新型コロナも年中一定の感染の波を作りながら繰り返していますが、今年はインフルエンザも流行しており、コロナもインフルも両方検査する検査する場面が増えてきました。
しかし、(新型コロナもそうですが)インフルエンザもある程度時間が経過しないと陽性になりづらく、確定診断がつかず症状が辛い場合は何回も検査する可能性も出てきます。
実際、インフルエンザの検査は感染してから何時間後から検査した方がよいのでしょうか。インフルエンザ検査の精度や検査すべき時期について、わかりやすく解説していきます。
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インフルエンザの検査の仕組みは?
インフルエンザの検査はほとんどのクリニックでキットによる「抗原検査」で判定が行われます。
抗原検査とは、検査したいウイルスの抗体を用いてウイルスが持つ特有のタンパク質(抗原)を検出する検査方法のこと。一番馴染みが深いのは簡単なキットを使う方法ですよね。最近はコロナとの同時流行がみられるので、コロナとインフルの同時抗原検査キットを使うこともありますね。
では、どんな仕組みで線がうかびあがるのでしょう。
キットには「C」のラインと「T」のラインがあって、「C」はcontol、つまりちゃんと検査ができているかをテストするための線。「T」はtest、つまり実際にウイルスがいるかどうかを見分ける線です。
実は「C」の部分にはキットの検体を垂らす穴の近くについている「標識抗体」に反応するための「抗体」がついていて、「T」の部分にはウイルスのつくるタンパク質(抗原)と反応する「抗体」がついています。
抗体だけでは色はつきませんが、「抗体と標識抗体」がくっつくと初めて色がつく特殊な性質を持っています。
まず、検体を垂らすと、毛細管現象の力で、「C」と「T」のラインまで移動します。その時にウイルスの抗原と標識抗体が反応して「ウイルスのタンパク質とくっついた標識抗体」が生まれます。
そして、「C」と「T」にある抗体と反応します。「Cにある抗体」は標識抗体だけの時に反応し、「Tにある抗体」は「ウイルスのタンパク質とくっついた標識抗体」に反応します。
つまり、「C」に色がつくのは、あらかじめたらした穴についていた「標識抗体」がきちんと「C」のラインまできて「抗体と標識抗体」が反応した証。「T」に色がつくのは「ウイルス抗原とくっついた標識抗体」と「Tの線にある抗体」が反応した証…ということで、ウイルスのタンパク質を検出していたのです。
ちょっと難しかったですかね。
いずれにせよ、「陽性」がでるのはウイルスの特有のタンパク質をきちんと検出している証拠にはなりますが、ある程度多くウイルス量いないとタンパク質を検出するに至りません。そのため、ある程度時間をおかないとウイルスがいたとしても検出されない「偽陰性」が出てくるというわけなのです。
ちなみに、抗原検査は5分〜15分で陽性か陰性かを判定することができます。通常は、「鼻咽頭ぬぐい」といって、鼻の奥のほうで拭った分泌液を使って検査を行います。しかし、どうしても鼻の奥で拭うのが難しい場合などは、ティッシュで鼻をかんでもらって、そこから検査を行ったりもします。(特に小児の場合)
(参照:応用物理学会「比色法を用いたタンパク質分析:ウイルス検査」)
インフルエンザ検査は何時間後がよいタイミング?
では、インフルエンザ検査の適切な時期はどれくらいなのでしょうか。結論から言うと、「インフルエンザ検査は発症してから12時間後から48時間以内が望ましい」といえます。私のおススメとしては、確実に陽性をだすなら、発熱してから翌日から翌々日のタイミングがいいですね。
965検体(うち抗原検査で陽性者337名)を用いた、インフルエンザ検査の適切な時期を検討した日本の論文では、以下のことがわかっています。
- 発症12時間以内に抗原検査を実施した人のうち23.5%~29%の人はウイルスがいても反応していない「偽陰性」になることがあった。
- 一方、発熱出現後2回以上抗原検査を行った方のうち、発症12時間以降の偽陰性率は「0%」であった。
また、他の日本の報告でも「発症後9時間未満に陰性であった症例の20.9%は最終的に陽性であった」としており、12時間以内に採取すると5人に1人は見逃してしまう恐れがあるというわけですね。
一方、遅ければよいのかというとそうではありません。治療薬は早い方がよい効果が期待されるからです。例えば同論文や他の論文でも
- 発症12時間以内に陽性が確定し、抗ウイルス薬が投薬されていた方は発熱している期間も短く、入院も有意に低くなった
- 抗ウイルス薬であるオセルタミビル(タミフルⓇ)の投与開始が発症48時間よりも12時間あるいは24時間以内ではより症状期間を短縮できる
としていますので、早いことにはそれなりのメリットがありますね。(ただし、48時間以上を超えていても、成人の呼吸器症状を短縮させるというデータもあるので、48時間を超えると全く抗ウイルス薬の効果がないというわけではありません。)
そもそも38度や39度発熱している状態を長期間放置すべきではありません。他の感染症のこともありますので、48時間以上は放置しないようにしましょう。
(参照:インフルエンザウイルス抗原迅速診断検査利用法―最適な検査時期についての 1 考案―)
(参照:CDC「nfluenza Antiviral Medications: Summary for Clinicians」)
(参照:CDC「CDC Research Confirms Benefits of Flu Antiviral Drugs, Even Beyond 2 Days After Symptoms Start」)
インフルエンザ検査の精度は?
また、インフルエンザの抗原検査は発症48時間以内だと十分検査精度は高いものになっています。
例えば、PCR検査と比較した日本の論文によると、発病後48時間以内のインフルエンザ検査の感度と特異度はそれぞれ次のようになっています。ImunoAce Fluを用いた場合
- 感度:97.1% (95% 信頼区間: 93.8 ~ 98.9%)
- 特異度:89.2% (95% 信頼区間I: 84.1 ~ 93.1%)
となっています。
感度とは「病気の人を正しく検出する力」
特異度とは「病気でない人を正しく検出する力」
なので、両者が90%近くあるということは、それなりに信頼性の高い検査と言えますね。
ただし、繰り返しますが12時間以内の早い検査ではウイルスがいても陰性になる「偽陰性」があるので解釈に注意が必要です。
ちなみにインフルエンザの検査は唾液からとると、鼻の奥からとるよりも検査の精度は落ちてしまうので、「鼻咽頭」といって、鼻の奥から採取することがほとんどです。
インフルエンザ検査についてのまとめ
今回はインフルエンザ検査について解説していきました。まとめると
- インフルエンザ検査はほとんどのクリニックで「抗原検査」で行われる。抗原検査は5分〜15分で判定可能。
- 新型コロナとの同時検査も抗原検査キットで行える。
- インフルエンザの最適な検査時期は「発症してから12時間後〜48時間以内」だが、早く診断がついて治療できた方が回復しやすい。
- インフルエンザ検査は、発症48時間以内に検査した場合、90%近くの高い精度になるが、12時間以内だと20%近くが「偽陰性」になる可能性がある。
となります。ただし、これらの確率は医療従事者が正しく検査を行った場合であり、自己検査ではその限りではありません。
検査の性質を正しく理解し、ぜひ検査を活用していただきたいと思います。
【この記事を書いた人】
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。
インフルエンザ抗原検査は発症後8日でも、反応しますか?
加賀美様
コメントありがとうございます。私が調べた限りで「抗原検査が何日まで陽性になる」というデータはありませんでしたが、
いずれにせよ発症後8日になってしまうと、検査としては信頼性に乏しいと感じます。
自宅待機期間も前後しますが、5日間であることや抗ウイルス薬の適正期間などを考えても、機を逸しないことが大事だと思いますね。