トマトの効果について【肌あれ・血圧・ダイエット】

真っ赤なトマト。美味しいですよね。

しかも「トマトが赤くなると医者が青くなる」ということわざがあるように、トマトは昔からその健康効果が知られています。

しかし、具体的にどのような効果があるのか、最新の研究ではどのようなことが分かっているのか、意外とご存じない方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は、トマトが私たちの体に与える素晴らしい影響について、肌、血圧からダイエットまで、最新の医学論文に基づいたエビデンスを交えながら、詳しく解説していきます。

トマトの主要な栄養成分は?

みなさんもご存知の通り、トマトは、その鮮やかな赤色だけでなく、豊富な栄養成分に満ちた素晴らしい野菜です。

一般的な生の完熟赤トマト100gあたりには、約18 kcalのエネルギー、3.89gの炭水化物、1.2gの食物繊維が含まれています。さらに、カリウム237mg、ビタミンC13.7mgといった必須栄養素も豊富に含んでいるんです。

特に注目すべき栄養成分は、以下の成分です。

  •  リコピン: トマトの赤色の主成分であり、強力な抗酸化作用を持つカロテノイドの一種です。生の赤トマト100gあたりには約2573 µgのリコピンが含まれています。
  • β-カロテン: 体内でビタミンAに変換されるプロビタミンAカロテノイドで、視覚機能や免疫機能に重要な働きを持ちます。生の赤トマト100gあたりには約449 µgのβ-カロテンが含まれています。
  • ビタミンC: 免疫機能の維持に不可欠であり、抗酸化作用も持ちます。
  • カリウム: 血圧の調整や体内の水分バランス維持に役立つミネラルです。
  • 食物繊維:実はトマトは食物繊維も多い野菜の1つ。100gあたり1.2g含まれています。

ただし、これらの栄養成分は、品種や熟度、栽培条件によっても変動することが分かっています。例えば、ミニトマトは大きなトマトに比べて、β-カロテンやビタミンCなどの特定の栄養素をより高濃度に含みますね。

そして、大切なポイントは、これらの成分が単独で働くのではなく、互いに協力し合って私たちの健康に良い影響を与える「フードマトリックス」として機能しているということです。

なので、サプリメントで単一の成分を摂取するよりも、トマト全体を食べる方が、より大きな健康効果が期待できると考えられています。

(参照:Bioactivities of phytochemicals present in tomato

トマトの血圧に対する効果は?

実際、このような豊富な成分から、トマトには様々な健康効果があることがわかっています。

まずはトマトの血圧に対する効果から。

2024年に発表された7056人もの人を対象にした大規模臨床試験では、トマトの摂取が、特に高血圧の方において、収縮期血圧(SBP)と拡張期血圧(DBP)の両方を低下させることがわかっています。

トマトに含まれるリコピン、豊富なカリウム、そして血管内皮機能を改善するポリフェノール類が相乗的に作用することで、血圧を下げる効果を発揮しているのです。

では、血圧を下げるためにどのくらいの量のトマトを、どのくらいの期間摂取すれば良いのでしょうか。答えは、人やトマトの種類などによって異なります。

  • 高血圧の予防で食べる場合:まだ高血圧ではない方が、長期的に正常な血圧を維持するためには、比較的多くの摂取が望ましいとされています。3年間の研究では、1日あたり110g以上(大きめのトマト1個に相当)のトマトを摂取した場合、新規高血圧の発症リスクが36%低下したと報告されています。
  • 高血圧になっている人の場合:すでに高血圧(軽症高血圧)と診断されている方の場合、より少ない量でも効果が期待できる可能性があります。同じ研究で、1日あたり44~82gという中程度の摂取量でも、拡張期血圧を有意に低下させることが示されています。(-0.65mmHg)
  • リコピンのサプリメントやトマトジュースの場合:トマト栄養複合体(TNC)を1日あたりリコピン15mgまたは30mg摂取すると、未治療の高血圧の方の収縮期血圧が有意に低下することがわかっています。しかもその効果は2週間という早期に現れ、少なくとも4ヶ月間持続することが示されました。また、無塩トマトジュースを1年間摂取した研究でも、血圧が高めの方や高血圧と診断されている方で有意な血圧低下が認められています。

このように、もちろん個人差はありますが、血圧低下のためにトマトを摂取するのは理にかなっていますね。

また、トマトの摂取は、コレステロール値の改善にもつながる可能性があります。閉経後の女性を対象とした8週間の研究では、トマト食が総コレステロールとトリグリセリドを有意に低下させ、善玉(HDL)コレステロールを増加させることが報告されています。

(参照:Association between tomato consumption and blood pressure in an older population at high cardiovascular risk: observational analysis of PREDIMED trial
(参照:Effect of Tomato Nutrient Complex on Blood Pressure: A Double Blind, Randomized Dose–Response Study
(参照:Unsalted tomato juice intake improves blood pressure and serum low‐density lipoprotein cholesterol level in local Japanese residents at risk of cardiovascular disease

トマトの肌に対する効果は?

「トマトを食べるとお肌がきれいになる」と聞いたことはありませんか? 実は、この話は科学的なエビデンスによって裏付けられているんです。

事実、トマトは、私たちのお肌を紫外線ダメージから守り、光老化(紫外線による皮膚の老化)を防ぐ効果が言われています。

特にトマトをとると、皮膚の内側から紫外線(UV)ダメージから守る力がアップすることがわかっています。トマトに含まれるリコピンや他のカロテノイドは皮膚に蓄積され、日光に当たった際に発生する活性酸素種(ROS)に対する防御の最前線として機能してくれるのです。

具体的にどのくらい効果があるのでしょうか?

 ① 紫外線による紅斑(赤み)を減らす

21の臨床試験をまとめた論文では、トマトやリコピンの補給が、紫外線にさらされた後の皮膚の「赤み」を著しく減少させることが確認されています。

ランダム化比較試験(RCT)では、1日あたり55gのトマトペースト(リコピン16mg含有)を12週間毎日摂取した結果、UVによって引き起こされる赤みが出にくくなったと報告されています。

 ② 光老化によるしわを防ぐ

トマトの紫外線への防御は「赤み」だけではありません。「しわ」も防ぎやすいんです。

実際、トマトは、しわの原因となる酵素(マトリックスメタロプロテアーゼ-1、MMP-1)の発現を有意に減少させることが示されています。

前述の12週間のトマトペースト研究では、しわの原因である「MMP-1」の発現が抑制され、皮膚の弾力性を作る「プロコラーゲンI」が増加することが確認されていますね。

このように、紫外線に対する防御効果から、特に日差しの厳しくなる「春〜夏」にはぜひ食べていただきたい食べ物となります。

ただし、1点注意が必要です。これらの効果は、すぐに現れるものではなく、時間をかけて現れるものです。皮膚にカロテノイドの保護的な貯蔵庫を構築するのに時間がかかるため、臨床試験では一貫して10〜12週間、あるいは3ヶ月といった介入期間が設定されています。

リコピンが体内に長く留まる(半減期が12〜33日)ことも、有効な濃度に達するまでに時間が必要な理由の1つです。

つまり、肌の健康のためにトマトを摂取する場合は、外用日焼け止めのような即効性のある保護とは異なり、毎日継続して、少なくとも2〜3ヶ月間は摂取し続けることが重要になります。

お肌に「かけこみトマト」は通用しないことに注意しましょう。

(参照:The effect of tomato and lycopene on clinical characteristics and molecular markers of UV-induced skin deterioration: A systematic review and meta-analysis of intervention trials
(参照:Tomato paste rich in lycopene protects against cutaneous photodamage in humans in vivo: a randomized controlled trial

トマトのダイエットに対する効果は?

実は、トマトは「ダイエット」にも有効な食材です。特に、「閉経後の女性」についてのダイエット効果が確認されています。

 たとえば2024年に台湾で行われたランダム化試験では、新鮮なトマトを定期的に摂取することが、過体重の閉経後女性におけるメタボリックシンドロームの複数の特徴を有意に改善できることが実証されました。(2か月で脂肪量はでー0.8㎏、ウエストー2.9㎝

 さらに、同研究では、トマトを摂取したグループは、体脂肪量・体脂肪率・腹囲だけでなく、血清総コレステロール・中性脂肪・収縮期血圧・血糖値が有意に低くなっていますね。

また逆に体に有益なHDLコレステロールと抗酸化バイオマーカーのレベルは高くなっています。この効果は4週目から現れはじめ、8週目の測定ではさらに改善が示されています。

では、なんでトマトはダイエットに効果的なのでしょう。

その秘密はトマトやトマトジュースに「13-oxo-ODA」というリノール酸の1種にあります。

13-oxo-ODAは、体内の「PPARα(ピーパーアルファ)」という、脂肪燃焼のスイッチのような役割を持つ分子を活性化させます。そして、肝臓で脂肪酸を燃焼させる働きが高まり、血中や肝臓の中性脂肪を減らしたり 脂肪燃焼を促進することで、血糖値の改善にもつながるのです。

実際、ある動物実験では、肥満・糖尿病マウスに13-oxo-ODAを4週間与えたところ、血中の中性脂肪が約30%減少したという結果も報告されています

もちろん「とりあえずトマトを食べれば痩せる」なんていうことはありません。カロリーや糖質バランスにも注意を払いましょう。

(参照:Fresh Tomato (Lycopersicon esculentum Mill.) in the Diet Improves the Features of the Metabolic Syndrome: A Randomized Study in Postmenopausal Women

トマトは夏バテや熱中症にもピッタリ!

トマトは、これまでにご紹介した効果以外にも、いろいろな健康効果が期待されています。

特に個人的には、いわゆる「夏バテ」にもピッタリの食材だと思いますね。

例えば、夏バテの症状の一つに「疲労感」がありますよね。トマトに含まれるクエン酸が、この疲労感の緩和に有効です。クエン酸は、エネルギー産生に関わるTCA回路を活性化させることが期待されています。

実際に、健康な人を対象とした研究で、クエン酸の摂取が身体的疲労感を軽減し、生理的なストレスマーカーを低下させることが報告されています。クエン酸の豊富なトマトはまさにうってつけでしょう。

また、運動後の疲労回復に関しても、トマトジュースの摂取が乳酸の代謝を促進する可能性が示唆されている論文もあります。

さらに夏は汗をかきやすく、水分やミネラルが失われがちですよね。

トマトの約95%は水分で構成されており、失われた水分を補給するのに適しています。さらに、トマトはカリウムを豊富に含んでおり、カリウムには穏やかな利尿作用があるため、体内の余分な熱を尿と共に排出することで、体温調節を助ける効果が期待できますね。

さらに、夏の暑さによるストレスや寝苦しさは、夏バテの大きな要因となりますよね。

実はトマトには、ストレス緩和や睡眠の質改善に関与する「γ-アミノ酪酸(GABA)」が含まれています。GABAの経口摂取は、一時的な精神的ストレスや疲労感を緩和する機能、また睡眠の質(眠りの深さ、すっきりとした目覚め)を向上させる機能が報告されているのです。

事実、ある臨床試験では、肥満の閉経後女性が8週間にわたり就寝前にトマトを摂取したところ、睡眠ホルモンであるメラトニンの尿中代謝物レベルが有意に上昇し、睡眠の質が改善したと報告されています。これは、トマト自体に含まれる微量のメラトニン、あるいはGABAなどの成分が総合的に作用した結果である可能性が考えられます。

こう考えると、トマトって夏にぴったりの野菜だと思います。

(参照:Dietary supplement of tomato can accelerate urinary aMT6s level and improve sleep quality in obese postmenopausal women
(参照:Bioactivities of phytochemicals present in tomato

トマトの効果をより最大限に引き出すためには?

 さて、ここまでトマトの健康効果をさまざまな角度からお伝えしてきましたが、トマトの健康効果を最大限引き出すための原則を最後にお伝えします。ポイントは次の通りです。

  • 「脂質と共に加熱」の原則: リコピンが関わる効果(皮膚の健康、前立腺の健康、がんリスク低減など)を最大限に引き出すためには、トマトを加熱調理し、オリーブオイルなどの健康的な脂質と一緒に摂取することが非常に重要です。ソース、ペースト、スープなどがおすすめです。
  • 「生でビタミンC」の原則: ビタミンCやその他の熱に弱い栄養素を最大限に摂取したい場合は、生のトマトをサラダなどで食事に取り入れるのが良いでしょう。
  • 継続は力なり: カロテノイドは体内に蓄積されるまでに時間がかかるため、たまに食べるだけでは十分な効果は期待できません。毎日、またはそれに近い頻度で継続的に摂取することが大切です。
  • バランスの取れた食事の一部として: トマトは非常に栄養価が高い食品ですが、特定の食品だけを過剰に摂取するのは避けるべきです。腎臓に問題がある方や特定の薬を服用している方は、カリウム含有量に注意が必要です。また、酸味があるため、胃食道逆流症の症状を悪化させる可能性もあります。しかし、健康な方であれば、ここでご紹介した範囲内での摂取は安全で有益だと考えられています。

トマトは、まさに「最強の体のサプリ」と言えるかもしれませんね。その調理法や摂取量によって、様々な健康効果を引き出すことができる奥深い食品です。ぜひ、ご自身の健康目的に合わせて、賢くトマトを食生活に取り入れてみてください。

【この記事を書いた人】 
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。

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