高濃度ビタミンC点滴の効果や頻度・エビデンスについて【がん・風邪・肌】

近年、美容や健康に関心のある方々の間で人気になっている「高濃度ビタミンC点滴」について、ご存知でしょうか?

高用量のビタミンCを入れることで、特に「がん」や「風邪」への効果や「肌」のアンチエイジング効果などが期待されていますが……その効果を裏付ける「エビデンス」はどの程度あるのか、疑問に思いませんか?

しかも高濃度ビタミンC点滴はそこまで安い治療ではありません。品質の高い高濃度ビタミンC点滴を受けようと思ったらそれなりの金額は確実にします。だからこそ、しっかり効果が出てくるのか気になるのは当然のことです。

また、高濃度ビタミンC点滴を受ける際にどれくらいの「頻度」で受ければ、最もいい効果が得られるのでしょうか。

今回、そんな高濃度ビタミンC点滴について知られているがんや風邪・肌への効果について、最新の医学論文から包み隠さずお伝えしていきます。

高濃度ビタミンC点滴とは?

高濃度ビタミンC点滴とは、通常のサプリや食事からでは得られないレベルの大量のビタミンC(アスコルビン酸)を、静脈から直接体内に入れる治療法のこと。

経口でビタミンCを摂取した場合、腸から吸収できる量には限界があり、たくさん摂っても排泄されてしまいます。たとえば、サプリで1回に2g飲んでも、体に吸収されるのはその一部だけです。

一方、点滴なら直接血液に入れるため、経口摂取の数十倍〜数百倍の血中濃度を得ることができ、ビタミンCのもつ様々な力を最大限発揮させる。これが、高濃度ビタミンC点滴の最大の特徴です。

ではビタミンCにはどんなパワーがあるのか。色々ありますが、例えばビタミンCの効果として、以下が知られています。

  • 抗酸化作用(=細胞のサビを防ぐ): ビタミンCは強い抗酸化物質です。ストレスや紫外線、加齢、病気によって体に「活性酸素(サビ)」がたまると、細胞が傷つき老化や病気の原因になります。ビタミンCはこの活性酸素を中和し、細胞を守る働きがあります。
  • 免疫機能の強化: 白血球(好中球やリンパ球)の中には、ビタミンCが高濃度に存在しています。ビタミンCはこれら免疫細胞の働きを高め、ウイルスや細菌への攻撃力を強めたり、炎症を抑える作用があります。
  • がん細胞にだけダメージを与える: 正常な細胞には影響を与えず、がん細胞だけを攻撃するという非常にユニークな働きが報告されています。高濃度のビタミンCは体内で過酸化水素を発生させ、それががん細胞を壊す作用があるとされています。また、副作用の多い抗がん剤治療のサポートとして併用すると、倦怠感や吐き気などの副作用を軽減する効果も期待されています。

このようなビタミンCの力を最大限発揮させようという試みが「高濃度ビタミンC点滴」なのです。

高濃度ビタミンC点滴で期待される効果とエビデンス➀:がんに対する効果

では、本当に高濃度ビタミンC点滴の効果がエビデンスで証明されているのか、順にみていきましょう。

まずは、高濃度ビタミンC点滴による「がん」に対する効果です。

高濃度ビタミンC点滴の抗がん作用は過去20年で再評価されています。ビタミンCは経口では吸収限界がありますが、静脈投与で血中のビタミンC濃度が急激に高まり、これが腫瘍周囲で過酸化水素を発生させてがん細胞を選択的にダメージを与えるのではないかと考えられています。

実際、化学療法に高濃度ビタミンC点滴を加えると、生存率が伸びる効果が論文で言われています。例えば、2024年に発表された論文で、遠隔転移があるステージ4の膵臓癌と診断された34人に、通常に化学療法だけ受けたグループと化学療法に週3回、1回75gの高濃度ビタミンC点滴をしたグループに1:1に割りつけして、生存期間を比較しました。すると、化学療法だけ受けたグループは全生存期間が中央値8.3カ月であったのに対して、高濃度ビタミンC点滴を受けたグループは16カ月と延長したのです。無増悪生存期間の中央値も3.9カ月から6.2カ月に延長していました。

また、2014年の卵巣がんに対するランダム化比較でも、標準化学療法(カルボプラチンとパクリタキセル)にアスコルビン酸を追加した場合、化学療法単独の場合よりも疾患進行までの期間の中央値が8.75か月長くなったとしています。同論文では高濃度ビタミンC点滴での化学療法の副作用も少なくなったことが言われていますね。

このように高濃度ビタミンC点滴は(がんに対する標準療法をちゃんと行うことが前提になりますが)がんに対する効果も小規模な臨床研究ながら言われています。

ただし、過信は禁物です。例えば、2024年に行われた前立腺がんに対するパイロット試験では、週1回の高容量ビタミンC点滴(1g/kg)併用によるPSA低下率や生存期間の改善は認められず、途中で無益性が判断され試験中止となりました。このように、がんの種類やステージによっても異なったり、高濃度ビタミンC点滴の品質などによっても異なる可能性があるので注意が必要ですね。

(参照:A randomized trial of pharmacological ascorbate, gemcitabine, and nab-paclitaxel for metastatic pancreatic cancer
(参照:High-dose intravenous vitamin C, a promising multi-targeting agent in the treatment of cancer
(参照:High-Dose Parenteral Ascorbate Enhanced Chemosensitivity of Ovarian Cancer and Reduced Toxicity of Chemotherapy
(参照:High-Dose Intravenous Vitamin C Combined with Docetaxel in Men with Metastatic Castration-Resistant Prostate Cancer: A Randomized Placebo-Controlled Phase II Trial

高濃度ビタミンC点滴で期待される効果とエビデンス②: 風邪や感染症に対する効果

では、ビタミンCに対する風邪や感染症に対する効果はどうなのでしょうか。

2013年にコクランでまとめた29件の比較試験、合計11,306名を対象にした研究内容の発表によると、ビタミンC補給による風邪予防の効果は3%減少にとどまり、有意な結果にはなりませんでした。(95%信頼区間:6%減~0%減)

一方、マラソン選手やスキーヤーなどの運動している方がビタミンC補給すると、ビタミンC補給により風邪をひく確率が52%減(95%信頼区間:65%~36%減)となり、大幅に風邪をひきにくくなっています。

さらに、31件の比較試験で「風邪がどれくらい長引くのか」を調べた研究によると、風邪の持続期間が8%(3%~12%)短縮し、小児では14%(7%~21%)短縮しています。

このように、ビタミンCを普段からとることは、少なくとも風邪症状に良い影響を与える可能性があることがわかりますね。

また、高濃度ビタミンC点滴では重症のウイルス感染症例に対する試験が小規模ながら行われています。例えば、2016年には25歳男性のインフルエンザ重症例に50gのビタミンC点滴を3日連続で投与したところ、著しい症状改善と早期回復が得られたと報告しています。

また、2020年に発表された、高濃度ビタミンC点滴の重症感染症(敗血症や肺炎など)に対する効果をみた論文によると、ビタミンC点滴(1日6~24g)の併用がウイルスによるサイトカインストームを抑え、死亡率やICU滞在期間を有意に減少させたとしています。

もちろん対象者が100名以下の小規模な研究が多いので、エビデンスレベルとしては、まだまだ不十分なところはありますが、高濃度ビタミンC点滴自体はもちろん安全性が高い治療なので、選択肢として考えてもよいかもしれませんね。

(参照:Vitamin C for preventing and treating the common cold
(参照:Vitamin C—An Adjunctive Therapy for Respiratory Infection, Sepsis and COVID-19
(参照:High Dose Vitamin C and Influenza: A Case Report

高濃度ビタミンC点滴で期待される効果とエビデンス③: 肌に対する効果

高濃度ビタミンC点滴は、美肌やアンチエイジング目的でもよく利用されますが、実際のエビデンスはどうなのでしょうか。

一般的にビタミンCの肌に対するさまざまな効果が知られています。例えば、次の通りです。

  • コラーゲン合成の促進: ビタミンCは皮膚の強度や弾力性に関わるコラーゲンの生成を刺激してうながす作用があります。
  • 紫外線による光ダメージを保護する作用: ビタミンCによる抗酸化作用から、紫外線によって引き起こされる皮膚のダメージを最小限にする作用があります。
  • 創傷治癒の促進: ビタミンCはコラーゲン合成を助けるため、傷の治りがよくなりやすいことがいわれています。
  • メラニン生成の抑制: シミやそばかすの原因となるメラニンの生成にかかわる「チロシンキナーゼ」の働きを抑えて、メラニンを作らせにくくします。
  • 抗炎症作用: 酸化ストレスを軽減することで、皮膚の炎症を抑える働きがあります。
  • しわ改善効果: コラーゲン生成促進や抗酸化作用により、しわの改善に寄与する可能性があります。

このように「ビタミンCは基本的に肌によい効果をもたらしやすい」というのは正しい。

では、高濃度ビタミンC点滴としてビタミンCを取り入れるのはどうか。結論からいうと「肌に良い効果をもたらす可能性が高いが、エビデンスレベルとしてはまだ低い」と言えます。

例えば、2008年の中国の症例報告では、難治性の肝斑患者に対しレーザー治療後、7gのビタミンC点滴を計3回(1回目と2回目は1週間間隔、3回目は5か月後)投与したところ、色素沈着が著明に改善し、その効果は治療後も持続したと報告しています。

著者らは、高濃度ビタミンC点滴がメラニン生成を抑制し、炎症後の色素沈着を改善する有用な手段になったのではないかとしていますね。

一方、2021年の系統的レビューでは静脈ビタミンCによるシミに対する報告は症例ベースに留まることが指摘されています。まだまだ検証の余地があるということです。

高濃度ビタミンC点滴はそれなりに値段もしますので、値段が許すならもちろん美容目的の高濃度ビタミンC点滴はオススメです。しかし、それ以上に普段からビタミンCを意識して、食事などからしっかり継続的にとることを心がけるとよいでしょう。

(参照:The Roles of Vitamin C in Skin Health
(参照:Intravenous vitamin C in the treatment of post-laser hyperpigmentation for melasma: A short report
(参照:The effect of Vitamin C on melanin pigmentation – A systematic review

高濃度ビタミンC点滴の適切な頻度は?

このように、さまざまな効果を期待して行われる高濃度ビタミンC点滴ですが、期待する効果によって適切な頻度が異なります。

例えば、がんに対する効果では、週に2~3回の頻回投与が高濃度を維持し効果を発揮するとされています。実際、前述の膵臓癌試験では週3回(計225g/週)の静脈投与が行われていますし、他の臨床試験でも週2~3回投与のプロトコルが採用されています。

がんの症状緩和目的の場合は、週1回程度で行われている臨床試験もあります。

一方、風邪やウイルス感染症に対する効果としては、普段からビタミンCをとる方が大切になるので、点滴として行うなら感染の流行期に週1回のビタミンC点滴を継続するくらいでよいのではないでしょうか。もちろん、予算に合わせて頻度を減らしても、もちろんかまいません。

あとは、インフルエンザ感染症の時に集中的に2-3日連続で点滴するという使われ方もしていますね。

また、肝斑に対する前述の試験で週1回の頻度で行われていたので、肌の効果を期待するなら週1回が基本にしてもよいでしょう。あとは、維持として月1回くらいで行うのもよいですね。

それ以上に肌や風邪予防については、普段からビタミンCを意識してとることが大切になってくると思います。

このように、目的によって全く頻度も異なってきます。「どんな目的で高濃度ビタミンCを点滴するのか」を考えて、ぜひご活用ください。

(参照:A randomized trial of pharmacological ascorbate, gemcitabine, and nab-paclitaxel for metastatic pancreatic cancer
(参照:Intravenous vitamin C in the treatment of post-laser hyperpigmentation for melasma: A short report
(参照:Vitamin C for preventing and treating the common cold

高濃度ビタミンC点滴の費用は?

高濃度ビタミンC点滴の費用は次の通りです。税抜き)。当院ではMylan社のビタミンC製剤を使用しています。

Mylan社のビタミンC製剤は米国薬局方(USP)USP-1079条項に基づいた温度管理をされており、最もナトリウム量が少なく、防腐剤無添加であり最も安全性が高いとされています。点滴療法研究会でも推奨されている製剤ですので、安心してご利用ください。

高濃度ビタミンC点滴(12.5g)1,2000円
高濃度ビタミンC点滴(12.5g:ペアの場合)2人で20,000円
高濃度ビタミン(25g)1回 19,000 円
高濃度ビタミン(25g)3回セット 48,000 円(1回あたり16,000円)
高濃度ビタミン(25g)5回セット 71,000 円(1回あたり14,200円)
  • 普段からがん予防を期待したい方
  • 風邪を普段から引きやすい方
  • 肌のシミやしわなどが気になる方

などはぜひ適宜ご活用ください。(下記ボタンからご予約いただけます)

高濃度ビタミンC点滴で事前に行う「G6PDスクリーニング検査」について

高濃度ビタミンC点滴は、さまざまな効果が期待できる治療ですが、1点注意点があります。それは「G6PD欠損症」があると重度の貧血が起こりうるということです。

「グルコース6リン酸脱水素酵素(G6PD)」という酵素が先天的に不足している体質の方は、酸化ストレスに対する耐性が低く、通常は問題にならない程度の酸化ストレスでも赤血球が壊れやすくなり、貧血を引き起こすことがあります。

すでにこの体質による貧血を発症している場合は、重度の貧血や肝機能障害の既往歴から判断できますし、そもそも体質は非常に珍しく、高濃度ビタミンCの点滴を受けても問題が起こらないケースもあります。

しかし、万全を期すために、当院では、安全に点滴を受けていただくため、初めて高濃度ビタミンC点滴を希望される方には、G6PD活性のスクリーニング検査を推奨しています。(他院ですでに受けている場合は、スタッフにお伝えください)

【この記事を書いた人】 
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。

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