日本でも新型コロナが着実に増加している中で、心配なのが「変異株」の存在です。2022年夏はBA.5株があがってきましたが、冬は日本は「BQ.1株」が優勢株となってきていますね。
その中で、昨今アメリカで急増しているのが「XBB.1.5株」と呼ばれる変異株。11月下旬より急速な拡大を遂げ、現在は優勢株として位置づけられています。
そんな「XBB株」「XBB.1.5株」は一体どんな特徴なのでしょうか。現時点でわかっている「XBB株」「XBB.1.5株」の症状や重症度を、アメリカやシンガポールの状況と絡めてお話していきます。
オミクロン変異株「XBB株」「XBB.1.5株」とは?

XBBとは「BJ.1株とBM.1.1.1株の組み替え体」です。オミクロン株の特徴の時に紹介しましたが、2つのウイルスが1つの細胞に同時に感染した時、細胞の中で2つのウイルスの遺伝子が混ざりあって全く新しいウイルスが誕生します。これが、「組み換え体」です。
もともとのBJ.1株はBA.2.10株(ステルスオミクロンがBA.2株です)の亜系統、BM.1.1.1株はBA.2.75.3株の亜系統株(BA.2.75株は「ケンタウルス」としても有名になりましたね)なので、その組み換え体のXBB株も「BA.2株」「BA.2.75株」にある程度近しい性質を持つことが予想されます。
ただし、XBB株のスパイクタンパク質の受容体結合部位の中の「R346T、N460K、F486S」などのアミノ酸変異があり、特に中和抗体からの逃避能が高くなっている点が大きな特徴のウイルスです。(後述します)
また、XBB(読み方:エックスビービー)というのが煩雑なためか「グリフォン」と呼称されることもあります。
XBB.1.5株もその系統を受け継いでいるわけですが、査読前論文によると従来のXBB株よりもヒト細胞への「hACE2 結合」が強化され、さらに伝搬性が高くなっているのが特徴です。WHOでも「2022年12月時点で最も伝播性が高い変異株」として位置づけています。
XBB.1.5株も呼び方が煩雑なために「クラーケン」と呼称されることもあります。
オミクロン変異株「XBB.1.5株」のアメリカでの状況は?

アメリカでは、現在オミクロン「XBB.1.5株」が急速に広がっています。11月下旬から発生し、12月31日時点では今まで優勢株であった「BQ.1株」を抑えて新規症例の40.5%にまで拡大し、さらに北東部では75%がXBB.1.5株に置き換わりました。
2022年12月時点では、伝搬性もこれまでのどの変異株よりも高いことが言われており、今後も拡大することが見込まれています。
オミクロン変異株「XBB株」「XBB.1.5株」の症状は?

XBB株が優勢であるシンガポールの保健局「MOH」では、新型コロナの症状として
- 発熱
- 咳
- 喉の痛み
- 鼻水
- 味覚嗅覚障害
などをあげており「肺炎や急性呼吸器疾患に似ている」としています。しかもこれらは、XBB株が優勢になった後から症状を変更していないので、従来のオミクロン株と同様の症状と考えてよいでしょう。
XBB.1.5株についても、2023年1月のアメリカの発表では「新しく出現した症状はない」としています。
仮にXBB系統が、BA.5株と近い状態と考えるなら、加えて「倦怠感」「筋肉痛・関節痛」「頭痛」「吐き気などの消化器症状」などがあげられます。
新型コロナは他のウイルス感染と比較して非常に多彩な症状であることが特徴です。
詳しくはインフルエンザとの比較の記事で述べていますが、新型コロナでは同じ家族内でも「ほぼ無症状な方もいる一方、激しい症状で夜も眠れなかった方もいる」ということが非常によく経験されます。
また「自分はコロナではない」と思っている方に限って「陽性だった」という例もよくあります。自己判断で行わず、お手持ちの抗原検査キットの活用(奥までしっかり採取しないと陽性になりません)や医療機関受診をし、診断を確定していただくようお願いします。
また、BA.5株の症状の詳細については、オミクロン変異株「BA5株」の特徴について【症状・重症化・潜伏期間】をご参照ください。
(参照:シンガポールMOH「GENERAL INFORMATION ABOUT COVID-19」)

オミクロン変異株「XBB株」「XBB.1.5株」の重症度は?


XBB株の重症度は「従来の新型コロナ感染症よりも重症度は上昇していない」といえます。シンガポールMOHからの発表によると、「XBB株の症例はBA.5症例と比較して、入院のリスクが30%低いと推定」としています。
また、XBB.1.5株に関してもアメリカでは「重症化リスクが高くなった証拠はない」としていますね。しかし、「既存の中和抗体薬が効果がない可能性が高い」ので注意が必要です。
また、シンガポールMOHからの発表によると、XBB株が拡大した9月22日~10月22日までの期間での死亡率は
- 50歳未満の死亡率:ワクチン接種の有無に関わらず0.01%未満
- 50-59歳の死亡率:ワクチン接種なし0.05%、ワクチン接種あり0.01%未満
- 60-69歳の死亡率:ワクチン接種なし0.24%、ワクチン接種あり0.01%
- 70-79歳の死亡率:ワクチン接種なし0.44%、ワクチン接種あり0.09%
- 80歳以上の死亡率:ワクチン接種なし2.2%、ワクチン接種あり0.55%
となっており、年齢とワクチン接種の有無によって大きく変わってきますので、ご注意ください。
XBB.1.5株についてもアメリカのニュースでは「感染が多い地域でのマスク着用」「ワクチン接種」「ブースター接種」の3つを対抗策としてあげています。
(参照:Gov.sg「Corrections regarding XBB wave in Singapore」)
(参照: CBS News「CDC tracking rise of new XBB.1.5 COVID variant, now dominant strain among U.S. cases」)
オミクロン変異株「XBB株」「XBB.1.5株」への再感染率は?


XBB株の安心できない点は「再感染率」の高さです。シンガポールでは再感染は新規症例全体の約17%を占めており、「過去に新型コロナにかかっているから大丈夫」とはいえません。
また、再感染例にはオミクロン株から1-3か月後に再感染した例も含まれており、「直近でコロナにかかったから再感染しない」とも言えません。
実際、シンガポールのデータによると、人口10万人あたりの10月8日~10月14日での新規感染者・再感染者数の内訳は
- 新規感染者数(コロナ未感染):163人
- デルタ株以前にかかった方:147人
- オミクロン株感染から1-3か月経過:0.7人
- オミクロン株感染から4-6か月経過:26.4人
- オミクロン株感染から7-10か月経過:42.4人
となっています。また、査読前論文からも「BQ.1株とXBB株は以前の免疫から逃れる性質が高い」としています。
また、現在XBB.1.5株がアメリカで急増している要因として「実際の感染や最終のワクチン接種から時間が経過していた」ことが考えられているのです。
いずれにせよ「自分はコロナにかかったら、もうかからないだろう」と過度に考えず、感染前後で行動を極端に変えないことが大切ですね。
(参照:Ministry of Health「UPDATE ON COVID-19 SITUATION AND MEASURES TO PROTECT HEALTHCARE CAPACITY」)
(参照:Biorxiv「Imprinted SARS-CoV-2 humoral immunity induces convergent Omicron RBD evolution」)
オミクロン変異株「XBB株」「XBB.1.5株」の日本の状況は?


日本では12月20日時点のデータでは、XBB株が全体の1%程度であり、XBB.1.5株も含めて拡大している傾向にはありません。
しかし、今後アメリカからの渡航者が日本に流入してきた場合、XBB.1.5株の高い伝搬性からXBB.1.5株が台頭してくる可能性は十分に考えられます。今後の動向にも注目していきたいですね。
第8波の主要株である「BQ.1株」についてはオミクロン「BQ.1」「BQ.1.1」の症状・重症化や感染力について解説を参照してください。
オミクロン変異株「XBB株」「XBB.1.5株」のまとめ


いかがでしたか?今回はオミクロン変異株「XBB株」「XBB.1.5株」について解説していきました。まとめると
- XBB株は、BA.5系統に分類されているが、実際はBJ.1株とBM.1.1.1株が同じ細胞の中で組み合わされた「組み換え株」である。
- アメリカで急増しているXBB.1.5株もXBB株の性質を受け継いでいる。
- XBB株はシンガポールでは優勢株に先月なっており、感染者数は1日12000人まで増加。入院数が2.5倍に増加した。日本とシンガポールでは人口は20倍以上異なっているため、感染拡大が同様に見られた場合、多くの方の感染が見込まれる。
- XBB株は重症化する可能性は少ない株であるが、ワクチン接種の有無や年齢によって大きく異なる。
- XBB株は再感染率の高さが非常に高いのが特徴であり、ウイルス学的にみてももともとの免疫能から逃れる性質があることがわかっている。
といえます。BQ.1株とともに、目が離せない変異株であることは間違いありません。なるべくかからないことが一番ですが、どんなに気をつけてもかかってしまうこともあります。早めに医療機関にアクセスするようにしていただき、抗原検査キット(奥に入れて採取しないと偽陰性になりやすいです)や市販薬などを活用しながら、対策していきましょう。
もちろん、当院にもいつでもご相談ください。公式LINEアカウントやオンライン医療相談なども随時行っています。どうぞ不安になっている方、メッセージをください。
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