つらい便秘症状を治すには?便秘の原因や解消法について解説

突然ですが、便秘になるととっても辛いですよね。

便が出ないとお腹がはり、便が出ても不規則に硬くなるから便を出すのも一苦労。たかが便秘と侮っていると、様々な病気につながる可能性の疾患なので、放置するわけにはいきません。そして、意外と多くの方が便秘に悩まれているのです。

今回は、そんなこっそり皆さんがお悩みになっている「便秘」について、便秘の原因や便意解消法を含めて解説していきます。

便秘に効く食べ物については、便秘におすすめの食べ物や飲み物は?便秘に効く即効性の高いものをご紹介しますもあわせてご参照ください。

便秘とは?主な便秘の症状は

便秘とは「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」のことを指します。「どれくらいから快適に排出できない状態か」というのは、個人差が大きく、明確な定義はありません。

いわゆる「慢性便秘症」の診断基準は、2017年慢性便秘症ガイドラインではローマ基準が用いられており、以下の便秘症状のうち2項目以上を満たせば「慢性便秘症」と診断されます。

  1. 排便の4分の1を超える頻度で、強くいきむ必要がある。
  2. 排便の4分の1を超える頻度で、硬い便になってしまう。
  3. 排便の4分の1を超える頻度で、残便感を感じる。
  4. 排便の4分の1を超える頻度で、直腸肛門の閉塞感排便困難感がある。
  5. 排便の4分の1を超える頻度で、用手的な排便介助が必要である。(摘便・会陰部圧迫など)
  6. 自発的な排便回数が、週3回未満である。

つまり、「週3回より少なくて、便トラブルの症状が1つでもあれば便秘」ということになりますね。かなり多くの方が悩まれているのではないでしょうか。

事実、便秘を自覚している人は、2019年の国民生活基礎調査によると、全体で34.8%、さらに65歳以上では68.6%にものぼります。3人~2人に1人以上の方が便秘に悩まれており、決して珍しい疾患ではないのです。

特に50歳以下の若年層では女性に多く、高齢になるに従い男性の比率が増加し、70歳以上では男女比がほぼ1:1となります。

(参照:慢性便秘症診療ガイドライン2017)
(参照:厚生労働省「国民生活基礎調査」)

便秘の原因と種類は?

便秘の原因は様々ですが、大きく分けて、

  • 特に原因がなく生活習慣などが原因で便秘をきたす「一次性便秘症」
  • 何らかの病気等が背景にあり、それらによって便秘をきたす「二次性便秘症」

の2種類があります。

原因がはっきりしない「一次性便秘症」でも様々なタイプがあります。分け方は様々ですが、「弛緩性便秘」「痙攣性便秘」「直腸性便秘」の3つに分ける方法が一般的です。それぞれの特徴は以下の通りになります。

  • 弛緩性便秘(ちかんせいべんぴ): 食物繊維の不足や運動不足、腹筋の低下が原因で大腸の運動機能が低下して起こる便秘のこと。特に普段体を動かさない方、高齢者や若い女性の方、妊娠している方になりやすい便秘症です。
  • 痙攣性便秘(けいれんせいべんぴ): 大腸が過度に緊張することで、腸のぜんどう運動が強すぎてけいれんをおこし便秘になる状態です。大腸の働きを調節する自律神経のバランスの乱れから起こるとされています。特に、ストレスの多い若年者や日々の仕事や生活に追われている方に多い便秘症です。
  • 直腸性便秘:便が直腸に到達しても便意をなかなか感じることができず、直腸内に留まってしまう便秘症です。便意を普段から我慢している方、浣腸などを乱用し排便のリズムが崩れてしまった方に起こりやすい便秘症です。

便秘のタイプによって異なる治療法、対策になってきます。自分がどのタイプに当てはまるのか、普段の生活を考えると対処法も見つけやすいでしょう。

また、何かの疾患で便秘になっている「二次性便秘症」を来す原因としては、

  • 大腸がんや大腸ポリープなどの良性悪性腫瘍
  • クローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症による大腸狭窄
  • 糖尿病、甲状腺機能低下症、膠原病、アミロイドーシスなどの全身性疾患
  • パーキンソン病、脊髄損傷、精神発達遅滞などの神経疾患
  • 薬剤による便秘症

などがあげられます。便秘を引き起こす薬としては、医療用麻薬、抗精神病薬、パーキンソン病治療薬、利尿薬、抗癌剤、制酸薬、カルシウム剤など様々なものがありますね。

このように、便秘でも背景に見落としてはならない疾患があることがあります。特に

  • 血便が出ている方(便の色が赤黒い方)
  • 健康診断などで便潜血が陽性になった方
  • 他の症状(しびれや麻痺・疲労感などを伴っている方

などは、大腸内視鏡や全身性疾患の検索を行う必要がありますので、ぜひ医療機関に相談してください。

便秘が続くとどうなるの?

「便秘が続いても死ぬわけではないから大丈夫でしょ?」と考える方もいますが、便秘はあまり放置してよい疾患ではありません。

特に高齢者では、慢性便秘症を放置するとS状結腸軸捻転や直腸潰瘍、直腸脱、腸閉塞など、緊急に対処しなければならない疾患につながることが知られています.また便秘がない人と比較して心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患の頻度が高いことが知られています。「たかが便秘」と思うかもしれませんが、「されど便秘」なのです。

これから便秘の原因や対処法などについてみていきますので、普段便秘気味の方は是非参考にしてみてください。

薬に頼らない便秘解消法は?

では、薬に頼らない便秘解消法はあるのでしょうか?例えば下記を意識してみることから試していただくとよいかもしれませんね。

① 水分摂取を意識する

一般的に成人の1日必要水分摂取量は約1,500mlとされています。特に夏場など気温が高い季節だとより多くの水分摂取が必要です。

普通便の約75%は水分で構成されており、水分摂取が少ないと、便が硬くなって便秘の原因となってしまいます。普段から便が硬い方は、多めの水分摂取を意識しましょう。まずは「朝起きたら、白湯をコップ一杯のむ」から始めるとよいですね。

② 1日3食。特に朝食をしっかりと食べる

食事をすることで胃に食べ物が入ると、胃ー結腸反射で大腸の運動が促進されます。

大腸の蠕動は特に朝おきた直後に起こるとされており、朝食は排便が誘発されるスイッチになります。朝食を抜く人に便秘が多いことも知られており、普段朝食をとっていない人はまずは朝食をとることを習慣づけましょう。

③ 腸内環境を整える

腸内には善玉菌・悪玉菌・日和見菌など多くの細菌がいますが、このバランスが崩れることで様々な病気を引き起こすことが知られるようになってきました。

例えば、悪玉菌が優勢になると、免疫力の低下や生活習慣病を引き起こしたり、大腸癌の発生に関与したりすることも知られています。また悪玉菌により腸蠕動が抑制され、便秘になることもあります(悪玉菌により、かえって腸蠕動が亢進して下痢になることもあります)

逆に善玉菌が優勢になると、腸内の炎症が抑えられ、免疫力が高まり代謝や便通も良くなります。代表的な善玉菌としてはビフィズス菌や乳酸菌があり、多く含む食品としてはみそ、キムチ、納豆、ヨーグルト、ぬか漬けなどが挙げられます.善玉菌のように腸内細菌のバランスを改善させる有用菌をプロバイオティクスと呼びます。

ただし、腸内細菌は相性も大切。「自分に合わないな」と思ったら、色々な食材をためしてみましょう。

④ 食物繊維を適切にとる

食物繊維には水に溶けやすい水溶性食物繊維と、水に溶けにくい不溶性食物繊維の2種類があります。

水溶性食物繊維は、水に溶けるとゼリー状に変化し、便にうるおいを与えることで排便をスムーズにします。不溶性食物繊維は、水分を吸収することで体積を増やし、物理的な刺激を大腸に与えることで蠕動を促す働きがあります。

どちらも重要な栄養素であり、両者をバランスよく摂取する必要があります。現代人は食物繊維の摂取量が昔と比べると低下していますので、野菜やキノコ類、豆類、穀類など食物繊維が多く含まれるものを意識して食べるようにしましょう。

食物繊維は有用菌の栄養源となることも知られており、このような物質は「プレバイオティクス」と呼ばれます。

⑤ ウォーキングなどの有酸素運動を行う

大腸の蠕動は副交感神経が優位な時に起こります。ウォーキングなどの有酸素運動では副交感神経が有意となり、また大腸に対する物理的な刺激作用も加わるため、排便の促進に効果が期待できます。1日20分程度を目安にウォーキングすると良いでしょう。

ウォーキング以外で大腸に対して物理的な刺激を与える方法としては体幹のエクササイズがあります。効果的なエクササイズとしては、体幹のひねり動作や、お腹を中心に体を曲げたり伸ばしたりする動作などがあります。湯船につかりながら腹壁をマッサージするのも良いですね。

⑥ 便意を感じたら我慢しない

直腸に便が輸送され、直腸内圧が上昇して直腸の壁が引き伸ばされると、その刺激が脳に伝わり便意として自覚します。しかし便意を感じても排便を我慢してしまうと、徐々に直腸の感覚が麻痺してしまい、排便反射が障害されてしまうことになります。

そのため、便に対する正常な反射を保つためには、便意を感じたら我慢せずに排便することが重要です。

既に便秘が慢性化して便意を感じづらくなっている場合には、毎朝朝食後に便意が無くてもトイレで息を吐いて、意識的に排便するようにしてみましょう。徐々に排便のリズムが起こり、排便反射の回復が期待できますよ。

⑦ 自律神経のバランスを整える

前述の通り大腸の蠕動運動には副交感神経の働きが欠かせません。現代社会は交感神経が有意になりやすい刺激にさらされた社会環境にあるため、意識して副交感神経を働かせる必要があります。そのためには、まずは十分な睡眠をとることが欠かせません。また、なるべくストレスを減らすこと、リラックス出来る時間を意識的に確保することも大切ですね。

このように一般的に言える便秘対策でもたくさんあります。あとは便秘のタイプによっても変わってくるので、他にも自分にあった便秘対策があるか、ぜひ相談してみてくださいね。

まとめ~便秘は我慢せず病院に受診を~

このように、便秘は生活習慣で改善するケースもありますが、便秘で苦しい時には一時的にせよ投薬治療や原因検索が必要になります。

特に便秘による症状が辛いという場合や、5日〜7日以上たっても便が出ないという場合には、我慢せずに病院に受診するようにした方がよいですね。

特に便秘の診断や治療に詳しいのは「内科」「消化器内科」「消化器外科」になります。より詳しい検査としては、大腸内視鏡や大腸通過時間検査になりますが、より詳しい検査を希望される場合には他施設と連携をとりながら投薬治療を行ってまいります。

いずれにせよ、「自分にあった便秘対策がわからない」という方はぜひ当院にご相談ください。生活習慣の背景から一緒に考え、その方にあったアドバイスをさせていただきます。

【この記事を書いた人】 
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。

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