新型コロナウイルス感染症について【症状・臨床経過・予防策】

新型コロナウイルスは「COVD-19」の名称でも知られ、文字通り2019年から全世界に広がった新しいコロナウイルスの感染症です。世界で知らない人はいないといってよいほど、変異を繰り返しながら、人々の生活を激変させました。

今回は、その新型コロナウイルス感染症の感染経路や臨床経過をまとめました。

新型コロナウイルス感染症の感染経路

感染者(無症状の方も含みます)からの咳やくしゃみ・会話などの時に出るウイルスが、飛沫・エアロゾル(飛沫よりさらに小さな水分を含んだ状態の粒子)の吸入で感染するとされています。

通常の飛沫感染だけなら、感染者に近い距離(1m以内)にいた場合に感染するといえますが、エアロゾル感染の場合は1mを超えて空気中にとどまることから、換気が不十分な所では感染が容易に拡大するといえます。

また、接触感染でも感染し、プラスチックで最大72時間、ボール紙で最大24時間しているとされています。なお、血液・尿・便から感染することはまれです。 (新型コロナウイルス 診療の手引き 第7.2版による

従来の新型コロナウイルス感染症(武漢株)の症状と臨床経過

感染から約5日間(1-14日間)の潜伏期間を経て、風邪のような症状(発熱、咳、のどの痛み、鼻水)や体のだるさが出てきます。ただし無症状のまま経過する方が20~30%いると考えられています。

日本で2020年1月~2021年5月までに入院した770名の患者さん(男性57%、年齢中央値51歳)の疫学調査では、発症日の症状は発熱52%・呼吸器症状29・倦怠感14%・頭痛8%・消化器症状6%・鼻水4%でした。

最近、「デルタ株」「オミクロン株」を中心とした変異株が中心となってきています。従来のコロナウイルスとの違いは

を参照してください。

(新型コロナウイルス診療の手引き 第6.1版から作成)

普通の風邪やインフルエンザとの違いとしては以下の通りです。

  • 通常の風邪やインフルエンザでは、3~4日目をピークにして軽快するが、症状が長引き呼吸器感染に発展すること
  • 通常の風邪よりも鼻汁・鼻閉は少なく、嗅覚・味覚障害が多いこと(ただし、オミクロン株についてはこの限りではありません)

40%の方は発症から1週間程度でよくなりますが、約60%の方は炎症が肺や気道にまで広がります。肺炎の症状は発症から1週間ほどではっきりしますが、そのうち約20%の患者さんでは酸素投与が必要になり、約5%の患者さんで人工呼吸器による治療が必要になります。

特に下記の方は重症になりやすいリスクが高く、より注意したほうがよいでしょう。

  • 65歳以上の方
  • がんの方
  • 長期間タバコを吸っていて、息切れがある方(COPD)
  • 腎臓が悪い方
  • 糖尿病の方
  • 高血圧の方
  • 悪玉コレステロール(LDL)が高い方、中性脂肪の高い方
  • 肥満(BMI30以上)の方
  • 喫煙されている方
  • 移植後で免疫不全の方
  • 妊娠後期の方

新型コロナ感染症で自宅療養中の感染予防策

新型コロナだとわかり、自宅療養されている方は以下の対策をして、感染拡大予防に努めましょう。

  1. 症状がある患者さんは、7日間は自宅療養を行い、仕事は所属される会社と電話で相談をしてください。自宅ではできる限り家族との接触を避け、食事や寝室、療養する部屋もわけましょう。看病が必要な場合は、看病する人を限定し、可能な限り、持病がある方や妊娠中の女性には看病させないほうがよいでしょう。
  2. 患者さんと家族はタオルを共有せず、別のものを使いましょう。患者さんの入浴は最後にしましょう。
  3. 療養する部屋から患者さんが出る時はマスクをつけ、部屋を出る直前に15秒以上のアルコール手指消毒をしましょう。(石鹸手洗いでも問題ありません)
  4. 患者さんが触った箇所(ドアノブや手すりなど)は、アルコール消毒をした紙でふき取り、ふき取った紙はすぐにゴミ箱に捨てましょう。消毒用アルコール以外にも次亜塩素酸ナトリウム(家庭用漂白剤など)でも問題ありません。
  5. 定期的に部屋の窓を開けて換気しましょう。(目安は1-2時間に5-10分程度となります)
  6. 患者さんが使った衣類やシーツを洗濯する際は、手袋とマスクをつけて洗濯物を扱い、洗濯後には十分に乾燥させましょう。
  7. 患者さんが出すゴミはビニール袋等に入れ、しっかりと口をしばって密閉してから部屋の外に出しましょう。ゴミを扱った直後は手洗いをしっかりしましょう。(参考:一般社団法人日本環境感染学会

さらに詳しい情報は新型コロナウイルス感染症での自宅療養について【準備・期間・家族】新型コロナ感染症の「濃厚接触者」について【家族・待期期間・PCR検査】でも記載していますので、参考にしてください。

新型コロナ感染症についてのQ&A

Q: 新型コロナウイルスPCR検査は当院(ひまわり医院)でもできますか?

A: 新型コロナウイルスPCR検査(鼻腔法・唾液法)を行うことはできますが、発熱外来の時間でしっかり分けて行っております。

また、PCR検査と同等の、IDNOWを用いた核酸増幅検査も行っていますので、当日に診断が可能です。

IDNOWについてはPCRと同等の位置づけ。IDNOWによる新型コロナ感染症核酸増幅検査についてを参照してください。

ただし発熱外来の時間帯に行っていますので希望される方は、事前にお電話をおねがいします。

Q: 新型コロナウイルスに感染した人が、他の人に感染させてしまう可能性がある期間はいつまでですか?

A: 新型コロナウイルスに感染した人が他の人に感染させてしまう可能性がある期間は発症の2日前から発症後10日間程度とされています。また、この期間のうち、発症の直前・直後で特にウイルス排出量が高くなると考えられています。

デルタ株の場合は少し長い「症状出現時から18日頃まで」、オミクロン株の場合は「症状出現時から10日頃まで」はPCR検査でも陽性と判定されるので注意が必要です。

このため新型コロナウイルス感染症と診断された人は、無症状の方も感染防止に努める必要があります。

Q: 新型コロナウイルス陽性の方への抗体カクテル療法(ロナプリーブ点滴静注®)は行っていますか?

当ひまわり医院では2022年1月時点で、陽性者に対する抗体カクテル療法は行っておりません

Q: 新型コロナウイルス陽性の方へのモルヌプラビル(ラゲブリオ®)は行っていますか?

重症化のリスク因子が高いと考えられる方に対して適宜行っております。

Q: 新型コロナウイルスの自宅療養期間が終わった後に陰性確認目的でPCR検査を行うことはできますか?

結論からいうと陰性確認目的でPCR検査をするのはオススメしません。(非常に気持ちはわかります)

PCR検査は体内にいる新型コロナウイルスの遺伝情報を増幅して検出する方法です。そのため、自宅療養期間明けすぐにに測定すると「体内に遺伝情報は残っているけれど、感染性が低い状態」になっている可能性があるからです。

そのため「陽性」と結果がでた場合、その取り扱いに難渋する可能性が予想されます。

原則新型コロナウイルス感染症から治癒したことを証明するために、PCR検査を受けて陰性を確認することは必要ありませんのでご安心ください。

Q: 新型コロナウイルスの変異株についてわかっていることはなんですか?

A: 例えば「デルタ株」や「オミクロン株」に関して、こちらの記事にまとめましたので参考にしてください。

Q: 濃厚接触者に自分があたるのか知りたい。濃厚接触者になったら検査してもらえますか?

こちらのまとめましたので、参照してください。

Q: 新型コロナウイルス感染症と診断された人のうち、どれくらい割合で他の人に感染させていますか?

A: 新型コロナウイルス感染症と診断された人のうち、他の人に感染させているのは2割以下で、多くの人は他の人に感染させていないと考えられています。このため、感染防護なしに3密(密閉・密集・密接)の環境で多くの人と接するなどによって1人の感染者が何人もの人に感染させてしまうことがなければ、新型コロナウイルス感染症の流行を抑えることができます。

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【この記事を書いた人】 

一之江ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。

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