こんにちは、一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介です。
- 健康診断で指摘されても管理が難しい「尿酸値」
- 一度起こると忘れられないほど激痛が走る「痛風」
どちらの疾患も生活習慣の見直しが大変重要ですが、「どう生活習慣を変えればよいかわからない」という方は多いのではないでしょうか。
今回、尿酸値や痛風予防にオススメな牛乳や乳製品の効果を、いつ飲むかや豆乳に代替えできるかなど含めて、解説していきます。なお
- 尿酸値の概論については尿酸値を下げるには?尿酸値の原因や基準・食べ物について
- 痛風については痛風を早く治すには?痛風の原因や治療・食事について
- 痛風や尿酸値とコーヒーについては痛風・尿酸値とコーヒーの「意外な」関係について【砂糖はOK?何杯まで?】
をそれぞれ参照してください。
Table of Contents
尿酸値への牛乳・乳製品の効果は?
日系ブラジル人1330人を対象とした尿酸値と乳製品の関係についての論文では、乳製品を摂取量に応じて3グループに分けて、高尿酸血症(女性が6mg/dl以上、男性7mg/dl以上)の有無を解析しています。
その結果によると「最も乳製品を摂取しているグループは摂取していないグループよりも34%高尿酸血症になりにくい」ということがわかっています。(95%信頼区間:53%-6%減少)
しかも、高尿酸血症の薬を服用していない方だけを抽出しても、その結果は変わらなかったということです。
このことから、「尿酸を予防するには、牛乳をはじめとした乳製品の摂取は有用である」ということが言えるでしょう。(参照:Hyperuricemia and associated factors: a cross-sectional study of Japanese-BraziliansCad Saude Publica. 2011 Feb;27(2):369-78.)
痛風予防への牛乳・乳製品の効果は?
では、牛乳や乳製品では、痛風は予防されるのでしょうか。答えは「乳製品の摂取により予防される傾向にある」です。複数の論文をまとめた解析結果によると、乳製品をよく摂っていた方は、そうでない方に比べて痛風の発生率が全体として25%減少していました。
ただし、95%信頼区間は58%減少~32%の上昇なので、絶対に痛風予防に効果的かははっきりしません。しかし、トレンドとしては減少傾向なのは確かなので、痛風予防に効果的な可能性が高い・・・くらいにはいえるでしょう。
(参照:Dietary factors and risk of gout and hyperuricemia: a meta-analysis and systematic review. Asia Pac J Clin Nutr. 2018;27(6):1344-1356.)
牛乳や乳製品は尿酸を排泄する作用がある
では、なぜ尿酸値の改善に乳製品がよいとされているのでしょうか。乳製品が尿酸改善に効果的なメカニズムは次の通りです。
- 牛乳や乳製品には、カゼインというたんぱく質が含まれています。
- カゼインは胃腸で分解され、カゼインがアラニンに変化します。
- アラニンの働きで尿酸が排泄されやすくなります。
このアラニンによる尿酸排泄促進作用により、血中の尿酸値を下げているのです。(参照:Association between dairy product consumption and hyperuricemia in an elderly population with metabolic syndrome)
尿酸値や痛風予防にどれくらい牛乳をとればよい?その種類は?
先の解析結果に含まれていた2004年の論文によると、1日に240ml以上の牛乳を飲むと1か月に1杯未満の男性と比較して、痛風発作の頻度が46%減少していたと報告しています(95%信頼区間:60%減少~27%減少)
ということは、牛乳でとるなら「1日1杯以上が目安」ということになりますね。
低脂肪ヨーグルトの摂取も同論文では有用で、1週間に2杯(480ml)を摂取されている方は1か月に1杯未満の方に比べて27%減少していたとしています。(95%信頼区間:60%減少~27%減少)
ちなみに他の乳製品で有用なものはありませんでしたので、ご注意ください。
(参照:Purine-Rich Foods, Dairy and Protein Intake, and the Risk of Gout in Men)
尿酸値改善に牛乳はいつ飲む?
尿酸値改善という目的でしたら、いつ飲んでも構いません。(少なくとも摂取時期によって尿酸値の低下率が変わったとする報告はありません)
しかし、尿酸値改善には適度な運動や適度な睡眠はとても大切。
ダイエットや運動目的でしたら、運動終了直後に牛乳を摂取した方がよいと思いますし、毎朝牛乳を習慣的に飲むことにより、睡眠が改善される可能性があるとする報告もあります。
ご自身のライフスタイルに合わせて、定期的に摂取するとよいですね。(ただし、牛乳で下痢がしやすいなどの方は、無理しないで他の方法で尿酸を下げていきましょう。)
(参照:一般社団法人Jミルク 牛乳が分かるQ&A)
尿酸値改善や痛風予防に豆乳は効果的?
では、牛乳と見た目はにている「豆乳」は同じように尿酸値改善に役立つのでしょうか。
残念ながら、豆乳で尿酸値は改善されるといった報告はありません。尿酸の排泄をうながす「カゼイン」は牛乳に含まれる動物性たんぱく質です。豆乳は大豆、つまり植物由来なので「カゼイン」は含まれていません。
さらに、牛乳やヨーグルトのプリン体は0〜5.2mg/100gと少ないのに対し、豆乳は22.0mg/100gのプリン体を含んでいます。ダイエット目的で豆乳を好む方もいますが、尿酸低下を目的にするなら、牛乳や乳製品の方がよいでしょう。
尿酸値や痛風予防と牛乳・乳製品の関係についてのまとめ
いかがでしたか?尿酸値・痛風予防に対する牛乳・乳製品の効果についてまとめていきました。まとめると
- 尿酸値改善に牛乳や乳製品は効果的といえる
- 乳製品や牛乳や痛風を予防する可能性が高いが、絶対とはいえない
- 乳製品や牛乳が尿酸値を下げるメカニズムとしては、牛乳に含まれる「カゼイン」が胃腸で「アラニン」に変化し、尿酸を排泄させやすくするためだと考えられている
- 牛乳は基本1日1杯以上、いつ飲んでも問題ないためライフスタイルに合わせて定期的にとりいれよう
- 豆乳や牛乳と似ているが、豆乳では尿酸を低下するといった報告はない
といえます。ひまわり医院では、尿酸や生活習慣病に関する相談も個別に受け付けております。ぜひお気軽にご相談ください。
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【この記事を書いた人】
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