- 「便秘薬を飲んでいるけれど、種類が多くてどれが自分に合っているのか分からない」
- 「子供が便秘がちだけど、大人と同じ薬を使ってもいいの?」
- 「最近、便秘の薬が効かなくなってきた気がする……」
みなさんの中に、このような悩みをお持ちの方はいらっしゃいませんか? 便秘薬は、ただ「出ればいい」というものではありません。自分の体質や症状、そして年齢に合った薬を選ぶことが、快適な毎日への第一歩です。
今回は、便秘薬の「種類」「副作用」「効かない理由」、そして「お子さんへの対応」について、詳しく解説していきます。
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便秘薬の種類について【一覧表】

まず、便秘薬は大きく分けて「内用薬(飲み薬)」と「外用薬(坐剤・浣腸)」の2つがあり、さらにその作用によって細かく分類されます。
現在使われている主な便秘薬を一覧に整理しました。自分が飲んでいる薬がどのタイプか、ぜひチェックしてみてください。
【内用薬】(飲み薬)
① 腸を動かして出す「大腸刺激性」
腸を直接刺激し、強制的にぜん動運動を起こさせるタイプです。即効性はありますが、使いすぎに注意が必要です。
- センノシド(アローゼン、センノシド): 大腸の粘膜を刺激して運動を活発にします。
- センナエキス(ヨーデルS): 植物成分由来の刺激性下剤です。
- ピコスルファートナトリウム(ラキソベロン等): 胃や小腸では作用せず、大腸の菌によって分解されて初めて効果を発揮します。
② 水分を集めて出す「浸透圧性」
腸内の水分量を増やし、便を柔らかくして自然な排便を促すタイプです。現在の治療の主流になりつつあります。
- 酸化マグネシウム: 腸内の浸透圧を高めて水分を引き寄せます。
- マクロゴール4000(モビコール): 水分を保持したまま腸に届き、便を柔らかくして物理的に腸を刺激します。
- ラクツロース(ピアーレシロップ): 糖類の一種で、浸透圧作用により穏やかに効きます。
- D-ソルビトール: 主にバリウム検査後の排便促進などに使われます。
③ 新しい働きの薬「上皮機能変容薬・その他」
近年登場した、新しいメカニズムを持つお薬です。
- ルビプロストン(アミティーザ): 腸の中に水分を「分泌」させ、便の移動を助けます。
- リナクロチド(リンゼス): 腸管分泌促進作用により排便を促すと同時に、お腹の痛みも和らげる効果が期待されます。
- エロビキシバット(グーフィス): 「胆汁酸」の再吸収を抑え、大腸内の水分と運動を促進させるユニークな薬です。
- ナルデメジン(スインプロイク): 医療用麻薬(オピオイド)を使っている方の便秘を改善する専門の薬です。
④ 漢方薬
- 防風通聖散、大黄甘草湯など: 配合されている生薬(ダイオウなど)が腸を刺激して排便を促します。
こちらはぜひ便秘に対する漢方薬の使い分けや副作用について【麻子仁丸・防風通聖散・大黄甘草湯】を参照してください。
【外用薬】(坐剤・浣腸)
出口付近で詰まっている場合に有効です。
- ビサコジル(テレミンソフト): 直腸の粘膜を刺激して出やすくします。
- 炭酸水素ナトリウム等(新レシカルボン): 腸内で微細な炭酸ガスを発生させ、その刺激で排便を促します。
- グリセリン(ケンエーG浣腸液): 刺激作用と、便を滑りやすくする作用があります。
このように、便秘の薬といっても非常に多くの種類があるんですね。
体にやさしい「非刺激性」の便秘薬とは?

よく患者さんから「お腹が痛くなるのは嫌」「癖になるのが怖い」という声をいただきます。そんな方に提案するのが、腸を無理に動かさない「非刺激性」の便秘薬です。以下の薬が非刺激性の便秘薬に該当しますね。
水の力で柔らかくする「浸透圧性下剤」
- 酸化マグネシウム: 日本で古くから使われている定番のお薬です。
- モビコール(マクロゴール): 体内に吸収されず、水を含んで膨らむことで硬い便を物理的に押し出します。
- ラクツロース(ピアーレシロップ): 小さなお子さんにも使いやすい液体のシロップ剤です。
腸の機能を助ける「機能改善・分泌促進薬」
- アミティーザ(ルビプロストン): 腸内の「水分の蛇口」を開くようなイメージで、水分分泌を増やします。
- リンゼス(リナクロチド): 便秘に伴う腹痛やお腹の張りがある場合に適しています。
- グーフィス(エロビキシバット): 本来体にある胆汁酸を利用して、自然に近い排便を促します。
一番使われやすいのは「酸化マグネシウム」ですが、最近は非常に多くの「非刺激性」の便秘薬があるので、ぜひみなさんもかかりつけのお医者さんと一緒に自分にあった便秘薬を探してみるとよいでしょう。
ちなみに「漢方薬ならやさしい」と思われがちですが、多くの便秘用漢方(大黄甘草湯など)には「ダイオウ」という成分が含まれており、これは分類上「刺激性」の作用を持ちます。毎日漫然と飲み続けると、刺激性下剤と同じような副作用が出ることもあるため注意が必要です。
便秘薬の副作用とリスクは?

もちろんどんな薬でも副作用やリスクはつきものです。それは便秘薬も例外ではありません。特に以下の点は注意が必要ですね。
① 刺激性下剤(センノシド、ピコスルファート等)の「耐性」
長く使い続けると、体が薬に慣れてしまい(耐性の形成)、効果が薄れてくることがあります。 「効かないから」といって量を増やし続けると、薬がないと排便できない体になってしまう恐れがあるんですね。
そのため「刺激性下剤」だけに頼るのは注意が必要。非刺激性な下剤と組み合わせたり、ここぞというときに頓用で使用することが望ましいです。
また、一番よくつかわれる「センノシド」を長期間続けると、大腸粘膜に色素が沈着して褐色〜黒色の粘膜になる「大腸メラノーシス」になることもあります。
② 酸化マグネシウムの「高マグネシウム血症」
一番古くから使われ、安全に使うことのできる酸化マグネシウムですが、市販薬で長期間使うときは注意が必要。特に気を付けなければならないのは「高マグネシウム血症」です。
もちろん酸化「マグネシウム」ですから、大量のマグネシウムが含まれています。しかし、そのほとんどが血中に入らず水分を集める作用を果たすので下剤として機能するのですが、ごく一部は血中に入ることがあり有害になるケースも。
特に、腎臓の機能が低下している方や高齢者では、マグネシウムがうまく排出されず、血液中の濃度が高くなりすぎることがあります。 初期症状は吐き気や立ちくらみですが、重篤化することもあるため、長期服用時は定期的な血液検査が推奨されています。また、飲み合わせによっては他の薬の効果に影響を与えることもあります。
③ 浣腸(グリセリン)の「粘膜損傷」
浣腸を市販薬でかって挿入している方もよくいますよね。
しかし無理に挿入して直腸の粘膜を傷つけてしまうと、そこからグリセリンが血管内に入り、「溶血(赤血球が壊れること)」や「腎不全」を起こすリスクがあります。 非常に稀ですが、腸壁に穴が開いてしまった(穿孔)という報告もあるため、使用には十分な注意が必要です。
④ 漢方薬の「偽アルドステロン症」
漢方薬もリスクがないわけではありません。一番有名なものが「カンゾウ」に関わる副作用ですね。
「カンゾウ(甘草)」という生薬を含む漢方薬を長期・大量に飲むと、血圧が上がったり、手足がむくんだり、カリウムが低下したりする「偽アルドステロン症」が現れることがあるんです。甘草は多くの漢方薬(全体の約7割)に含まれているため、複数の漢方を飲んでいる方は特に注意しましょう。
(参照:酸化マグネシウム添付文書)
(参照:プルゼニド添付文書)
(参照:グリセリン浣腸添付文書)
「便秘薬が効かない!」その原因は?

「薬を飲んでいるのに出ない……」 その背景には、単なる便秘の悪化だけでなく、以下のような原因が隠れているかもしれませんね。
- 腸が慣れてしまっている(耐性): 前述の通り、刺激性下剤(センノシド、アローゼンなど)を連用していると、腸の反応が鈍くなり、効きにくくなることがあります。
- 飲み方が間違っている:例えば以下のようなケースがあります。
- モビコール: 水に溶かして飲むお薬です。適切な量の水で溶かさないと、本来の効果(保水作用)が発揮されません。
- 酸化マグネシウム: 胃酸と反応して効果を発揮します。そのため、胃薬(PPIなど胃酸を抑える薬)を一緒に飲んでいると、効果が弱まってしまうことがあります。
- 「器質的疾患」が隠れている: 大腸がんや腸閉塞など、腸そのものに物理的な異常(狭くなっているなど)がある場合、便秘薬で無理に出そうとするのは危険です。多くの便秘薬の添付文書でも、こうした疾患は「使用してはいけない(禁忌)」または「慎重に使う」とされています。急に便秘が酷くなった場合は、自己判断せず受診が必要です。
このように、便秘薬が効かない場合は、単純に増量するよりも、お薬の調整をしたり、原因を探ったりすることの方が、むしろ多いかもしれません。
特に市販薬中心にコントロールされている場合は、一度医療機関でも相談してみるとよいでしょう。
子供(小児)に使える便秘薬は?

子供が便秘で苦しそうな時、大人用の薬を分割して飲ませるのは危険な場合があります。子供にも適応がある薬は例えば以下の通りです。
飲み薬(内用薬)
- モビコール(マクロゴール): 2歳以上の幼児から使用可能です。水に溶かして飲むため、ジュースなどに混ぜて飲みやすくすることができます。(例:2〜6歳は1日1回1包から開始)
- ピアーレシロップ(ラクツロース): 甘いシロップ剤で、「小児における便秘の改善」という効能があります。体重に合わせて量を調整できるため、乳幼児から使用可能です。
- ピコスルファートナトリウム内用液: 年齢ごとの「滴数」が細かく決まっており、生後6ヶ月未満の赤ちゃんから使用可能です(例:6ヶ月未満は2滴、12ヶ月未満は3滴など)。ただし、作用としては「刺激性」に分類されるため、漫然とした使用は避けるべきでしょう。
- センノシド(刺激性): 6歳〜12歳の小児用量が設定されていますが、刺激性下剤であるため、使用は慎重に行う必要があります。
坐薬(外用薬)
- テレミンソフト坐薬(ビサコジル): 2mg製剤は乳幼児にも使用可能です(通常1回2mg)。出口で便が固まってどうしようもない時の「レスキュー」として役立ちます。
もちろんこれらの薬を例えば、大人用の手持ちの薬を使って使用を開始するのは、非常に危険です。なにか起こっても自己責任になってしまいますからね。医療機関に相談して、適切な薬をもらうようにしましょう。
(参照:テレミンソフト添付文書)
(参照:モビコール添付文書)
(参照:ピアーレシロップ添付文書)
(参照:ピコスルファート添付文書)
便秘薬のついてのまとめ

便秘薬には、腸を動かす「刺激性」や、水分を集める「浸透圧性」、そして新しいメカニズムの薬など、多様な選択肢があります。
- 基本は「非刺激性」から: まずは酸化マグネシウムやモビコールなどで、便を柔らかくして出しやすくするのが今の治療のスタンダードです。
- 「刺激性」は頓用で: センノシドなどは即効性がありますが、連用による耐性に注意し、つらい時だけの使用に留めるのが賢明です。
- 子供には子供用の選択を: モビコールやピコスルファート(滴下)など、年齢に適した安全な薬を選んであげてください。
もし「薬が効かない」「副作用が心配」と感じたら、自己判断で量を増やさず、医師や薬剤師に相談することをお勧めします。正しい知識を持って、お腹の健康を守っていきましょう!
【この記事を書いた人】
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。



















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