険適用のニキビ治療薬です。
ベピオⓇと同様に毛穴の詰まりを改善させ、ピーリング効果により主に白ニキビを徐々に改善します。
5 つの 臨床試験をまとめた論文によると 12 週間のアダパレン 0.1%ゲル外用により炎症性のニキビが52.3%減少していたとしています。ベピオⓇと同等くらいの効果ですね。
また、ベピオにある脱色作用がなく、髪の毛についても問題ないほか、ベピオは冷蔵庫保存が必要ですが、ディフェリンゲルは室温でも問題ないのがメリットですね。
ただし、副作用が乾燥が80%、かゆみが20%の方に出てくるのがデメリット。また妊娠中に使うことはできません。
ガイドラインではベピオ同様「強く推奨する」に認定されています。
③ エピデュオゲルⓇ

エピデュオゲルは、アダパレンと過酸化ベンゾイルという2つの有効成分を配合したニキビ治療薬です。
アダパレンはレチノイド様作用を持ち、毛穴の詰まり(面皰)を改善し、抗炎症作用も有しています 。一方、過酸化ベンゾイルは、その酸化作用を介してニキビの原因菌であるC. acnesに対する直接的な抗菌作用を持ち、角質剥離作用によって面皰を改善する効果もあるとされています 。これら2つの成分の組み合わせにより、相補的な効果が期待されます 。
このガイドラインでは、エピデュオゲルは特に中等症から重症の炎症したニキビに対して、エピデュオゲルは「強く推奨」されています 。 例えば、
例えば、炎症性皮疹が顔全体に12個から100個ある日本人患者さんを対象とした臨床試験では、エピデュオゲルはアダパレン0.1%単独ゲルと比較して、使用開始1週目から有意な改善効果を示し、その効果は12週間持続しました 。ただし、この試験では過酸化ベンゾイル2.5%単独ゲルに対する優越性は認められませんでした 。
一方、海外での臨床試験: 炎症性皮疹が顔全体に20個から50個ある患者さんを対象とした海外の臨床試験では、エピデュオゲルは、アダパレン単独または過酸化ベンゾイル単独よりも炎症性皮疹に対して高い効果が認められています 。
このように、他のニキビ治療薬で改善しなくてもエピデュオゲルなら改善するということはありますね。また妊娠中には使用することができません。
ただし、2つの配合成分がある分、副作用が起きやすいのも特徴の1つ。なので、副作用と効果のバランスを考えながら提案するようにしています。
④ 抗生剤の塗り薬

炎症性ニキビに効果が高い薬として「クリンダマイシン、ナジフロキサシン、オゼノキサシン」などの塗り薬の抗生剤があげられます。
これらの薬はニキビそのものというよりもニキビを炎症させるニキビ菌を殺菌する薬です。
実際、ニキビ菌を殺菌するだけでも、赤ニキビに対して非常に良好な結果が得られています。ただし、ニキビそのものに対するピーリング作用はありませんので、副作用はないものの、ニキビのぶつぶつ感が消えるわけではないので注意しましょう。
抗生剤の塗り薬の一番のメリットは副作用がほとんどないこと。ですので、初期治療として始めやすいというメリットがありますね。
しかし、実際は初期からピーリング効果を狙った方がよいのではという話もあるので、一概には言えません。当院では一律に決めるわけではなく、あくまで個々の患者さんの肌の状態をきちんと確認した上で、状態に一番あった処方にするようにしています。
⑤ デュアックゲルⓇ

「ピーリング作用をもつ薬と炎症を抑える抗生剤の塗り薬を一緒に配合すればよいのでは?」というコンセプトのもとに生まれたのが「デュアックゲルⓇ」です。
デュアックゲルⓇはベピオゲルⓇとクリンダマイシンゲルとの配合剤。ベピオゲルとクリンダマイシンゲルはニキビに効く作用機序が全く異なるので、相乗効果で強力に赤ニキビを抑える効果を発揮します。
実際、デュアックゲルⓇとベピオゲルⓇを1日1回塗った試験では、デュアックゲルⓇの方がニキビの数が明らかに減ったとしていますね。クリンダマイシンゲル2回塗った場合と比較してもデュアックゲルⓇの方が効果があったとしています。
ただし、当然デュアックゲルⓇにもピーリング作用があるので、肌あれしやすい方は注意が必要といえるでしょう。
また、デュアックゲルⓇは抗生剤が入っており、耐性菌が出現する可能性を考えると、ずっと塗り続ける薬ではありませんのでご注意ください。
⑥ 抗生剤の飲み薬
塗り薬と同様に、ニキビ菌を抑える飲み薬も「赤ニキビ」には有効です。1日1回ないしは2回使用されます。具体的には「ミノサイクリン」「ドキシサイクリン」「ロキシスロマイシン」などがあげられます。特に「ドキシサイクリン」「ミノサイクリン」が強く推奨されていますね。
抗生剤の飲み薬は体の中から効果を発揮するため、多くの「赤ニキビ」に対して体全体に効果を発揮するのが一番の特徴です。そのため「全体真っ赤に腫れているのを何とかしたい」という方にはおススメになります。
しかし、抗生剤の内服は「腸内細菌叢」を抑えてしまったり、(特に女性の場合)膣の常在菌を抑えることで膣炎を発症することもあり、原則短期間での使用としています。(世界基準であるGlobal Allicanceでは、「内服抗菌薬の投与は3か月までとして、6~8週間目に再評価して継続の可否を決めること」としてます。
ついつい効果が高いので抗生剤内服を希望される方が多いのですが、医療者側としては体のことを第一に考えて診療しております。患者さんの希望も大切にしていますので、代替え案など考えながら、適宜提案してまいります。
ただし、一部の抗生剤はニキビ菌を抑える以外の目的で使用することがあります。逆に長期間抗生剤を使用されている場合は、理由などを担当医師にも相談してみるとよいでしょう。
(参照:日本皮膚科学会「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン 2023」)
ニキビの他の治し方は?

ニキビの治療ガイドラインでは、上記にあげた治療方法についても検証されており、上記に挙げた治療方法を含めると次のようになっています。
- 行うように強く推奨する(推奨度A)
- ベピオⓇ
- アダパレンゲル
- デュアックゲルⓇ
- 抗生剤の塗り薬
- デュアックゲルⓇ
- 抗生剤の飲み薬(+上記塗り薬の併用)
- 行うように推奨する(推奨度B)
- 一部の抗生剤の飲み薬(ロキシスロマイシン・ファロペネム)
- 炎症を伴う硬いしこりのニキビに対するステロイド局所注射
- 選択肢の1つとして推奨する(推奨度C1)
- 非ステロイド系抗炎症薬の塗り薬
- 一部の抗生剤の飲み薬
- 一部の漢方薬
- ケミカルピーリング(グリコール酸・サリチル酸マクロゴール)
- ステロイド局所注射
- 洗顔
- ニキビ用化粧水
- メイクアップ治療
あとは、個々の症例に応じて治療の選択を模索していくということになりますね。どうしても治らないなら、イソトレチノインという治療方法もあります。
当院でも同じニキビでも個々の症例に応じてかなり違う処方になることもよくあります。やはり元々の体質やニキビの状態も人それぞれだからです。
「ぜひニキビが治らない」という方は当院にも相談してみてください。個々の状態に合わせて丁寧に診察させていただきます。
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【この記事を書いた人】
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。

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