【女性に多い】膀胱炎の原因から症状・治し方まで解説

  • 急にトイレに行くときに痛むようになった
  • トイレに行って用を足しても尿が残っている気がする
  • トイレの回数が頻繁になり、尿の色も変な色になった

という方は、膀胱炎かもしれません。時に突然血尿が出てビックリされる方もいるでしょう。膀胱炎は特に女性で繰り返しやすく、しばしば治療に難渋されることも多い疾患です。

今回は、膀胱炎の原因から症状・治し方に至るまでわかりやすく解説していきます。

膀胱炎とは?膀胱炎の原因は?

膀胱とは尿をためる袋のこと。その膀胱に炎症を起こすのが膀胱炎です。

女性のほうが圧倒的に多く、繰り返しやすいのが特徴になります。特に20~40歳の女性の20~35%が膀胱炎になるといわれており、大変ポピュラーな病気です。

膀胱炎の原因の多くは、外部から大腸菌などの腸内細菌が尿道(膀胱までの通り道のこと)をさかのぼって膀胱の中に入り増殖することで引き起こされます(逆行感染)

尿道口(尿道の出口)は周知のとおり肛門や膣にとても近い位置にあります。肛門や膣は細菌が常にいる場所です。しかも女性の場合は男性に比べて尿道の長さが3~4cmくらいしかなく、細菌が膀胱にすみつきやすい環境が整っています。そのため、膀胱炎は特に女性に多いわけなのです。

膀胱炎はタイプによって「単純性膀胱炎」「複雑性膀胱炎」「間質性膀胱炎」「出血性膀胱炎」の4つに分かれます。

① 単純性膀胱炎

尿路の異常を認めない人の膀胱炎です。女性では尿意を我慢したり、冷えや便秘・睡眠不足・月経・妊娠・性交渉などによって起こります。20~30代の若い女性に発生し、閉経前の女性にも比較的多く見られます。

性行為に伴う膀胱炎は性交後36時間から48時間を経て起こるため、本人は関係性を自覚しないこともしばしばあるので注意が必要です。

② 複雑性膀胱炎

尿路に異常があり尿の停滞が起こりやすい・細菌が住み着きやすい環境がある・糖尿病などの基礎疾患がある、などの理由で繰り返し起こりやすくなる膀胱炎です。このタイプの場合、基礎疾患や背景の原因除去が重要になりますので精査や紹介することもあります。

③ 間質性膀胱炎

間質性膀胱炎とは「膀胱の非特異的な慢性炎症を伴い、頻尿や尿意亢進・尿意切迫感・膀胱痛などの症状を呈する疾患」のこと。間質性膀胱炎では明らかな細菌や結石などがなくても、しばしば膀胱壁に天井出血をきたし「膀胱炎様症状」になります。

わが国での間質性膀胱炎は4,500人程度(10万人あたり4.5人)とされており、かなり稀な疾患です。

何らかのアレルギーや膀胱粘膜の異常が関与しているといわれていますが、原因ははっきり分かっていません。間質炎膀胱炎になると膀胱が膨らまずトイレに行く回数がとても多くなります。

診断には膀胱鏡が必要であり、アミノトリプチンなどの精神に関わる特殊な治療薬を使用します。間質性膀胱炎を疑う場合には、適切な施設に紹介させていただきます。

④ 出血性膀胱炎

出血を伴って発症する膀胱の炎症でウイルスや細菌・薬剤・放射線などが原因になります。薬剤性の多くは抗がん剤や免疫抑制薬などでみられますが、抗アレルギー薬や抗菌薬・漢方薬などでおこることもあります。

ほかにも膀胱粘膜に袋ができる「嚢胞性膀胱炎」やかび(真菌)による「真菌性膀胱炎」などがあります。

(参照:厚生労働省「出血性膀胱炎」
(参照:日本間質性膀胱炎研究会「間質性膀胱炎・膀胱痛症候群診療ガイドライン」
(参照:JAID/JSC 感染症治療ガイドライン 2015

膀胱炎の初期症状は?

このように、膀胱炎にもさまざまなタイプがありますが、いずれにせよ膀胱炎初期での3大症状は「排尿時痛」「頻尿」「濁った尿」が特徴になります。

  • 排尿時痛: 炎症を起こした膀胱が、排尿により縮まり刺激されるため、排尿時痛が起こります。筋肉が一番縮む排尿の後半~終了後に痛むことが多く、下腹部痛や尿道口の痛みとして表現されます。
  • 頻尿: 炎症で膀胱が頻繁に刺激されるので、トイレに行く回数が増加します。症状の強い時は10分ごとにトイレに行くことも。産生される尿量は同じなので、1回で出る尿の量は少なくなります。
  • 濁った尿:膀胱炎になると、菌の影響で濁った尿になります。ただし「見た目がきれいでも膀胱炎になっている」ことがあるので注意が必要です。場合によっては尿の匂いもきつくなることもあります。

ほかにも出血性膀胱炎でみられた血尿残尿感も伴うこともあります。

単純な膀胱炎では発熱が起きないのが特徴の1つです。発熱を伴い特に腰痛も出てきた場合は「腎盂腎炎」といって尿管を通って菌が腎臓にまで達している可能性もあります。そのため、腎盂腎炎を疑ったら、画像検査や採血を含めて慎重に診断・治療する必要があるでしょう。

膀胱炎の検査は?

膀胱炎の主な検査は「尿迅速検査」「尿培養検査」「超音波検査」「膀胱鏡検査」です。

① 尿迅速検査

尿迅速検査は、尿のサンプルを分析し、細菌、白血球(感染の兆候)、赤血球(血尿の兆候)などを検出する検査です。健康診断でもおなじみですが、膀胱炎を調べるためには当日尿の簡易分析ができる機器を使用します。

特に、膀胱炎の診断で重要な指標としてあげられるのが「尿中の白血球」と「亜硝酸塩(NIT)」。尿中の白血球の数が多いと、膀胱で細菌と免疫細胞が戦っている可能性が高く、膀胱炎の可能性が強くなります。

亜硝酸塩(NIT)とは、食べ物に含まれている「硝酸」が尿中の細菌によって還元された物質のこと。通常の尿からは検出されませんが、尿中に細菌がいると亜硝酸塩が出てくるため、陽性の場合には強く疑います。

ただし、すべての細菌感染で亜硝酸塩が出てくるわけではないので注意が必要です。

② 尿培養検査

尿のサンプルを特定の条件下で育て、感染を引き起こしている可能性のある細菌を特定します。この検査は、感染の原因となる細菌を特定し、最も効果的な抗生物質を選択するために重要です。

(特に高齢者や複雑性膀胱炎の場合)よく「抗生剤がきかない」ということもしばしば経験しますが、尿培養検査を行うことで、「どの抗生剤が効くか」を判定し、次の治療につなげることができます。

③ 超音波検査

特に反復する膀胱炎やその他の症状がある場合、膀胱や他の泌尿器系の問題を探るため、超音波検査を行います。

超音波検査は非常に簡便で痛みを伴わない検査でありながら、腎結石、膀胱結石、腫瘍など、膀胱に関するほかの病気を見つけることができるので、しばしば実施されます。

④ 膀胱鏡検査

超音波検査では外側からあてるので、膀胱粘膜などの「内側」の情報はわかりません。そのため、一番膀胱炎の状況を知ることができるのは「膀胱鏡」になります。

膀胱協では尿道から特殊なスコープを使って直接膀胱内部を観察します。膀胱鏡を使うと、膀胱がんをはじめとした異常な組織や感染原因を突き止めることができます。間質性膀胱炎の検査も膀胱鏡の検査が必須です。

このように、膀胱炎でもさまざまな検査がありますが、状況にあわせて適切に検査を組み合わせていきます。

(参照:JAID/JSC 感染症治療ガイドライン 2015

膀胱炎の治療は?

上記のように「膀胱炎」といってもさまざまなタイプがあり、年齢や基礎疾患の有無などによって治療期間や治療薬は大きく異なりますので一概に言えませんが、

多くは「単純性膀胱炎」のため、抗生剤治療が基本になります。「膀胱に移行しやすい抗生剤」で「感受性結果から効きやすい抗生剤」を患者さんに合わせて行います。

一部の抗菌薬は妊娠中に使用できない薬も含まれているので、妊活中の方や妊娠中の方は事前に医師や看護師にお伝えしてください。抗生剤を内服した後、尿検査で菌がいないことを確認すると確実ですね。

膀胱炎のタイプに合わせた治療方法は次の通りとなります。

  • 単純性膀胱炎:原因となっている細菌に対して有効な抗生物質を服用します。早ければ服用開始から数日程度で症状が改善することもあります。
  • 複雑性膀胱炎:原因となっている細菌に対して有効な抗生物質を服用し、細菌感染をもたらしている基礎疾患がある場合には、その基礎疾患の治療も行います。
  • 間質性膀胱炎:原因がはっきりしておらず、治療は症状の軽減になる治療が主体です。例えば、膀胱に生理食塩水を注入して膨らませる膀胱水圧拡張術や、抗うつ薬や抗ヒスタミン薬を服用する薬物療法などが特殊な治療が行われます。
  • 出血性膀胱炎:例えば原因がウイルス感染の場合、ウイルスに有効な薬が存在しないため、自然治癒による収束を待つことで対処することもあります。安静に過ごしていただきながら、通常は1週間程度で肉眼的血尿をはじめとする諸症状が改善します。

また、膀胱炎を繰り返す方に関しては、しばらく漢方薬を内服していただくこともあります。Cochraneの女性の膀胱炎に対する漢方薬の有用性に関する発表でも、「漢方薬との併用で、治療後少なくとも6か月間は再発性尿路感染症の発生率を減少させる可能性がある」としていますね。

漢方薬の種類に関しては、個々人の体質に合わせて判断していきます。

(参照:Cochrane library「Chinese herbal medicine for treating recurrent urinary tract infections in women」
(参照:JAID/JSC 感染症治療ガイドライン 2015

繰り返す膀胱炎は予防も大切

膀胱炎を繰り返すということは、菌を膀胱に入れやすい環境や要因があるということです。

もちろん解剖学的な理由や基礎疾患の可能性もありますが、日常生活での原因を取り除くことで少なくできるかもしれません。以下を特に気を付けるようにしましょう。

① 水分を多くとる

尿量を増やすことで、菌が膀胱に付着したとしても洗いながし、膀胱炎の発症を抑えます。1日3回以下しかトイレに行かない方は、1日4回以上の方に比べて膀胱炎の発症が高くなったという報告もあり、該当する方は注意が必要です。

(参照:An Overview of the Predictors of Symptomatic Urinary Tract Infection Among Nursing Students

② がまんしないでトイレにいくようにする

仕事の中断を嫌ってトイレに行かないようにしていると細菌を膀胱内に増やす原因になります。膀胱炎になると1日仕事を休まないといけないことも。我慢しないでトイレにいくようにしましょう。

③ 冷え症や過労・ストレスなどに注意する

下半身の冷えや普段のストレスも菌を繁殖させやすい原因になります。食事も栄養バランスをの取れたものにするようにしましょう。(膀胱炎に関わるとされる食べ物も後述します)

また、普段の睡眠不足も膀胱炎になりやすい原因になります。普段から眠れていない方は睡眠から見直すとよいでしょう。

(睡眠不足に関しては不眠症・睡眠障害について解説【治し方・改善方法】も参照してください)

④ 陰部周りのケアは大切に

尿道口から細菌は侵入するので、陰部や肛門周りのケアも大切です。特に

  • 普段から前から後ろへ服用にする
  • 長期便秘にならないように気をつける
  • ナプキンや織物シートをなるべく清潔な状態に保つ
  • 性交時にトイレにいくようにする(さらに陰部をシャワーで軽く洗い流す

とよいでしょう。また性交前に抗生剤を単回内服して予防する方法も報告されていますが、抗生剤を飲むことで耐性菌ができる可能性もあり、かかりつけの先生に相談したほうがよいでしょう。(詳細はこちら

⑤ 膀胱炎に関連する食べ物に気をつける

以下はInterstitial Cystitis Association(ICA)が提唱するを繰り返す方は避けておいた方がよいとされる食べ物です。(詳細はこちら)特に間質性膀胱炎が疑われている方、どうしても繰り返す方は意識してみるとよいでしょう。

【一般的に膀胱炎で避けたほうがよいとされる食べ物や飲み物】

  • 人工甘味料を含む食品および飲料:特に尿中に糖がでている場合は膀胱炎になりやすいです
  • コーヒー・お茶・ソーダ・アルコールなど
  • 刺激物(からし・ワサビ・唐辛子など): 膀胱に炎症があるときは刺激になります

ただしICAでも言及している通り、個々人できっかけとなる食べ物が違うことがあります。食事日誌をつけながら自分に合った食事内容を決めていくとよいでしょう。

一方、膀胱炎再発予防によいとされているのはクランベリージュースです。20~79歳までの女性でクランベリージュースを 1 日 1 回寝る前に飲用することによりプラセボと比較して有意に再発を抑制する(29.1% vs 49.2%)としています。

(参照:A randomized clinical trial to evaluate the preventive effect of cranberry juice (UR65) for patients with recurrent urinary tract infection

⑥ 抗生剤は飲み切ること

「症状が治まったから抗生剤はもう飲まなくてもよい」「また膀胱炎は繰り返すから抗生剤をとっておこう」という方はいらっしゃいませんか?抗生剤は決まった期間飲まないとかえって耐性菌を生む原因になります。

出された抗生剤は飲み切ることが、再発予防の面でも大切ですね。

また、基本的に一般に無症候性細菌尿は抗菌薬治療の適応とされませんが、妊婦中の方は無症候性細菌尿を治療することにより妊娠中の有熱性尿路感染症を 20~40%程度予防できるとされており、積極的な治療が勧められています。

症状がおさまったとしてもきちんと抗生剤治療を完了すると、再発予防につながるのです。

膀胱炎を繰り返してしまう方は、ぜひご相談ください。ライフスタイルを聞きながらアドバイスさせていただきます。

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【この記事を書いた人】 
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。

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