新型コロナ「BA.2.75株」(ケンタウルス)の症状や重症化・感染力について

こんにちは、一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介です。

7月ごろから「第7波」とともに日本でも騒がれはじめたBA2.75株。別名「ケンタウルス」とネット上でも呼称され話題になりましたね。

実は、このBA.2.75株、東京都の報告によると徐々に割合が上がってきているのです。(11月12日時点で1週間で0.4%から2.4%に上昇)BA.2.75株は第8波の主要株になりうるのでしょうか。

現時点でわかっているBA2.75株(ケンタウルス株)の症状や感染力や特徴についてまとめていきます。

新型コロナ「BA.2.75株」(ケンタウルス)とは?

BA2.75株(ケンタウルス)とはオミクロン株のうち「BA.2株」から派生した変異株の1種です。BA.2株は「ステルスオミクロン」という呼称で日本でも4月から6月まで主流になっていた変異株ですね。(詳しくはステルスオミクロンとは?新型コロナBA.2株の特徴について【症状・違い・感染力】を参照してください)

7月くらいからBA.5株が台頭し始め、日本では8月現在BA.5株が主流株になっていますが、インドでは同時期にBA.5株を押しのけて主流株になった株があります。それが「BA.2.75株」です。(8月13日のインドのニュースで首都デリーで「主流株になったことが発表されています)

なぜBA.2.75株が「ケンタウルス」(上半身が人間で下半身が馬の伝説上の生き物)の呼称がついたのかははっきりしませんが、BA.2株系統なのに、BA.5株に似ているところがあるからなど諸説あり、SNSで研究者たちの間で呼ばれたことから「ケンタウルス」という名前が広がりました。

現在では、世界20か国以上で見つかっており、東京都でもBA.2.75株の感染例が確認されています。

(参照:BA.2.75 Lineage Report)

新型コロナ「BA.2.75株」(ケンタウルス)の症状や重症化は?

インドでのBA2.75株により感染者数と死亡者数の推移

8月時点ではインドにしか広がりを見せていないので、統計学的な数値データがありませんが、インドの医療関係者によるインタビューでは、以下のように言われています。

  • BA.2.75株による主症状は、のどの痛み・鼻水・発熱・頭痛・体の痛みなどであるが、一部のケースではウイルス性肺炎や低酸素症も確認されている
  • 慢性疾患のある方などはBA2.75株により入院しているが、入院率は6%であり、インドの初期の波と比較すると入院は少なくなっている
  • BA.2.75株による症状出現から回復までの期間は通常5日-7日である

実際の過去のインドの新型コロナの感染者数と死者数を比較してもインドの感染者数は15,000人~20,000人に推移されていますが、死者数は1日40人~70人あたりを推移しているので、BA.2.75株は従来の株より重症化しやすい株とは考えづらいですね。

ただし、インドではデルタ株をはじめ最高1日40万人が感染していた国でもあり、日本とは新型コロナへの既感染率などが大きく異なることには注意が必要でしょう。

他の海外の状況および、日本で蔓延した場合など詳細なデータが分かり次第、適宜アップデートしていきます。

(参照:Omicron sub-variant BA 2.75 is dominant in Delhi, says study
(参照:JHU CSSE COVID-19 Data

新型コロナ「BA.2.75株」(ケンタウルス)の感染力は?

BA2.75株の特徴の1つが「高い感染力」です。一時期は感染力は「BA.5株の3倍」とまで言われていましたが、京都大学の解析や査読前論文からの報告によると、BA.2.75株の感染力はBA.2株の1.36倍、BA.5株の1.13倍と目算されています。

BA.2.75株では、新型コロナがヒトの細胞と結びつくために必要な「ACE受容体」の結合力がBA.5株よりも強いことが分かっているため、感染力の高さにつながっていると考えられていますね。

しかし東京都の推移を見てみると、遺伝子解析で8月18日時点で報告された24,816例中BA.2.75株は16例(0.06%)しか確認されていません。現時点では日本で拡大する徴候は見られませんが、今後の推移と感染者数の増減には注目していきたいですね。

このあたりも適宜アップデートいたします。

(参照:Virological characteristics of the SARS-CoV-2 Omicron BA.2.75
(参照:Characterizations of enhanced infectivity and antibody evasion of Omicron BA.2.75
(参照:第93回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和4年8月3日))

新型コロナ「BA.2.75株」(ケンタウルス)への再感染の可能性は?

ではBA.2.75株が日本に蔓延したとして、今まで新型コロナに罹患された方は再感染する可能性はあるのでしょうか。

実はBA.5株同様、BA.2.75株もワクチンや既に感染された方で獲得された免疫を回避する可能性が示唆されています。

BA.2.75株に関するハムスターを用いた動物実験では「BA.2株感染により獲得した中和抗体でも十分に中和されず、またBA.5株感染したハムスターが持つ中和抗体でも十分中和されなかった」と報告しています。

つまりは、BA.2株やBA.5株で獲得した免疫では十分BA2.75株感染を防ぐことができないというわけですね。

さらに「デルタ株に感染した方はBA.5株よりもBA.2.75株に感染しやすくなる」ことを示唆する報告もあるので、ちょうど去年夏ごろ(デルタ株流行期)に感染された方はBA.2.75株感染により一層注意する必要があることになりますね。

このことから、仮にBA.5株の感染ピークが終了しBA.2.75株が置き換わったとしたら、再び感染する可能性も視野に入れたほうがよいでしょう。

(参照:Virological characteristics of the SARS-CoV-2 Omicron BA.2.75
(参照:Will ‘Centaurus’ be the next global coronavirus variant? Indian cases offers clues

新型コロナ「BA.2.75株」(ケンタウルス)についてのまとめ

いかがでしたか?BA.2.75株の海外の状況や特徴についてまとめてみました。インドしかまだ主流株になっておらず、はっきりしたデータは出ていませんが

  • BA.2.75株の症状は喉の痛みや鼻水・発熱・体の痛みなど、新しい特異的な症状は報告されていない
  • BA.2.75株による重症化率としては、インドの死者数の推移をみると高くないように見えるが、これまでの日本の状況と大きく異なるため、感染拡大含めて注視する必要がある
  • BA.2.75株の感染力はBA.5株よりも高い(1.13倍)とされているが、幸い日本では感染拡大には至っていない
  • BA.2.75株が蔓延した場合、BA.2株、BA.5株にかかったとしても中和抗体を用いた実験結果から再感染する可能性がある

といえます。BA.5株でもBA.1株と同じ重症化率と考えられていながら、感染拡大が進んだために、今まで以上の死者数の増加がみられています。

新型コロナ含めて、ご心配ごとなどがありましたら、ぜひ当院にもご相談ください。できる限り、患者さん1人ひとりに寄り添う形で対応させていただきます。

また状況がかわりましたら適宜アップデートいたします。

【この記事を書いた人】 
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。かかりつけ医として、新型コロナの診療も含めて幅広く診療しております。プロフィールはこちらを参照してください。

新型コロナに関する他の話題は「ひまわり医院の新型コロナウイルスに関するコラム一覧」からご覧ください

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