- 雨の日になると毎回頭痛がひどくて辛い
- 台風が近づくたびに体調不良が多くて困っている
- 季節の移り変わりや天気でめまいや眠気が辛くなるのをなんとかしたい
このような方はいませんか?もしかしたらこれらは「低気圧」による体の影響によるものかもしれません。気圧による頭痛や眠気、めまいを中心に低気圧による体の不調への対処法について解説していきます。
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気圧と体の関係は?
気圧(きあつ)とは、地球の大気(空気)が地表にかける力のこと。簡単に言えば、上から下に向かって押し付けてくる空気の「重さ」です。よく「1013ヘクトパスカル(hPa)」など、気圧を測る単位「ヘクトパスカル」で表記されます。
実は、気圧は一定しておらず標高や天気などに左右されます。例えば、標高が高い場所だと空気の密度が薄くなるため気圧は下がりますし、雨雲が発生するように上昇気流が生じると、気圧は下がります。
では、気圧が下がると体はどのような影響を受けるのか?
気圧は空気の重さであり「体の外から押す力」のこと。低気圧になると「外から押す力」が弱まるので、基本的に「体が膨らむ」方向に力が働くのです。例えば、気圧が下がると体の外からの圧力が減少し、血管が膨張します。
しかし、この時自律神経が正常に働いていれば、交感神経が活動し、血管を収縮させて自動的にうまく調節してくれます。逆に、気圧が上がると副交感神経が働き、血管を膨張させ、血圧や脳の血流を保ってくれます。
しかし、もともと自律神経が様々な理由で乱れやすい場合、気圧の変化の調節がうまくいかずに様々な体調不良を引き起こしてしまいます。
気圧による眠気・だるさへの影響は?
よく外来で「雨になるとなんとなく調子が悪い」と訴える方がいます。それはなぜでしょうか?
実は気圧と眠気・だるさを含めた体調不良については、複数の原因を考えなくてはなりません。例えば、次の通りです。
① 低気圧で夜間の睡眠の質が悪化
537人の睡眠時無呼吸症候群を診たデータによると、低気圧になればなるほど、夜間の無呼吸症状が悪化し、睡眠の質が悪化することがいわれています。
睡眠の質が悪化すると、当然日中のパフォーマンスにも影響が出てきますよね。特に睡眠中いびきをかいている人は注意するとよいでしょう。
睡眠時無呼吸症候群については、【チェック付き】睡眠時無呼吸症候群の原因から症状・治し方まで解説もあわせてご参照ください。
② 低気圧による喘息の悪化
一般的に、低気圧の方が喘息発作が強くなりやすいです。例えば中国で行われた 23,697 人の喘息入院患者を診たところ、1030hPaを基準値として、低気圧になればなるほど喘息による入院率が高くなることがわかっています。
また、日本の疫学調査でも天気が崩れやすい梅雨の季節と秋に発作の回数や程度が強くなる傾向があることがわかっていますね。
したがって、「低気圧が続く季節になると息苦しさが増えてきた」という方は。状況によって喘息の可能性も考慮しつつ精査を進めることになります。
(参照:Increased Risk of Hospital Admission for Asthma from Short-Term Exposure to Low Air Pressure. )
③ 低気圧による不整脈や心臓への負担
もともと心臓への持病を持っている場合、低気圧の時に強く発作がでやすいことがわかっています。
例えば、高齢の高血圧患者(65歳~92歳)250人を3.5年から5.4年観察した研究して、いつ脳卒中や心筋梗塞、肺塞栓になったかを調べた研究によると、非致死例 119 例中 93 例、致死例 13 例中 7 例が 大気圧< 1013 MB で発生したとしており、低気圧は高血圧の主要な合併症を予測する一番の危険因子として知られていますね。
なので、もともと高血圧で治療中の方で、「雨の日に限って体調が悪い」という方はしばしばきちんと調べる必要があります。
④ 低気圧によるうつ症状の悪化
低気圧は精神症状にも大きな影響を与えます。
例えば、アメリカの2286群で行われた気圧と自殺率をみた論文によると、低気圧になつと、うつになり自殺する人が増えてくることがわかりました。具体的には気圧が 100 hPa 低下すると、自殺率は 100,000 人あたり 4.9 人増加していると報告されていますね。
ですので、もともとうつ傾向がある場合には、天気が悪い日や台風の季節には特に気を付ける必要があります。
⑤ 低気圧による平衡感覚を司る「内耳」の影響
また、低気圧は平衡感覚を司る「内耳」にも影響を及ぼし、メニエール病などの「めまい」や「耳鳴り」の症状を悪化させやすいこともわかっています。
例えば、平均年齢 54 歳の合計 56 人 (59% 女性)に対して、気圧とメニエール病との発生率をみた試験によると、年齢と気圧の変化は、めまいの発症リスクと有意に関連していたとしています。一方、性別、曜日、季節、気温とめまいの発生頻度は関連がなかったとされています。
メニエール病は内耳のリンパ浮腫によるものとされており、「むくみ」を発生しやすい低気圧で発生しやすくなるのは、理論的には十分あり得る話ですね。
気圧による頭痛への影響は?
また、気圧との関係で一番よく訴えやすい症状の1つが「頭痛」です。実際、気圧と頭痛に対して深い関連があることが報告されています。
日本で行われた片頭痛患者(平均年齢32歳)の頭痛発作と気圧の変化を見た研究によると、片頭痛患者の72.7%が気圧の低下で片頭痛発作をおこしており、大気圧が標準気圧に対して 6 ~ 10 hPa 低下した時に最も頻繁に発生しています。(1003 hPa~007 hPaの範囲)
特に台風が出現する直前に発症することが多いことも分かっていますね。
同論文では、気圧による頭痛のメカニズムについて以下のように解説しています。
- まず、気圧のわずかな低下により脳血管が拡張し、神経伝達物質の1つである「セロトニン」が放出される
- 血中セロトニン濃度の上昇すると、血管収縮が過度にうながされ、「目がチカチカする」などの前兆が出てくる
- セロトニンが一時的に上昇したのち、急速に減少すると脳血管の急速な拡張を引き起こし、それによって片頭痛を引き起こす
このように、理論的にも気圧と頭痛は密接な関係があり、「雨の日に限って頭痛が出る」というのは気のせいではないことがわかるでしょう。
(参照:Examination of fluctuations in atmospheric pressure related to migraine. Springerplus. 2015; 4: 790.)
気圧による眠気や頭痛への対処法は?
低気圧は眠気や頭痛など、体調不良の大きな原因になることはわかったと思います。しかし、気圧による頭痛やだるさなどに対して、どのように対処すればよいのでしょうか。
3ステップに分けて解説していきます。
① まずは気圧や天気を知り「日記」をつけてみる
気圧と自分の体調不良の関係を疑ったなら、まずすべきは「日記をつける」こと。
自分が体調不良だった日を中心に、その時の気圧や天気・気温などを記載してみましょう。女性なら生理周期も記載するとよいですね。
「どの症状が気圧の影響か」を知ることで、原因についてより深く知ることができます。
記載してみるとよくわかるのですが、実際に日記につけてみると
- 意外な症状が気圧と関連していた
- 気圧が原因だと思っていた症状は全然違う原因だった
といったことをよく経験します。実際に日記をかかりつけの医師に見せていただくとさらに効果的ですね。(少なくとも私は非常に参考になります)
② 関連がわかったら気圧が悪い時には準備をする
日記をつけて、客観的に見ても気圧と症状との関連が認められたなら、「前もっての準備」がとても大切。
もし持病をもっているなら「体調不良が起こった時にどうすべきか」をかかりつけの先生と確認しておきましょう。
喘息の時には「発作治療薬」を持っておいた方がよいですし、片頭痛の時は市販の頭痛薬を「起きそうな時」早めに内服のも有用でしょう。
これは個々の症状に応じて対策法も異なるので、かかりつけの医師としっかり相談してみるとよいですね。
当院でもアドバイスを行ってますので、ぜひご相談していただけたらと思います。
③ 普段から他の予防策を徹底する
気圧により体調不良をきたしやすい人は、症状に合わせた「他の予防策を徹底する」ことも有効です。
例えば、気圧による頭痛が出やすい方では、他の頭痛刺激になる、以下のようなことは避けた方がよいでしょう。
- はげしい光や音
- 断食や水分不足
- 睡眠不足
- ストレスの誘因になりやすい仕事
- チーズやチョコレートなどの頭痛になりやすい食べ物(これは人によって異なります)
こちらも疾患によって違ってきますので、普段からどんなことに気をつけた方がよいか、かかりつけの先生と相談するとよいですね。
共通していえることは「無理をしないこと」です。気圧によって体調不良がでることもわかっており、その時はどうしても行動のパフォーマンスが落ちます。そこに無理をしても仕方がありません。
予見できるからこそ、仕事のバランスを上手に調節して、うまく付き合っていただけたらと思います。
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【この記事を書いた人】
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。
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