イソトレチノインの効果と副作用について【持続期間・ビフォーアフター】

数あるニキビ治療薬の中でも「ニキビ治療の切り札」と呼ばれる薬があることをご存じですか?

それが「イソトレチノイン」と呼ばれる内服薬です。

イソトレチノインはニキビだけでなく、なかなか治らない「酒さ」や「ニキビあと」に対しても多くの優れた効果が報告されています。また、海外ではアメリカFDAでも認可されている通り「正しく使えば」安全性も高いお薬です。

しかし、イソトレチノインは同時に様々な副作用の可能性も指摘されています。

イソトレチノイン治療をするには、

  • イソトレチノインによる効果がどのくらいの期間持続するのか
  • イソトレチノインの副作用はどのようなものがあるのか
  • イソトレチノイン治療にあたり安全のために絶対に併用してはいけない薬(併用禁忌)はあるのか

といった点を事前に把握しておくことが非常に大切です。でないと、治療の効果に様々な面で「驚く」ことになるでしょう。

今回は、イソトレチノインの非常にすぐれた効果と副作用の全体像、効果の持続期間の目安、そして注意すべき併用禁忌について、ビフォアーアフターの写真も見せながら詳しくご紹介します。

イソトレチノインとは?

イソトレチノインとは、ビタミン A(レチノール)の仲間を飲み薬にしたものです。皮脂腺を小さくして皮脂の量をぐっと減らし、炎症・毛穴づまりを同時に抑え込むため、長年治りにくかった重症ニキビや一部の酒さに寛解(ほぼゼロの状態)をもたらす切り札ともいえる薬になります。

もともとイソトレチノイン(13‑cis レチノイン酸)はビタミン Aを化学的に改良した「経口レチノイド」で、1980年代に米国で「Accutane®」として登場しました。現在は 「ロアキュタン」「アキュテイン」「イソトロイン」「アクネトレント」など複数のジェネリックが流通しています。が、すべて同一の背う分から作られています。

難治性ニキビや繰り返してできてしまうニキビ、酒さやニキビ跡に対して、非常に高い効果をもたらすイソトレチノインですが、一方、非常に強い副反応が出る、取り扱いが難しい薬でもあります。

そのため、厚生労働省では「医師の処方せんまたは指示書に基づき必要な手続きを行わない限り、個人輸入することはできません」と注意喚起を促していますね。

そんな効果も副作用も高いイソトレチノイン。まずどんな効果があるのか、詳しくみていきましょう。

(参照:厚生労働省「アキュテイン(ACCUTANE)(わが国で未承認の難治性ニキビ治療薬)に関する注意喚起について」

イソトレチノインの効果①:重症ニキビに対する効果

イソトレチノインは重度のニキビに一番よくつかわれており、臨床試験も実は多く行われています。

例えば、2012年にアメリカで行われた、高用量(体重あたり1日平均1.6mg)のイソトレチノインを80名に対して5~6か月間行った臨床試験によると、100%の人が重症のニキビが完全になくなった状態になり、かつ3年の間に87.5%もの人がニキビの再発もなく過ごされました

また副作用や臨床検査値の以上による治療中止もなかったとのことです。

まさに「切り札」と呼ぶにふさわしい治療成績ですね。

しかし、日本では高用量のイソトレチノインで行うと副反応による症状が強く出ることがあり、一般的ではありません。

そこで注目されているのが、低用量でのイソトレチノイン療法です(当院でもこちらを採用しています)

文字通り、低用量のイソトレチノインで皮脂腺を退縮させつつ、副作用を最小限に抑えながら長期に治療する方法ですね。

実際、低用量でのイソトレチノインの有効性も報告されています。

例えば、2014年に行われたインドの50名による報告によると、中等度~重度のニキビに対してイソトレチノインを1日20㎎(体重あたり1日約0.3~0.4mg)を3か月間投与することで、参加者の90%で非常に良好な結果が得られたとのことです。

それでも副作用が耐えられないという方は「1日おきに20㎎内服する」という方法もあります。実際、1日おきに投与した場合でも68.2%の方がニキビの80%を解消したという結果となっています。

このように、重症のニキビに対するイソトレチノインは非常に有効な選択肢であり、様々な研究がされている治療法なのです。

(参照:High-dose isotretinoin in acne vulgaris: improved treatment outcomes and quality of life
(参照:Safety and Efficacy of Low-Dose Isotretinoin in the Treatment of Moderate to Severe Acne Vulgaris
(参照:A systematic review of isotretinoin dosing in acne vulgaris

イソトレチノインの効果②:酒さに対する効果

イソトレチノインは、抗生剤の内服や塗り薬など「標準治療」に反応しない中等症~重症例の酒さに対しても、有効であることが近年明らかになっています。

2024年に発表された、酒さに対するイソトレチノインの効果を計1,320例のデータから検証した論文によると、低用量イソトレチノイン治療(1日10–20mg)によって、89%の酒さの方が症状の完全あるいは顕著な改善を示したとの報告もあります。

また、非常に治しにくいといわれる丘疹膿疱性酒さ(type2)といわれる方でも、2024年の研究によると、ある後ろ向き研究(52例)では、開始用量20mg/日から反応に応じ減量する治療で、91%の患者が膿のような酒さ病変の75%以上退縮し、その多くが維持量として週3回10mgまで減量し1年間寛解を維持できたと報告されています。

画期的な成果ですよね。

やはり皮脂腺の増加を主病変とする疾患には、非常に強い効果を発揮するといえます。

(参照:Efficacy of Low-Dose Isotretinoin in the Treatment of Rosacea: A Systematic Review and Meta-Analysis
(参照:Low-Dose Isotretinoin to Treat Resistant Rosacea

イソトレチノインの効果➂:ニキビ跡に対する効果

イソトレチノインは今活動しているニキビや酒さだけではありません。

もともとイソトレチノインは主に新たな瘢痕形成の抑制を通じてニキビ跡を間接的に予防すると考えられていますが、既存の萎縮性瘢痕自体にも改善効果がある可能性が近年いわれています。

2023年のアメリカで行われた前向き研究では、中等症~重症ニキビとゴワゴワしたニキビ跡がある患者さん30例に標準量のイソトレチノイン療法(90日間)を行い経過を評価しています。

その結果、ニキビ跡の臨床評価スコア(Goodman & Baronの瘢痕グレード)が有意に改善し、超音波弾性測定でもニキビあとでゴワゴワした部分の厚みが少なくなり、肌の張りが増すことが確認されたのです。

ただし、この分野の研究は限られており、従来は「イソトレチノイン自体に既存瘢痕を治療する作用はない」という見解が主流であり、まだニキビ跡はフラクショナルレーザーやポテンツァ・ダーマペンといった直接的に皮膚を刺激する治療法が一般的です。

瘢痕そのものへの直接効果については、今後さらなる研究が望まれますね。

(参照:The Effects of Oral Isotretinoin on Atrophic Acne Scars Measured by Shear-wave Elastography: An Observational, Single-center Study

イソトレチノインの副作用は?

さて、ここまでイソトレチノインの素晴らしい効果を中心に見ていきましたが、イソトレチノインの副作用にはどのようなものがあるのでしょうか。

イソトレチノインの副作用を列挙すると以下の通りです。

  • 口唇炎・皮膚の乾燥
  • 肝酵素上昇
  • 脂質異常症(中性脂肪の増加)
  • 催奇形性

順番に見ていきましょう。

① 口唇炎や皮膚の乾燥

もっとも一般的なイソトレチノインの副作用が皮膚の乾燥です。イソトレチノインは皮脂を退縮させるわけですが、皮脂も肌のバリアを形成するために必要なものです。

一時的にせよ皮脂の分泌を抑えてしまうと、油膜が張られなくなり、水分が皮膚から逃げてしまいます。結果、乾燥が進むというわけです。

一番影響が出る場所は口唇炎で、低用量でも98%の方が口唇炎を経験したという結果が出ています。また、高用量で投与した場合、投与終了1年後でも約20.7%に口唇炎、17.2%に皮膚乾燥が持続していたというデータもありますね。

また、鼻の粘膜が乾いたり、目の乾燥がすすんだりりすることもあります。多くの場合は量をへらしたり、隔日投与にしたりすることで軽減します。

したがって、イソトレチノインを行う場合は、十分乾燥に注意しながら、医師のモニタリングのもとに慎重に投与量を決めないといけません。

② 肝機能異常、中性脂肪の増加

内服薬なので、全身に作用しますから、血液データに異常をきたすことがあります。

最も一般的なのが、中性脂肪の増加です。最高用量(1.6 mg/kg/日)群で18.8%の患者に異常高値を認めました。

また、ビタミンAは肝臓で代謝されるため、肝機能異常が起こることがあります。低用量の場合、ALT上昇は認められませんでしたが、高用量になるほど、肝機能異常の頻度は強くなり、高用量(1.6 mg/kg/日)群では ALT上昇が22%に達しました。

いずれも投与中止後に改善・消退する一過性のものですが、十分注意が必要でしょう。特に、もともと中性脂肪が多い方では注意が必要です。

ぜひイソトレチノインを内服されている方は、

➂ 催奇形性

最も重要な副作用が、催奇形性です。妊娠中にイソトレチノインを服用すると、極めて高率(20–35%)に胎児に先天異常を引き起こします

そのため、妊娠可能な患者では服用中および中止後少なくとも1か月間の厳重な避妊が絶対条件です。

ニキビも色々な治療方法があります。

確かにイソトレチノインの効果は非常に魅力的ですが、妊娠する可能性がある場合はイソトレチノイン以外の治療方法を選択するようにしましょう。

他、イソトレチノインによる精神神経系への影響(抑うつ傾向や希死念慮)や炎症性腸疾患との関連も一時期議論されましたが、大規模研究で因果関係を支持する明確なエビデンスはなく、必要以上に恐れるものではありません。

低用量療法では有害事象は少なく、ある低用量治療の系統的レビューでも重篤な副作用発生率は0.36%と報告されています(重大な血液・肝機能異常など)

適切なモニタリング下で投与すれば、多くの副作用はやめればもとに戻るものがほとんどであり、安全に治療継続できます。

当院でも慎重にモニタリングしながら投薬していきますので、興味がある方は遠慮なく、お尋ねください。

(参照:A systematic review of isotretinoin dosing in acne vulgaris

イソトレチノインの効果の持続期間は?

さて、効果も高いが副作用もそれなりにあるイソトレチノインですが、効果はどれくらい持続するのでしょうか。

結論からいうと、個人差はあるもののイソトレチノインの効果の持続期間は数カ月から数年もつといわれています。

一般的な投与期間は4~6か月間(16~24週間)ですが、典型的には20週間前後の治療でニキビ病変はほとんど消失してきます。

しかし、累積投与量が多いほど再発しないのではという考えもあり、完全にニキビが収まった後もさらに低用量にしたり、隔日投与にして数カ月間維持投与を続けるという方法もあります。

とはいえ、イソトレチノインの副作用の問題もありますので、個人個人で副作用のリスクも考えながら治療プランを考えていきます。

またニキビの他の治療方法を提案するケースもありますので、適宜ぜひご相談ください。

(参照:A systematic review of isotretinoin dosing in acne vulgaris

イソトレチノインの費用は?

イソトレチノインは保険診療ではありません。アメリカFDAで認可は受けているものの、日本では保険診療の範疇に入っておらず自費になります。

当院では「アクネトレント」を扱っており、イソトレチノインの費用は以下の通りです。

イソトレチノイン 10㎎30日分 13,200円
イソトレチノイン 20㎎30日分 16,500円

「どうしてもニキビがなおらない」「酒さをなんとか治したい」という方はぜひご相談ください。イソトレチノイン治療も含めて、ベストな治療法をご提案させていただきます。

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【この記事を書いた人】 
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。


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