水いぼはうつる?水いぼ(伝染性軟属腫)の症状や治療・日常のケアについて

こんにちは、一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介です。

夏で子供のプールがはじまると話題になる疾患の1つが「水いぼ」です。実際、水いぼが増えて広がり、当院に受診されてくる方も増えてきてきます。

今回は、水いぼの症状や原因・治療・プールに入れるかどうかに至るまで、幅広く解説していきます。

水いぼの症状は?

水イボの皮膚所見
(水いぼ[伝染性軟属腫]の皮膚所見)

「水いぼ」という名称で親しまれていますが、正式名称は「伝染性軟属腫」という、ポックス ウイルスの一種による感染症です。集団生活や水遊び・タオルの共有・浴場などで肌と肌がこすれあうことで感染することが示唆されています。(保育所による感染対策ガイドライン 2018年による

14 〜 50 日の潜伏期間を経て、免疫力が発達していない子供の体幹や四肢・デリケートゾーンや下腹部・太ももの内側などを中心に出現します。

直径2 〜 10 mm のドーム状の柔らかいブツブツができ、痛みやかゆみは通常はありませんが、掻いて炎症を起こすとかゆくなることがあります。水いぼは

  • 比較的おすと柔らかいこと
  • 1つ1つしっかりしていること
  • 表面はなめらかで光沢があること
  • 中央がおへそのようにくぼんでいること

などが特徴です。少ない時は2-3個の時もありますが、受診時には60個くらいに増えていることもあります。

健康な子どもでは、6ヵ月~3年で自然治癒するとされていますが、個人差が大きくその患児がいつ治るかを予測することは困難といわれています。 (参考:日本小児皮膚科学会HP「みずいぼ」

水いぼはうつる?

水イボのイラスト

では、水いぼは人にうつるのでしょうか。結論からいうと、水いぼは「肌と肌で接触する機会があればうつります」。そのため

  • 「兄弟同士でお風呂に入っていたら、水いぼが兄弟にもうつった」
  • 「腕の内側に水いぼがあったが、同じ側の胸にうつった」

などはよくある話です。水いぼをひっかいた手を清潔にせずに自分や他の人に触れたりひっかいてしまうと、よくうつります。また、大人もアトピー性皮膚炎や重度の乾燥肌だと水いぼがうつるので同様に注意が必要ですね。

では、プールでは水いぼはうつるのでしょうか。

これに関しては厚生労働省が日本皮膚科学会・日本小児皮膚科学会の統一見解をうけて、結論として「プールの水では感染しないので、プールに入っても構わない。しかしタオル、浮輪、ビート板等を介して感染する場合もある。」としています。(保育所による感染対策ガイドライン 2018年による

肌と肌をすり合わせるようなことがなければ水いぼがうつる可能性が低くなるため、「ラッシュガードなど水いぼがある部分を覆っていただければプールに入っても問題ない」とするところが多いようです。

あとは施設の基準にもよりますので、各施設に問い合わせていただくとよいでしょう。

水いぼの治療は?

① トラコーマ鑷子(せっし)による摘出

水いぼをとる時に使用されるトラコーマ鑷子

一番確実な治療は1つ1つがウイルスの核になっているので、その部分をトラコーマ鑷子(せっし)とよばれる特殊な鑷子でつまんで摘出することです。(上図参照)摘出された水いぼの部分はもちろん摘出されるので再発することはありません。

ただし、小さい水いぼの場合摘出しきれない可能性があることや痛みを伴う治療であることがデメリットです。ですから、痛みについてよく話し合ってから治療を開始するようにしています。

また、麻酔のテープを事前に使ってから摘出する方法もあり、痛みをおさえながら摘出することができます。

テープによるアナフィラキシーショックなどの全身性のアレルギー反応の可能性もあることや、麻酔のテープが効果を発揮するのに時間がかかること、1回にとる個数が限られることなどがデメリットです。

② 冷凍療法・凍結療法

ウイルスを冷凍することで除去する方法です。直接摘出するよりも当然効果は低いですが、ウイルスに直接ダメージを与えるので、内服療法や経過観察よりも効果は高いといえます。

③ 塗り薬による治療(外用療法)

水イボの塗り薬である、M-BF Cream®の写真。

もちろん、なるべく痛くない治療法の方が望ましいので、下記のように様々な塗り薬による治療法が模索されてきました。(一部保険適応ではありません)

  • 40%硝酸銀を用いる方法
  • サリチル酸ワセリンを用いる方法
  • ヨード(イソジン)で刺激する方法
  • カンタリジンを用いる方法
  • イミキモドを用いる方法
  • 「紫雲膏」とよばれる漢方の軟膏を用いる方法

しかし、いずれの外用薬も直接切除やダメージを与える方法よりも確実性は少ないとされています。(詳細はこちら

なお当院でも「水いぼに対して痛みを伴う治療をしたくない」という方のために、「3A M-BF Cream®」を導入しています。(上図)M-BF Cream®は強力な抗菌作用がある銀イオンと保湿成分および抗炎症作用のもつサクランが配合されているクリームです。

84症例の水いぼ症例にM-BF Cream®を塗布した実験結果だと81%(68%)の方が治癒したという結果があります。しかし、治癒までの平均日数が約58日なので、ある程度根気が必要なのがデメリットです。(第79回日本皮膚科学会発表演題より)

水いぼ外用薬 3A M-BF Cream®2200円(税込)

ご希望の方は当医師にお伝えいただくと幸いです。

④ 内服薬(ヨクイニン)

水いぼの内服薬として知られるヨクイニン(はとむぎ)の写真。

補助的ですが「ヨクイニン」の内服療法を行うこともあります。「ヨクイニン」は、ハトムギの皮を除いた種で、古くから肌トラブルに用いられてきた生薬です。 消炎作用や体の水分バランスを整える作用があると言われ、肌あれや、水いぼに効果があるとされています。

あとは施設によっては「黄耆建中湯」という漢方薬を使うところもありますね。

直接水いぼにダメージを与える治療法ではありませんので効果は補助的ですが、副作用もない薬なので、しばらく使用してみるというのも1つの手でしょう。

⑤ 経過観察

文字通り、水いぼが増えてこないか様子をみる方法です。

水いぼはウイルスが原因なので、免疫が付けば自然と治ります。そのため、単に様子を見るというのも選択肢にあげられるでしょう。しかし逆に増えてきた場合、個数に応じて摘出するのも大変になってきますので、慎重にみる必要があります。

いずれの場合でもクリニックや医師によって大きく治療方針が変わる疾患でもあります。「早くとったほうが個数が少なくてすむ」と考えるクリニックや「自然とよくなる場合も多いのだから様子をみてもよいだろう」というクリニックなどさまざまです。

当院では、患者さんの背景や希望に寄り添っていきながら、患者さんと一緒に適切な治療を考えていく方針をとっています。

水いぼのケアのポイントは?

子供や自分が水いぼになった時のケアや予防方法のポイントをお伝えします。

① 肌と肌で接触する機会を減らす

水いぼが広がってしまう一番多い機会が「お風呂」です。子供が「水いぼかな?」と思ったら、兄弟同士でお風呂に入らないようにしましょう。他、肌と肌をすり合わせるような機会をなるべく減らすのが大切ですね。タオルも共有しない方が望ましいです。

プールの際にもラッシュガードや耐水性のばんそうこうなどで覆い、他の人に感染させないようにお願いします。

② 肌を乾燥させない・肌をかき壊さない

水いぼは肌が乾燥してバリア機能が低下していると、かかりやすくなります。逆にいえば、普段の保湿ケアは水イボの予防にも有効です。

水いぼになってしまっている方も、十分保湿ケアを怠らないようにしましょう。

また、水いぼのウイルスと戦って炎症を起こすとかゆくなることがあります。搔き壊さないように爪を清潔に切っておくとよいですね。

③ 個数が少ないうちは、早めに摘出した方がラク

多くの水いぼの症例を診てきましたが、1個や2個の水いぼを他院で様子を見られて、非常に個数が多くなり当院に来院されてくるケースがたびたび見られます。

たしかにピンセットでつまむと考えると、「子供が泣いてしまってかわいそう」とためらう気持ちもわかります。しかし、個数が非常に増えてしまって治療に難渋している方もいるのも確かです。

総合的に考えて、「早めに摘出や液体窒素などで対処してしまった方がラク」なように感じます。

水いぼについてのまとめ

いかがでしたか?水いぼについて、幅広く解説していきました。まとめると

  • 水いぼは伝染性軟属腫というウイルス感染症の1種
  • 免疫力が発達すると自然に軽快するが、特に肌が接触すると人にうつす可能性も(大人もアトピー性皮膚炎などの場合は水いぼがうつります)
  • 水いぼは摘出するのが確実だが、冷凍療法や内服薬・経過観察などさまざまな対処法がある。クリニックによっても大きく方針がことなる
  • いずれにせよ「保湿ケア」「肌の露出を防ぐ」など行い、個数が少ない場合は早めの対処が望ましい

といえます。確かに水いぼは摘出するのが一番確実ですが、痛みも伴うので家族や本人の納得と理解が必要です。

一之江駅前ひまわり医院では、水いぼの治療や日常生活の注意点について、個々の患者さんに合わせてさらに詳しくアドバイスしております。是非ご不安な点などありましたら、お気軽にお申し付けください。

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【この記事を書いた人】 
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。

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