新型コロナウイルス抗原検査の精度と陽性・陰性の対応について解説

一之江駅前ひまわり医院では、新型コロナウイルス感染症を迅速に診断するため、症状により疑わしい方を対象に新型コロナウイルス抗原検査も行っております。

新型コロナウイルス抗原検査とは?

ウイルスが持つ特有のタンパク質(抗原)を検出する検査方法です。

抗原検査でも「定量検査」と「定性検査」があります。クリニックや町の診療所で行われる検査は「抗原定性検査」であることが多いですね。

抗原定性検査は「抗原定性検査キット」でもわかる陽性か陰性かだけがわかる簡便な方法。ウイルスの遺伝情報を直接見ていない分、PCR検査に比べ検出率は劣りますが「少ない時間で結果が出る」「特別な検査機器を必要としない」ことから速やかに判断が必要な場合に用いられます。

厚生労働省によるガイドラインによると「抗原定性検査は、症状のある方で発症から9日目以内の方では確定診断として用いることができる」ことになっています。

ただし、陰性の場合は核酸検出検査や抗原定量検査に比べて、「本当に陰性であると判断する力」が低いので、検査結果が陰性の場合も感染予防策を継続する必要があることに注意が必要です。

なお無症状者に対する抗原検査はPCR 法と比較し感度が低下する可能性があるため、確定診断として用いることは推奨されていませんのでご注意ください。

一方、抗原定量検査は、専用の測定機器を用いて化学発光酵素免疫測定法等によりウイルス抗原の量を定量的に測定することができる検査方法。特異度も高く、感度も簡易な核酸検出検査と同レベルであ
ることから、空港検疫等で活用されています。

(参照:『新型コロナウイルス感染症(COVID-19)病原体検査の指針(第6版)』

新型コロナウイルス抗原検査の精度について

一之江駅前ひまわり医院では、アルフレッサファーマ株式会社が提供している「アルソニックCOVID-19 Ag®」を採用しています。

2021年3月から厚生労働省に認可されました。

  • 5分で判定することができる
  • 鼻腔法でも適応になっていること

が大きな特徴であり、周りに暴露する可能性を最小限に抑えることができます。(ただし当院では患者さんから強い希望がない限り検出率をあげるため、できるだけ鼻の奥から採取しております)従来のPCR 法との比較に基づく試験成績(108 検体)は

  • 陰性的中率95.0%(57/60): 検査で陰性と判断された方で本当に健康だった方
  • 陽性的中率 66.7%(32/48): 検査で陽性と判断された方の中で本当に病気であった方
  • 特異度78.1%(57/73):実際に陰性な方で検査が陰性な方の割合
  • 感度91.4%(32/35):実際に陽性な方で検査が陽性な方の割合
  • 全体一致率 82.4%(89/108)

と他の新型コロナウイルス抗原検査と比べても良好な結果となっており、他のウイルスとの交差反応も認めなかったため、厚生労働省から認可を受けています。

デルタ株やオミクロン株などの変異株の場合でも精度は落ちないことがWHOでも示唆されています。(詳細はこちら)

抗原検査で陰性だったらどう考える?

では、新型コロナを疑って抗原検査が陰性だった場合、どのように考えればよいのでしょうか。結論から言うと厚生労働省のガイドラインで記載されている通り「陰性であるからと言って、感染予防策を怠ってはならない」と言えます。

なぜなら、抗原検査は「感度(=本当にコロナにかかっている方を「陽性」と判定する力)」は高いものの、「特異度(=本当はコロナにかかっていない方を正しく「陰性」と判定する力)」は低いので、「抗原検査が陰性だからといって、新型コロナ感染症ではない」とは言い切れないからです。

特に自分で採取したキットの場合は、医療機関で行う鼻咽頭ぬぐい法よりも精度は低下しがちです。「自分でとった抗原検査で陰性だった」と言われる方も、「病院で再検査すると陽性だった」といったこともよく経験します。

抗原検査陰性でも、例えば次のような時は必ず医療機関に受診しましょう。

  • 新型コロナ陽性者と強く接していた場合
  • 新型コロナで発症しやすい症状が強い場合(咳や喉の痛み・発熱など)
  • 新型コロナによる重症化リスクが高い場合(高齢者・基礎疾患をもつ方・喫煙者や肥満の方など)

症状からみたコロナとの判別方法に関してはこちらを参照してください。

(参照:『新型コロナウイルス感染症(COVID-19)病原体検査の指針(第5.1版)』

抗原検査で陽性だったらどう考える?

では、自分で行った新型コロナ抗原検査で「陽性」がでたらどう考えればよいでしょう。

答えは明確で新型コロナ感染症に矛盾しない症状があるなら「新型コロナ感染症」と考えてよいでしょう。

キットの検査結果を写真に撮るか持参して(ここ大切です)、ただちに医療機関に受診するようにしましょう。新型コロナウイルスは、感染力も高く、重症化リス・後遺症の問題もあるウイルスです。「ただの風邪と同じだから問題ない」などと、自分で抱えないようお願いします。

無症状で陽性ででた場合は、医療機関に電話の上、相談してみてください。(再検査する可能性があります)

あわせてこちらもおすすめです

【この記事を書いた人】 

一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。

更新履歴

  • 新型コロナウイルス感染症病原体検査(6版)に沿って改訂

関連記事

  1. 大人の喘息・咳喘息について解説【原因・チェックリスト・吸入薬…

  2. ヨーグルトの効果と注意点について解説【花粉症・免疫力・ダイエ…

  3. オミクロン変異株「BA5株」の特徴について【症状・重症化・潜…

  4. 新型コロナワクチン4回目接種について解説【対象者・効果・副反…

  5. 【医師が解説】不眠症や睡眠障害への漢方薬について

  6. 新型コロナのブレークスルー感染とは?2回接種後の感染割合や症…

コメント

    • 佐藤一郎
    • 2023年 1月 01日 10:19pm

    この記事において
     なぜなら、抗原検査は「感度(=本当にコロナにかかっている方を「陽性」と判定する力)」は高いものの、「特異度(=本当はコロナにかかっていない方を正しく「陰性」と判定する力)」は低いので

    とありますが、その前述
     従来のPCR 法との比較に基づく試験成績
     陰性一致率95.0%(57/60)
     陽性一致率 66.7%(32/48)

    ならば「感度」より「特異度」の方が高いのでは?

      • Daisuke Ito
      • 2023年 1月 03日 8:05am

      コメントありがとうございます。ちょっと説明が難しいですが、
      感度の計算式は「陽性者全体の中の検査で陽性者になった割合」
      特異度の計算式は「陰性者全体の中で検査が陰性になった割合」
      陽性一致率(=陽性的中率)は、「検査で陽性になったで本当に陽性だった方」
      陰性一致率(=陰性的中率)は「検査で陰性になった方で本当に陰性だった方」
      なので、ちょっと意味合いが異なります。
      感度と特異度も記載しましたが、感度は78%、特異度は91.4%になります。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

CAPTCHA


ピックアップ記事

新着記事 おすすめ記事
PAGE TOP