大人のヘルパンギーナの特徴について【症状や喉の痛みの期間など】

夏になると子供を中心に流行しやすい感染症の1つが「ヘルパンギーナ」。「手足口病」「咽頭結膜熱(プール熱)」とともに、しばしば「3大夏風邪」と言われたりします。

しかし、ヘルパンギーナは子供を中心に感染しますが、大人もしばしば感染します。そして子供以上に激烈な「のどの痛み」に悩まされたりするのです。

今回は大人のヘルパンギーナを中心に、潜伏期間や症状からうつりやすさや対処法を中心に解説していきます。

喉の痛みに対しては、鑑別しなければならない疾患が数多くあります。詳しくはのどの痛みはコロナ?のどが痛い時の原因やケアについて解説を参照してください。

大人のヘルパンギーナに関して、動画を作成しました。本ページ下部にあるので参考にしてみてください

ヘルパンギーナとは?

ヘルパンギーナとは「発熱」と「口腔粘膜に出来る特徴的な水疱性の発疹」を特徴とした急性のウイルス性咽頭炎のこと。ヘルパンギーナはドイツ語で「水疱(ヘルペス)」と「喉の炎症(アンギーナ)」が組み合わさった複合語であり、ウイルスそのものの名称ではありません。

実際ヘルパンギーナは「エンテロウイルス属」の感染によるもの。コクサッキーA群ウイルスを中心にポリオウイルス・コクサッキーウイルスB群・エコーウイルス・エンテロウイルス(68~71 型)など多くの種類のウイルスがヘルパンギーナの原因となります。

日本では「毎年5 月頃から増加し始め、7月頃にピーク に達し、8月頃から減少し始め、9~10月にかけてほとんど見られなくなる」といった流行パターンをとります。

新型コロナ発症前である2019年の夏はそれなりに流行していましたが、新型コロナ以降である2020年~2022年は感染者数はおちついていました。

しかし、2023年に新型コロナが5類になり、ヘルパンギーナが近年みないほど大流行していますね。

90%以上は5歳以下に発症し、1歳代がもっとも多いためヘルパンギーナは通常「小児の感染症」と言われます。

しかし、大人が絶対ヘルパンギーナを発症しないわけではありません。数が多くウイルスへの接触機会が増えればウイルス感染する確率があがります。(特に小さいお子さんがいる家庭の場合)そのため、今年はしばしば大人のヘルパンギーナを診る機会も増えてきました。

(参照:東京都感染症情報センター「ヘルパンギーナの流行状況」
(参照:国立感染症研究所「ヘルパンギーナとは」

大人のヘルパンギーナの症状は?

では、大人のヘルパンギーナはどんな症状なのでしょうか?

ヘルパンギーナは2~5日の潜伏期間を経て、突然の発熱に続いて、急激な「のどの痛み」が出てきます。発熱は必ず出るわけではありませんが、のどの痛みは「非常に強い痛み」として自覚することが多いですね。

そしてヘルパンギーナに最も特徴的なのが名前の由来にもなっている「咽頭粘膜の発疹」です。口の奥の上のほうである「軟口蓋から口蓋弓」にかけて直径1~2mm程度・大きいもので5mm程度の水ぶくれができます。

水ぶくれはよく破れるので、診察時には「口内炎のようなえぐれたような潰瘍」になっていえることもありますね。

他には、くびのリンパ節が腫れたり、いつまでもひっかかるような喉の強い違和感が生じ、食事をするたびに痛みが生じることもあります。

大人の場合、この喉の違和感が強く「通常の市販薬だと全然効かないから何とかしてほしい」と来院される方もいますね。

通常、2~4日くらいで発熱は収まり喉の強い違和感も通常1週間くらいで治まっていきます。非常にまれにエンテロウイルス感染に伴う髄膜炎や脳炎・急性心筋炎を発症する報告がありますが、通常はそうした合併症を来すことなく軽快していきます。

(参照:Nation Library of Medicine「Herpangina」
(参照:Management of Herpangina. Denta Jurnal Kedokteran Gigi, Agustus 2020; Vol.14 No.2; Hal 77-81)

ヘルパンギーナはうつる?

ヘルパンギーナもウイルス感染症なので当然ですが、他の人に感染させる可能性があります。

エンテロウイルス属の感染経路は主に

  • ウイルスを含む糞便が手指について口に入る「糞口感染」
  • ウイルスが唾液やくしゃみに含まれる飛沫から感染する「飛沫感染」
  • 水ぶくれの内容物を含んだ液体を接触することでおこる「接触感染」

となります。ヘルパンギーナに罹った方の感染力が最も強いのは感染後最初の1~2週間ですが、呼吸器でのウイルス排出は3週間、便中には最大8週間持続するとされています。

非常に長い間2次感染に気を付けなければならない感染症なのですね。保育園や小学校で流行が起こるのも十分理解できます。

特に大人も「小さい子供がいてヘルパンギーナが流行している」「小さい子供に接触する機会がよくある」「職業としておむつなどを取り扱うことがよくある」などの場合は、十分感染している可能性があるので、注意しましょう。

(参照:Nation Library of Medicine「Herpangina」

ヘルパンギーナの治し方は?

ヘルパンギーナには残念ながら抗ウイルス薬はありません。そのため、症状にあわせた治療である「対症療法」が中心となります。

発熱や頭痛、口の中の水疱の疼痛などに対して解熱・鎮痛剤を用いることがありますね。

何より大切なのは「ヘルパンギーナときちんと診断してもらう」こと。急激なのどの痛みと発熱が特徴的なヘルパンギーナですが、他の疾患でも発熱やのどの痛みが生じることがあります。

そして、中には抗生剤や抗ウイルス薬など、特殊な治療薬がないと治らない疾患もたくさんあります。きちんと医療機関で診断してもらうことが大切ですね。

のどの痛みについての一般的なケアについてはのどの痛みはコロナ?のどが痛い時の原因やケアについて解説を参照してください。

大人でのヘルパンギーナは仕事はいつまで休む?

大人がヘルパンギーナになった場合、仕事はいつまで休むのか。

結論からいうと、ヘルパンギーナに明確な休職期間というのはありません。しかし、ヘルパンギーナは、学校保健安全法で「第三種学校伝染病」に指定されており、「発熱や喉頭・口腔の水疱・潰瘍を伴う急性期は出席停止、治癒期は全身状態が改善すれば登校可」とされています。

そのため、大人の場合も上記に準じて対応することが多いです。特に大人の場合

  • ヘルパンギーナは39度を超える発熱や激しいのどの痛みで、仕事どころではない状況が多いこと
  • 子供よりも大人のヘルパンギーナは稀であり、他の感染症の可能性も考える必要があること

などから、やはり少なくとも高熱やのどの痛みが強い間は仕事をしない方が無難です。症状がつらい時は、無理をせずゆっくり治療に専念してくださいね。

【この記事を書いた人】 
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。

大人のヘルパンギーナの特徴について動画でまとめました

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