肺炎球菌ワクチンの種類や効果・副反応について【バクニュバンス・プレベナー20】

肺炎球菌は、さまざまな感染症を引き起こす細菌であり、特に特に高齢者や免疫力の低下した方には依然、高い脅威となる感染症の1つ。

しかし、肺炎球菌感染症を肺炎球菌感染症を予防するためのワクチンが開発され、現在広く利用されています。

今回、現在認可されている3種類の肺炎球菌ワクチン、ニューモバックスNP®・バクニュバンス®・プレベナー20®について効果や値段・副反応についてわかりやすく解説していきます。

肺炎球菌感染症とは?

(肺炎球菌の電子顕微鏡写真:厚生労働省新興・再興感染症事業より転載)

肺炎球菌感染症とは、肺炎球菌という細菌が原因で起こる感染症のこと。肺炎球菌は、肺炎をはじめ、中耳炎や副鼻腔炎、髄膜炎などさまざまな病気を引き起こすことがあります。この細菌は、空気中の飛沫を通じて人から人へ広がる「飛沫感染」が主体です。

実際には、90種類以上の「肺炎球菌」がありますが、重篤な感染症に至るのは数種類だけ。肺炎球菌は通常は気道にすみつき、特に冬と春の初めに空気中の飛沫により感染が拡大していきます。

肺炎球菌は市中肺炎の中では最も多く、2015〜20 年に行われた18 歳以上の成人市中肺炎 2,103 例 (65 歳
以上 1,762 例を含む)を対象とした地域住民対象前向き研究では、17.8%で肺炎球菌が検出されています。

肺炎球菌感染症は、特に高齢者や小さな子ども・免疫力が低下している人など、後述する「リスクが高い方」で重症化しやすいとされています。重症化すると、呼吸困難や高熱、全身のだるさなどの症状が現れ、場合によっては命にかかわることもあります。

肺炎球菌に対する抗生剤治療もありますが、一番なのは「予防する」こと。肺炎球菌ワクチンを打つと、肺炎球菌感染症になりにくくなるほか、肺炎球菌感染症になったとしても重症になりにくくなります。

そのため、日本感染症学会でも厚生労働省でも肺炎球菌ワクチンの接種は推奨されています。

(参照:厚生労働省「肺炎球菌感染症(高齢者)」
(参照:日本呼吸器学会・日本感染症学会「65 歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方」第6版)

肺炎球菌感染症のリスクが高い方は?

肺炎球菌感染症が重症化しやすい方は、例えば次のような人です。

  • 高齢者(65歳以上):年齢が上がることで免疫力が低下し、感染症にかかりやすくなります。また、重症化しやすくなるため注意が必要です。
  • 幼児:免疫システムが未発達であるため、感染症にかかりやすく、重症化しやすいとされています。
  • 免疫力が低下している人:糖尿病、がん、HIV感染症、免疫抑制剤やステロイド治療を受けている人など、免疫力が低下している状態の人は感染リスクが高くなります。
  • 慢性疾患を持っている人:慢性心疾患、慢性肺疾患、慢性腎臓病などの慢性疾患を持っている人は、感染リスクが高く、重症化しやすいとされています。
  • 喫煙者:喫煙により、気道の粘膜が炎症を起こし、肺炎球菌感染症にかかりやすくなります。

これらのリスクがある人たちは、肺炎球菌ワクチンの接種が特に推奨されています。ワクチン接種によって感染リスクを減らし、重症化を防ぐことが期待できるでしょう。

肺炎球菌ワクチンの種類と効果は?

肺炎球菌ワクチンには主にニューモバックスNP®(23価ワクチン)プレベナー20®(20価結合型ワクチン)」「バクニュバンス(沈降15価肺炎球菌結合型ワクチン)の3種類があります。

それぞれの効果についてみていきましょう。

① ニューモバックスNP®

ニューモバックスNP®は、23価の肺炎球菌多糖体ワクチン(PPSV23)であり、23種類の肺炎球菌に対する抗体を作り出すことができます。23種類の血清型は成人の肺炎球菌感染症の原因の45%を占めるという研究結果がありますね。

いくつか、実際にニューモバックスNPの効果に関する研究はいくつか行われています。厚生労働省における研究では

  • 侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)に対するニューモバックスNPの予防効果は42.2%
  • ニューモバックスNPには含まれていてプレベナー13では含まれていない血清型に対する予防効果は44.5%
  • 年代別でみると、65歳以上では予防効果39.2%20~64歳での予防効果59%であった

とされています。さらに、他の65歳以上の高齢者の市中発症肺炎を対象にした、前向き共同研究では

  • すべての肺炎球菌性肺炎に対する効果は27.4%
  • ワクチン血清型の肺炎球菌性肺炎は33.5%

このように、ニューモバックスNPの高齢者を含めた予防効果はいくつか証明されています。そのため

  • 該当する年度に65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳、100歳となる方
  • 60歳から65歳未満の方で、心臓、腎臓、呼吸器の機能に自己の身辺の日常生活活動が極度に制限される程度の障害がある方
  • 60歳から65歳未満の方で、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能に日常生活がほとんど不可能な程度の障害がある方

は定期接種の対象となっています。ただし、すでにニューモバックスNPを接種された方は対象となっていますが、5年以上あけたら任意接種として接種可能です。

(参照:厚生労働省「肺炎球菌感染症(高齢者)」
(参照:MSD Connect「ニューモバックスNP」
(参照:日本呼吸器学会・日本感染症学会「65 歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方」第6版)

② プレベナー20

プレベナー20は、今まで接種されていた「プレベナー13」に7種類の血清型を追加したワクチン。

肺炎球菌による肺炎などの感染症を予防するワクチンの1つで、20種類の肺炎球菌に対応しています。20種類の血清型カバー率は2023年の調査では45%とされていますね。

65歳以上の高齢者に対する効果が立証されていないことから、バクニュバンス同様、定期接種ワクチンとして位置づけられていません。また、プレベナー20は2024年に発売されたばかりなので、まだ現段階では臨床的な予防効果を実証した試験はありません。

しかし、もともとは「プレベナー13」を改良したワクチンで、プレベナー13に対する予防効果は実証されています。

たとえば、オランダ行われた研究結果では、65歳以上の高齢者にプレベナー13®により肺炎球菌感染症の発症が51.8%減少したと報告されています。追加接種としての有用性は十分期待されます。プレベナー13を接種した小児に対し、追加でもう1回投与することでブースター効果が得られることが分かっています。

そこに加えて、追加した7種類の血清型についても高い免疫力がつくことがいわれています。

このように、プレベナー20のメリットは

  • プレベナー13での臨床効果はある程度前から臨床試験で言われていること
  • プレベナー20になり、23価のニューモバックスと近い種類までカバーされてきていること

の2点といえるでしょう。

こちらは「絶対に肺炎にかかりたくない!」という方は、ニューモバックスNPと併用しての接種を検討してみてください。

ニューモバックスNPとプレベナー20を併用して接種するなら、日本感染症学会によると

  • ニューモバックスNPを打ってから最低1年の間隔が保たれれば、その安全性には問題が無い
  • プレベナー20接種後のニューモバックスNPの接種は、ブースター効果が確認されている1年後~4年以内が望ましい

としていますので、図を参照しながらご自身の接種時期を検討してください。プレベナー20とバクニュバンスはほぼ同じ位置づけなので、どちらかの接種で大丈夫です。

(参照:日本呼吸器学会・日本感染症学会「65 歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方」第6版)

③ バクニュバンス®

バクニュバンス®とは、15種類の肺炎球菌に対するワクチンです。バクニュバンス®は、2022年9月に日本で承認された、3種類の中で最も新しいワクチン。

バクニュバンスの実際の臨床試験では、ワクチン接種歴がない50歳以上の健康成人1205人を対象に、バクニュバンスと後述するプレベナー13をランダムに接種を行い、それぞれの免疫応答を調べています。その結果

  • バクニュバンスはプレベナー13と共通する13血清型については同じくらいの効果
  • バクニュバンスは、プレベナー13にさらに追加された22F、33Fの2血清型に関して優位な効果がある。
  • さらに、バクニュバンスは血清型3についてもプレベナー13よりも優位な効果がある

といわれています。全体でみると、免疫学的にはバクニュバンスはプレベナー13よりも高い効果があるといえますね。ただし、まだ新しい薬なので、大規模臨床試験での予防効果については完全にはわかっていません。

実際、バクニュバンスでカバーされる原因菌は、2018~20年の65歳以上の肺炎球菌性肺炎の原因菌全体の43.3%を占めるといわれています。

「絶対に肺炎にかかりたくない!」という方は、ニューモバックスNPと併用しながら接種するとよいでしょう。

ニューモバックスNPとバクニュバンスを併用して接種するなら、日本感染症学会によると

  • ニューモバックスNPを打ってから最低1年の間隔が保たれれば、その安全性には問題が無い
  • バクニュバンス接種後のニューモバックスNPの接種は、ブースター効果が確認されている1年後~4年以内が望ましい

としていますので、図を参照しながらご自身の接種時期を検討してください。

(参照:MSD Connect「日本人を含む国際共同第Ⅲ相試験(019試験:PNEU-AGE)」
(参照:65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(第4版 2023年3月24日)

肺炎球菌ワクチンの費用と定期接種の助成について

ひまわり医院での肺炎球菌ワクチンの費用は以下になります。

ニューモバックスNP®8000円(税込)
バクニュバンス®10000円(税込)
プレベナー20®10000円(税込)

バクニュバンス・プレベナー20®は単回接種のみ、ニューモバックスNP®は5年以上あければ再投与できます。

またニューモバックスNP®は、以下の方は定期接種の対象になります。

  • 該当する年度に65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳、100歳となる方
  • 60歳から65歳未満の方で心臓・腎臓・呼吸器が悪く、自分の身の回りの日常生活が極度に制限される方
  • 60歳から65歳未満の方でヒト免疫不全ウイルス(HIV)による障害で日常生活がほぼ送れない方

自己負担額は各自治体の制度により異なりますので、各自治体のホームページを確認してください。

ただし、自費公費問わず、すでにニューモバックスNP®を接種したことがある方は助成の対象とはならないのでご注意ください。

肺炎球菌ワクチンの副反応は?

では、それぞれの肺炎球菌ワクチンの副反応にはどんなものがあるのでしょうか?順に見ていきましょう。

① ニューモバックスNP®

ニューモバックスNP®では接種部位の痛み・赤み・腫れといった局所反応と、筋肉痛・だるさ・発熱・頭痛などの全身の副反応がみられることがあります。一番多い副反応は、接種部位の局所反応で、5%以上の方が経験します。

報告されている重い副反応としては、アナフィラキシー様反応・血小板減少・ギランバレー症候群(主に四肢のマヒが生じる疾患)・蜂巣炎様反応などですが非常にまれです。(1%未満)

また、初回接種よりも副反応は強くでる可能性があります。(日本感染症学会 再接種に関するガイドライン

② バクニュバンス

バクニュバンスの副反応は以下の通りです。

  • 注射部位の痛みが最も多く、成人では50~75%台でおきる。
  • 腫脹や紅斑も10~20%前後にみられる。
  • 全身症状では、疲労や筋肉痛、頭痛が10~35%台、関節痛は5~13%程度。
  • 重篤なアレルギー反応(ショックなど)は試験例にほぼ報告なく、頻度は不明。

実際、疼痛などはプレベナー20と同等くらいですね。

③ プレベナー20®の場合

プレベナー20®では疼痛(59.6%)、筋肉痛(38.2%)、関節痛(11.6%)、頭痛(21.7%)、疲労感(30.3%)が主な副作用になります。

また、稀に報告されている主な副作用はショックやけいれん・血小板減少性紫斑病ですが非常にまれです(1%未満)

副反応や接種間隔などで不安な方はぜひご相談いただけたらと思います。

肺炎球菌ワクチンを打ってはいけない人は?

以下の方はニューモバックスNP®・バクニュバンス・プレベナー13®を接種することができませんのでご注意ください。

  • 明らかに発熱している方
  • 重い急性疾患にかかっている方
  • ワクチンの成分に対し、アナフィラキシーなど重度の過敏症の既往歴のある方
  • (バクニュバンス・プレベナー13®の場合)ジフテリアトキソイドの成分でアナフィラキシーを起こしたことがある方
  • 上記以外で、予防接種を受けることが不適当な状態にある方

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【この記事を書いた人】
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。

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