オミクロン変異株「BA5株」の特徴について【症状・重症化・潜伏期間】

主に1月から急上昇し、変異を繰り返しながら日本でも感染者を出し続けている「オミクロン株」。

以前はオミクロン「BA.2株」が流行していましたが、東京都では7月中旬から「BA.5株」が主流になりました。また、アメリカやイギリスでもすでに主流株になっており、BA.4株/BA.5株は今や世界中に広がった変異株といえるでしょう。

そんなBA.5株は一体どんな特徴があるのでしょうか。現時点でわかっているオミクロン変異株「BA.5株」の感染力や主な症状の特徴・重症化・ワクチンの有効性などについて解説していきます。

第8波の主要株候補の1つである「BQ.1株」「BA.2.75株」については、それぞれこちらを参照してください。

オミクロン変異株「BA.5株」とは?

オミクロン変異株「BA.5株」とは、日本を含む世界中で流行しているオミクロン株の変異株の1つです。

新型コロナウイルスは、遺伝情報を変化させた「変異株」が短期間で数多く出現してきているのが特徴です。これまで武漢株からはじまり、アルファ株・ベータ株・デルタ株・そして1月流行したオミクロン株「BA.1株」など、様々な変異株が生まれました。

BA.5株も南アフリカで発生した変異株で、遺伝子的にBA.2に近い変異株と考えられています。BA.2との違いは、BA.4・BA.5株は69/70欠失、L452R変異、F486V変異があること。これらの遺伝子変異からBA.5株では感染力がより高く、従来の免疫システムから回避しやすいと考えられています。

世界保健機関(WHO)でも今年3月から「BA.5株」を監視対象に追加している、「世界で注目されている変異株」の1つであり、日本でも2022年夏の「主流株」となりました。

(参照:WHO「Tracking SARS-CoV-2 variants」)

BA.5株の特徴をまとめると?

BA.5株と従来のオミクロン株との感染力・潜伏期間・症状の特徴・症状の持続期間・重症化率・ワクチンの有効性・治療薬の有効性をまとめた表
(さまざまな論文からまとめた特徴:詳細は各項目を参照のこと)

では、2022年夏に主流株となったBA.5株ですが、一体どんな変異株なのでしょうか。まずBA.5株についてこれまでわかっていることをもとに、先に結論を出すと次のようになります。

  • BA.5株の感染力:BA.2株の1.4倍
  • BA.5株の潜伏期間:茨城県の調査ではBA.5株の潜伏期間は平均2.4日としています。
  • BA.5株の主な症状倦怠感(76%)、咳(58%)、発熱(58%)など。BA.1株/BA.2株よりも症状の発現率が多く、「鼻水」を伴う率が高くなっています。
  • BA.5株の症状が続く期間:フランスの報告では平均7日間とされており、従来のオミクロン株(4日)より長いことが特徴とされています。
  • BA.5株の重症化率:BA.1株/BA.2株と同じくらいと推定(感染拡大した時期のワクチンの接種率の違いから0.8倍程度になると予想されています)60歳未満の重症化率は高くないものの、60歳以上ですと重症化率は「2.49%」になるので、注意が必要ですね。
  • BA.5株のウイルスの性質:BA.2株よりも下気道・肺で増殖しやすい(BA.1株/BA,.2株は上気道)
  • BA.5株の再感染率:以前新型コロナ感染しても再感染しやすい(BA.2株はごくまれと報告)
  • BA.5株のワクチンの有効性:BA.5株によるワクチンの予防効果は従来のオミクロン株よりも低下。3回目接種2週間後の発症予防効果では48.5%(22.3-71.5%)と考えられている。
  • BA.5株の治療薬の有効性「ゼビュティ®」など中和抗体薬の効果が低い。ラゲブリオ®、パピロキッド®の有効性は変わらず。

それぞれ、詳しく知りたい方は該当ページを参照していただけたら幸いです。(適宜アップデートします)

オミクロン変異株「BA.5株」の主な症状は?

フランス保健機関である「SantéPubliqueFrance」によるBA.1株とBA.4/BA.5株の症状の発現の違い

フランス保健機関である「SantéPubliqueFrance」によると、BA.4/BA.5株による代表的な症状は、倦怠感(76%)、咳(58%)、発熱(58%)、頭痛(52%)、鼻水(51%)、筋肉痛(41%)、喉の痛み(40%)と報告されています。味覚嗅覚障害もそれぞれ17%出現しており、BA.4株・BA.5株ではBA.1株よりも全体的な症状の出方は強くなっていますね。特に鼻水の頻度はBA.1株の約2倍であり、第6波の症状とは少し異なります。

さらに、フランスでの報告では、臨床症状の持続期間はBA.4株・BA.5株の症例では平均7日間ほど続いているとされています(他のオミクロン株の平均持続期間は4日間)

またイギリスでは、スマートフォンアプリを介して何十万人もの方が症状を自己申告して解析した「Zoe COVID Symptom Study」が行われています。イギリスでは7月24日時点でBA.4株とBA.5株が90%以上を占めている状態です。そのデータによると、新型コロナに罹患された方の主な症状は次の通りでした。(7月28日時点)

  • 喉の痛み:59%
  • 頭痛:49%
  • から咳:43%
  • 鼻づまり:42%
  • くしゃみ:40%
  • 嗄声(声がれ):39%
  • くしゃみ:32%
  • 疲労感:30%
  • 筋肉痛:24%
  • めまい:19%

ただし前述のとおり、BA.5株は他のオミクロン株と違って「下気道で増殖しやすい性質」を獲得しています。そのため、初期症状がたとえ「鼻水」や「喉の痛み」のような軽微なものだったとしても、あまり軽視できるものではないでしょう

当院でも日々新型コロナの診療も行っておりますが、最近の外来診療において個人的には以下の印象を持ちます。(実際に当院でも統計を取っております)

  • 症状として多彩な症状を呈するようになってきた:BA.5株では「頭痛」と「発熱」のみの方や、鼻水・鼻づまりと微熱・筋肉痛が続く方など、様々なタイプの症状を呈する患者さんが増えてきている印象です。なかなか統一した症状で区分けするのは難しそうですね。「これがコロナ?」と思うくらい軽い方もいれば、基礎疾患がなくても高熱と関節痛などでうなされてやっとの思いで来院された方もいます。
  • 全体として症状自体は長くなっている: 当院では、自宅療養してても症状がコントロールできるよう、あらかじめ少し多めに処方いたします。そして検査後3日目を時点に電話で確認するようにしています。実際BA.2株の時期に3日後に電話再診をしてもほとんどの方が薬を送る必要がないほど回復していました。ただし、BA.5株になってからは、後から処方を送る率が高くなってきています。(30-40%ほど)

各症状と新型コロナの鑑別点などについてはそれぞれ

もあわせてご参照ください。

(参照:Omicron Variant: What You Need to Know. Updated Mar. 29, 2022)
(参照:Covid-19: Symptomatic infection with omicron variant is milder and shorter than with delta, study reports
(参照:Zoe Health Study
(参照:SantéPubliqueFrance「Coronavirus : circulation des variants du SARS-CoV-2」

オミクロン変異株「BA.5株」の重症化リスクは?

BA.5株とBA.1株での日本での重症化された方の解析

新潟県の第6波(BA.1株主体)と7月までの第7波(BA.5株主体)を比較したデータでは、中等度II以上(酸素投与が必要)になる方は第6波と比較すると0.53倍と低くなっています。少なくとも7月まではBA.5株主体の第7波によって重症化している人の数は少なかったといえますね。

海外に目を向けると、南アフリカでのBA.4株/BA.5株の感染者3,793人とBA.1株の感染者27,614人を比較した査読前論文では「BA.4株・BA.5株による重症化リスクは、BA.1株とほぼ同等」と報告されています。

具体的にはBA.4株/BA.5株による「診断から21日以内の入院率(重症者、死亡者をのぞく)」は1.6%であり、「死亡率」は1.9%となっています。(一方、比較対象のBA.1株ではそれぞれ「入院率(重症者)」は1.7%、「死亡率」2.5%です)

(参照:Outcomes of laboratory-confirmed SARS-CoV-2 infection during resurgence driven by Omicron lineages BA.4 and BA.5 compared with previous waves in the Western Cape Province, South Africa. Posted July 01, 2022.)

しかし、細胞レベルでみると「BA.5株は従来のデルタ株と同様の『TMPRSS2経路』という侵入経路を介して、下肺に感染する能力が高くなっている」という査読前論文が報告されました。

従来のオミクロン株では「上気道で増殖しやすく、下気道増殖する能力が低下している」ことが、重症化しにくい要因としてあげられていました。しかし今回のBA.5株では、デルタ株では使用され、オミクロンBA.1・BA.2株で使用されていなかった『TEMPRESS2経路』を介して細胞に侵入し、下気道で増殖しやすくなっていると考えられています。

同論文では、「今回のBA.5株は従来の新型コロナに戻りつつある部分がある」と言及しています。

このことから、アフリカでの入院率はそこまで増加しているわけではありませんが、ウイルスそのものの性質としては弱毒化しているわけではないといえるでしょうね。

(参照:SARS-CoV-2 Omicron BA.5: Evolving tropism and evasion of potent humoral responses and resistance to clinical immunotherapeutics relative to viral variants of concern.https://doi.org/10.1101/2022.07.07.22277128)

BA.5株で重症化しやすい方は?

BA.5株による30代の重症化リスクを「1」とした、各年代別の重症化リスク

新潟県では、BA.5株でどのような方が重症化しやすいかについて、さまざまな視点から調査しています。その中で主な重症化しやすい因子は次の通りです。

  • 年齢:30代を「1」とすると、10歳未満で0.6倍、20代で1.1倍、40代で2.0倍、50代で9.8倍、60-64歳で4.8倍、65歳-69歳で15.4倍、70-74歳で63.1倍、75-79歳で82.7倍、80-84歳で107倍、85-89歳で258倍重症化しやすい
  • 性別:男性は女性の2.67倍重症化しやすい
  • ワクチン接種:未接種を「1」とすると、2回接種で0.27倍、3回接種で0.2倍、4回接種で0.25倍
  • BMI(体重÷身長÷身長):18.5~25を「1」とするとBMI18.5未満で2.05倍(BMI30以上は今回の調査ではリスク因子にならず)
  • 慢性呼吸器疾患(COPD)のある方は2.84倍
  • 慢性腎臓病がある方は3.42倍

となっています。同調査では「第7波では小児の中等度II(酸素投与が必要)な方も見られており、上記から小児も含めた未接種者へのワクチン接種が重要」として結んでいます。

BA.5株の潜伏期間は?

BA.5株の推定期間はどれくらいでしょうか。オミクロン株から潜伏期間は短くなり、BA.1株やBA.2株潜伏期間は「2-4日」というのが定説でした。BA.5株もBA.2株と同じ系統なので、「2-4日」と推定されます。

茨城県の潮来保健所からの調査では、BA.5の潜伏期間は平均2.4日であると報告されています。同調査でのBA.1株の潜伏期間は平均2.9日としていましたので、0.5日短縮されたことになりますね。

ただし、当院の経験では暴露してから「5日たってから発症した例」も数件認められたので、「2-3日過ぎれば問題ない」と安易に考えない方がよいでしょう。

(参照:CDC「Investigation of a SARS-COV-2 B.1.1.529(Omicron)Variant Cluster」
(参照:SARS-CoV-2 variants of concern and variants under investigation in England Technical briefing 36)
(参照:SARS-CoV-2 Omicron BA.5: Evolving tropism and evasion of potent humoral responses and resistance to clinical immunotherapeutics relative to viral variants of concern.https://doi.org/10.1101/2022.07.07.22277128)

BA.5株では、新型コロナに「再感染」する可能性も

BA.1株かBA.2株にかかった方のBA.2.12.1株、BA.4株。BA.5株への中和抗体価。従来よりも中和抗体価はさがり、再感染しやすいことが示されている。

6月17日に発表された南アフリカからの論文では、「(特にワクチン接種を受けていない場合)従来のオミクロン株(BA.1株)に感染していてもBA2.12.1株・BA.4株・BA.5株には再感染しやすい」ことが示唆されました。

これらの変異株は、3回目のワクチン接種を受けられた方やワクチン接種後のBA.1感染に対しても、「BA.2株(ステルスオミクロン株)よりも強力に中和回避を示す(=再感染をしやすくなる)」とのことです。

実際、BA.1株やBA.2株に以前かかった方の各株に対する中和抗体価を調べた論文では、BA.1株やBA.2株に対する中和抗体価と比べて、BA.4株・BA.5株に対する中和抗体価は3分の1程度になっています。つまり、以前かかっていた方も免疫システムが十分働かなくなっていて、BA.4株/BA.5株にはかかりやすくなっているのですね。

さらに「今、開発されているオミクロン株用のワクチンに関してもBA.4株やBA.5株に効くかも検証が必要である」と結んでいます。BA.4株やBA.5株が主流株になった場合は、新型コロナにかかった方・3回目ワクチン接種を受けられた方も「感染する可能性がある」ことを念頭に置いて、行動しなければなりません。

(参照:BA.2.12.1, BA.4 and BA.5 escape antibodies elicited by Omicron infection. Nature. Publishd: 17 June 2022)
(参照:Neutralization Escape by SARS-CoV-2 Omicron Subvariants BA.2.12.1, BA.4, and BA.5.July 7, 2022.N Engl J Med 2022; 387:86-88)

オミクロン変異株「BA.5株」の感染力は?

BA.5株は多彩な症状とBA.1株と同等の重症化率・再感染しやすい性質をもちながら、従来のオミクロン株以上に高い感染率をもつのが特徴のウイルス。

実際日本での報告によると、BA.5株の感染力はBA.2株の1.4倍あることが報告されました。これは、イギリスからの報告でも、「BA.5株はBA.2株よりも35.1%早く成長している」と発表されています。

実際にBA.5株への置き換わりも進んでおり、7月第3週時点で98%に達しており、8月1日にはBA.5株にすべて置き換わるだろう」と試算されているので、2022年の夏はBA.5株をいかに対処するかが大切になりますね。
(参照:7月21日感染症アドバイザリーボード資料、西浦先生・鈴木先生資料による)
(参照:UKHSA「SARS-CoV-2 variants of concern and variants under investigation in England Technical briefing 42-43)
(参照:COVID-19 variants identified in the UK – latest updates)

オミクロン変異株「BA.5株」に対するワクチンの有効性は?

では、実際BA.4株・BA.5株に対してワクチンはどれくらい有効なのでしょうか。

イギリスからの2022年9月の報告によると「BA.5に対してのワクチンの有効性はBA.2株とほぼ同じである」としています。具体的には、ワクチンの入院に対する予防効果は

  • 2回接種後25週以上:BA.2、BA.4、BA.5株ともにほぼ「0%」
  • 3回接種、4回接種して2-14週後:BA.5株 59.9%(95%信頼区間:45.6-70.5%)
  • 3回接種、4回接種して25週後:BA.5株 23.3%(95%信頼区間:-1.5%-42.1%)

このことから考えると、2回接種ではBA.5株に対してはほとんど効果がない一方、3回接種・4回接種を行えば少なくとも6か月くらいまでは従来のワクチンでも十分入院に対する効果があることが示されていますね。

(参照:UK Health Security Agency「COVID-19 vaccine surveillance report Week 35」)

新型コロナワクチン接種者のBA.1株・BA.2株BA.2.12.1株、BA.4株・BA.5株に対する中和抗体か

ただし、ワクチンのブースター接種と中和抗体価を比較した別の論文によると、ワクチン接種者でのBA.4株/BA.5株に対する中和抗体価はBA.1株BA.2株と比較しても3分の1以下に低下している(=感染防御が少ない)ことが示されています。そのため、BA.4株・BA.5株ではワクチンに対する発症予防効果もより下がってくる可能性は大いにありますね。

実際、日本で発表されているBA.5株における中和抗体価の減少を加味したワクチンや既感染による予測発症予防効果は以下の通りと考えられています。

【BA.5株におけるワクチンの発症予防効果】

  • 2回接種6か月後:発症予防効果11.4%(0.6-26.7%)
  • 3回目接種2週間後:発症予防効果48.5%(22.3-71.5%)
  • BA.1/2の自然感染後(過去に何度か予防接種歴あり): 発症予防効果56.8%(28.8-83.6%)

(参照:COVID-19 vaccine surveillance report: 7 July 22 (week 27))
(参照:Neutralization Escape by SARS-CoV-2 Omicron Subvariants BA.2.12.1, BA.4, and BA.5.July 7, 2022.N Engl J Med 2022; 387:86-88)
(参照:7月13日感染症アドバイザリーボード資料、西浦先生・鈴木先生資料による)

また、南アフリカの査読前論文では、「ワクチン接種されている方や以前に新型コロナに感染されている方は、そうでない方と比べて重症化率や死亡率が低下した」と報告しています。具体的には以下の通りです。(カッコ内は95%信頼区間)

  • ワクチン接種されている方の重症化リスクは1回接種で49%減少(73-1%減少)、2回接種61%減少(75-41%減少)、3回目接種で80%減少(92-51%減少)
  • 以前新型コロナにかかったことのある方の重症化リスク77%減少(90-48%減少)

少なくとも南アフリカからの論文でも「従来の新型コロナワクチンはBA.4株・BA.5株に対してもある程度有効である可能性は高い」といえそうですね。

しかし、前述の通り今回のBA.4株/BA.5株には「これまでの感染やワクチンでの免疫誘導を抑える性質」がありますので「ワクチンを打ったからかからない」とはいえないでしょう。

また、別の査読前論文で「新型コロナに再感染すると、さらなる臓器障害が起こり6か月以内の何らかの原因で死亡するリスクを114%上昇させる」という報告もあるので「1回感染したから再感染しても大丈夫」とも言えません。「風邪と同じだからかかってもよい」などと安易に考えない方がよいでしょう。

(参照:Outcomes of laboratory-confirmed SARS-CoV-2 infection during resurgence driven by Omicron lineages BA.4 and BA.5 compared with previous waves in the Western Cape Province, South Africa. Posted July 01, 2022.)

(参照:Outcomes of SARS-CoV-2 Reinfection. Posted Date: June 17th, 2022)

こうした現状をうけて、BA.4株・BA.5株を含めた「オミクロン株用に調整されたワクチン」の開発が進んでいます。FDAでは、「開発中のワクチンにBA.4株・BA.5株のスパイクたんぱく質成分を追加した改変ワクチンを作成し、2022年初秋から中旬にかけて使用できるようにする」と声明をだしています。詳しい臨床試験がわかり次第アップデートいたします。

(参照:FDA Statemet「Coronavirus (COVID-19) Update: FDA Recommends Inclusion of Omicron BA.4/5 Component for COVID-19 Vaccine Booster Doses」)

オミクロン変異株「BA.5株」の治療薬は?

オミクロン変異株「BA.4株・BA.5株」では、軽症者に対する治療薬の有効性は変わってくるのでしょうか。簡潔に書くとBA.5株に対しての新型コロナ「軽症」の治療薬は

  • 7月現在日本で認可されている中和抗体薬は効果に乏しい(ソトロビマブ・カシリビマブ/イムデビマブ):アメリカで作られた「ベブテロビマブ」は有効
  • 経口治療薬(モルヌピラビル・ニルマトレルビル/リトナビル)やレムデシビルは効果は維持されている

といえます。新型コロナ「軽症」の治療薬については【オミクロンBA.5株も】新型コロナ感染症「軽症」の治療薬の有効性についてもくわしく記載していますので、あわせてご参照ください。

オミクロン変異株「BA.5株」についてのまとめ

いかがでしたか?オミクロン変異株「BA.4株・BA.5株」について解説していきました。まとめると

  • オミクロン変異株「BA.5株」日本も含め世界中で拡大し、「第7波」を形成する主流株である。
  • BA.4株/BA.5株の感染力は従来のオミクロン株よりも上とされていて、一部の地域ではこれまでより速いスピードで置き換わっている。(BA.2株の1.4倍)
  • BA.4株/BA.5株による重症化は定かではないが、イギリスの感染による入院率は上昇しており、予断を許す状況ではない南アフリカでは、BA.4株/BA.5株による入院率・死亡率はBA.1株とほぼ同等レベルであった。このことから、日本ではワクチン接種の状況などからBA.1株の0.8倍くらいの重症化率になると予想されている。
  • ただし、細胞レベルではBA.5株は下気道に侵入しやすい性質を獲得しており、むしろデルタ株にも近い性質を有しているため毒性によっては予想より高まる可能性もある。
  • 現在のところ、BA.4株・BA.5株に特異的な症状はないが、上気道・下気道症状が中心であるが、フランスでの報告では症状の出方は強くなってきている。
  • さらに、BA.4株/BA.5株では、3回目ワクチン接種やオミクロン株感染で獲得した免疫を回避する可能性が示されており、「感染したことがあるからもう感染しない」とは言えない
  • ワクチンの有効性はBA.2株と同等であり、重症化や死亡率を下げる可能性が高い2022年初秋~中旬を目標に現在開発中のオミクロン用ワクチの開発を進めている
  • 「軽症」の治療薬は、現在日本で認可されている中和抗体薬では効果が期待できないものの、それ以外の経口治療薬は有効と考えられる

といえます。早く人間の対抗策のスピードが新型コロナの変異のスピードに追い付いて、新型コロナが「脅威」とは言えなくなる日がくるといいですね。

当院でも現場の医師として目の前の方の治療に専念しつつ、日々新しい情報をアップデートしていきます。新型コロナで心配なことがありましたら、気軽にご相談ください。

【この記事を書いた人】 
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。かかりつけ医として、新型コロナの診療も含めて幅広く診療しております。プロフィールはこちらを参照してください。

新型コロナに関する他の話題は「ひまわり医院の新型コロナウイルスに関するコラム一覧」からご覧ください

更新履歴

  • 7月13日:7月13日感染症アドバイザリーボードの内容を追記
  • 7月15日:フランスでのBA.4株/BA.5株の症状の出方の特徴について追記
  • 7月22日:7月21日の感染症アドバイザリーボードをもとに一部改訂。まとめの図を付記
  • 7月23日:症状について追記。順序を一部入れ替え
  • 7月30日:Zoe Study GroupによるBA.5株による症状一覧の更新に伴い改訂(7月28日発表)
  • 8月18日:感染症アドバイザリーボードをもとに潜伏期間、重症化リスクなどについて改訂
  • 9月5日:イギリスからの報告をもとにワクチンの有効性についてアップデート

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コメント

    • 豆太郎
    • 2022年 7月 21日 7:45pm

    コラム拝見させていただいています。
    コロナウイルスも含め病気や体調、アレルギーなどについて、先生のコラムから情報や知識を得ることで、少し冷静に考えられるので、不安な気持ちが和らぎます。お忙しいことと存じますが、分かりやすいコラムをいつもありがとうございます。

      • Daisuke Ito
      • 2022年 7月 22日 7:34am

      こちらこそ、このようなコメントをいただき嬉しく思います。
      情報はかわるものなので、適宜アップデートいたします。またぜひご覧になってください。

    • 福岡太郎
    • 2022年 8月 14日 11:11pm

    7月27日にコロナ感染(家族内感染)しました。症状は熱とだるさと軽い咳と咳をした際、痰が絡む症状でした。家内が7月25日に陽性判定され家庭内でもマスクを着用するなど、用心していましたが、7月27日に私と子供2名感染が判明しました。私は喘息の持病があるためラゲプリオカプセルを5日間分もらいました。おかげでラゲプリオカプセルを1日服用しただけで熱も下がり始めました。しかし食欲がなくなりました。
    今流行している、BA.5に感染したのではないかと思っていますが、BA.5に1回感染したら再び、BA.5に感染することがあるでしょうか?
    家内は1回、BA.5に感染すればしばらくはBA.5に感染することはないと楽観的に言っています。もう2度と感染したくありません。宜しくお願い致します。

      • Daisuke Ito
      • 2022年 8月 16日 6:16am

      福岡太郎様

      ご相談いただきありがとうございます。結論からいうと「BA.5株に感染されたのなら、BA.5株に対する免疫能が上昇しかかりにくくなる」といえる一方、感染対策をしないというのは間違いです。というのも、福岡さんがかかったコロナ感染が「BA.5株」という保証はどこにもないからです。
      現時点で日本では「BA.2株」「BA.4株」「BA.5株」が混在している状況であり、他の株にかかる可能性は十分にあります。実際、当院でも「コロナに罹患した後、1か月程度再度コロナ(おそらく別の株)に感染した例」も経験しています。
      その方も「一度コロナにかかれば問題ない」と思っていたようで、1回目の症状が軽かったこともあり、1回目感染した後にあまり感染対策せず出歩いてしまい感染しました。2回目は全く症状の異なっており、より症状も強くでてしまいました。
      幸い重症化には至っていませんが、「再度罹患する可能性がある」ということを十分注意していただきたいです。

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