新型コロナ「オミクロン株」 での後遺症の割合や症状・期間について【BA.5株】

日本で新型コロナオミクロン株「BA.5株」が世界でも高いレベルで広がりました。その中で、新型コロナにかかった後でも症状が長引いている「罹患後症状」「後遺症」の方も増えてきています。

以前、新型コロナの後遺症について別稿新型コロナ感染症の後遺症について【割合・咳・脱毛・倦怠感】で紹介しましたが、オミクロン株になってからは後遺症はどのように変わってきているのでしょうか。

今回は、オミクロン株以降の後遺症の割合や症状の内訳・持続期間などの特徴について解説していきます。

新型コロナ「オミクロン株」の後遺症の割合は?

(Lancet誌によるオミクロン株とデルタ株による後遺症割合の比較。例えば、すべての年齢でワクチンを打ってから6か月以上たった症例では、オミクロン株の後遺症発現率はデルタ株の0.26倍、3-6か月たった症例では0.24倍、3か月未満の症では0.5倍となっている。いずれの時期でもデルタ株よりは後遺症発現率は低い)

2022年6月のイギリスからの報告によると「オミクロン株による後遺症は56,003人中4.5%の確率(2,501人で後遺症が出現する」とされています。(ここでの「後遺症」は「発症されてから4週間以上に新たな症状か進行中の症状があるもの」として定義しています)

デルタ株と比較すると、デルタ株のケースでは41,361 人中 4,469 人 (10.8%) が後遺症になるとされていますので、オミクロン株になってからは後遺症になる確率は減少したといえますね。

同研究では、ワクチンのタイミングや年齢でデルタ株と比べて割合が低くなっているかを確認していますが、オミクロン株ではワクチンの接種タイミングやすべての年齢層でデルタ株よりも後遺症発現率が低くなっているので、オミクロン株はウイルスの性質として後遺症が出にくい株になっていると考えてよいでしょう。

さらに、イギリスでは追加研究では、「ワクチン3回接種群で比較するとデルタ株とオミクロン株では同じ4~5%で収まるものの、2回目接種群で比較するとデルタ株では9.2%、オミクロン株で4.0%と大幅に減少している」としています。

このことから「ワクチンをしばらく打っていないから後遺症になるのではなりやすいのではないか」と心配される方もいますが、現時点では接種時期と後遺症発現率は関係なさそうです。

ただし、以下の点には注意が必要です。

  • 日本で9月現在流行している、新型コロナ「BA.5株」に関する後遺症のデータはまだ十分ではなく、後遺症発現率が高くなる可能性があること。
  • 後遺症発現率「5%」(20人に1人)というのは、デルタ株と比較すると少なくなっているものの、決して少ない数字ではないこと。

そのため現在多くの新型コロナの方を診ていますが、軽症で特に後遺症も残らなかった方には「後遺症も残らなくてよかったね」と安堵していますし、後遺症として受診される方も多くいらっしゃいます。(感染者絶対数が多いため)

(参照:Risk of long COVID associated with delta versus omicron variants of SARS-CoV-2 The Lancet VOLUME 399, ISSUE 10343, P2263-2264, JUNE 18, 2022
(参照:Self-reported long COVID after infection with the Omicron variant in the UK: 18 July 2022

オミクロン株による後遺症の主な症状は?

(第99回 東京都新型コロナウイルス感染症モニタリング会議資料より転載:オミクロン株119例とデルタ株230例により後遺症の症状の内訳)

東京都で都立病院の外来を受診した新型コロナ後遺症患者の症例119例を解析したデータによると

オミクロン株での後遺症の主な症状は「倦怠感(46%)、咳(22%)、頭痛(18%)、息切れ(10%)、嗅覚障害(10%)、味覚障害(8%)、関節痛(6%)、不眠(6%)」と順となっています。他には集中力低下や動悸、記憶障害、腹痛、筋肉痛、抑うつ、喀痰、発熱、めまい、咽頭痛、疲れやすさなどを訴えられる方もいます。

7月20日までに受診したケースなので、オミクロン「BA.5株」の症例も含まれている可能性がありますね。オミクロン株の後遺症をデルタ株と比較すると、「倦怠感(6%上昇)」と「咳(8%上昇)」を訴えられる方が多くなり「息切れ、嗅覚障害、味覚障害」の頻度は減少しているのが特徴です。

(参照:(第99回)東京都新型コロナウイルス感染症モニタリング会議資料(令和4年8月25日)

オミクロン株の後遺症の持続期間は?

(第99回 東京都新型コロナウイルス感染症モニタリング会議資料より転載)

東京都の調査によると、新型コロナの発症から直近の受診日までの期間が異なるものの、70%の方が直近受診日において症状が継続されています。それぞれの時期の改善率は次の通りです。

  • 後遺症発症から直近受診日が2~3か月の方:改善された方が46%(6人/13人)
  • 後遺症発症から直近受診日が3~4か月の方:改善された方が21%(3人/14人)
  • 後遺症発症から直近受診日が4~5か月の方:改善された方が15%(3人/20人)
  • 後遺症発症から直近受診日が5~6か月の方:改善された方が36%(4人/11人)

ここから見ると、発症から3か月未満では半数の方が改善している一方で、それ以降の方は全体的に症状継続される方が多くなっています。

また発症時期についてはコロナ発症から1か月未満で症状が出現されている方が82%(92/112)いる一方、発症から1か月以上経過後に後遺症が出現している方も18%(20/112)いるので、新型コロナはかなり長期的な影響を起こしやすいウイルスだと改めて実感します。

ただし、特に持続期間に関する分析は、症例数が58例の内訳ですので、より症例数の多い解析が必要ですね。

(参照:(第99回)東京都新型コロナウイルス感染症モニタリング会議資料(令和4年8月25日)

オミクロン株の後遺症に関するまとめ

いかがでしたか?オミクロン株の後遺症について解説していきました。まとめると

  • オミクロン株はデルタ株よりも後遺症発現率は低い傾向にあるものの、5%程度と長期にわたって影響を与えやすいウイルス。ワクチンの接種時期との因果関係はまだ示されていない。
  • オミクロン株のよる後遺症として代表的なものは、倦怠感・咳・頭痛・息切れなど。特にオミクロン株以降になってからは倦怠感や咳の割合が増えている。
  • オミクロン株でも発症から3か月以内の方は約半数が改善しているものの、その後は改善率が低下する傾向にある。
  • オミクロン株の後遺症(罹患後症状)は発症してから1か月以内に受診されるケースがほとんどだが、1か月たってから受診されるケースもある。

といえます。オミクロン株になり後遺症発現率が低下しているとは言え、感染者数が増加しているので、後遺症患者の絶対数は多くなっています。咳や倦怠感などに対する症状の詳細は、別稿新型コロナ感染症の後遺症について【割合・咳・脱毛・倦怠感】で紹介していますので、合わせてご参照ください。

当院でも後遺症に関するご相談は受け付けております。後遺症でお悩みの方はお辛い思いをされていると思いますので、どうぞご相談ください。

【この記事を書いた人】 
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。かかりつけ医として、新型コロナの診療も含めて幅広く診療しております。プロフィールはこちらを参照してください。

新型コロナに関する他の話題は「ひまわり医院の新型コロナウイルスに関するコラム一覧」からご覧ください

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