手軽に食べられ、しかも栄養が豊富な食材として人気なのが、「卵」。
オムレツ、目玉焼き、スクランブルエッグと朝の「定番」に卵が多く使われてますよね。それだけでなくカルボナーラやすき焼き、天津飯など、和洋中問わず卵メニューは多種多様です!(筆者も大好きです)
そんな卵ですが、よく「コレステロールが高いからなるべく食べないように」といわれたことはありませんか?よく「1日1個以下に控えるように」と言われた方も多いでしょう。
実際、卵はどれくらいとってよいものなのでしょうか?実はこの「卵の個数論争」は世界中で注目の的になっているのです。
今回は、この「卵の理想的な個数」について、これまでわかっている医学的な知見から客観的に考察していきます。
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【まず結論】全体的に卵は1日1個までは「許容できる」とする論文が多い
まず、卵は1日1個を目安として数多くの研究がなされています。賛否両論あるところですが、「1日1個までなら健康によいのでは」とする論文が多いです。
ただし、この結論に至るまでには、卵の個数と心筋梗塞や脳卒中・コレステロール血症など、各疾患に対する卵の影響を調べないといけませんよね。そこで、さっそく各病気と卵の個数との関係をみてみましょう。(最後に各疾患における卵の消費量の目安を記載します)
卵の個数と心筋梗塞・脳卒中の関係は?
卵によるコレステロールが悪いのなら、コレステロールで最も問題になるのは心臓や脳にコレステロールがたまることによる「脳卒中」や「心筋梗塞」へのリスク。では、卵で脳卒中や心筋梗塞のリスクは上がってくるのでしょうか?
まず、3つの複数の論文をもとに分析した論文によると、「1日最大1個の卵を食べても、心筋梗塞や狭心症のリスクをあげない」「1日最大1個の卵なら、むしろ脳卒中になりにくくなる可能性がある」としています。
そのうちの1つの論文を紹介します。この論文では「国民健康・栄養調査」で使用される23,524人のデータによる論文で平均年齢は47.7歳、48.7%が男性の方でした。その論文によると
- 卵の摂取量が最も多い方は糖尿病と高血圧のリスクが高い
- 卵の摂取量が多くても、死亡や心筋梗塞などの心臓のリスクは上昇しない
- 男性では逆に卵の消費量が多いと脳卒中になりにくかったが、女性では関連性が認められなかった
としています。2016年での分析でも「1日1回最大1個なら脳卒中のリスクを下げる可能性がある」としており、正常な方での「卵=コレステロール=心筋梗塞や脳卒中」とはいえなそうですね。
(参照:J Am Coll Nutr. 2019 Aug;38(6):552-563.)
(参照:J Am Coll Nutr. 2016 Nov-Dec;35(8):704-716.)
また、他の複数の論文による分析結果(参加人数:1600人~90,735人)では卵1日1個以上の方と1週間に1個未満または卵なしの方を比べたとところ、心筋梗塞や狭心症になる確率が0.97倍(0.86~1.09倍)、脳卒中で0.93倍(0.81~1.07倍)と卵の消費量と脳卒中・心筋梗塞は関係ないとしています。
ただし、同じ研究で糖尿病の方で限定すると心筋梗塞になる確率が1.69倍(1.09~2.62倍)と上昇しているので、糖尿病の方は卵の消費を控えるよう注意喚起しています。(1日1個以上)
また他の論文では、「心不全の発症リスクは卵の頻繁な摂取と関連している」としています。同論文では「卵を1日1個以上摂取すると、最低限の摂取と比較して心不全になる確率が1.25倍(1.12~1.39倍)になる」としています。
(参照:Front Nutr. 2017 Mar 27;4:10.)
このように考えると
- 卵は1日1個までなら心筋梗塞との関係ははっきりせず、脳卒中は(特に男性で)卵により低下する可能性がある
- 1日1個以上だべると、心不全のリスクが上がったり、(特に糖尿病の方で)心筋梗塞のリスクが上昇する可能性もある
と考えられます。
卵の個数とコレステロールの関係は?
では、よく言われる「卵とコレステロールの関係」はどうなのでしょう。実はここは賛否両論であり、卵でコレステロールに悪影響するとは言い切れません
まずは「卵はコレステロールに悪影響」という論文から。2001年の複数の論文をまとめた556人を対象とした分析によると、「食事中のコレステロールを1日100mg追加すると、血中のコレステロールの濃度が0.056mmol/L上昇する」ことが言われています。
卵1個にはLサイズ186mgのコレステロールが含まれているため、コレステロール摂取により上昇する可能性は十分ありますね。
(参照:Am J Clin Nutr. 2001 May;73(5):885-91.)
一方、他の論文では「卵摂取によりLDL-CとHDL-Cをそれぞれ上昇させるが、L/H比(善玉コレステロールに対する悪玉コレステロールの割合)は上昇させない」としています。
つまり卵は「(他の食材と比べて)コレステロールそのものは上がるけど、動脈硬化に進展するような影響を与えにくいのでは?」とも考えられているわけですね。
(参照:J Am Coll Nutr. 2018 Feb;37(2):99-110.)
上記のような理由から、「卵の摂取によりコレステロールの全体的な数値は上がる可能性が高いですが、他の食材と比較してより脂質代謝を悪化させるわけではない」といえるでしょう。
ちなみに、卵の消費量と糖尿病に関しても賛否両論。まだ決着はついていません。
卵の個数とガンの関係は?
実は、卵の個数の研究は上記のようなコレステロールや動脈硬化性疾患だけではありません。卵とガンについても研究が進められています。
特に卵と関連が深いガンの1つが意外にも「乳がん」。13の観察研究をまとめた論文によるとヨーロッパおよびアジア出身の閉経後の女性において、卵の摂取が乳がんのリスクにわずかに上昇していることがわかりました。
具体的には、週2~5個の卵を食べる方と週1個未満の方と比較すると、1.04倍(1.01~1.08倍)と言われています。
他には、消化器ガンの発生にかかわるとする論文や卵巣がんのリスクが上昇するという論文も見られていますね。
以上から、卵とガンの発生率の観点から考えても「卵を無制限に食べてもよい」とは言いづらいでしょう。
(参照:Breast Cancer. 2014 May;21(3):251-61.)
(参照:Ann Transl Med. 2020 Nov; 8(21): 1343.)
まとめ ~病気別の卵の摂取量は?~
いかがでしたか?今回は「卵の摂取はどれくらいにしたらよいのか」について、医学的な研究から真面目に答えてみました。ここまでの結論をいうと
- 基本的には「1日1個までなら卵を食べてもよい」。むしろ1日1個食べたほうが有用とする論文もある
- 糖尿病の方や心不全の方などは、少なくとも1日1個以上は控えておいた方がよい
- 乳がんや消化管ガンの家族歴があるなど、リスクのある方は多少卵の消費がかかわる可能性も(確定的ではない)
- コレステロール値が気になる方は「卵を含む全体のコレステロールや脂質の摂取」を気にした方がよい。ただし、卵だけにこだわる必要はない。
といえます。卵は手軽に取れる分注目の的になりますね。
実際の診療では、紹介しきれなかった論文のことも含めて考えながら、1人ひとりアドバイスしています。(全部紹介すると1冊の本がかけてしまいます)ぜひ卵も含めて「コレステロールに関するアドバイスを受けたい!」という方はぜひ当院にもご相談ください。
【この記事を書いた人】
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。
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