こんにちは、一之江駅前ひまわり医院の院長、伊藤大介です。
遊んでいる時や走っている時に、転びたくなくてもよく転んでしまうことありますよね。特に小さな子供は転びやすいですし、大人も転ぶことがあります。
その時によく擦り傷ができると思いますが、ついつい放置していませんか?擦り傷を放置すると、傷あとが残りやすいだけでなく、「ある合併症」につながりやすい危険性があるのです。
今回は、擦り傷(すり傷)を早く治すための方法と、病院に行く目安・治らない時の具体的な処置や薬について解説していきます。
切り傷については切り傷の応急処置や病院に受診する目安は?早く治す方法やふさがる時間について解説も参照してください。
Table of Contents
擦り傷を早く治すには応急処置が大切
擦り傷(すりキズ)とは「転んだりなどして表面の一部がはがれたような状態になる外傷」のこと。医学的には「擦過傷(さっかしょう)」といいますね。
擦り傷を早く治すには、あまり放置してはいけません。転んだ時の応急処置が大切です。まずは一般的な応急処置の方法を見ていきましょう。
① 手をきれいに洗ってから処置すること
手が汚れている状態で、擦り傷を治療しても再度細菌がついてしまい、感染するリスクが高くなります。まずは手をきれいにしてから処置するようにしましょう。
② よく傷口をすすぎ、きれいにする
まずは、擦り傷を流水でよく洗い流しましょう。冷水からぬるま湯で洗い流してください。流水は、滅菌水は必要なく水道水で十分です。実際、両者に感染予防効果に差がなかったとする報告もあります。
石鹸でよく泡立てて洗うこともよい方法ですね。
③ 大きな異物は取り除く
そのあと、小さな砂やアスファルトなどが付いていないか観察してください。もし擦り傷の中に異物が混ざっていた場合、除去しなければなりません。
ピンセットなどで除去するのですが、傷口を触るのはなかなか勇気がいるもの。また確実にとりきれているか、確認する必要があります。また細かな砂粒の場合には、清潔なブラシなどを使いブラッシングするのですが、これもなかなか傷口に扱いが慣れていないと難しいところです。
異物が確実に取り除けているか自信がない方、異物を取り除いた経験に乏しい方は、直に医療機関に受診した方がよいでしょう。
④ 出血がある場合は、止血する
擦り傷の場合は、浅くえぐれていることが多いので、出血は切り傷より止まりやすいです。出血しているところをガーゼなどでしっかり押さえて(圧迫止血)、心臓より高く上げて固定すれば、ほとんどの擦り傷は止血されるでしょう。
逆に、後述するように深くえぐれている場合は、圧迫止血でもとまりません。その際にはなるべく早く医療機関に受診をお願いいたします。
⑤ 傷口を保護する
どのような形でもよいので、傷口を保護しましょう。
この時、よくパワーパッド®やハイドロサイト®、家庭用ラップなどを用いた湿潤療法(傷口周囲を湿った環境にすることで、体の本来持っている自己治癒力を最大限に引き出す方法)が他の医療機関でも強調されていますよね。
しかし湿潤療法が効果を発揮するのは「きちんと異物のない」「菌が繁殖する環境にない」正しいやり方であることが大前提になります。そのためには、傷を正確に評価できることが必要です。
よく「なかなか擦り傷が治らない」と来院される方でみられるのが、「水で流してとりあえずパワーパッド®をずっと貼っておいた」などというもの。実際にはがすと創部が死んだ細胞で覆われ感染の巣窟となっており、湿潤療法がかえって悪化させていた例も経験します。
将来擦り傷が膿(う)む危険性がどれくらいか、もし判断にあまり自信がないようでしたら、傷を清潔な状態にした上で抗生剤含有の軟膏やワセリンなどをたっぷり塗布してガーゼで保護しても、自己治癒力が働いて、浅い傷だと十分治ってきます。
もちろん医療機関に受診して、湿潤療法にすべきか相談してみてもよいでしょう。
(参照:Am J Emerg Med.20: 469-72. 2002)
擦り傷で病院に行く目安は?
擦り傷(すり傷)の応急処置について解説していきました。では、擦り傷で病院に行ったらよいのでしょう。
結論から言うと、
- 擦り傷が深くえぐれている時
- 擦り傷がなかなか治らない場合
- 擦り傷に伴う合併症が考えられる場合
- 擦り傷に異物が入っている可能性がある時
になります。順番に見ていきましょう。
① 擦り傷に異物混入や感染の可能性がある時
擦り傷に異物が入っている可能性がある時、細かい粒子が取り除けていない可能性がある場合は、「外傷性稗粒腫」といって白く残ってしまったり、異物が感染巣になって傷口の状態を悪化させ、キズの治りを悪くすることがあります。
少しでも「異物が残っているかも」という場合は、ためらわず医療機関に受診するようにしましょう。
また、同様に非常に汚染が強く感染の可能性が強い場合も同様に受診した方がよいですね。必要な場合は抗生剤の飲み薬を使用することがあります。
② 擦り傷が深くえぐれている時
「擦り傷」といってもえぐれている部分が表面までの浅い傷から皮下脂肪にまで達している傷まで幅広くあります。筋肉にまで達している場合は、画像検査まで必要なこともりますね。(そのような場合はCTなどが取れる病院に紹介します)
いずれにせよ擦り傷も深くえぐれていると、治るまでに時間がかかり感染や傷アトなどの合併症が生じる場合が高くなります。医療機関に受診して正しい傷の処置をしてもらった方が無難でしょう。
③ 擦り傷に伴う他の合併症があり得る場合
特に転んで顔面に擦り傷ができた場合は、創部も重要ですが、顔面をぶつけたことによる他の臓器の合併症の評価も大切です。擦り傷にとらわれて骨折や臓器の出血などを見落としてしまっては、手遅れになる場合もあります。
転んだ際に「擦り傷以外にも違和感があるな」と感じた場合や、顔面や頭部など擦り傷以上の合併症を生じやすい場所に関しては、医療機関に受診した方がよいでしょう。
④ 擦り傷がなかなか治らない時
通常、正しい処置を行えば浅い擦り傷なら1週間~最大2週間で治るはずです。それ以上に時間がかかって治りが遅い場合は、傷の修復過程に何かトラブルがある場合が想定されます。
擦り傷がなかなか治らないなら、「自分の処置が間違っている可能性があるかもしれない」と考えて、一度医療機関に相談してみるとよいでしょう。
病院での擦り傷に対する処置や薬は?
では、病院では擦り傷に対して一般的にどのような処置をするのでしょう。一言でいうと「傷が正常に(もしくは早く)治るように創部の状態を整える」のが病院での処置や薬の主な役割です。例えば、次のようなことを行います。
① 異物を取り除く(ブラッシング)
細かい砂やアスファルトなどが傷の中に食い込んでいると、傷がなかなか治らず傷跡になる可能性があります。「ブラッシング」といって、あえて一時的に出血しますが、細かな異物を取り除くことで、傷口が治りやすいように整えます。
② 不良肉芽を除去する(デブリドマン)
皮膚が死んでいる「壊死(えし)組織」で覆われていると、そこから皮膚が十分再生できなくなり、いつまでも治らなくなってしまいます。その場合は広範囲な場合は局所麻酔薬を使用しながら、傷の再生を邪魔する「壊死組織」や「不良肉芽」を丁寧に取り除いていきます。
③ 縫合閉鎖する
通常、擦り傷の場合、皮膚がはがれているだけなので縫合することはありません。しかし、中には、擦り傷の創部の中に断裂している箇所があることがあり、状態によっては糸で縫合閉鎖した方が治りが早くなる場合があります。汚染状況を見極めた上で必要な場所を縫合閉鎖します。
塗り薬や飲み薬は、創部の状態に合わせて変えていきます。「湿潤させたほうがよいのか」「少し乾燥気味にさせたほうがよいのか」は実際には皮膚の状態によっても異なります。いずれにせよ「創部を異物のない再生しやすい状態に整え、本来持っている再生力を促す」のが処置の基本になりますね。
擦り傷で2次的な合併症(骨折や臓器の損傷など)がありそうなときは画像検査も併せて行うことも。必要な場合には、高度な画像検査がしやすい病院と連携しながら、患者さんにとって最適な治療プランを提案いたします。
擦り傷は何科に行けばよい?
擦り傷は一般的には「皮膚科」「形成外科」「外科」「救急科」でみてもらうとよいでしょう。一般的な傷の取り扱いに慣れているところに行った方が、適切な処置をしてもらえる可能性が高くなります。
また骨や靭帯に異常がありそうな場合は「整形外科」「救急科」に受診するとよいでしょう。内臓損傷が疑われる場合には、画像検査ができる病院に受診するとよいですが、紹介状が必要な場合も多いので、一度電話してみるか、かかりつけの医師に相談の上、紹介が必要か含めて判断してもらうとよいですね。
擦り傷についてのまとめ
いかがでしたか?擦り傷が早くふさがるための応急処置や病院の受診目安・病院での処置や薬に至るまで幅広く解説していきました。簡単にまとめると
- 擦り傷は応急処置が大切。創部を清潔に保ち、止血しながら創部を「適切に」カバーしてあげれば自然をよくなることが多い
- ただし、擦り傷でも「擦り傷に異物が入っている可能性がある時」「擦り傷が深くえぐれている時」「擦り傷に伴う合併症が考えられる場合」「擦り傷がなかなか治らない時」は病院に受診した方がよい。
- 病院では、正しく傷を把握し、適切で早く治りやすい傷の状態に促すような処置をします。具体的には「異物除去」「不良肉芽の除去」「縫合閉鎖」「合併症の有無の検索」です。
- 擦り傷は一般的には「皮膚科」「形成外科」「外科」「救急科」など。骨や靭帯の異常があるときは「整形外科」の受診がよいでしょう。
といえます。もちろん当院でも擦り傷に関する治療も行っておりますので、傷のトラブルに関して心配な方はぜひお気軽にご相談ください。
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【この記事を書いた人】
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