今オミクロン株が世界中で流行し、日本でも市中感染例が大都市中心に流行しています。
さらに2回以上ワクチン接種したのにも関わらず新型コロナウイルス感染症にかかる「ブレークスルー感染」が起こっています。(ブレークスルー感染については新型コロナのブレークスルー感染とは?2回接種後の感染割合や症状・重症度について)も参照してください)
これを受けて厚生労働省や各自治体を中心にブースター接種(新型コロナワクチン3回目接種)を進めています。その中で
- ブースター接種の効果はどれくらいなのか
- ブースター接種を受けたほうがよいのか、正直まよっている
- ワクチン2回目でも副反応があったのにブースター接種を打って大丈夫なのか
など心配する声も聞きます。そんな疑問に対し、実際のデータからブースター接種の副反応や効果について解説していきます。
新型コロナワクチン4回目接種については新型コロナワクチン4回目接種について解説【対象者・効果・副反応】を参照してください。
新型コロナワクチンの副反応および後遺症については新型コロナワクチンの副反応・後遺症について【症状・頻度】も参照してください。
目次
新型コロナワクチン「ブースター接種」とは?

ブースター接種とは「ワクチンの効果を高め、持続させるための追加接種」のことです。ブースターとは、「増幅器」のこと。つまり、ブースター接種は「本来ある免疫機能をさらに向上させる」といった意味合いがあります。
新型コロナワクチンの場合はファイザー社製・モデルナ社製ともに「2回接種」が基本だったので、多くは「3回目接種」のことを指します。
ブースター接種が必要な理由は?
「ブースター接種」である、新型コロナワクチン追加接種(3回接種)が必要になった理由は以下の通りです。
① ワクチンの感染予防効果がゆるやかに減少するから
新型コロナに対する脅威の高さからワクチン接種は迅速に行われ、長期効果については(現在でも)十分に検証されていない状況でした。その後、多くの論文で実施された方への追跡データから「ワクチン接種後の効果は緩やかに低下する」ことがわかっています。
例えば、米国でファイザー社のワクチン接種が行われた約340万人の研究では、接種後1か月~5か月にかけて感染予防効果は全年齢で88%(86-89%)から47%(43-51%)に低下しています。年齢別にみても
- 16-44歳:89%➡39%
- 45-64歳:87%➡50%
- 65歳以上:80%➡43%
と低下していました。一方、ワクチンに対する入院予防効果は接種後6か月までの間、全年齢で保たれています。
このことから2回目接種によって「時間と共に感染予防効果は減っていくが、入院や死亡する効果は持続される」といえます。)この傾向はファイザー社製ワクチンだけでなく、モデルナ社製ワクチンやアストラゼネカ社製ワクチンでも同様の傾向がみられており、特にオミクロン株は顕著になります。
② 2回目接種後も感染する「ブレークスルー感染」が世界各地で起きているから
前述の通り、実際に世界各地で2回ワクチン接種後にも関わらず感染が起こる「ブレークスルー感染」が各地で起きています。日本でもオミクロン株流行に伴い、2回目接種されてた方でも新型コロナウイルスに感染しやすくなっている状況です。
このように、感染予防効果が低下するとともに、ブレークスルー感染を防ぐ、感染したとしても重症化を予防する目的で、ブースター接種が行われています。
ブレークスルー感染については新型コロナのブレークスルー感染とは?2回接種後の感染割合や症状・重症度について)も参照してください
ブースター接種の効果は?(欧米の場合)
ブースター接種の効果は、オミクロン株を含む様々な変異株に対しても認められています。


英国健康安全保障庁(UKHSA)では10万人以上の解析から、ワクチンの効果(2回接種後と3回接種後)で検討されています。(アストラゼネカ製・ファイザー製・モデルナ製)その結果によるとオミクロン株に対する発症予防効果については
- 2回接種の場合:オミクロン株に対する発症予防効果は20%程度に低下する
- 3回接種の場合
- ファイザー製2回接種後の追加接種では、ファイザー製・モデルナ製ともに15-19週で30%程度
- モデルナ製2回接種後の追加接種では、ファイザー製・モデルナ製ともに15-19週で50%程度
と報告されています。一方、デルタ株に対しては2回接種で発症予防効果が60-70%、3回目接種で90%超と良好な成績を収めています。
ワクチン入院予防効果に関しては、アメリカCDCが下記の通り発表しています。

2022年2月に発表されたデータによると、入院予防効果に関しては
- ワクチン2回接種:オミクロン株優勢期でワクチン接種2か月以内・2~3か月・4か月・5か月以上で71%・65%・58%・54%
- ワクチン3回接種: オミクロン株優勢期でワクチン接種2か月以内・2~3か月・4か月以上で91%・88%・76%
となりました。イギリスのデータでも追加接種後105日時点の入院予防効果は
- 18歳-64歳:酸素投与やICU入室を伴う入院に対する予防効果は75.9%、急性呼吸器疾患による入院に対する予防効果は67.4%
- 65歳:酸素投与やICU入室を伴う入院に対する予防効果は86.8%、急性呼吸器疾患による入院に対する予防効果は85.3%
としています。
日本でのブースター効果・ワクチンの効果は?
日本でも2022年1月から2月で16歳以上で新型コロナに感染された2,505名に対して解析が行われ、下記のように発表されています。(詳細はこちら)

上記によると、日本の報告でも下記のことが分かっています。
- ワクチン2回接種で42.8%、3回目接種で68.7%の予防効果が期待できる:ワクチンを接種していないと298名中138名(51.5%)発症していましたが、2回接種だと1370名中519名(37.9%)、3回目接種で135名中25名(18.5%)の発症にとどまりました。
- 2回目接種から6か月以降で効果が減弱する:6か月での発症予防効果は31.7%となっていますが、信頼区間がー17.6%~60.4%となっており、発症予防に関与しない可能性も残ってきます。
- モデルナ製かファイザー製かの効果の違いはなし:2回接種時点での発症予防の有効性は変わりませんでした。
また、実際の大阪での実際のワクチン接種別に見た新規陽性者数は次の通りでした。

まずワクチン接種歴別にみた新規陽性者数の推移から。上図から見ると、オミクロン株が主流になった段階でも未接種に比べた新規陽性者数はワクチン2回接種で約3分の1、ワクチン3回接種で約10分の1~約6分の1に抑えられていますね。

また重症化や死亡者数に関しても60代以上に関しては死亡率(2.2%➡0.7%)・重症化率(1.0%➡0.3%)を大きく低下させています。一方、若年者に関してはもともと重症化率は低く、有意な差には至っていません。ただし、
- 若年者でも一定の確率で後遺症が残っている方もいる点
- 今後の変異の推移次第で重症化しやすくなる可能性がある点
から一概に「重症化しないから若年者はワクチンを打たなくてもよい」とは言い難いと思います。
しかし、このように世界だけでなく日本でもある程度ワクチンの有効性を示せたことは大きいですね。3回目接種からどれくらいで効果が減弱するかも含めて、今後もデータが集積されることでしょう。
ブースター接種(3回目接種)の副反応は?
新型コロナワクチン追加接種(3回目接種)の副反応は「2回目接種後と概ね同じくらい」といえます。具体的な2回目接種と3回目接種の副作用の比較は以下の通りです。

上記の通り、局所反応(打った箇所の腫れや痛み)が高率にでやすいことや、疲労感や頭痛がでやすいことが特徴ですね。また、ファイザー製よりもモデルナ製のほうが副反応が出る確率が高いのもうかがえます。
さらに追加接種はワキを中心にリンパ節の腫れが発症後1日目~4日目に多く出やすいことが特徴です。(詳細はこちら)(ファイザー製5%程度、モデルナ製20%程度)しかし、ほとんどの場合が短期間・軽度に症状がおわっていることも確認されているので、過度に心配する必要はないでしょう。(PMDA資料はこちら)(厚生労働省の見解はこちら)
ファイザー製とモデルナ製との交差接種の場合、副作用の頻度は高くなりますが、前述の通りワクチンとしての効果は高くなります。そのため、総合的に考えるなら
- ワクチンの副作用が心配なら、交差接種を行わず3回目接種
- ワクチンの効果が高い方がよいなら交差接種
とされたほうがよいでしょう。新型コロナワクチンの副反応および後遺症については新型コロナワクチンの副反応・後遺症について【症状・頻度】も参照してください。
ブースター接種(3回目接種)の接種間隔は?
新型コロナワクチンブースター接種の対象者は「18歳以上の方(ただし流行状況や背景因子を踏まえて、ベネフィットとリスクを考慮し接種の要否を判断すること)」としています。2回接種は18歳未満の方も受けられたので、注意が必要ですね。
また添付文書上は「2回目接種から少なくとも6か月経過した後に3回目接種できる」としていますが、厚生労働省は原則8か月空けることとしていました。(詳細はこちら)
ただし、1月22日からオミクロン株の感染拡大のスピードが速いことから、江戸川区では「18歳以上の全ての方に対して、6か月経過後接種可能」としています。(各自治体で接種可能時期に関しては異なるのでご注意ください)
くわしくは厚生労働省のHPも参照してみてください。
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【この記事を書いた人】
一之江ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。
更新履歴
- 2022年3月3日:現在の状況に合わせて一部文章改訂
- 2022年3月31日:3月30日の感染症アドバイザリー資料に基づき、日本でのワクチンの効果について改訂
- 2022年4月11日:ワクチンの副反応に関して短縮化しまとめました
- 2022年4月20日:ワクチンの有効性について大阪を資料をもとに追記、データ整理に伴い一部短縮化
- 2022年5月1日:4月28日の英国のレポートをもとに修正。
新型コロナウイルスに関する先生のコラムを大変興味深く拝見しております。
私事の質問で恐縮ですが、先月新型コロナウイルスに感染し発症しました。症状は発熱のみで、3日目より平熱になり、発症後2週間経過しました。
お尋ねしたいのは、3回目のワクチン接種の時期です。デルタ株の感染者は、感染して半年後も中和抗体を維持しているとの報告があるようです。
https:www.yokohama-cu.ac.jp/amedrc/news/202112ryo_covid1year.html
現在66歳で昨年6月に2回目ワクチン接種を受けていますが、3回目の摂取すべきでしょうか。受けるならどのくらい機関を空けるべきでしょうか。
コメントいただきありがとうございます。
接種時期としての1つの目安は、厚生労働省が提唱している「感染者は90日空けて接種」です。
しかし、例えば1か月後に接種されたとしても問題ありません。
・ みなさんが接種される時期(3回目接種なら今)しか、ワクチンの性質上打てない可能性
・ 今後新しいワクチンが出てくる可能性
などを考えて、納得できる接種時期を考えていただけたらと思います。
総合的に考えて個人的には、
・厚生労働省が推奨される「3か月」を目安に接種が出来たらする。
・できなければコロナやワクチンの動向をみて接種時期を「早めに」模索する。
でも遅くはないと思います。(再感染の例も経験してますので)
早速にご丁寧なお返事をいただき、ありがとうございます。
オミクロン株感染者が増えるにつけ、私のような疑問を持つ方も増えるのではと思います。
できれば90日後くらいにワクチン接種を受けたいと思いますが、5月に状況がどうなっているのかわかりません。
オミクロン株に対する中和抗体が下がってきているときにブースター接種を受けるのは意味があるように思えますが。
3月か4月中の摂取を検討します。
3回目のワクチンは、モデルナで接種しました(ファイザー、ファイザー、モデルナで抗体量を最大限増やす為3回目は交互接種)。抗体量検査は、2回目接種終了2ヶ月後に約3700AU/ml、5ヶ月と1週間で僅か16AU/ml(ほぼ絶望的)、そして3回目接種終了後3週間以内に検査し、1年を通して最後に3回目接種後3ヶ月半で調査しようと思っています(年4回)。調査する病院は、全て1回ずつ公平にランダムに行っています。それは、自分の抗体量が、基本的に6ヶ月は持たないと言う事が前提でやっています(基本的に自分の場合どれくらいで抗体量がなくなるかを確認したかった。あれこれ議論していても意味がないので実測値で正確性を調査しました)。もしも3ヶ月半で抗体がなくなれば、海外で言われている一般的な高齢者に4回目の接種が必要ではないかと言う持論を証明する事が出来ます。だからと言って、4ワクチンは接種してくれないでしょうが、もしもワクチン接種その都度都度で余りがあるワクチンがあった場合、集団摂取会場等で予約等は入れられるものでしょうか(余って捨てるくらいなら抗体が無いと解っている人に欲しいと言う事です)?日本製のワクチンレプリコンワクチンのような僅か157mlで日本国民の全てのワクチン量を賄えるワクチンが間もなく3層治験が終了すれば有料でもやれればやりたいとも思っています。世界では、ユニバーサルなスパイクフェリチンナノ粒子ワクチン(現在アメリカで1番研究が進み治験1の段階)が進んでいるようです。いずれにしても現在までの型落ちワクチンでは、基本的にほぼ対処しきれないかとは認識していますが、御意見をお聞かせ願いたく、意見を投稿させて頂きます。宜しくお願いします。情報に関しては、ほぼ毎日ネット検索しています。
コメントいただきありがとうございます。ワクチンの基礎学問的な専門家ではなく、一臨床家としてお答えいたします。
>4回目ワクチンは接種してくれないでしょうが、もしもワクチン接種その都度都度で余りがあるワクチンがあった場合、集団摂取会場等で予約等は入れられるものでしょうか
4回目ワクチンは今の日本の制度上、たとえ抗体価が低い状態であったとしても受けることはできません。公的に無料で接種が行われる以上、必ずルールがあります。
4回目接種の安全性と有効性に対する評価は、現時点で十分検証されていないのも主だった理由でしょう。私自身も第6波までならば3回目までの接種で十分対応可能ではと思います。
いずれにしても現在までの型落ちワクチンでは、基本的にほぼ対処しきれないかとは認識していますが、御意見をお聞かせ願いたく、意見を投稿させて頂きます。
結論から言うと「その時点で最も有効性と安全性のバランスがよいワクチンを個人個人が判断して接種するのが理想」と考えます。
ファイザー製・モデルナ製ワクチンに対する個人的な感想としては、武漢株をベースに作られている割に変異株に対しても十分効果を発揮しているというのが現在の所感です。
(例えばインフルエンザワクチンの有効性と比較したら理解しやすいです)
もちろん今後の変異を含めて、今までのワクチンを繰り返し打つというよりは、異なった種類のワクチンを打つことになるかもしれませんね。選択肢が多いなら、可能性は高くなるでしょう。
しかし、ワクチンの開発状況や審査の段階ももちろん必要ですし、個々のワクチンに対する評価も必要なので、想像もつかないくらい大変ですね。
その他にも新型コロナの流行状況もあります。変異株の毒性の問題もある。ワクチンの副作用の問題もありますし、新型コロナの社会情勢的な位置づけの問題もある。
色んな要素があって、個人個人でベースとなる背景や価値観が異なりますので、患者さんに相談がきたらいつも一緒に悩んでます。
しかし、確実に1つ言えるとすれば「その時に自分にとって一番有効性と安全性のバランスが取れている」と方法をとっていただきたいと思います。
極端な話、ワクチンを打たないで後遺症が残った方も診ています。ただそれは、自分が納得してワクチンを打たなかったので、その中で最善を尽くすことしかできません。
ただし、ある程度「正しい情報」は必須です。そのために、できる限り私も助力できればと思いコラムを書いています。
非専門家にもわかりやすい解説ありがとうございます。3回め接種の効果について知りたかったので端的にまとめられていて大変助かりました。3回めの接種券が届いたので打ちにいく予定です。
4回め接種の効果についての論文が4/13にNEJMに掲載されていました (https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2201688?query=featured_home#article_citing_articles)。Conclusionによると、少なくとも4か月前に3回め接種をしている人が4回め接種をすると短期のリスクを低減するとのことでした (医療は専門ではないので詳しくは分かってないです)。日本の4回めの接種が今後はどうなるのか気になります。
コメントいただきありがとうございます。
4回目接種の扱いについておそらく様々な議論がされていることでしょう。
上記の論文については「60歳以上」の解析結果ですので、
アメリカのような「50歳以上の方・免疫力が低下されている方」などに限定して行うかもしれませんね。
また4回目接種の効果や副反応などが様々な論文で検証され次第、私も取り上げていこうと思います。