インフルエンザB型の特徴や症状、潜伏期間について

昨年から猛威をふるっているインフルエンザ。通常、インフルエンザA型のほうが流行しやすいですが、2023~2024年の冬をはじめ、時々インフルエンザB型も流行することがあります。

しかし、「あなたはインフルエンザB型です」と言われたても「インフルエンザA型と何が違うんだ」と思ったことはありませんか?実際、インフルエンザB型とA型では症状や重症化など違いはあるのでしょうか。

今回は、インフルエンザB型の主な特徴や症状、潜伏期間などについて解説していきます。

インフルエンザB型の特徴は?

実は、インフルエンザはA型とB型だけではありません。実際、A型、B型、C型、D型 の 4 つのタイプがあります。

中でも、インフルエンザB型は、インフルエンザA型よりも世界的流行を起こしにくいウイルスなので、あまり注目されていませんが、時折インフルエンザA型を上回る世界的流行を起こすウイルスです。

2000年~2018年までの調査によると、7シーズンに1回はインフルエンザB型の方がインフルエンザA型よりも流行するといわれていますね。

ではなぜインフルエンザB型の方が流行をあまりしないのでしょう?それは「種類の多さ」「変異の多さ」が圧倒的にインフルエンザA型の方が多いからです。

インフルエンザA型は「ヘマグルチニン (H)」 と「ノイラミニダーゼ (N)」という2つの表面タンパク質によって多く分類されています。H抗原は18種類、N抗原は11種類もあり、掛け算で様々な種類のサブタイプが生まれます。理論上は18×11=198種類ですが、実際に野鳥で同定されているのは130種類超です。

一方、インフルエンザB型は、H抗原・N抗原によるサブタイプではなく、B/山形系統と B/ビクトリア系統という2種類の系統にわかれます。遺伝的にはもっと細かい分類がありますが、インフルエンザA型よりも種類が少ないのです。また変異もゆっくりなため、世界的流行が起こりにくいということになります。

しかし、流行すると「やっかいなウイルス」ということは間違いありません。インフルエンザB型もA型と同様で飛沫感染で広がり、あっというまにクラスターや学級閉鎖に陥ります。

「どのシーズンにインフルエンザB型が流行するか」が正確にわかれば、そこを狙い撃ちしてワクチンを接種することで予防できるのですが、現在のところ流行を完全に予想することができません。そこで、現在では、インフルエンザB型が流行することもリスクも鑑みて、インフルエンザA型とB型の両方に対応できる4価ワクチンが主流になっています。

ちなみにインフルエンザC型はヒトにも感染しますが、A型B型よりも感染力は弱く症状も弱いウイルス。インフルエンザD型は牛に感染しますが、ヒトに感染しないとされており注目されていません。

(参照:CDC「Types of Influenza Viruses」

インフルエンザB型の症状は?

インフルエンザB型で報告されている症状は次の通りです。

  • 発熱や悪寒
  • 喉の痛み
  • 鼻水や鼻づまり
  • 筋肉痛や体の痛み
  • 頭痛
  • 疲労(倦怠感)
  • 嘔吐や下痢:成人よりも子供の方がよく見られます

実はインフルエンザA型も似た症状を来すので、症状だけではA型かB型かを見分けることはなかなかできません。実際、多くの報告で(特に成人例では)「インフルエンザのタイプは症状で見分けることができない」としていますね。

しかし、インフルエンザA型とB型の症状の違いについていくつか報告があるので紹介します。

まずは小児のインフルエンザB型について。韓国からの小児809例での報告によると、インフルエンザB型はA型に比べて

  • 39度を超える発熱を起こしやすい(44% vs. 35.4%)
  • 痰症状が出やすい(50.3% vs. 42.1%)
  • おう吐の症状が出やすい(1.3% vs 0.4%)
  • 下痢症状が出やすい(10.8% vs. 6.3%)
  • 筋肉痛が出やすい(5.2% vs. 1.5%)
  • レントゲンで所見がでにくい(32.8% vs 47.0%)

とされています。全体的に、小児ではインフルエンザB型の方が強い症状になりやすいことがわかりますね。インフルエンザB型もA型も小児中心に起こりやすい感染症ですから、お子さんへの感染には気をつけた方がよいウイルスということになります。

また、インフルエンザで入院した方についての報告によると、インフルエンザB型の方が基礎疾患として慢性腎臓病を持っている方が多く(37% vs 18.8%)、入院時におう吐をする頻度が多かったとしています。小児例と合わせて考えると「消化器症状が出やすい」ことも特徴の1つなのかもしれませんね。

合併症はインフルエンザA型もB型も変わらず、退院までの日数も変わりませんでした。

しかし逆にいうとインフルエンザ自体、心筋炎や脳炎、肺炎などで死亡するリスクのあるウイルスです。「ただの風邪」と思わずにきちんと治療することが大切ですね。

(参照:Is there a clinical difference between influenza A and B virus infections in hospitalized patients?
(参照:Clinical Manifestations of Influenza A and B in Children and Adults at a Tertiary
Hospital in Korea during the 2011–2012 Season)

インフルエンザB型の潜伏期間は?

では、インフルエンザB型の潜伏期間はどれくらいでしょうか?

一般的に、インフルエンザは感染してから発症するまでの平均が2日間と言われており、1~4日の間が主な潜伏期間として知られています。インフルエンザA型も同様に言われているので、タイプで変わることはありませんね。

症状がでる1日前から発病後5~7日は他の人に感染させる恐れがあります。

しかし韓国からの報告によると、インフルエンザB型の方が発症から病院に来るまでの日数が長くなる(3.6日 vs 3.0日)とされています。これは、インフルエンザB型が流行しにくく、気づきにくいこともあるかもしれません。

いずれにせよ、流行期にはワクチンやマスクなどの感染対策を行い、発症されたら速やかに医療機関に受診するように、お願いいたします。

(参照:Clinical Manifestations of Influenza A and B in Children and Adults at a Tertiary
Hospital in Korea during the 2011–2012 Season)

【この記事を書いた人】 
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。

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