- 「鏡を見るたびに、シミが濃くなっている気がする……」
- 「ニキビは治ったのに、茶色い跡だけがいつまでも消えない……」
そんな肌の悩み、誰にも相談できずに一人で抱え込んでいませんか?
「シミ」というと、つい「レーザー」を思い浮かべてしまいますが、実はそれよりももっと大切なことがあります。
それは「ふだんのスキンケア」です。
実はスキンケアは地道な努力ですが、最も大切。レーザーと併用する場合にも効果はまるで違ってくるのです。
今回、シミのケアで最も使われる成分である「ハイドロキノン」について、
- 肝斑やニキビあとに対する効果
- レチノールやトレチノインの併用や具体的な使い方
- ハイドロキノンで気をつけなければいけない副作用
について、わかりやすく解説していきます。
Table of Contents
ハイドロキノンとは?

ハイドロキノンとは現在においてもシミ治療における「ゴールドスタンダード」といっていい治療薬の1つです。
では、具体的に何がそれほどすごいのか。 その秘密は、シミができるプロセスを分子レベルで遮断する「二重のブロック機能」にあります。
① メラニンを作らせなくする作用
私たちの肌には「メラノサイト」という細胞があり、ここでシミのもとになる「メラニン」が作られています。ハイドロキノンは、この工場の中で働く「チロシナーゼ」という酵素の働きを強力にブロックする働きがあるのです。
ハイドロキノンは酵素の活性部位にあるヒスチジン残基と相互作用し、本来の原料である「チロシン」と場所取り合戦(競合)を行います。そして、チロシンが酸化してドーパ(DOPA)、さらにドーパキノンへと変化する反応を可逆的に阻害するのです。
簡単にいうと、シミを作る工場の生産ラインの電源を強制的にオフにするようなものですね。新規のメラニン生成を根本から防ぎます。
② メラニンを作る細胞をなくす作用
さらに驚くべきは、ハイドロキノンには「メラニンを作る細胞(メラノサイト)にダメージを与える作用」があることですね。
これは、ハイドロキノンの代謝産物が細胞内で活性酸素種(ROS)を生成し、メラノソームの膜構造にダメージを与えて分解を促進します。
また、メラノサイトのDNAおよびRNA合成を阻害することで、過剰に活性化したメラノサイトの増殖を抑制し、細胞死を誘導する可能性も示唆されています。
簡単にいうと、シミの製造を止めるだけでなく、シミの原因となる細胞そのものの数を減らします。
このダブルの効果があるので、他の美白剤とは一線を画す高い効果が期待できるのです。
ハイドロキノンの肝斑の効果は?

肝斑は女性の代表的なシミの1つですが、強い刺激で治療すると反応して逆に濃くなったりするので、治療がなかなか難しいのが特徴です。左右対称で境界がはっきりしないシミで、30代以降の女性によく出現します。
そんな肝斑でもハイドロキノンが良好な結果を残しています。
例えば、2013年にインドで発表された、顔に肝斑を持つ患者60名を対象に、「4%ハイドロキノン」と、美白成分として有名な「0.75%コウジ酸(+ビタミンC)」の効果を12週間にわたって比較した臨床試験です。
治療を始めてわずか1ヶ月(4週間)の時点で、ハイドロキノンは驚くべき立ち上がりの良さを見せました。
- ハイドロキノン群: 肝斑の重症度スコア(MASIスコア)が、平均で「3.433」減少しました。
- コウジ酸群: 一方、同じ期間で、スコアの減少はわずか「0.630」にとどまっています。
統計学的にも、ハイドロキノンの方が有意に(P<0.001)改善のスピードが速いことが証明されています。さらに、3カ月継続すると、その差は歴然としています。
- ハイドロキノン群: MASIスコアの総減少量は平均「11.423」に達しました。
- コウジ酸群: 総減少量は平均「2.403」でした。
こう見ると、ハイドロキノンだけでもかなり肝斑のシミは薄くなることがわかります。もちろんハイドロキノンだけで完全にはなくなるわけではないことが多いので、
- レチノールやトレチノインなどと組み合わせる(【シミ治療薬】トレチノインの効果や使い方・ハイドロキノンとの併用療法について解説もご参照ください)
- トランサミンを内服する(トランサミン(トラネキサム酸)の喉や美白への効果や副作用・授乳中・小児への適応についても参照してください。)
- ピコトーニングなどのレーザー治療を組み合わせる(ピコトーニングの効果と施術間隔について【一之江・シミ・肝斑】)
といった併用療法も考えてよいと思いますね。
ハイドロキノンはレチノールと相性がいい

ハイドロキノンはシミを抑える効果としては非常に強力ですが、ターンオーバーをうながして肌を再生する力はありません。そこで組み合わせるのにオススメなのが、 「レチノール製剤」です。
レチノールは「ビタミンA」の1種ですが、肌に塗ると細胞の中で形を変え、「レチノイン酸(トレチノイン)」という活性型に変換されることで、以下のような効果を発揮します。
- シミのもとを追い出す(ターンオーバーの促進):レチノールは、表皮の細胞分裂を促し、肌の生まれ変わり(ターンオーバー)を加速させます 。 これにより、メラニンをたっぷり含んだ古い角質が肌の表面から剥がれ落ちるのを助け、シミや肌のくすみを改善します。ハイドロキノンと一緒に使うと効果的なのは、ハイドロキノンが「作らせない」のに対し、レチノールが「追い出す」役割を担うからです。
- シワ・たるみを改善する(コラーゲン産生):肌の奥にある真皮層の「線維芽細胞」を刺激し、若々しい肌に欠かせない「コラーゲン(I型およびIII型)」を作るように指令を出します 。 これにより、肌の弾力が増し、光老化による小ジワやたるみを改善します。
後述するトレチノインも効果的ですが、レチノールの一番よい点は「ずっと使い続けられる点」ですね。最初から強力な「トレチノイン(処方薬)」を塗るのと違って、肌の中でゆっくりと変換されるため、急激な炎症(赤みや皮むけ)が起きにくいのです。そのため、長期間使い続けることができ、結果的にしっかりとしたアンチエイジング効果(シワ改善など)を得やすいのですね。
実際、ハイドロキノンとレチノールの併用療法は臨床試験でも確認されています。
例えば、2016年のFitzpatrickスキンタイプIII-VI(日本人を含む標準肌~色黒肌)の患者31名を対象とした24週間(約半年)の長期臨床試験データによると、段階的に次のように肌が改善することがいわれています。
- 【4週目(早期)】早くも色素沈着の強度やMASIスコア(肝斑のスコア)において統計的な改善が認められました。
- 【8週目(中期)】 シミだけでなく、「微細なシワ」「皮膚のたるみ」「肌のきめ(テクスチャー)」においても有意な改善が追加されました。
- 【18週目(長期)】 治療が困難とされる「深いシワ」においても有意な減少が確認されました。
24週間の治療終了時には、肝斑の重症度(MASIスコア)は平均して「51%~75%の改善」を達成しましおり、 さらに、被験者の75%以上が、評価された11項目の肌パラメータ(シミ、シワ、キメ、輝きなど)のうち、10項目で改善を示しています。まさに驚異的な数字です。
このように、「長くかかっても安全にシミ治療を継続して行いたい」なら、ハイドロキノンとレチノールの併用療法は非常にオススメできますね。
ただし、レチノールは使い始めに、肌がカサカサしたり、少し赤くなったりすることがあります。 これは副作用というよりは、急激に肌の代謝が良くなっている証拠で、「レチノイド反応(A反応)」と呼ばれるものです。
多くの研究では、使い始めて2〜4週目がピークで、肌が慣れる(順化)につれて8週目頃には自然に落ち着くことが分かっていますが、お肌には個人差がありますので、1人1人の肌をみて適切な治療法を提案いたします。
ハイドロキノンとトレチノインの併用療法について

レチノールは肌の中でトレチノインに変化して、さまざまな効果を促します。「それなら最初から活性化されたトレチノインを使えばいいのではないか?」と考えるのが普通ですよね。
実際その通りで、ハイドロキノンにトレチノインを組み合わせると、シミを消すスピードを早めることが、多くの臨床試験で証明されています。
例えば、ハイドロキノン4%+トレチノイン0.05%+フルオシノロンアセトニド0.01%のトリプル製剤を使用した例によると、8週間使用した時点で以下のようなデータがでています。
【75%改善した人の割合】
- トリプル製剤:73%の方が、治療開始から8週間で「75%以上の改善(ほぼ気にならないレベル)」を実感しています。
- ハイドロキノン単体:同じ期間で75%以上改善したのは49%に留まりました。
【肝斑の重症度(MASIスコア)の減少】
- 8週間後: スコアが平均で約71%減少。
- 20週間後: スコアが平均で約82%減少。
こう見てみると、「最初の2ヶ月(8週間)」で多くが改善することが分かります。これが、医師が「まずは2ヶ月頑張りましょう」と指導する根拠にもなっています。
ただし、トレチノインはレチノールよりも非常に副作用が出る薬でもあります。具体的には、次の通りですね。
- 赤み(紅斑): 約36% ~ 61% の方に現れます。
- 皮むけ(落屑): 約33% ~ 50% の方に現れます。
- ヒリヒリ感(灼熱感): 約16% ~ 50% の方に現れます。
しかも、ステロイドを併用する場合は皮膚が薄くなったり、血管が浮きでたりするリスクもあります。そのため、トレチノインは短期で一気にせめて、その後「最初の2~3ヶ月で一気に攻めて、その後はマイルドな治療(ハイドロキノン単体や他の美白剤)に切り替える」「休薬期間を必ず設けて慎重に使う」などの対策が必要です。
(参照:A comparison of triple combination cream and hydroquinone 4% cream for the treatment of moderate to severe facial melasma)
(参照:The Role of Triple Combination Topical Agents in the Treatment of Facial Melasma)
ハイドロキノンの使い方は?

ハイドロキノンは非常に強力な美白剤ですが、その効果を最大限に引き出し、トラブルを避けるためには「正しい使い方」と「休む勇気」が必要です。以下の手順を守ってご使用ください。
① 使用開始のタイミング(施術を受けられた場合)
レーザーやシミ取り施術を受けた直後の肌はデリケートです。
- 基本ルール: 施術による「赤み」や「ひりつき」が完全に落ち着いてから使用を開始してください。
- 判断に迷う場合: ご自身で判断がつかない場合は、念のため「施術から1週間」空けてから使用を開始してください。
- 初めての方: 肌に合うか不安な場合は、二の腕の内側など目立ちにくい場所でパッチテストを行ってから顔への使用を始めてください。
② 日々の使用手順(朝・夜のルール)
【塗る順番】
基本的には洗顔 ➡化粧水・乳液などのスキンケア ➡ハイドロキノン(気になる部分のみ)の順番になります。(レチノールを併用される場合には、レチノールはハイドロキノンの後になります。)
【使用頻度について】
処方されたサイズやライフスタイルによって推奨頻度が異なります。
- 基本(夜のみ):紫外線と反応しやすいため、基本的には「夜のスキンケアの最後」に使用し、朝の使用はお控えください。
- ガウディスキンの60gサイズをご購入の方(朝・夜):大容量(60g)を使用される場合、「日中の紫外線対策(日焼け止め)」を徹底できる方に限り、朝・夜の1日2回使用が可能です。
- 注意: 朝使用した場合は、必ずSPF30以上の日焼け止めを塗り、塗り直しなどの対策を徹底してください。
③ 治療のサイクル(3〜5ヶ月の継続と休薬)
ハイドロキノンは「ずっと使い続ける薬」ではありません。効果が頭打ちになったり、副作用を防ぐために、以下のサイクルを守ってください。
- 治療期(ON):3〜5ヶ月。まずはこの期間、しっかりと継続してください。シミ、色素沈着、肝斑の色調改善が期待できます。
- 休薬期(OFF):3〜5ヶ月連続で使用したら、必ず2〜3ヶ月の使用中止期間(肌を休ませる期間)を設けてください。
- 休薬中のケア: 色素沈着の戻りを防ぐため、コウジ酸やアゼライン酸など、ハイドロキノン以外の美白剤への切り替えをおすすめします。
④ 保管と使用期限の注意
- 酸化に注意: ハイドロキノンは空気に触れると酸化しやすい成分です。茶色く変色してしまったものは効果が落ち、肌への刺激になるため使用しないでください。
- 冷暗所保存: 開封後はしっかりと蓋を閉め、冷蔵庫などの冷暗所で保管し、早めに使い切るようにしてください。
ハイドロキノンで赤くなる確率はどれくらい?

どんな薬も副作用がつきもの、その1つが「赤み」です。ハイドロキノン単剤でも、レチノールを併用した場合でも「赤み」が出ることがあります。しかし、それぞれの「赤み」は対処法も異なります。
レチノール併用による赤み(レチノイド反応)
レチノールを併用する場合、治療初期に赤みが出る確率は低くありませんが、一時的なものですね。
研究によると、赤み(紅斑)スコアは治療開始2~4週目でピークを迎えますが、肌が慣れる(順化)につれて自然に治まります。
あるデータでは、紅斑スコアがベースラインの「2.3」から、12週目には「1.2」へと約半減していることが報告されています。
そのため、レチノールによる赤みの場合には、「根気よく続ける」ことで、徐々に薄まっていくと思われます。
ハイドロキノン単独による副作用
一方、ハイドロキノン単独の使用であれば「赤み」がでる確率は非常に低いです。
前述の比較試験では、4%ハイドロキノンを使用した30名のうち、副作用(紅斑・ヒリヒリ感)を訴えたのはわずか2名(6.7%)でした。しかも、その症状は軽度であり、治療の中断には至っていません。
つまり、9割以上の方は大きなトラブルなく使用できていることになります。
ただし、重篤なアレルギー反応などで治療を中止せざるを得ないケースも約1%程度存在するため、異変を感じたらすぐに医師に相談してください。
ハイドロキノンの副反応は?
ハイドロキノンは以下の副反応が見られることがあります。
① 肌の赤みや炎症
ハイドロキノンで治療をはじめる時に、皮膚の赤みやヒリつく感じがあることも。これはハイドロキノンがもつ色素脱失作用で引き起こされる炎症です。治療を続けると、肌が慣れてきて自然と収まる場合もあります。少量にしてみたり、回数を減らすのも効果的ですね。
しかし、赤みや痛みが強い場合は使用を中止し、氷や保冷剤を用いて患部を冷やすようにしましょう。またその際にはぜひ再度ご相談ください。
② 白斑(肌が白くなりすぎる)
ハイドロキノンは「肌の漂白剤」。メラニン色素を作る「メラノサイト」の数を抑える働きがあります。そのため、長期間続けると「白斑」といって肌が白くなりすぎることもあります。
ただし、濃度5%以上のハイドロキノンで発現し、当院で扱っている4%程度のハイドロキノンでしたら白斑の可能性はほとんどありません。ただし、長期間使用した場合可能性が高くなりますので、気になる方は6か月くらいを目途に一度中止するようにしましょう。
白斑については、ステロイドの塗り薬や光線療法などが有効な場合があります。白斑になった場合もぜひ医師に相談してみてください。
③ 色素沈着
また、非常にまれにハイドロキノンにより灰青色に変色することがあります。これは体の広い範囲にハイドロキノンを長期間した場合にみられる現象です。用法容量を守って、正しく使うのが大切ですね。
他にも接触性皮膚炎や乾皮症・アレルギー反応などが生じる場合があります。
ハイドロキノンの費用は?

当院では、ガウディスキン社のハイドロキノン製剤を主に使用しています。
具体的な料金は次の通りです。
| HQクリアミニチューブ(5g) | 1,485 円 |
| HQクリア(60g) | 9,900 円 |
スポットでまず試してみたい場合はミニチューブから、全顔のくすみ・シミをなくしていきたい方はHQクリアがオススメとなります。
シミや肌の状態に応じて、医師・スタッフがおススメする製品を使い分けるようにしています。もしご希望の製品などありましたら、事前にお知らせください。
ハイドロキノンの効果や安全性を高めるために大切なことは?

① クリニックで処方されるものを使用する
ハイドロキノンは市販薬や海外で個人輸入できるものもあります。ただし、安全性や効果が十分検証されていないもの、高濃度すぎて発がん性が懸念されるものなどがあり、安易に個人輸入で済ませてしまうのは危険です。(安全性の調査に関する報告はこちら)
またクリニックで処方されていると、処方されているものに関しては自費診療であれ医師の責任が伴います。一方、クリニックで処方しておらず個人輸入されている方は、肌トラブルに関しては自分の責任になってしまいます。
そのためハイドロキノンも使い方に注意が必要な薬であり、クリニックで処方されるものを使いましょう。
② 用法・用量を適切に守る
ハイドロキノンは強力にシミに作用する塗り薬の1つです。ただし前述した通り、広範囲につけすぎたり、長期間つけすぎたりすると、色素沈着や白斑症などの副反応の可能性が高くなります。
そのため必ず用法・用量を守り、シミが気になる箇所にスポットとして使用するようにしましょう。
安全性を確保するなら、1個のシミについては半年程度の使用にとどめ、休薬期間を設けてから再開するようにするとよいですね。
③ 日焼け対策を徹底する
ハイドロキノンを使用される際には、日焼け対策はかかせません。前述の通り、本来シミはメラニン色素を作り日光から防御するために必要としてつくられるもの。
ハイドロキノンでメラニン色素が作られるのを抑えているため、日光に対して防御が弱くなってしまいます。そのため、ハイドロキノンを塗っている箇所・塗っている間は必ず日焼け対策を徹底し、日焼け止めクリームとセットでつけるようにしましょう。(特に朝使用される場合)
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【この記事を書いた人】
一之江駅前ひまわり医院の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。

















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