こんにちは、一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介です。
特に夏になると必ず受診されることが多くなるのが「虫刺され」です。特に子供の場合は真っ赤に腫れあがり、痛みを伴ったりするので「本当に虫刺され?」と思われるケースも少なくありません。
しかも、虫刺されといっても軽視してよいものではありません。虫刺されを放置して腫れがひどい時は、様々な合併症が出てくることもあるのです。今回は、虫刺されの特徴や薬・予防方法や虫刺されの腫れがひどい時の対処方法に至るまで解説していきます。
虫刺されとは?

「虫さされ」は文字通り「昆虫やクモやダニなどの節足動物によって引き起こされる皮膚炎」の総称です。医学的には「虫刺症」といいますね。皮膚炎を引き起こす原因となる主な虫としては、
- 吸血する虫:蚊(ヒトスジシマカ・アカイエカなど)・アブ・ブヨ・ノミ・トコジラミ
- 刺す虫:ハチ(スズメバチ・アシナガバチ・ミツバチなど)
- 咬む虫:クモ・ムカデ
があげられます。また、毛針に触れると皮膚炎を起こす「毛虫」も虫さされにあてはまりますね。特に夏場を中心に多くなるのは「蚊」や「ブヨ」によるもの。蚊といえば6月~8月を想像される方が多いですが、実は4月~11月までの半年以上もの間を活動時期としているので注意が必要です。ブヨが発生する時期も3月~10月であり、特に「梅雨入り~9月」に活発が活動になるので、6月くらいから秋には虫刺されで来院される方が多くなります。
(参照:日本皮膚科学会「虫刺されの原因となる虫にはどんなものがありますか?」)
虫刺されの症状の特徴は?

刺した虫によっても異なりますが、一般的には虫刺されの皮膚症状は「即時型反応」と呼ばれるものと「遅延型反応」と呼ばれるものに分かれます。
① 即時型反応
虫刺されによる即時型反応とは、皮膚に注入された唾液や毒成分に対して「すぐに起こる(=即時)」アレルギー反応のこと。虫に刺された直後からかゆみや赤みが生じ、中には蕁麻疹(じんましん)として出てくる方もいます。
原理としては、虫の成分に反応して、肥満細胞からヒスタミンという物質が放出。血管が拡張して赤みやかゆみを生じます。
即時型反応では虫の成分に対して直後から反応する分、数時間で軽快されることがほとんどです。しかしハチなどの場合は、アナフィラキシーとして全身に生じることもあり注意を要します。
(アナフィラキシーについては、アナフィラキシーの原因や時間経過・対応について解説を参照してください。
② 遅延型反応
虫刺されによる遅延型反応は、虫刺されを受けた1~2日後に起こるかゆみや赤み・水ぶくれなどのアレルギー反応です。
遅延型反応では、白血球などの炎症反応が刺された箇所に集まり炎症物質を放出。炎症物質が血管を拡張させ、刺された箇所全体の腫れとかゆみを引き起こします。
遅延型反応では時間がかかっている分、強いかゆみや腫れを伴います。そのため、虫刺されの皮膚症状として「かゆみを伴い盛り上がる赤いしこり」として出現することが特徴です。
特に指や耳などに虫刺されが起こった場合、耳や指自体がパンパンになることもしばしば経験します。(子供に多いですね)虫刺されの腫れがひどいときは、水ぶくれを生じたり、周囲の皮膚に痛みが生じることもあります。
虫の種類による症状の違いは?

では、虫の種類によって症状の違いはあるのでしょうか。実は、細かな差異はあるものの虫の種類によって大きく出方が異なるということはありません。しかし、一般的には次のような特徴を持ちます。
- 蚊:蚊に刺された直後からかゆみを生じますが、遅延型反応が強く出る方は、後から急激なかゆみと腫れを引き起こすこともあります。中には水ぶくれができる方もいます。
- ブヨ(ブユ・ブト):蚊に似た虫ですが、1日くらい経つと徐々に激しいかゆみと強い腫れが起こります。蚊と違って、皮膚を噛んで出てきた血液を吸うので、赤い出血点や内出血ができることも。蚊よりも強い腫れになって来院される方も多い虫です。
- ハチ:ハチに刺されるとハチ毒の刺激から「かゆい」というよりは「痛み」として来院される方が多いです。ただし、アナフィラキシーのこともありますので、通常より慎重に対処します。
- ダニ:ダニは一般的に布団やシーツに多く、皮膚のやわらかい場所に刺します。蚊やブヨよりは腫れが少ないことが多いですが、やはり刺されるとかゆみやしこりのような腫れが生じます。ダニ刺されは繰り返しやすいのが特徴。繰り返さないためには予防が大切です。詳しくはダニ刺されの特徴について解説【症状・薬・治らない時やダニ対策】を参照してください。
- ノミ:ノミによる被害はネコノミによるものがほとんどです。ノミに刺されてもその場では気が付かず吸血されて、1~2日後に気が付く方もほとんど。ノミがジャンプできる高さは30~40センチくらいなので、足を中心にさされることが多いです。
- 毛虫:毛虫は毛針が付いたところがすべてブツブツになって一面に出ることが特徴です。1つ1つは小さいですが多数刺されることが多く、非常に強いかゆみを伴いやすい虫刺されの1つ。詳しくは毛虫に刺されたら?毛虫皮膚炎の症状や治し方・予防法についてを参照してください。
このように、なかなか虫の鑑別までは難しいものの、多くの方を見ている経験則上、ある程度の鑑別は可能です。中には対策が必要な虫もいるので、実際の虫刺されの皮膚症状をみながら、予測される虫対策についてもアドバイスするようにしています。
(参照:Insect bites. BMJ 2020;370:m2856 | doi: 10.1136/bmj.m2856)
虫刺されの治療や薬は?

このように虫刺されは「即時型反応」「遅延型反応」に伴う強い炎症が病気の主体のため、虫刺されの薬としては炎症を抑える薬が中心になります。
① 炎症を抑える塗り薬
虫刺されは炎症が主体なので、「炎症を抑える塗り薬」が主体です。具体的には、ステロイド外用薬が中心となります。
軽症であれば市販のかゆみ止めでもよいのですが、赤みや腫れが普通の湿疹よりも強いことが多く、なかなかかゆみが止まりません。また市販薬の中によく含まれる「キシロカイン」は麻酔薬なので、麻酔が効いているころはよいのですが、炎症を抑えるわけではないので、麻酔が切れると同様にかゆくなります。
虫刺されの炎症を放置すると傷あとになりやすく、虫刺されの場所が茶色の色素として残っている方もしばしば拝見しますので、早めの治療が大切ですね。「ステロイドの塗り薬に抵抗がある」という方は相談いただければ適宜対応させていただきます。
② かゆみを抑える内服薬
虫刺されや非常に強いかゆみを伴うことが特徴で、かきこわすと腫れが強くなったり、他に「とびひ」して悪化することもしばしばあります。そうした虫刺されによる悪化を防ぐうえで、早めにかゆみを抑える飲み薬を処方することがあります。基本的にはアレルギー反応を抑える「抗ヒスタミン薬」が中心です。
③ 合併症に対する薬
虫刺され自体は早めに治療すれば、大した合併症も引き起こさずに軽快します。しかし、放置してしまうと、「とびひ」や「強い腫れ(蜂窩織炎)」などの合併症を引き起こすことがあるため、虫刺されは実は非常に注意が必要な疾患です。
例えば「とびひ」が起こってしまった場合は、抗生剤の内服や塗り薬が必要になったりしますので、合併症に合わせて適宜対応いたします。とびひの詳しい説明に関してはとびひ(伝染性膿痂疹)について解説【症状・治療】を参照してください。
ただし、これらの治療はあくまで現在の皮膚症状を抑えるのが目的です。原因虫からの回避、あるいはその駆除対策を実施しなければ新たな虫さされの症状が現れる可能性があります。
虫刺されの腫れがひどい場合の対処方法は?

虫刺されが「軽症」であれば市販薬で対応可能ですが、腫れが強い場合は非常に注意が必要なのも「虫刺され」。腫れが強い場合はどうすればよいでしょうか。ポイントを3つお話します。
① とにかく早めに医療機関に受診する
特に子供の場合は、虫刺されでかき壊した場合、とびひになってしまうことが時々あります。一度「とびひ」になってしまうと容易に全身に広がってしまいます。
また、子供以外も虫刺されを放置すると、皮膚の下である「脂肪層」にまで炎症が広がり、「蜂窩織炎」になることもあります。
虫さされから雑菌が入り膿のかたまりが生じ、切開して膿を取り出す手術をしなければならなかった例もしばしば経験しています。いずれにせよあまり虫刺されを放置してもよいことはありませんので、「腫れが強いな」と感じたら早めに皮膚科に受診し、適切な治療をうけていただくのをオススメいたします。
② 腫れが強いときは冷やす
虫刺されで腫れが強く、すぐに医療機関にいけない場合は、一時しのぎとして市販薬の虫刺されの薬を使用したり、流水や保冷剤などで患部を冷やしてかゆみを抑えるのも有効になります。虫刺されや前述のようにアレルギー反応を伴う患部の炎症が主体です。急性の炎症に対しては「冷やす」方が有効な方が多いです。
ただし、保冷剤を直接あてると冷えに伴う炎症を生じるので、タオルに膜などして緩衝させるとよいですね。
③ かきこわさない
腫れが強くなったら一番重要なのは「かきこわさない」こと。かきこわすと雑菌が入り込み悪化することが多くなります。中には、腫れやかゆみが強すぎてしびれが生じることも。
どうしても掻き壊したくなりたくなるくらい強い炎症の場合は、病院にいくサインだと思って、掻き壊す前に早めに病院にいくようにしましょう。
虫刺されを予防するには?

虫刺されは早めの症状改善も大切ですが、繰り返さないように予防することも大切。ここでは、蚊やブユ(ブヨ、ブト)を中心した虫刺されの予防方法をお知らせいたします。
① なるべく肌の露出を少なくする
蚊やブユなどの虫は、やはり肌が露出している部分を刺します。特に野外活動をするときは、長袖・長ズボンを活用するようにしましょう。特によく刺される場所は、靴下とズボンの間の足首の部分や、サンダル着用時の足の甲などです。
熱中症のこともあるのでバランス感覚が必要ですが、なるべく肌を覆った方が虫刺されの予防にはよいですね。
② 虫の多い場所に近づかない
やはり虫刺されの予防には虫が多い場所に近づかないのが基本です。例えば蚊の場合は、池や水たまり・地面や岩のくぼみや植木鉢の受け皿などに多くいます。
ブユの場合は、日光をさえぎるたくさんの木に囲まれた場所や川沿いのキャンプ場、きれいな水辺などに多く発生し、比較的涼しい時間帯に活動します。
このように、各虫の種類によって主に活動する場所が決まっているので、近づかないことが基本になります。また上記の場所に近づく際には、虫よけ対策を徹底することが大切ですね。
③ 虫よけスプレーを活用する
虫刺されの予防としてなるべく服を覆った方がよいですが、それでもすべて服で覆うことなどできませんよね。そこでやはり携帯用蚊取りや、防虫スプレ-などの忌避剤を用いるのも必要です。
ちなみに、除け剤(忌避剤)の代表であるディートには、小児に対する使用上の注意として、
- 顔には使用しないこと
- 生後6ヶ月未満の乳児には使用しないこと
- 2歳未満の幼児では1日1回、2歳以上12歳未満の小児では1日1~3回の使用にとどめること
などがありますので、必要に応じて適切に使ってください。(参照:日本皮膚科学会HP)
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