痰や咳はコロナから?痰のからむ咳の原因や対処法について解説

  • 痰が絡んでなかなか出しづらい。
  • 急に声がれするようになった。
  • 咳の症状が急に出てきた。

という方はいませんか?痰のからむ咳が急に続くと、「もしかしてコロナ?」と考える方もいるでしょう。

5類になっても新型コロナ自体のウイルスの性質は変わりません。また、コロナ以外にも痰や咳には早めに対処しなければならない疾患もたくさんあるのです。

今回は、そのような痰の絡む咳について、痰や咳の原因や対処法・新型コロナ感染症の可能性がどれくらいあるかを含めてお話していきます。

痰(たん)と咳はなぜでてくる?

人間は呼吸をするときは、「のどや鼻➡気管➡気管支➡肺胞」とつながって、肺胞で血液中のガス交換を行います。痰はそのうち「気管~肺胞」で異物がに対して包んで外へ追い出す「クリーナー」のような役目を果たします。また、気道を加湿・加温することで気道の環境を整える作用もあります。

そのため、痰を正確に言うと「気道の粘膜で作られる分泌物」を指します。それに対して、医学的には鼻の粘膜で作られる分泌物を「鼻水」・口の唾液腺からでる分泌物を「唾液」と表現します。

しかし患者さんの多くは「胸がなんとなく違和感があって、奥の方から分泌物が出ている」状態を総称して 『痰』 と呼びます。医療従事者としては「その『咳や痰』はどこから来たものなのか?」を常に考えながら診療しているのです。(以下、気道での分泌物を「痰」と呼ぶことにします)

また「咽喉頭異常感症」といって、のどや気道に異常がなくても「のどに引っかかった感じが続く」という方もいます。神経が敏感な方が多く、心因的なものとか更年期障害とも関連しているとも言われています。この場合は、心理的な介入や治療が必要な場合もあります。

痰がからむ咳の原因は?

痰が絡むのはまず「気道に異物が侵入したことにより痰が作られる」のが原因の1つ。

実は、健康な方でも痰の分泌はされています。正常な成人の痰の分布量はおよそ1日100ml程度。しかし体に異物が侵入すると、体の外に押し出そうとして粘り気が増して絡むようになるのです。例えば、痰が作られ粘り気が強くなる状況として以下が考えられます。

  • ウイルスや細菌に対して気道の炎症が起きている時
  • 花粉やホコリなどに対するアレルギー反応が起きている時
  • タバコなどで日常的に気道的に炎症が起こっている時

このうち、ウイルスや細菌で痰が一時的に絡んだ場合、健康な人で炎症が治まれば速やかに異物が体の外に排出されるので、それほど長く痰が絡みません。逆にCOPDや喘息、タバコのように慢性的に気道が炎症している場合では、長期間痰が絡む原因となります。そして、痰や異物を排出しようとする結果、咳になってでてくるのです。

さらに、痰がからんでなかなか出せなくて「いつも痰がからんでいる」と表現される場合があります。例えば次のような場合です。

  • 痰のねばりが強く、痰が排出されにくくなっている
  • 痰を外に出す「繊毛(せんもう)運動」が弱くなり、痰をなかなか外に出せない
  • 肺の筋肉が弱まり、呼吸運動が低下して痰が外に出しづらい

実際には、原因は1つだけでなく複数が原因になっていることもしばしば経験します。

(参照:咳嗽・喀痰の診療ガイドライン)

痰がからむ咳が続くとどうなる?

痰がからむ咳が続くとどうなるのでしょうか。

  • 不眠や疲労の原因になる:痰自体が「異物」なので、排出しようと咳が自然とでてきます。睡眠中の咳は不眠の原因になりますし、慢性的に咳をしていると「疲れ」のもとになっていまいます。
  • 息切れが強くなる:痰があると気道の空気抵抗が強くなり、呼吸するのにも余分な力が必要になります。慢性的に続くと、呼吸筋が疲れてしまい息切れが強くなります。
  • 肺がつぶれ(無気肺)、感染しやすくなる:痰を放置し気管支が痰でいっぱいになると、その部分でガス交換が行われず肺がつぶれてしまいます(無気肺)。つぶれた肺が続くと、細菌の温床になる可能性があります。

このように、痰が絡むことが続くと生活に支障が出るだけでなく、細菌の温床にもつながる可能性もあるので、早めに対処する必要があります

それだけでなく、長期間痰がからむのが結核や肺がんなどの重大な病気の可能性もあり、疑われた場合は喀痰細胞診やCTなどの精査が必要なことも。痰が長引く場合は、早めに病院やクリニックに受診するようにしましょう。(喀痰細胞診が必要と判断される場合は、当院では連携医院に紹介いたします)

新型コロナ感染症で痰と咳が出ることはある?

結論からいうと新型コロナ感染症で痰のからみや咳などの呼吸器症状が出現しやすいです。ただし「痰が絡む=新型コロナ」と考えるのは早計です

オミクロン株出現以降の国立感染症研究所のデータによると、咳で発症された方は46%、湿った咳で17%出現されており、オミクロン株に置き換わったからと言って、咳や痰の症状が減ったということはありません。オミクロン株の潜伏期間は2-4日程度であり、ノルウェーのデータによるとオミクロン株の初期症状としての咳は中央値で4日(3日~5日)程度続いたとのことでした。

またBA.5株になっても、咳や痰が多い傾向は変わりません。例えば、BA.5株を中心にしたフランスからのデータによると、新型コロナの咳は「だるさ」についで第2位に出やすい症状(58%)となっています。

2023年5月に流行している「XBB株」もBA.5の派生株なので、同様の傾向があると考えられます。

このように、急性期の痰のからみや咳は、新型コロナウイルス感染症を十分疑う所見の1つになります。そのため、他の臨床所見や流行状況に合わせて、新型コロナウイルスに対する抗原検査PCR検査などの検査を追加する必要があるでしょう。

しかし、2〜3週間続くような慢性的な痰がらみや咳・息苦しさは、新型コロナ感染症以外の可能性がほうが高く、「痰がらみ・咳=新型コロナ感染症」とは決めつけて診療することはありませんので、ご安心ください。

(参照:新型コロナウイルス感染症 診療の手引き)
(参照:SantéPubliqueFrance「Coronavirus : circulation des variants du SARS-CoV-2」

新型コロナ感染症は「治療薬」があります

中には「新型コロナって結局対症療法でしょ?」と考えている方もいらっしゃいますが、そうではありません。

まず、重症化リスクが高い方や発症早期の方は、ウイルスの増殖を抑える治療薬が使える可能性があります。特に

  • 60歳以上の方(治療薬の適応年齢は治療薬の種類によって違います)
  • がんの方
  • 慢性的な呼吸器障害がある方
  • 腎臓が悪い方
  • 糖尿病の方
  • 高血圧の方
  • 悪玉コレステロール(LDL)が高い方、中性脂肪の高い方
  • 肥満(BMI30以上)の方
  • 喫煙されている方
  • 移植後で免疫不全の方

などは、ウイルスの増殖を抑える薬の適応になることが考えられますので、お伝えいただけたらと思います。(新型コロナの治療薬の詳細は【ゾコーバ・ラゲブリオ・パキロピッド】新型コロナ感染症「軽症」の治療薬についてを参照してください)

また、新型コロナでは「後から症状が変わってくる」「後遺症にかわってくる」といったケースも見受けられます。特に後述する後遺症に関しては、最初に診断がついていないと「なんで症状が長引いているのか」わからないことになりかねません。そうした意味でも、あまり放置せずに診断は確定した方がよいでしょう。

新型コロナ感染症の「後遺症」として咳や痰のからみが続くことも

新型コロナ感染症の後遺症の内訳、咳症状は
2022年6月1日に発表された厚生労働省資料に基づく)

ただし、新型コロナに感染された後、「後遺症」として痰のからみが続くことがあります。これは、新型コロナウイルス感染そのものが咳を起こすわけでなく、ウイルスに対する過剰な気道の炎症が原因になります。

実際に、2022年6月に発表された新型コロナ後遺症に関する厚生労働省のデータによると、新型コロナと診断されてから

  • 3か月後で咳 9%、痰 7%
  • 6か月に咳 6%、痰 6%
  • 12か月後に咳5%、痰 5%

の方が「後遺症として咳症状や痰症状がある」と回答しています。

このように、新型コロナウイルスそのものというより、その後の過剰反応から長期間痰が絡むという方が、当院にもよく来院されますね。当院でもそのような新型コロナ後遺症についての治療も行っておりますので、気になる方はご相談いただけましたら幸いです。

後遺症での咳の特徴などについては【医師が解説】新型コロナ後遺症による咳や息切れについて【後遺症外来】を参照してください。

痰や咳への対処法やケアは?

痰のからむ咳に対する治療方法は、痰がからむ原因に応じてかなり変わってきます。(前述の通り『痰』が気道の分泌物でないことも経験します)ここでは、一般的な痰のケア方法について紹介していきます。

① 痰がでる原因をなるべくなくす

前述の通り、痰は異物を外に出すために作られます。つまり、気管支の炎症を作るような異物を作らせないようにすることが大前提です。

花粉やハウスダストに反応しやすいアレルギーの場合なら、帰宅時には花粉を払い落して空気清浄機を使用する。タバコは気道にとって有害物質の種類も豊富なので、禁煙する。ウイルスや感染の場合は、免疫力との戦いなので適切な薬を使いながら、安静に保つ。

それぞれの疾患に合わせて、痰が出にくい状況を作ることが大切です。

② 加湿をしっかりする

痰は異物を外に出すほか、気道を加湿加温して保護する効果があります。部屋を加湿することで、気道の中をあらかじめ加湿した状態にし、痰も外に出しやすくできます。さらに、ハウスダストや花粉・ウイルスなども加湿された状況なら水分が付着するため、自由に飛び回ることができません。

特に冬は最も乾燥する時期なので、部屋の中を加湿するほか、かぜをひいている時は加湿機能のあるマスクを使用するのもオススメです。(マスク皮膚炎には注意してください)

他、気道を加湿する目的で生理食塩水で口すすぎやうがいをしたり、温かい飲み物を飲んで喉を落ち着かせるのもよいですね。逆に刺激物は取らないようにしましょう。

③ 痰は積極的に出す

痰は異物を外に出すために出る、むしろなくてはならないものです。しかし、痰が外に出ないとそれが蓄積して、無気肺や細菌巣の原因になります。そのため、痰を積極的に出すことが大切です。特に以下の点に注意してみましょう。

  • 寝る姿勢を変える: あおむけ寝で寝ていると、背中の痰がたまりやすくなります。一番理想なのは時々うつぶせ寝にすることですが、苦しければ横向き寝にするなど寝る姿勢を変えてみましょう。
  • ハフィングする:ハフィングとは、のど元に上がってきた痰を外へ出すための重要な方法の1つ。 「ハッ!ハッ!」と勢いよく息を吐く方法です。(声は出さなくて大丈夫です)息を吐く時に、自分で胸を押して補助してあげると、より強く息を吐く事ができます
  • アクティブサイクル呼吸法(ACBT):痰の排出として有効な呼吸法の1つが、「アクティブサイクル呼吸法」と呼ばれる呼吸法の1つ。呼吸のコントロールをした後、胸郭を広げ、強制的に息を吐くことを繰り返すことで、痰を徐々に外にだします。具体的には、以下を痰がでるまで行います。(のどに負担がないよう行ってください)
    1. 安静呼吸:4~5回
    2. 深呼吸:2~3回
    3. ハフィング:4~5回
    4. 咳:2~3回

環境再生保全機構でも排痰ケアに関する動画があるので、参考にしていただくとよいでしょう。

④ 排痰器具を使用したり呼吸補助をする

排痰を促す呼吸補助のイラスト

排痰の訓練を行っても、なかなか自分で出せない高齢の方もいるでしょう。そのような場合は、排痰器具の使用をしたり呼吸補助(介助)するのも有効です。

呼吸介助(スクイージング)を行う際には、痰の溜まっている胸部に手をあてて、呼吸に合わせて絞り出すように圧迫し、肺から痰を出しやすいように補助しましょう。高齢者の場合は骨ももろいことも多いので、徐々に力を加えるとよいですね。(素人の方は最初は一気に力を加えず、基礎疾患のある方は担当医師に一度スクイージングをしてよいか確認をお願いします

⑤ 普段からマスクをつける

原因によりますが、細菌やウイルスによる痰の場合、感染拡大防止の上でもマスクは大切です。さらに、外出する時にも加湿効果があります。外出時は、十分温かい服装でマスクをつけるようにしましょう。感染対策に対するマスクの効果については、【新型コロナ】感染対策でのマスクの効果とデメリットについて解説を参照してください。

⑥ 咳がつらい時は市販薬や医療機関の受診を

咳は「異物反応を追い出す自然な反応」ではありますが、咳があまりに多いと夜眠れなかったり、日常生活を送るのにつらいことでしょう。あまりに過度な咳は咳止めで止めても構いません。

ただし、痰のからむ咳の中には抗生剤が必要だったり、特殊な吸入器が必要だったり様々なケースがあります。なるべく日常生活に支障がでるくらいの咳は早めに医療機関に受診するようにしましょう。

新型コロナで使われる咳止めについては、新型コロナに対する市販薬について【発熱や咳などの症状別】をご参照ください。

あわせてこちらもオススメです

【この記事を書いた人】 
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。

関連記事

  1. 新型コロナウイルス抗原検査の精度と陽性・陰性の対応について解…

  2. オミクロン「XBB株」「XBB1.16株」の症状や重症度など…

  3. インフルエンザとインフルエンザワクチンについて【新型コロナと…

  4. 喉の痛みに対する漢方薬について解説【桔梗湯・小柴胡湯加桔梗石…

  5. 新型コロナや風邪の予防とビタミンの関係について【ビタミンC・…

  6. 【医師が解説】尿酸値を下げる薬の効果や内服期間・副反応につい…

コメント

    • 河邉恒治
    • 2022年 12月 22日 9:21am

    昨日コロナ陽性となりました。
    就寝時に痰が絡みはじめ、対処法を探していたところ、貴サイトを見つけました。
    分かりやすく、すばらしい内容で、たいへん参考になりました!
    ありがとうございます。
    感謝します。

    ※一ヶ所だけ誤字がありました。
    胸郭を広げ、強制劇に息を吐く
    →胸郭を広げ、強制的に息を吐く

      • Daisuke Ito
      • 2022年 12月 23日 6:25am

      参考にしていただけましてこと、嬉しく思っております。ありがとうございます。
      また、誤字についても承知いたしました。速やかに訂正させていただきました。

      • 富田佳子
      • 2023年 2月 11日 1:06pm

      7日前にコロナ陽性となりました。幸い、症状は軽く喉の軽い痛みだけですが 抗原検査は毎回 陽性のままです。
      どうしようもないくらい不安の中にいた時に貴サイトを偶然 拝見し、とても参考になりました。ありがとうございます。
      痰はまったく、という位に無く 出ないのであれば 無理に薬等を使ってまで出そうとしなくても良いのでしょうか?

        • Daisuke Ito
        • 2023年 2月 11日 3:36pm

        富田佳子様

        ありがとうございます。
        参考になったのでしたら嬉しい限りです。
        痰は出ないのでしたら、無理に出す必要はないと思います。
        もし痰のからみが続くのでしたら、ぜひ医療機関に受診してください。

    • Tomoko Hayashi
    • 2023年 8月 06日 10:00pm

    コロナ罹患後、3日となり熱も平熱になりました。ゾコーバやムコダインをのんでいますが、ムコダインのおかげか咳や痰がひどく特に痰は出したくて咳をするもへばり付き窒息しそうです。

    汚いのですが、おじさま達の『カーッペッ』を真似して少しずつ出していますが、喉がヒリヒリします。

    無理に出す必要はないのでしょうか?仰向けで寝ると苦しい為、横を向き寝るようにしています。

      • Daisuke Ito
      • 2023年 8月 07日 6:36am

      Tomoko Hayashi様

      コメントいただきありがとうございます。辛い状況、心中お察しいたします。
      正直、ここの患者さんの状況もコメントだけではわからないので、具体的なアドバイスは控えさせていただきますが、
      窒息しそうするようなくらいへばりつく痰の場合は、別の治療が必要なケースもよく経験します。一度再度診断された医療機関に受診された方がよいかもしれません。
      よろしくお願いいたします。

    • 岡田悦子
    • 2023年 9月 11日 12:29am

    おととい8日金曜日に寒気が止まらず、会社を早退させてもらい、かかりつけ医ふ行きました。処方箋出してもらい。今日で3日たつのに寒気熱と酷い喉の痛み咳や鼻水が酷くなる一方で。主治医に相談して(耳鼻科の先生で)もし経過が悪ければうちにはレントゲンがないから相談して内科に行って見たらよいかもしれないよといわれました。明日主治医に相談して内科に行って見ようかと思います。

    • なかくら
    • 2024年 4月 13日 8:25pm

    とてもわかりやすい記事をありがとうございます。
    今後のためにURLもメモ帳に控えさせていただいております。

    コロナ感染において、痰を積極的に出すというのは、発生した場所から痰を追い出せさえすれば飲み込んでも良いのでしょうか。

    「んんんっ」と咳払いするか強めに咳をしたら飲み込めるところまで痰が来るのですが、口から吐き出すのはなかなか大変で…。
    コロナのウイルスは飲み込んだら胃酸でやられてくれますかね?

      • Daisuke Ito
      • 2024年 4月 16日 5:51am

      なかくら様

      コメントいただきありがとうございます。
      痰は気管支内に入らなければ、飲み込んでも問題ないと思いますが、あまりオススメできることではありませんかね・・
      胃酸でやられるくれるか、という問に関しては、下水からコロナウイルスの量を推定できるくらいしっかり残っていることや
      他のウイルスも排泄物に残っていることなど考えると、胃酸でなくなるものではなさそうです。(論文まで探せずすみません)

        • なかくら
        • 2024年 4月 16日 8:38am

        貴重なお時間を使ってのご回答ありがとうございました。とても参考になりました。
        なるべく体外に出せればいいなと思います。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

CAPTCHA


ピックアップ記事

新着記事 おすすめ記事
PAGE TOP