もともとアトピー性皮膚炎をもっている方にとって辛い時期の1つが「花粉シーズン」ですよね。実際、アトピーと花粉症との関係はどうなっているのでしょうか。
アトピーで花粉症が悪化しやすい理由や対策法についてもご紹介していきます。
花粉による肌荒れである「花粉皮膚炎」については花粉による肌あれ「花粉皮膚炎」について症状や治療法・予防法まで解説を参照してください。
Table of Contents
アトピーと花粉症の関係は?
アトピーとは「アトピー性皮膚炎」が正式名称ですが、一言でいうと「さまざまな要因により皮膚のバリア機能が弱く、アレルギーを起こしやすいため、皮膚の炎症を繰り返す疾患」といえます。
では、花粉症とは「スギ・ブタクサなどの花粉によって粘膜が刺激されて起こるアレルギー」のこと。医学用語ではありません。正式には「アレルギー性鼻炎」「アレルギー性結膜炎」「アトピー咳嗽」などと臓器別にいうことがほとんどですね。
「どちらもアレルギーが主体だから、アトピーの方は花粉症に絶対なるか」といわれるとそうではありません。これはアトピー性皮膚炎診療ガイドラインでも
アトピー性皮膚炎の定義ではアレルギーの存在は必須ではない。これは診断においてアレルギーの証明が必須となるアレルギー性鼻炎などとは異なる。
と明確に記載されていますね。重複しやすいですが完全に同一疾患ではないのです。
しかし、合併しやすいのも事実。日本での調査でも
- 花粉症のシーズンに露出部のアトピー性皮膚炎の増悪が約4人に1人に認めた
- シーズン中のスギ花粉症患者の20~30%に顔面発赤が認めた
など、花粉によるアトピー性皮膚炎の悪化は数多く認められており、アトピー性皮膚炎の診療ガイドラインでの「注意すべき合併症」の1つとして「アレルギー性鼻炎」が挙げられています。
このように、完全に一致はしないものの、花粉とアトピー性皮膚炎は密接な関係があるわけです。
(参照:アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2021)
(参照:日本鼻科学会会誌「アレルギー性鼻炎とアトピー性皮膚炎の関連性に関する臨床的検討)
花粉でアトピーが悪化する理由は?
では、どうして花粉でアトピーが悪化するのでしょうか。例えばいくつかの要因が考えられます。
① 花粉による直接的な「かぶれ」が生じるから
花粉は細かい微粒子です。そして花粉はくっつくように設計されているので、「とげとげ」していることが多いです。また春先は「PM2.5」や「黄砂」などの影響で花粉と重なり、空気中に多くの「かぶれやすい物質」(アレルゲン)が舞うことになります。
アトピーの方はもともと肌のバリア機能が弱く、ちょっとしたことで敏感になりやすい肌質。そのため、花粉に十分対策をしないと、多量のアレルゲンに負けてしまい、かぶれるように赤くなるのですね。
したがって、アレルゲンが付きやすい目の周りや首もとなどを中心に赤くなることが多いです。
この経路は後述する花粉症の経路である「I型アレルギー」ではなく「IV型アレルギー」という別の経路のもの。なので、「I型アレルギー」を調べる血液検査(VIEW39)などには検出されなくても、実際に赤く反応してしまうということがおこるわけです。
花粉による皮膚炎についての詳細は花粉での肌荒れ「花粉皮膚炎」の症状や治療法・予防法を解説もご参照ください。
② 花粉症と同じ「I型アレルギー」によってもアトピー性皮膚炎が悪化するから
アトピー性皮膚炎は「肌の敏感さ」とともに「アレルギー反応が出やすい」のも特徴の1つです。直接的なかぶれの他に「I型アレルギー」を介した全身のかゆみにもつながりやすくなります。
事実、アトピー素因について「I型アレルギー」のもとの抗体である「IgE」の量が人よりも多いことがガイドラインでも言及されています。特に「ひっかいた後に赤くなりやすい」というのなら、それはI型アレルギー反応によるものが多いです。
そのため、花粉症ともオーバーラップしやすく、「鼻水はでるし目もかゆいし全身もかゆくなる」といったアレルギーマーチを生じることもよくあります。
③ 花粉症での「こする」「鼻をかむ」行為によって悪化させるから
アトピーの方にとって「こする」行為は、肌の弱いバリアにダメージを加えることになるので厳禁です。しかし、花粉症でどうしても目をこすったり、鼻をかんでしまったりするでしょう。
また、鼻水がとめどなく出ている場合は、鼻水の蒸れや刺激によってもアトピーを悪化させてしまいます。
このように、花粉症で何気なく行っている行為でもアトピーを悪化させてしまうのです。
花粉症でアトピーを悪化させない対処法は?
では、どのようにすれば花粉症でアトピーを悪化させずにすむのでしょうか。例えば以下を心がけるとよいでしょう。
① 花粉シーズンは肌を露出させない
露出して花粉をつかせると、必ずといっていいほどアトピーは悪化してしまいます。そのため、アトピーがある方は花粉シーズンは肌を露出させない工夫が大切です。例えば
- 長袖を基本にする
- 首元もしっかりおおう
- 花粉用の眼鏡やゴーグルをする
- 髪はまとめて、花粉を付着させない
- なるべくツルツルした素材の衣服にする
などですね。袖口もかぶれやすいので注意しましょう。
② 花粉を家にもちこませない
花粉をしっかり防御しても、それでも家に入ってきてしまうことがあります。玄関先で花粉をしっかり払って、家に持ち込ませないようにしましょう。
家に入ったら、鼻うがいをしたり、顔と一緒に目を洗ったりするのも有効ですね。とにかく家に入ったら、かぶれの原因である花粉自体の量を少しでも減らすよう努力しましょう。
玄関先に空気清浄機を置いておくのも1つの手です。また服も花粉シーズンは外に干さず、中に干すようにしましょう。もちろん、花粉シーズンは窓を極力あけない方がよいですね。
③ 早めにアレルギーの治療をする
アトピーの方で普段アレルギーの内服薬を飲んでいない方も多いと思いますが、花粉シーズンは別です。特に花粉症を持っている場合は、抗アレルギー薬を内服した方がよい場合が多いですね。
繰り返しますが、鼻をかんだり目をこすったりする行為でもアトピーは悪化します。早めに治療をして、まず鼻水や目のかゆみに対処することも大切です。
④ 普段よりも保湿を徹底する
多くのアレルゲンと皮膚が戦っていると、修復しようとして肌が乾燥しやすくなります。保湿をたっぷり塗らないと、肌が十分保護されないことがしばしばです。
いつも通りよりもちょっと多めを意識して保湿するようにしましょう。こまめに塗り足すのも有効ですね。
鼻をかむティッシュなども保湿剤入りのものを使用するといいでしょう。
⑤ かかりつけの皮膚科に早めに相談する
花粉シーズンになり、薬がない状態が続くとアトピー性皮膚炎は一気に悪化してしまいます。その前に早めに対策をしてかかりつけの皮膚科で相談するようにしましょう。
花粉シーズンに薬がないことはアトピーの方にとってかなり重大なこと。忙しいのはわかりますが、自分の肌のことですので、きちんとケアしてあげてくださいね。
【この記事を書いた人】
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。
この記事へのコメントはありません。