- 手や足や膝・おしりなどに突然水ぶくれができた
- 口の周りにもブツブツでてきて、さらにのども痛い
- 手や足が異常に痛くて夜も寝られない
という経験をされたことはありますか?じつはこれはすべて「手足口病」の特徴です。
夏になると増えてくるウイルス感染症の1種が「手足口病」。突然手や足にぶつぶつができ、のどもヒリヒリ痛みが出てきたらびっくりしますよね。
実は、子供に多く感染しますが、大人にもうつすこともあるのが手足口病の特徴の1つ。しかも、大人の場合、痛みがかなり辛い症例もある感染症です。(筆者も経験しましたが「こんなに痛い感染症があるんだ」と思ったほど痛かったです)2026年夏から大流行をしてきており、非常に要注意な疾患の1つとなっています。
では実際、手足口病とはどんな病気なのでしょうか?今回は大人にフォーカスして、大人の手足口病の原因や子供の症状の出方の違い、治療方法にいたるまでわかりやすく解説していきます。
手足口病とは?

手足口病とは、その名のとおり「手のひら・足の裏・口の中やそのまわりに、発疹や水ぶくれが現れる感染性の病気」です。エンテロウイルスというウイルスの仲間が原因で起こり、毎年夏を中心に流行します。
患者さんの多くは子供で、報告数の約90%を5歳以下の乳幼児が占めています。流行のピークは7月ごろですが、秋から冬にかけて再び増えることもあります。「子供の病気」というイメージが強いですが、免疫のない大人もかかることがあり、近年は大人の感染例も注目されています。
多くの場合は数日から1週間ほどで自然によくなる病気ですが、口内炎による脱水や、まれに起こる重い合併症には注意が必要です。
(参照:厚生労働省 手足口病/国立健康危機管理研究機構(JIHS)手足口病(詳細版))
(参照:Hand-Foot-Mouth Disease in an Adult. Cureus. 2023 Jan; 15(1): e33670.)
手足口病の原因や感染経路は?

手足口手足口病を起こすのは、エンテロウイルス科に属する複数のウイルスです。代表的なものは次のとおりです。
- コクサッキーウイルスA16(もっとも一般的)
- コクサッキーウイルスA6(症状が重く、発疹が広がりやすい)
- コクサッキーウイルスA10
- エンテロウイルス71(EV71:髄膜炎・脳炎など重症化に注意)
このように原因ウイルスが複数あることが、後で述べる「くり返しかかる」理由にもつながります。
感染経路は、おもに次の3つです。
- 飛沫感染:せきやくしゃみのしぶきを吸い込む
- 接触感染:水ぶくれの中の液やだ液、それらがついた手・物にふれる
- 糞口(ふんこう)感染:便の中のウイルスが手などを介して口に入る
発症から最初の1週間がもっとも感染力が強い時期です。やっかいなことに、症状が治まったあとも2〜4週間は便の中にウイルスが排出され続けます。そのため、症状が消えた後も、とくにトイレやおむつ交換のあとの手洗いが重要になります。なお、原因のエンテロウイルスはアルコール消毒が効きにくいため、予防の基本は「流水と石けんでの手洗い」です。
(参照:厚生労働省 手足口病/国立健康危機管理研究機構(JIHS)手足口病(詳細版))
(参照:CDC「Hand, Foot, and Mouth Disease (HFMD) Causes & Transmission」)
大人の手足口病の症状は?
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大人の場合は、基本的には子供と同じように、3~5日の潜伏期間を経て主に次のような症状がでます。
- 発熱
- のどの痛み
- 手足を中心にした発疹
- 口内炎
では、大人の手足口病のどの点が子供と異なるのかというと、次の通りです。
① 大人の手足口病の方が、発疹による痛みが強くでやすい
私自身の経験では、手のひらや足の裏に硬い小石が入っているかのような感覚で、踏みしめると激痛が走るので、普通に歩くのも困難なほどになりました。患者さんでも同様の痛みを訴えられる方もいる一方、あまり痛みを感じない方もいるので、個人差も大きいようです。診療の実感では6割くらいが痛みが強く出ています。(おそらくウイルスの種類による影響だと思います)
指の側面や関節部分に沿って、赤いブツブツで出ることが多いですね。
発疹の数自体は子供の方が多い傾向にあります。
② 発疹が少ない代わりに、のどの痛みがつらい方も
一方で、手足の発疹が少ないケースでのどの痛みがつらいケースもしばしば経験します。こうしたケースは発熱も強い発熱を伴うことが多く、通常の食事をとるのが困難なほどです。
いつものどの奥でひっかかっている感覚に襲われ、「何とかしてほしい」と再受診することもあります。
③ 繰り返し発症する可能性がある
手足口病の原因ウイルスは1つではありません。コクサッキーウイルス、エンテロウイルスなど複数のウイルスが「手足口病」として発症します。
そのため、「一度手足口病になったから免疫力があるので問題ない」と考えるのは早計です。特に周りに手足口病の方がいる場合は、1回目と同様に感染予防に努めた方がよいでしょう。
④ 大人は子供から「もらう」ことが多い
大人の手足口病の多くは、家庭内で子供から感染します。家庭内で子供から大人へうつる二次感染率は約5〜10%ですが、おむつ交換・食事の介助・同じ食器やコップの使用など、濃厚な接触があると20〜30%まで上がります。研究では、感染しやすい状況として、5歳未満の子供と同居している(オッズ比9.23倍)、手足口病と診断された子供と同居している(15.33倍)、携帯電話を共有している(5.87倍)ことが報告されています。
小さなお子さんの看病をする保護者は、とくに手洗いの徹底と、食器・タオル・スマートフォンなどの共用を避ける工夫が大切です。
(参照:Incidence, aetiology, and serotype spectrum analysis of adult hand, foot, and mouth disease patients: a retrospective observational cohort study in northern Zhejiang, China, International Journal of Infectious Diseases, 2019/国立健康危機管理研究機構(JIHS)手足口病(詳細版))
子供の手足口病の症状は?
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手足口病は主に5歳以下の子供がかかることが多く、一般的な症状としては次のようになります。通常ウイルスに感染してから3-5日くらいに症状が現れることが多いです。
- 発熱:病気の初期段階で発熱が現れることが一般的です。しかし、同じウイルスによる「ヘルパンギーナ」よりも手足口病のほうが熱がなく、元気であることがしばしばです。
- 喉の痛み:喉が痛く、悪寒やだるさを感じることがあります。「のどの奥の方がイガイガする」といった表現をされやすいですね。
- 口内炎:口の中に痛みを伴う口腔内病変が出ることがあります。特に口の上の方を中心に表れやすく、しばしば強い痛みを伴うため、喉が痛くてごはんが食べられなくケースもあります。(症状にはかなり個人差があります)
- 皮膚の発疹:最大の特徴が皮膚の発疹です。手のひらや足の裏を中心に水ぶくれを伴うような2-3mmくらいの発疹が現れます。発疹は腕、足(ひざ)、お尻、腹部、背中や頭の後ろの方にもにも広がることがあります。口の周りにも水ぶくれができることがありますね。
通常、「のどの痛み・発熱」が最初にやってきて、皮膚症状が後から出てきます。これらの症状は通常、7~10日で自然に治ります。ただし、個々の子供によって症状の程度や期間は異なることがありますのでご注意ください。
また、特にコクサッキ―ウイルスA6感染により手足口病の症状が消失してから、1か月以内に、一時的に手足の爪の脱落を伴う症例も報告されていますが、自然に治るとされていますね。
なお、手足口病は「夏かぜ」を代表する感染症で、ヘルパンギーナやプール熱(咽頭結膜熱)と間違われやすい病気です。ヘルパンギーナは「のどの奥の水ぶくれと高熱」が中心、プール熱(アデノウイルス)は「高熱・のどの痛み・目の充血」が中心で、いずれも手足の発疹は基本的に出ません。手足にも発疹が出るのが手足口病の特徴です。詳しくは大人のヘルパンギーナ、大人のアデノウイルス(プール熱)の記事もご覧ください。
(参照:CDC「Hand, Foot, and Mouth Disease (HFMD) Symptoms & Diagnosis」)
手足口病はしばしば「重い症状」になることがあります
さらに、手足口病は重症化する可能性があります。多くは7~10日程度で治っていくのですが、中には「髄膜炎」「小脳失調症」「脳炎」といった中枢神経系の合手足口病の多くは自然に軽快しますが、まれに重い合併症を起こすことがあるのです。
とくにエンテロウイルス71(EV71)は、髄膜炎・脳炎・急性弛緩性麻痺(手足に力が入らなくなる)など、中枢神経の合併症を起こしやすいことが知られています。過去の海外の大規模な流行では、重症化した患者さんのうち一定数が亡くなった報告もあります(ある中国の統計では、報告50,651例中637例〈1.26%〉が重症、38例〈0.075%〉が死亡とされています)。
頻度は高くありませんが、次のような症状があるときは、早めに受診してください(厚生労働省)。
- 高熱が出る、発熱が2日以上続く
- 嘔吐をくり返す、強い頭痛がある
- 視線が合わない、呼びかけに応じない、ぐったりしている
- 呼吸が速い・苦しそう
- 水分がとれない、おしっこが出ない
これらは髄膜炎・脳炎や脱水のサインのことがあります。とくに小さなお子さんでは様子の変化を見逃さないようにし、「いつもと違う」と感じたら受診しましょう。
手足口病の治療や薬は?
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手足口病はウイルス感染であり、現在手足口病に対する抗ウイルス薬はありません。したがって、対症療法があります。症状に合わせて例えば以下のような治療が行われます。
- 鎮痛薬・解熱薬:発熱や痛みを緩和するために、アセトアミノフェン(例:タイレノール)やイブプロフェン・ロキソプロフェンなどの解熱鎮痛薬を使用することがあります。(ただし、子供にアスピリンを使用しないでください。アスピリンは、子供にレイ症候群という重篤な病気を引き起こす可能性があります。)
- かゆみを抑える飲み薬:皮膚の症状が時々かゆみが出てくることがあります。一番使われる薬は抗ヒスタミン薬とよばれるアレルギー症状を抑える薬ですが、症状に合わせて処方内容は変えています。
- 炎症を抑える塗り薬:手足の皮疹の炎症や2次感染の防止などを目的にしてしばしば塗り薬が処方されることがあります。
前述の通り、大人の手足口病は非常に重い手足の痛みであったり、のどの痛みであったりと子供より強い症状が出やすい傾向にあります。なので、かなり強く症状を抑える薬を使わないと日常生活に支障がでることもしばしばです。
また、重症化や感染予防の観点から「なるべくはやく医療機関に受診して適切な診断を受けること」は大切ですね。
手足口病の出勤停止期間は?
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結論からいうと、手足口病の出勤停止期間、出席停止期間は特に定められていません。インフルエンザやコロナのように「何日間休まなければならない」というのはありません。
学校保健安全法の規則では、第三種感染症に規定されており、「本人の全身状態が安定しており、発熱がなく、口腔内の水疱・潰瘍の影響がなく普段の食事がとれる場合は登校(園)可能である」としていますね。
ここでのポイントは「手足のブツブツがあっても登園や出勤ができる」という点です。
「手足のブツブツからうつるのではないか」と考えられがちですが、感染経路やむしろのどや唾液からの飛沫感染が主であり、発疹を触ることによる感染はまれですね。
ただし、発症から最初の1週間は感染力が強く、便の中には2〜4週間ウイルスが出続けます。発熱やのどの痛みが強い間は無理をせず休み、回復後も手洗いを徹底することが、まわりへの感染を防ぐポイントです。
大人の場合も法的な決まりはありませんが、症状が強い時期は周囲にうつしやすいため、職場とも相談しましょう。勤務先や保育園によっては独自の基準を設けていることもあるので、事前に確認してください。
手足口病の予防法は?

手足口病はかからないようにするための予防も大切。手足口病の予防策や感染を広げないための対策を5つお伝えします。
① 手洗いの徹底
手洗いはウイルス感染リスクを減らす有効な方法です。外出後、トイレ使用後、食事前には必ず手を洗いましょう。
手洗いは感染症全般に対する基本的な予防策です。手洗いの際には、石鹸を使って指の間や爪の周りも念入りに洗ってください。水道水で十分にすすぎ、清潔なタオルで手を拭きましょう。
② うがいを徹底する
うがいは喉のウイルスを洗い流し感染リスクを低減します。
外出先からの帰宅や人混みにいた後は、感染リスクを軽減するためにうがいを行いましょう。うがいも手洗いと同様、感染症予防に基本的な対策ですね。
③ 個人用品の共有を避ける
個人用品は共有せず、各自で使い分けましょう。歯ブラシやタオル、食器などを分けることで、感染リスクを低減できます。
また、使用済みの食器は速やかに洗浄し、清潔に保つことが大切です。特に、小さいお子さんがいる場合は、食べ残しを食べたり大きいお皿で食事を共有したりしないようにしましょう。
④ 環境の清潔を保つ
定期的な清掃や消毒で、家や職場、学校の環境を清潔に保ちましょう。
もちろん普段から清潔にしておくと、ウイルスの感染リスクを抑えることができます。特に、お子さんが手足口病になったら便中にウイルスが2~4週間います。
かならずトイレの後の手洗いとともにドアノブなどは清潔にしておきましょう。
⑤ 病気の人との接触を避ける
もちろん登園基準で「全身状態で安定していない場合は登園できない」と記載されている通り、感染させやすいウイルスの1つ。
手足口病が流行している場合や、周囲に感染者がいる場合は、感染リスクを減らすために、病気の人との接触を避けましょう。
特に乳幼児や免疫力が低い人がいる家庭では注意が必要ですね。家庭内では、看病する人を決め、子供の世話のあとは必ず手を洗うなど徹底しましょう。
【この記事を書いた人】
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。
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